ガルダ出陣2
ガルダ隊3000は山の上から駆け下り突撃。ガルダは持ち前の破壊力で誓いの騎士団の後方軍を散々に蹴散らし、大打撃を与えることに成功した。戦斧を振り上げ、騎士団の歩兵列を切り裂き、盾を砕く。完全な奇襲が決まると、誓いの騎士団の脆弱さが姿を現す。士気が低下すると統率は取れなくなり、兵士たちは散り散りバラバラに逃げ始めた。パニックが広がり、命令が通らず、槍を捨てて逃げる者も出る。
ナタリアが隊を率いて後方に到着したとき、馬上でその光景を見て、舌打ちした。エレーナがこの自軍の情けない姿を見て発狂すれば、敵を殺す前に味方を殺すことに夢中になりかねない。ふと、そんな気がしていた。この光景を見てやはりそのままエレーナに、前方に当たってもらい、自分が来て良かったとほっと胸を撫で下ろした。
彼女は逃げ出す部下を無視して、そのままガルダ部隊に当たる。馬を駆けさせ、槍を構え、ガルダの戦斧を迎え撃つ。歩兵を中心とするガルダ部隊が今度は蹴散らされる番だった。ナタリアの槍が風を切り、ガルダの部下を次々と貫く。騎兵の突進がファニキアの歩兵列を崩し、血が草原を染める。
「ガルダさま、敵の騎馬隊です!」
ガルダは戦斧の手を一瞬止めて目を細めると、草原の向こうに馬蹄の地響きと戦馬の一団が、鈍い銀色の光を反射しながら迫って来ていた。
「よし、逃げますぞお!!」
ガルダは騎馬兵が出てくると、反撃は一切せず一目散に山に向かって全力で走った。
「はあ・・・?いっそ潔いほどの逃げっぷりだな」
ナタリアは呆気に取られたが、追撃を掛ける。
「逃がすな!」
後続部隊を蹴散らす。ガルダ隊は被害を出しつつも、手前の小山に近づくと矢が降って来た。後方に弓矢部隊が控えていたのだ。矢が弧を描いて騎兵の頭上に落ち、馬が倒れ、兵が転がる。
「怯むな!」
ナタリアは構わず追撃したが、弓部隊は山の中腹にも配置されており、今度は角度が付いた状態で矢がそこら中から降って来る。今度は騎馬兵がバタバタと倒れることになった。馬のいななきと悲鳴が混じり、ナタリアはちっと舌打ちをした。そこで一旦距離を取る。
いつの間にかファニキア軍は、後方の小山に陣地を築いてしまっていた。
ナタリアは馬を止めて、眉を寄せた。小山の斜面は急峻で、頂上近くに弓兵の影が見え隠れする。ガルダの部隊が山頂へ退却し、陣を固めたのは明らかだった。騎兵の追撃は矢の雨に阻まれ、犠牲が増える一方。彼女は部下に命じ、一旦後退を指示した。平原の風が血の臭いを運び、戦況は一時的に膠着する。
「リュドミラを呼べ」
ナタリアは後方で守りを固めてる、聖盾隊長リュドミラを呼び出していた。
一方、山頂に辿り着いたガルダは、息を荒げながら戦斧を肩に担いだ。頂上は岩と木々が点在する地形で、視界が広く開け、平原全体を見渡せた。そこで、弓を持った青年が大きく手を振っていた。
「ガルダ!」
青年の声が響き、ガルダは顔を上げた。エミールだ。弓部隊の指揮を任された、彼の姿がそこにあった。
「エミール殿!」
ガルダは急な斜面を登り切り、エミールの元へ駆け寄った。エミールは笑顔を見せて、弓を背負い直す。
「間に合ってよかった。ゴタゴタしちゃってて、布陣に時間がかかったんだ」
「いやいや、感謝しますぞ。助けるつもりが、また助けられてしまいましたな・・・・・・」
ガルダは頭を掻きながら戦斧の先を地面に降ろした。汗が額を伝い、呼吸を整える。エミールは目を細め、平原の敵影を睨む。
「でも、僕とガルダが揃ったからね。久しぶりにあれやるよ!」
エミールがニカッと笑って歯を見せると、ガルダも破顔した。
「ああ、例のやつですかな!?」
ふたりは視線を交わし、互いに頷く。ガルダとエミールが話してる横で、ガルダ麾下の部隊長ジュールは、サンドルに声を掛けていた。ジュールは陽気な口調で、無口なサンドルに親しげに話しかける。ふたりはリュシアン公爵の元で、アルル城で共に戦った同期だ。ジュールは依然として部隊長止まりだったが、サンドルはエミールの副将扱いになっていた。
「よお、アルル城で共に戦った以来だな!」
ジュールが肩を叩くと、サンドルは静かに応じる。
「ジュールか」
ジュールは笑いながら続けた。
「上手く出世したもんだな。おまえ、副将だろ? 俺なんかまだ部隊長のままだぁな」
サンドルは表情を変えず、淡々と返す。
「出世したところで、国が存続してればの話だがな」
ジュールは一瞬言葉を失い、苦笑した。
いつも拙書を読んで頂きありがとうございます。
☆、ブックマークして頂けたら喜びます。
今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。




