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最弱国の魔素無し第四王子戦記(無限の魔素と知略で最強部隊を率いて新王国樹立へ)  作者: たぬころまんじゅう
第五章

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囲師必闕

「貴様・・・・・・何者だ!」


 シャルは静かに答える。


「ただの執事です」


 リュドミラは剣を構え、突進する。剣の連撃がシャルを襲う。袈裟斬り、横薙ぎ、突き。だが、シャルはすべてを予測したように躱し、カウンターを入れた。剣が閃き、リュドミラの肩を斬る。血が噴き出し、彼女の動きが鈍る。シャルはさらに剣を振るい、オーラを爆発させる。どす黒い波動がリュドミラを包み、彼女の体を粒子化するように削る。リュドミラは最後の力を振り絞り、剣を振り下ろすが、シャルはそれを剣で受け止め、押し返す。剣圧が彼女を吹き飛ばし、地面に叩きつける。


「終わりです」


 シャルは剣を一閃。リュドミラの首が飛ぶ。血が弧を描き、彼女の体が崩れ落ちた。シャルは剣を収め、血を払う。執事服は返り血で染まっていたが、彼の表情は変わらず冷静。美青年の顔に、戦場の悪魔のような威圧感が宿る。周囲の騎士団兵は恐怖に凍りつき、逃げ散った。シャルはそれを見て小さくため息をつき、呟いた。


「これで私の役目は終わりですかね・・・・・・」



 そのとき、丘の前線にひとりの女兵士が立った。遠目でもわかるほど巨大な弓を構え、これまた槍ほどもある巨大な矢をつがえる。矢の先には火がメラメラと燃えていた。誓いの騎士団の兵士たちがこれに気付いて矢を射かけるがファニキアの盾兵が守り、女兵士は見向きもしない。


「サシャさま、お願いします!」


「はいね!今回ばっかりは、私、徹底的に怒ってるんだから・・・・・・。サシャさまの怖さ、みせちゃうよ♪」


 サシャはそう呟くと、体内で魔素を練り始める。練られた魔素が身体の隅々まで行き渡る。やがて、身体強化したサシャは、ぐいっと巨大な弦を引き始める。


 ギ、ギ、ギ、ギ、ギ・・・・・・という不気味な音を立てながら、弓が限界までしなった。いつもは直線的なサシャの射線だが、角度を上げる。弦から指を離すと、ドンッ!!という重い発射音を残して天高く火矢が舞い上がった。


 そのままぐんぐんと飛距離を伸ばしながら、誓いの騎士団の頭上を飛び越え、川の手前に突き刺さる。すると、突き刺さった火矢の底から青緑色の炎が勢いよく燃え上がり始めた。誓いの騎士団が渡ってきた北の渡河ポイントが潰されたのだった。炎は瞬く間に広がり、浅瀬を焼き、渡河を不可能にする。



 戦場は、血と煙の渦巻く地獄絵図と化していた。リュドミラの首が転がった瞬間、誓いの騎士団の左翼は一気に崩壊の連鎖反応を起こした。将を失い、しかも北の渡河ポイントがサシャの火矢によって青緑色の炎に包まれ、退路を断たれてしまう。北に配置された部隊は、混乱の極みに陥った。兵士たちの叫び声が混じり合い、陣形は霧散するように崩れていく。盾を構えていた者たちは、互いにぶつかり合い、槍を落とし、恐怖に駆られて無秩序に動き始めた。


「ヴィーゴ!敵は混乱してる、今のうちに徹底的に叩くぞ!」


 シャルの麾下に一時的に入った部隊長アラン・リューセックが、剣を振り上げて叫んだ。彼の部隊は歩兵主体で、槍の穂先を揃えて突進していく。


「おまえに言われなくてもわかってる!執事風情に、手柄全部持ってかれてたまるかってんだ!」


 ヴィーゴ・ネスの斧隊は、北側から騎士団の左翼に雪崩れ込み、アランの槍隊はさらにその横から挟撃。混乱した騎士団兵は、盾を構えきれず、斧の刃に首を刎ねられ、槍に胸を貫かれる。血が噴き出し、土が泥状に変わる。将リュドミラを失った騎士団左翼は、ふたりの攻撃を支えきれず完全に崩壊した。


 兵士たちは叫びながら逃げ惑い、燃えている川を無理矢理渡ろうとして火だるまになる者もいた。青緑色の炎が肉を焼き、悲鳴が空を裂く。川に飛び込んで逃げようとする者も少数いたが、水深が深く、鎧の重さで溺死する者も続出。多くは、南の渡河できるポイントに向けて殺到した。


 まるで洪水のように、騎士団の残党が南へ南へと流れていく。その様子を丘の上から眺めていたアルスに、ミラが問いかけた。彼女の長い髪が風に揺れる。


「アルスよ、なぜ南の渡河ポイントだけ残したんじゃ?」


 アルスは戦況を盤面のように見下ろしながら、フランツのようないたずらっぽい笑顔を浮かべた。


「レーヘでの包囲戦、覚えてるかな?」


 ミラはそう言われて記憶のページを手繰った。アルスのした包囲戦で、もっとも華々しい戦い。それは、ラヴェルーニュの戦いだろう。川と丘の地形を利用して倍の敵を包囲殲滅してしまったのだ。この時点で、アルスが何を言いたいのかを悟ったミラだったが、頷きつつアルスの言葉を待った。


囲師必闕いしひっけつという言葉がある。四方をすべて囲って逃げ道を断てば死兵になって向かってくる。そうすれば損害は大きくなるから、ひとつだけ逃げ道を残せって意味なんだけど・・・・・・。今回はもうひとつ意味があるんだ」


「どんな意味じゃ?」


「この戦い、相手の兵士を倒すのは手段であって、目的じゃない。目的はあくまで退かせることなんだ。それなら、一番早いのは――」


「敵の師団長を討つこと、じゃな?」


 アルスはミラの言葉に首肯した。


いつも拙書を読んで頂きありがとうございます。


☆、ブックマークして頂けたら喜びます。


今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。

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