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最弱国の魔素無し第四王子戦記(無限の魔素と知略で最強部隊を率いて新王国樹立へ)  作者: たぬころまんじゅう
第五章

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総指揮官ナザルの決断

 パトスが斬撃波を連発し、ギュンターが衝撃波で敵の盾壁を砕く。ファニキア兵たちは吼え声を上げながら押し寄せ、槍の穂先を揃えて突き進む。だが、ナザル軍の防御も巧みだった。盾兵が層を成し、槍兵が隙間から突きを返す。矢の牽制射撃が上空から降り注ぎ、パトスやギュンターの動きをわずかに制限する。ナザル自身も前線に立ち、剣を振るいながら部隊を動かす。


「左翼、盾を重ねろ!右翼は槍を低く構え、足元を狙え!敵のオーラ持ちは私が引き受ける!」


 ナザルの指示は的確で、ファニキアの猛攻を何度も跳ね返す。パトスが斬撃波で盾兵を吹き飛ばしても、すぐに予備の盾兵が補充され、陣形を立て直す。ギュンターの衝撃波が敵を薙ぎ払っても、ナザルが剣でそれを迎撃し、反撃の隙を与えない。両軍の激突は橋の西たもとで続き、血と鉄の臭いが濃くなる。


 ファニキア側は勢いで押し、ナザル側は数に勝る組織力と粘りで抑え込む。どちらも一歩も引かず、しかし徐々に――ナザル軍は後退を始めていた。盾兵の壁が少しずつ後ろへ下がり、槍兵が間合いを取って反撃。矢の雨がファニキアの前進を鈍らせ、オーラ持ちのふたりを牽制する。パトスは苛立ちを隠さず、剣を振り回すが、敵の数が減らない。ギュンターも肩で息をしながら、ナザルの剣を睨む。


「まだ・・・・・・まだここからだ!」


「ここまで来たんだ、引き下がれるか!」


 ファニキアの兵士たちは叫び、ナザル軍の精鋭たちは歯を食いしばる。橋の戦いは、決着がつかないまま、夜の闇の中でさらに深みを増していった。



 ナザルは橋の西たもとで、精鋭部隊を率いながら粘り強く踏み止まっていた。橋の上では、ファニキア軍の猛攻が波のように押し寄せ、パトスとギュンターのオーラが爆発的に教皇軍を薙ぎ払う。だが、ナザルの頭脳は前線だけに留まらず、後方の動向を常に気にかけていた。彼が待っていたのは、二つの報告――南へ追撃に出たカロル将軍の動向と、聖騎将ロスティス、聖盾隊長ステファンからの後方抑えの成果だ。


 カロル、もしくはロスティスやステファンが無事にファニキアの陽動部隊を叩き、戻ってくれば、形勢を一気に逆転できるはずだった。その時、ナザルの後方から馬の蹄音が激しく響き、伝令兵が息を切らして駆け寄ってきた。馬は汗で湯気が立ち、伝令の顔は泥と血にまみれていた。


「急報、急報です!」


 ナザルは剣を構えたまま、振り返る。


「何事です?」


 伝令は馬から飛び降り、膝をついて報告した。


「ステファンさまが負傷され、敵は防衛陣を突破!こちらに迫りつつあります!」


 その言葉が周囲に広がるや否や、ナザル周辺の兵士たちから不安と驚きのどよめきが走った。空気が一瞬、重く淀む。


「ステファン隊長が・・・・・・?」


「あの方が負傷なされるほど後方の敵も強いというのか・・・・・・」


「ロスティス聖騎将はどうしたんだ・・・・・・?」


 第二師団きっての武の持ち主であるロスティスとステファンが、敵の奇襲に屈したという事実は、兵士たちの士気を急速に削いでいく。ロスティスが抜かれたのか・・・・・・。ナザルは心の中で舌打ちした。この報は、誤算だった。伝令の声が大きすぎたせいか、周囲の兵の表情が明らかに変わっていた。不安に満ち、視線が揺らぐ。


(いらぬ情報を与えてしまった・・・・・・!)


 ナザルは即座に悟った。この時点で、誤算が生じていたのだ。もちろん、ナザルはこの時、カロルがすでに討ち死にしていることを知らない。南へ放った斥候からの情報も、カロルについての新しいものはなく、ただ「ファニキアの陽動部隊と交戦中」との古い報告だけだった。カロルが戻ってくれば、一気に形勢をひっくり返す可能性を残している・・・・・・と。


 だが、ロスティスが負傷した今、確証のない可能性に賭けることをナザルは良しとしなかった。それに、このままではいずれ前後から挟撃される恐れが高い。そうなれば、退却ではなく敗走になることは確実だった。


 これは、ナザルの冷静な判断の成せる業である。彼は深く息を吐き、部下に命じた。戦略的優位、それも圧倒的な優位を保っていたはずが、カロルは、まんまと敵の戦略に翻弄された。現在、ナザルをもってしても相手との戦術能力は恐らく互角。ここから隙を突いてひっくり返すのは至難の業だ。それほどまでに、フランツとアジルの想定を超えた奇襲は、徐々にナザルの思考を引っ張っていた。


「全軍、退却を準備せよ。橋頭堡を維持しつつ、秩序を崩さず後退。本陣へ集結し、ハイデへの撤退路を確保する」


 兵士たちは驚きの表情を浮かべたが、ナザルの声は揺るがなかった。戦場で生き残るためには、時には引く勇気が必要だ。


 一方、後方の戦場では、事態がさらに複雑に絡み合っていた。実は、ロスティスが糧食庫の火を対処するために騎兵を走らせていた時、フランツの3000とすれ違っていたのだ。混乱で右往左往する第二師団の兵士たちと、暗闇で見通しが悪かったのが災いした。ロスティスは炎の向こうに影を見たが、味方と勘違いし、素通りさせてしまった。フランツ隊は補給庫を燃やした後、そのまま東へ進路を取り、アジル隊との合流を図っていた。


いつも拙書を読んで頂きありがとうございます。


☆、ブックマークして頂けたら喜びます。


今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。

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