アルス突撃する
「おい、なんだあのオーラ・・・・・・」
「ああ?」
アルスの異様なオーラ量に動揺する兵士たち。その光景を目にしたひとりの兵士が呟いた。
「以前、聞いたことがある・・・。異教徒の王は底無しのオーラだと」
「そんじゃ、ありゃあ・・・・・・」
「間違いねぇ、ファニキアの王だ!あいつをやれば終わるぞ」
「奴だ、奴を倒せぇぇぇ!!」
「異教徒の王が出やがったぞぉぉ!!」
騎士団がアルスの姿に気付いて色めき立つなか、アルスは静かに刀を抜く。膨大なオーラが一気に赤い刀身に集束していく。刀身は集束したオーラの色と混ざり合い、赤から紫色へと変化する。アルスがその膨大なオーラを含んだ刀を横に薙ぐ。刃先に超高密度に圧縮されたオーラが扇状に広がり、一瞬眩い光を発した。その瞬間、大気が蒸発したように白くなり、上下真っ二つに寸断される。直後、重装騎兵の鎧も盾も全てが同じ高さで綺麗に切断された。血が噴き出し、断面が綺麗に光る。それを見て騎士団の部隊長が叫ぶ。
「怯むなぁ!奴さえ倒せばこの聖戦は俺たちの勝ちだぁぁ!!」
その声で一瞬呆然としていた騎士団は再び我に返る。
「そうだ」
「これで終わるんだ」
「倒せ!」
「倒せ!」
「倒せ!」
周辺の騎士たちは、アルスに再び距離を詰める。そして、動いたのは、アルスの両側に控えるふたりの弓兵だった。
「バレちゃったかな?うじゃうじゃ寄って来た!さあ、いっくよぉ♪」
サシャは巨大な弓を引く。ギ、ギ、ギ、ギ、ギと不気味な音を立てて弓がしなっていった。限界まで曲線を描いた弓から、薄くオーラを纏った巨大な矢が重く、地を震わせるような発射音と共に放たれる。風を切り裂き、轟音を立てながら直近の騎士のプレートをいとも簡単に突き破り、後方、そのまた後方と次々と騎士たちを串刺しにした。その数6人。その6人を串刺しにしたまま、尚巨大な矢はとんでもない速度で飛翔する。さらに後方の兵士たちをも巻き込んで隊列すら破壊した。
エミールは、矢じりに結晶石を用いた矢を左右に3本ずつ、計6本を同時に発射。青白い軌跡を描きながら6方向に飛んだ矢は、着弾すると爆発した。盾も鎧も槍も一瞬で吹き飛ばす。爆風が土煙を巻き上げ、血の霧が広がる。こうしてアルス隊は錐のように騎士団に穴を開けて突き進んでいった。
一方、エレーナ。ジンメルが潰されたことで、南側の防御陣は崩壊点を超えてしまっていた。ファニキア残存兵は、指揮官を失ったまま次々と命を落とし丘から落ちていく。さらに、エレーナは丘の下にいた兵を上がって来させ増援をどしどし呼び寄せた。南側は一気に確保され、エレーナの橋頭堡が丘の南端を固める。
「ふふ、このまま踏みつぶしてやるわ。さあ、このまま一気に中央の本陣を取って王の首を取るわよっ!!」
そのときである。エレーナの元に、血まみれの斥候が転がるように駆け込んできた。馬から落ち、土に膝をつきながら、震える声で叫ぶ。
「師団長!西の・・・・・・西北山にファニキアの別働隊が布陣!旗の数から数千~1万になるかと・・・・・・。さらに西の南山にもハイデ軍です!こちらも軍旗が多く、数万規模になるかと思われます・・・・・・!」
エレーナの笑みが、一瞬で凍りついた。剣を握る手が小刻みに震え、血走った瞳が西の山脈を睨みつける。表情が、怒りに歪んだ。
「ファニキアめぇぇ・・・・・・こざかしい真似を!!軍旗の数が多い・・・?だから数万だと?そんなわけがあるかぁぁぁぁ!!」
彼女は叫ぶと同時に、近くにいた伝令兵の首を一閃で撥ねた。エレーナのオーラが暴走気味に膨張し、周囲の空気が重く歪む。
「ブラフだ・・・。奴らにそんな余裕はなかった。だが・・・・・・ヴェロニカの3万はハイデと交戦中。ここに3万を投入した。残り4万・・・後方の4万を動かせば・・・・・・西の背後を突かれる。畜生がっ。確証が無い以上、いたずらに兵を割けない・・・・・・!」
狂気の剣士の胸に、初めての苛立ちと焦りが渦巻く。彼女は歯を食いしばり、剣を握り直した。
「上等だ。それで私と互角になったつもりかよ・・・・・・。そんなもの・・・・・・王の首さえ取れば、すべて終わる。本陣を焼き尽くしてやる」
エレーナはジンメルの首を転がした余韻に浸る間もなく、部隊長たちを呼び集めた。丘の南端で築かれた橋頭堡は、騎士団が次々と集結してくるため、既に強固なものとなりつつある。土煙と血の臭いが混じり、風がそれを運んできた。
「イーゴリ、ガラ、ヴァシリー!南を掃討しつつ中央に出るぞ!奴らを残らず草の肥料にしてやる」
部隊長たちは即座に膝をつき、「はっ」と声を揃えて応じる。彼らの目には、エレーナの狂気が感染したような光が宿っていた。死兵の連鎖は、恐怖を燃料にさらに加速する。エレーナの指示で、3000の槍隊と2000の剣士、そして1000の騎兵が南斜面を駆け上がり、散り散りになったファニキアの残存兵を狩り始める。
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