マル VS ナタリア2
「双炎龍!!」
ふたつの短剣から燃える龍が口を開けてナタリアに襲い掛かる。ナタリアは反射的にありったけのオーラを凝縮してぶつけた。
ズドォォォォォォォォォォォォォン!!
ふたつのオーラが衝突。吹き荒れる爆風で周囲の兵士が吹き飛び、抉れた岩が無数の破片となって丘の斜面を転がり落ちていく。ナタリアは馬上から吹き飛ばされ、地面に剣を突き立てていた。咄嗟に放った衝撃波で緩和出来ていたが、盾は粉砕され左腕からはとめどなく血が流れている。痛みも感じない。ということは、相当な深手を負わされたのだろう。
「食らったか・・・・・・。妙な技を使う小娘だ。だが、そうとわかれば・・・」
ナタリアは立ち上がると、剣を構えなおしマルとの距離を詰めた。マルは低い姿勢から一気に加速する。地をスレスレに這う蛇のようなモーションで右へ左へと蛇行し、双剣を地面から突き上げる。それにナタリアは恐ろしいほどの正確さに剣速を上乗せして、マルの双剣を弾いた。マルは目を見開いた。怪我をしているとは到底信じられないような俊敏な動きだ。そこからさらに、ナタリアの剣は加速。
「玉閃!」
オーラを乗せた一撃がマルの頬を掠める。血が弧を描き、マルの皮膚が裂ける。
「っ・・・・・・!」
マルは痛みを無視して突進。双剣を交差させてナタリアの剣を弾き、逆袈裟に切り返す。ナタリアは体を捻り、玉閃を放つ。オーラの粒子が凝縮された斬撃波がマルを襲うが、マルは地面を蹴って跳躍し、波の上を飛び越える。空中で体を捻り、双剣を振り下ろす。ナタリアの剣がそれを迎え撃ち、二つの刃が激しくぶつかり合う。五合、六合。衝撃で周囲の土が抉れ、土煙が濛々と舞い上がる。
玉閃の連発でマルの動きを封じ、肩に深い傷を刻む。血が滴り、マルの息が荒くなる。双剣を交差させて防御し、隙を突いて反撃。短い刃がナタリアの腕を浅く斬り、血を引く。
「くっ・・・・・・この小娘・・・・・・!」
ナタリアの瞳に、わずかな驚きが浮かぶ。予想以上に厄介だ。北側の死兵を率いて丘を押し上げるのが優先のはずなのに、この少女が足を引っ張っている。師団長の南突破を支えるためには、ここで時間を費やせない。そのとき、後方で小さなどよめきが起こった。ナタリアは横目でちらりと視線を移す。どうやら丘の南側で動きがあったらしい。はっきりとはわからないが、遠目でも騎士団の旗が丘の上に翻っているのが見える。ナタリアは、自分の役目を果たせたらしいことを悟った。
「ここまでだっ!」
ナタリアはオーラを爆発させて周囲を威圧。玉閃の残光がマルを押し返し、死兵の残りを引き連れて北斜面を後退させた。マルは息を荒げ、血まみれの双剣を地面に突き立てて体を支える。マルの瞳がナタリアの背中を睨みつける。
「くっ・・・・・・逃がした」
北側の圧力が一時的に弱まり、ジュリは南への救援を急ぐことができた。マルは残された兵をまとめ、北口の守りを固め直す。
時は少し遡る。
エレーナが南の丘に駆け登った直後、丘の中央本陣では、静寂が訪れていた。
「アルス・・・・・・何も王自ら突っ込むなどせんでも・・・・・・」
ミラの言葉に、アルスが振り返る。アルスは丘の裏側から南へ回り込み、押し合いへし合いする前線へ向かう準備をしていた。
「いや、ここが戦の正念場だ。僕の予想以上にエレーナの突破力のほうが上だった。僕自身が決着をつけたいんだ。みんな、力を貸してくれ」
サシャが明るく応じる。
「もっちろんです♪ねえ、エミールくん!」
エミールは少し戸惑いながらも頷く。
「はい、アルスさま」
シャルが冷静に尋ねる。
「具体的にはどうされるのですか?」
「このまま放っておけば、エレーナは北と南から兵を集めて増強しようとするはず。北も南も膠着状態だ。そうなればなし崩し的に丘の上は不利になる。だから、そこに楔を打つ」
ミラが不安げに呟く。
「じゃが、それも西からの増援が無ければ・・・・・・の話じゃ」
「もう少し膠着状態が続く予定だったんだけどね。小山の時といい、エレーナ師団長の戦場の見極めは鋭いよ。だけど、こっちだって策は打ってる。ミラ、シャル、アイネ。魔素兵3000と王家の旗は残しておく。エレーナには『王はまだ本陣にいる』と思わせるんだ。そのうえで、エレーナが拠点を拡げないように圧力を掛けつつ中央の防衛を頼むよ」
ミラたちが頷き、アルスはさらに続ける。
「サシャ、エミール、ガストンは僕と一緒に南を突破して楔を打ちに行く。エレーナの退路を断つ」
「はっ」
「はい」
「任せて♪」
それぞれ三者三様の返事をする。こうしてアルスは強化魔素兵2000とガストン隊を引き連れて東側へと迂回しながら、一気に丘の南側へと突撃を開始した。アルスは馬に乗って先頭に立つ。膨大なオーラが身体から漏れ、赤い刀身が微かに震え始めた。やがて、ファニキア軍と騎士団の前線にアルス隊が突っ込む。
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