ガルダの死・・・・・・!?
「・・・・・・っ!」
体勢が崩れたガルダは、足を滑らせて転がり落ちた。血が噴き出し、ガルダの体が斜面を転がり、岩にぶつかって止まる。エミールは絶叫した。
「ガルダーーーーー!!」
エミールは、頂上の岩の上に立ち、背中の矢筒に手を伸ばす――その手は虚しく空を切った。無い!?少し首を傾けて確認するも矢はすでに射尽くしていた。弓を握った手が微かに震える。ナタリアの剣が迫って来る。心臓の鼓動が耳元で鳴り響き、息が詰まった。
――死ぬのか。弓部隊の残存兵たちが剣を構えて後ずさる姿が、横目に見えた。誰もが絶望に顔を歪め、弓を捨てて剣を握る手が震えている。エミール自身も弓を捨て、使い慣れない短剣を抜いたが、指先が冷たく、力が入らない。頭の中が白く染まり、過去の戦場がフラッシュバックする。アルル城の城壁、ギュンターの背中、ジャンの笑い声・・・・・・。あの時も、苦戦していた。でも、あの時は仲間がいた。パトスがいた。ジュリがいた。今は・・・・・・違う。
(ガルダ・・・・・・サンドル・・・・・・みんな・・・・・・)
ナタリアの剣が弓隊の兵の頭を斬り飛ばす。頂上が血に染まり、岩肌が赤黒く陽光を照り返した。エミールの視界が、涙でぼやける。――ごめん、ガルダ。僕の矢が、もっと届いていれば。もっと早く、もっと正確に・・・・・・。心の中で叫ぶ。
(まだ・・・・・・終われない。ファニキアのために・・・・・・アルスさまのために・・・・・・!)
そのとき、地響きのような馬蹄の音が東側から轟いた。エミールの瞳が大きく見開く。音が近づくにつれ、土煙が上がり、ファニキアの旗が風に翻る。ジュリが本隊を引き連れて救援に駆け付けたのだ。エミールの胸に、熱いものが込み上げる。
――来た・・・・・・!来てくれた・・・・・・!ジュリは馬を駆りながら叫ぶ。
「遅くなった!耐えろ、エミール!」
馬蹄の地響きがナタリアの耳に届き、彼女の表情がわずかに強張る。ジュリの騎馬隊は山の途中まで騎乗しながらナタリアの部隊を蹴散らし始めた。馬の体当たりが敵の歩兵を吹き飛ばし、ジュリの剣が弧を描いて首を刎ねる。血が噴き出し、悲鳴が上がり、ナタリア率いる3000の兵は次々にやられていく。馬の蹄が敵の体を踏み砕き、槍が胸を貫く。隊列が崩壊し、統率が取れなくなる。山の斜面は急だが、ジュリの隊は勢いを活かし、敵の側面を突き崩す。エミールの心臓が激しく鳴る。涙が頰を伝い、視界が揺れる。
――生きてる。まだ、生きてる・・・・・・!それなら、僕に出来ることを・・・・・・やるだけだ!エミールは走り出すと、手近に刺さっていた矢を拾い集めながら距離を取った。
ジュリが馬を止め、飛び降りて剣を構える。部下たちも次々と馬を捨て、斜面を駆け上がる。剣がナタリアの兵を切り裂き、血の霧が広がる。ナタリアは舌打ちをし、剣を振るって迎え撃つが、ジュリの剣が彼女の部下を凄まじい速さで次々と倒す。ジュリ隊がナタリア隊を追い詰め、斜面の頂上近くで激突。血が斜面を流れ、岩が滑り落ちる音が混じった。エミールも拾い集めた矢をナタリア目掛けて射る、射る、射る!
「ちっ、あと少しというところで・・・!」
ジュリはそのまま驚異的な速度でナタリアの兵を蹴散らしながら斜面を駆け上がり、ナタリアに斬りかかった。
ギィィィィィィィィィィィィィィィィン!!
火花が散り、金属と金属のつんざくような音が周囲をこだまする。ジュリはオーラを爆発させるように剣撃に乗せる。一撃一撃が重い。エレーナとは全く違う剣筋と立ち回り。ナタリアはジュリの剣撃を受けた瞬間、剣を支える腕が痺れるような衝撃を受けた。エレーナの剣裁きは軽く、風が吹くように斬り刻むような太刀筋だが、ジュリはまるで暴風のようだ。
「良い動きだな、敵じゃなきゃスカウトしたいところだ」
「フザけたことを・・・!」
剣速で翻弄しようとするナタリアに対して、ジュリはさらに剣圧を高める。
(この速度を保ったまま、この剣圧・・・・・・!!奴の剣を受けるたびにこっちの神経が削られる。さらに、この異形の姿。ファニキアはいったいどんな化け物を飼い慣らしてる!?)
ナタリアは、剣を交えながら魔素を身体のなかで循環させつつオーラを高める。溢れ出たオーラを剣先に集束。爆発させた。
「玉閃!」
眩い光が剣先から放出され、圧縮された微細な粒子が押し出されると、斬撃波となって弾き出される。ジュリは、その光に即座に反応した。
「はああああああっ!!」
一瞬で爆発的に高められたオーラが、赤黒いうねりとなって一気に剣先に爆縮した。逆袈裟にナタリアの放った技に合わせて斬撃波を放つ。ふたつの圧縮された高密度のオーラが正面からぶつかった瞬間、爆風と轟音が山頂の空間を吹き飛ばした。ふたりの剣士を中心に、足元の岩が削れ飛び、周囲の兵士も吹き飛んで斜面を転がり落ちていく。正対するふたつの力のベクトルは、激しくぶつかり合い相殺するかに見えた。
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