最速の凶刃
この戦いの構図を、かつてギュンターやジャンと互角に戦ったサンドルが理解するのに、僅か数秒とかからなかった。迷うことなく一騎打ちに割って入る。
「ガルダ殿!」
サンドルはガルダの背後から声を掛けた。ガルダは、振り向きもしない。恐らくそんな余裕などないだろう。サンドルは構わず続けた。
「裏手から敵の新手が登って来てます。このままではエミール殿がやられます」
そこまでサンドルが言うと、ガルダの身体が僅かに反応したようだった。
「ガルダ殿はここから手勢を連れてエミール殿救出に向かってください!」
そこまで言うと、ガルダは初めて声に出して反応した。
「誰が目の前の敵を止めるつもりですかな!?」
「私が倒します!」
サンドルは即答した。それにエレーナが反応する。
「……あぁ!? 誰が私を倒すって!?こいつが将なんだろ?今、こいつの手足を斬り飛ばしてハムを作ってるんだよ。おまえはもうちょっと待ってな」
「ガルダ殿!!早くしないとエミール殿が・・・・・・!」
サンドルが再び声を掛けるとガルダは迷っていたようだったが、頷いた。
「わかった、サンドル殿。ここは任せましたぞ!」
ガルダが言うや否や、エレーナが叫びながら斬り込む。
「無視してんじゃねぇよ!!」
ギィィィィィィィィィィィィィィィィン!!
だが、そのエレーナの剣をサンドルは受け止めた。つんざくような金属音が山中を響き渡る。一瞬、エレーナの目が大きく開いた。サンドルがエレーナの剣撃を受け止めたのを見たガルダは、ジュールに声を掛けてすぐに予備隊を率いて裏手に回った。そこから今度は、エレーナとサンドルとの凄まじい打ち合いが始まる。エレーナは、サンドルの実力に驚きを隠しきれなかった。適当な雑魚だと思っていたファニキア軍のなかに、彼女と打ち合える人材がまだいることに・・・・・・。
剣が交錯するたび、衝撃波が頂上を震わせ、周囲の兵が吹き飛ばされる。サンドルの剣は正確で、エレーナの速さを予測して受け止める。エレーナの剣が閃き、斬撃波を放つが、サンドルはオーラを纏わせた剣で弾き返す。火花が散り、血の臭いが濃くなる。
「てめぇごときが私を止められると思うなよ?」
エレーナの笑みが歪み、剣速はさらに増した。
部隊を連れて走ったガルダは、エミールのところに行って援護を始める。予備隊を率い、裏手の斜面を駆け下り、エミールの弓部隊が守る北側隘路へ急ぐ。その頃、ナタリアの三隊攻撃が頂上に迫り、エミールの弓が限界を迎えていた。矢の雨が薄くなり、ナタリアの歩兵が岩陰から飛び出してくる。エミールは最後の矢を放ち、兵を射抜くが、敵の槍が迫っていた。山頂に到達した兵たちがエミールの姿を捉え、殺到する。剣の間合いにのところにガルダが登場した。戦斧を振り上げ、ナタリアの先頭兵を薙ぎ払う。血飛沫が上がり、敵の列が乱れる。
「ガルダ!」
エミールの声が驚きと安堵に満ちる。
「危なかったですな!」
「すまない、北側は既に抜けられてしまった・・・・・・」
「みたいですな」
ガルダは素早く予備隊を展開し、ナタリア部隊と激しい打ち合いになる。先陣を切っていたナタリアとも、程なくして激しい打ち合いとなった。先ほどの戦いで消耗していたガルダは、斧を振るうたび息が荒く、オーラの輝きが弱い。ナタリアの剣が風を切り、ガルダの斧を弾く。互いのオーラが衝突し、岩が砕ける。
(この騎士の剣速もとんでもなく速いっ・・・・・・!)
数合斬り結ぶなかで、ガルダは先ほどエレーナと戦った、嫌な感覚を覚えた。だが、目の前の騎士の剣速も速いが、剣筋は先ほどの騎士と比べれば素直といっていい。これならなんとか止められるか・・・・・・?ガルダは魔素を体内で高めながら、隙をうかがう。数十合打ち合った末の一撃で、ガルダの戦斧は彼女の盾上部を斬り裂いた。
反射的に繰り出したナタリアの反撃を戦斧の柄で弾き、斧を反転。ガルダの戦斧がナタリアの肩を掠め、血が弧を描く。だが、畳み込むためさらに一歩踏み込んだガルダの足元がぐらついた。エレーナによって受けたダメージが、ほんの僅かガルダの動きを鈍らせる。その僅かな隙をナタリアは見逃さなかった。エレーナとも互角に打ち合うナタリアの剣先が、ガルダの腹に突き刺さった。
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