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最弱国の魔素無し第四王子戦記(無限の魔素と知略で最強部隊を率いて新王国樹立へ)  作者: たぬころまんじゅう
第五章

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シャルと第六師団長

「てめぇ、よくも私の邪魔をしてくれたなっ!」


「邪魔?おかしいですね、これは戦争であって双方が邪魔するのは当然だと思いますが・・・・・・?」


「ごちゃごちゃと御託を並べてんじゃねぇよ、執事風情がぁぁ!!」


 エレーナのオーラがぶわっと膨れ上がる。エレーナの剣はアイネと戦っていたときの比ではなかった。右、左と揺れるたびに剣身が陽光の光を反射する。エレーナの剣速は、一気に最高速に。周囲の兵士たちはいエレーナを凝視する。エレーナとシャル。兵士たちのあらゆる角度、複数の目で、どんなに凝視しても両者の剣筋が見えない。ただただ凄まじい衝撃と金属と金属が打ち付けられ、まるで爆発するような衝撃音がふたりの間から聞こえてくる。しまいには残像――輪郭はぼやけているが、止まっているように見えたのだ。


「師団長・・・・・・止まって・・・いや、動いて、るのか?」


「どうなってんだ・・・・・・。音は聞こえてくるのにエレーナさまの動きが時折止まって見える」


 こんなどよめきが兵士たちから上がる。


「おい、あっちの執事も同じように見えるんだが・・・・・・」


「どうなってんだ、こりゃ?」



 キィィィィィィィィィィィィィィィィィン



 やがて、共鳴するような甲高い音が周囲を支配する。



 ズドォォォォォォォォォォォォォォォォォォン!!



 直後に爆発音と同時に圧縮された大気が、一気に爆散して周囲の兵士が巻き込まれて転がる。倒れ込んだ兵士が見たのは、両者の間の距離が異様に開いていたことだった。地面にはお互いの馬の脚が、中心の爆発から押し出されたような跡がある。ここで、兵士たちはお互いの技を放ったのだとようやく理解したのだった。


「やれやれ、着替えが台無しですね・・・・・・」


 シャルは小さく息を吐き、衝撃でぼろぼろになった襟を手で払った。


「ちっ、クソ執事の分際で・・・・・・!」


 そのころ、シャルが救援から外れたことで、残した遊軍500は数に圧されて半壊状態になっていた。エレーナの中央予備軍の残りがファニキア左翼を正面と側面から攻め立てる。さらに指揮官を欠く状態で、統率の取れない魔素兵の勢いも落ちていった。血の海が広がり、悲鳴が連続する。シャルはアイネを後退させながら剣を構え直すが、エレーナがもう一撃を入れようと馬を駆る。その瞬間、新たな伝令兵がエレーナの元に駆け込んできた。馬から転がり落ち、息を切らして叫ぶ。


「師団長!南の丘・・・・・・アルトゥース本人が突破部隊を率いて封鎖!我々の増援を断っています!」


 エレーナの動きが止まる。


「王が・・・・・・南に!?そうか、そういうことか・・・・・・」


 彼女は即座に決断。騎馬隊に命じる。


「全騎馬、南へ転進!異教徒の王の首を取る!」


 エレーナは騎兵を旋回し、南斜面へ急いだ。


「まずいですね・・・ですが・・・・・・」


 シャルはエレーナを追うか迷った。ファニキア本陣を守る右翼は既に半崩壊状態。左翼は精強な魔素兵が持ち堪えているが、倍の兵で半包囲されている。指揮官不在ではいずれ瓦解してしまうかもしれない。そうなれば、後ろに控えるミラの身に危険が及ぶ可能性があった。


「・・・・・・シャル、大丈夫よ。あれ見て」


 アイネが指を差した方角を向くと、エレーナの後ろを追いかける一団がシャルの目に映った。


「あれは・・・・・・。なるほど、では彼女に任せるとしましょう」


 シャルはアイネを本陣へ後退させると、崩れかかってるファニキア左翼軍のテコ入れに奔走した。




 一方、エレーナは馬を駆り、騎馬隊を率いて南へと疾走した。丘の中央東から南へ向かう道は血と死体の道筋でぬかるみ、馬の蹄が土を蹴り上げるたび、赤黒い泥が飛び散る。彼女の瞳は、焦燥と苛立ちで揺れていた。


 中央の本陣に残した死兵たちが、ファニキアの守備を抑え込んでいる。主力がファニキア軍と正面から組み合っている間に、彼女は異教徒の王——アルスの首を取らなければならない。増援が断たれ、後方の4万も動かせない今、アルスの死が唯一且つ決定的な手となる。


「急げ!王の首を取るまで、止まるな!」


 エレーナの声が鞭のように響く。騎馬隊の馬は息を荒げ、槍が陽光を反射する。登って来た南の斜面の先に、ファニキアの旗がひしめき合っていた。あそこが封鎖線であり、ファニキアの王がいる。あの王さえ討てば、すべてが終わる。後方の脅威も、ファニキアの抵抗も、異教徒の王の死がすべてを飲み込んでくれるはずだ。


 だが、その背後から角笛の音が響いた。北から追いかけてくる蹄の音——ジュリ率いる500の騎馬兵。ジュリの剣がオーラを纏い、斜面を駆け上がってくる姿が、エレーナの視界に捉えられた。


「追っ手か・・・。さっきとは別の奴らね」


 エレーナは速度を落とし、騎馬隊に命じる。


「おい、おまえ!100騎率いて奴らを抑えろ!私は王を討つ!」


 相手は500、それを100で抑えろというのは滅茶苦茶だったが、反論など出来るはずもない。突然、命じられた騎馬兵はしどろもどろに返事した。


「わ、わかりましたっ!」


いつも拙書を読んで頂きありがとうございます。


☆、ブックマークして頂けたら喜びます。


今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。

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