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最弱国の魔素無し第四王子戦記(無限の魔素と知略で最強部隊を率いて新王国樹立へ)  作者: たぬころまんじゅう
第五章

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聖騎将ナタリアの苦労

「違うだろぉぉがぁあああ!! 陣を落とせなかったんだから死ねよ!!」


 エレーナの追加の一撃が飛ぶ。斬撃波が空気を切り裂き、周囲の空気が歪む。ナタリアはオーラを爆発させて受け止め、剣を振るって波を散らす。火花が散り、地面が大きく抉れる。


「申し訳ございません。ですが、もう少しお待ちいただければ――」


 ナタリアはエレーナの一撃を受けつつ答えた。剣がぶつかり、金属の絶叫が響く。


「待ってられねぇから、来たんだろうがああ!!」


 エレーナの剣速がさらに増すが、ナタリアは対処しながら冷静に答えた。互いのオーラが衝突し、その余波で爆風が発生、大地が震える。周囲の兵は、思わず後退りした。


「申し訳ございません、それならエレーナさまもご参加頂けましたら――」


 そこまでナタリアが話すと、エレーナの剣はピタッと止まった。彼女の瞳がわずかに細まり、口元が歪む。


「当たり前だ、そのために来たっつったんだろうが?」


「はっ!」


 実はエレーナとナタリアのこのやり取りは今回が初めてではない。以前に何度もしてきた。それ以前は、エレーナが師団長に就いてからというもの、ずっと聖騎将の座は不在だった。エレーナがキレるたびに聖騎将が殺されてしまうのだ。副将の存在である聖騎将は、常に師団長と近い。だからこそ、師団長の傍で最も近い聖騎将は補佐としての役割も求められる。時に諫める役も担う。


 だが、師団長であるエレーナの武を止められる聖騎将など存在しなかった。ナタリアが現れるまでは。エレーナに抗し得る彼女の強さと冷静さが、エレーナの狂気をわずかに抑え、師団を維持していた。エレーナは剣を収め、馬に跨がる。ナタリアは静かに従い、作戦の説明を始めた。


 一通りナタリアから作戦を聞いたエレーナは、剣を腰に差したまま、馬上で腕を組んだ。彼女の緑の瞳が、朝陽に照らされた小山を睨みつける。頂上からちらりと見える弓の影が、彼女の苛立ちを煽っていた。


「なら、私は正面から攻める。リュドミラ、てめぇも来い」


 エレーナは口の端を少し下に引き下げながら、食い入るように山の斜面を見ていた。リュドミラは血に染まった顔を上げ、即座に頷く。


「エレーナさま、正面からの突破はこれまで5回とも失敗してます」


 ナタリアの言葉が静かに割り込む。彼女としては、師団長が正面から突破するのを憂慮する想いを込めた進言だったが、エレーナには全く伝わらなかった。エレーナの視線がナタリアに突き刺さり、口元が引きつる。


「だから、私が直接行ってやろうっつってんだろうが!!」


 エレーナの声が爆発し、周囲の空気が震えた。オーラが一瞬漏れ出し、近くの兵士たちが息を飲む。ナタリアはわずかに頭を下げた。


「はっ!失礼しました」


 エレーナはフンと鼻を鳴らし、馬を前に進めた。彼女の赤い髪が風に舞い、笑みが浮かぶ。


「ふふ、目にもの見せてあげるわよ」


 こうして、作戦が開始された。ナタリアは作戦通り、小山の北側から騎兵3000を率いて回り込む。平原に出た朝霧に紛れて、急いで隘路へと向かう。一方、正面からはエレーナとリュドミラが挑む。エレーナは馬をゆっくり進め、リュドミラに先頭を任せた。様子見だ。


 リュドミラの聖盾隊が再び斜面を登り始め、盾を重ねて矢を防ぐ。だが、アングレ布陣の弓が容赦なく降り注ぎ、盾の隙間を突く。矢の風切り音が連続し、兵の悲鳴が上がる。戦いは次第に激しいものとなった。リュドミラの盾壁が頂上まであと半分。エミールの弓隊が迫る騎士団に容赦ない十字射撃をすると、登っている兵たちは、両側からの集中射撃に足を滑らせ滑落。後続の兵も巻き込み連鎖するというありさまだった。


 血が斜面を流れ、岩が赤く染まる。空気が重く張り詰め、息遣いが聞こえるほどの緊張感。リュドミラはオーラを硬化させて前面に押し出し、盾を横に構えながら登る。なんとか山頂付近まで登りかけるが、ガルダがそれを許さなかった。ガルダの並外れた膂力に加え、オーラを込めた戦斧による一撃は、リュドミラの想定を遥かに超える。なんとか反撃をしようにも、両翼から飛んでくる矢の対応をするのに防戦一方となってしまう。一瞬、横切る矢が視界を遮った時に、ガルダの衝撃波が襲い掛かった。辛うじて盾で受けるものの、盾ごと弾き飛ばされてしまう。運よく下にいた兵士たちに受け止められたが、勢いは完全に止まってしまっていた。




 斜面は死体の山と化し、足場が滑る。エレーナは馬上でその光景を観察していた。彼女の瞳が、陣の弱いポイントを直感で見抜く。頂上のV字配置のわずかな隙――弓隊のローテーションが一瞬遅れる左翼の凹部。射線が途切れる斜面の窪地。彼女の口元が歪み、狂気の笑みが広がる。

いつも拙書を読んで頂きありがとうございます。


☆、ブックマークして頂けたら喜びます。


今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。

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