将来の夢の難しさ
SIDE ナズナ
私、ナズナは能力者だ。能力者は仕事に困らない。どんな能力でもある程度使い道はある。使えなくても研究のサンプルとなりお金が貰える。だが、いってしまえばこれは能力者となってしまったら、その時点で自分の人生が決まってしまうようなものである。
実際に能力者になったことで、仕事を替えざる負えなくなった人もいる。私もその一人である…いや、微妙に違う。内定が決まっていたはずだったのに…能力者になって違うところに就職が決まってしまったのである。
私のなりたかった職業は研究者。特に能力についての研究に小さい頃から興味があり、難しい大学に受かり、せっかくいいところの研究機関の内定がきまったところだった。能力に開花したのは…。
能力がショボければ…仕事を替えず済んだにむしろ自分からサンプルが取れるしラッキーぐらいに考えていたが、私の能力は『回復』だった。それから内定は突然になくなり、大きい病院の内定が決まった。
『回復』の能力は珍しい能力であり、私の能力を使えば軽傷ぐらいの傷なら一瞬で治り、切断された部位でも時間がかかるが治療可能という凄く、『回復』の能力の中でもかなり高い能力だった。
しかも、私のお父さんは医者であり、大学に行く条件が、医者の勉強をすることだったため、研究機関で働くのが夢な私は必至に勉強し、医師の資格はないものも知識では同じくらいに持っている状態だった。
お父さんの仕事をみていた医者がすごい仕事なのも知っている。私の力で多くの人が救えるのも知っている。給料は研究者で貰う予定の倍以上であるらしいが、問題はそこじゃない…私は家を抜け出し、社会に抗うことにした。
成人した大人がやることではないが、私は研究者として夢を叶えたかった。正直、ただの我儘なのはわかっていたし、成人した娘が駄々をこねてどうにかなるものではないとわかっていた。医療関係はお父さんのコネがあるが、研究関係は学生時代の関係くらいしかない。そもそも研究には設備などに色々とお金がいる。コネもない金もないそれどころか今日泊まるところもないとないない尽くしのスタートである。もっと計画を立てればよかったと後悔したが、家を出た手前、今更戻りづらい現状だった。取り合えず友達の家に泊まらせてもらうことにした。
数か月後、能力者は就職に困らないとは本当だった。闇医者として色んな人の治療などをして、そのお金で研究設備などを買って研究するという忙しい日々を送っている。
数か月前までノーマルだった私にはわからない感覚だったが、能力者の人がえばっていたわけが今ならわかる。
正直、どうしてこうなったかわからないが、どうも私が回復の能力者であるという情報が色んな人に知られていて、そこからお金につられて治療するうちに気がついたら闇医者になっていた。
今の診療所兼研究所兼住居も報酬として貰ったものだ。
仕事の内容は、秘密さえ守れば報酬は高いし、こっそりと能力者の血液などのサンプルが取れるし、好きな時間に休めるので自由な時間はたくさんある。割と天職だったかもしれない。
そんなある日のことである。河原で死にそうになっている少年を助けたのは…。
少年の傷は、まるで鋭利な刃物で切られたようなもので出血もひどかった。
このままでは出血で死ぬであろう…もちろん私がいなければの話だが!
正直、この手の傷を持っているのは厄介ごとのにおいがするが、ほっとくのも目覚めが悪いので助けることにした。
とはいえ、かなりの重症だ。私の能力でも数日は安静で、完治には数週間はかかると思った。
その後のことは、少年は動けるようになったら勝手にどこかいくだろう。
取り合えず、応急処置をし、能力で回復するも一日では重症を治せない。痛々しい傷口が印象に残った。
次の日、バイタルは安定しているが少年はまだ意識を回復させない。
だが、問題はそこじゃない。少年の昨日みた傷口がほぼ完治しかけている。私の能力込みでも傷口が綺麗に消えるには数週間はかかる傷である。今もなお傷口で再生が始まっている。まるで私が能力を使っているかのようだ。
最初はこの少年は自己再生の能力を持っているものだと思っていたが、少年の体をみるうちおかしなことに気付く。
少年の体には、割と筋肉質であった。そもそも筋肉とは筋肉を破壊し修復することで筋肉は成長していく。
自己再生の能力者は勝手に傷を再生させるので、筋肉も破壊して修復する前に再生するため、なかなか筋肉が成長しにくいのである。そのせいで、この少年みたいに引き締まった肉体をしているのをみたことない。
死にかけて能力が目覚めた可能性はあるが、この少年…実は私はどこかでみた覚えがある。私の記憶があることから、どこかの資料に出ていたのだろう。ということは、この少年は前から能力者であり、その為自己再生とは別の能力者の可能性が高いということに結びつく。
この少年…いったい何者なのだろう…。




