表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
52/87

ジオの夢 四十五話 後始末とシレン

『何を勝手な事をしている?帰れと言ったはずだ・・・』と、声がする。

オレは適当な木を振っている・・・これで良いか・・・知った気配が二つ・・・

オレはゆっくりと振り返る。

・・・シレン殿とアイリーン殿か・・・

オレを見たアイリーン殿が寄って来ると、抱いて下さる。

『坊、また会えて嬉しいぞ。この度も世話になった。トレドの者達には何も無く、済まなかった。』と言われる。

『姉様もお元気そうで何よりで御座います。』と。

姉様が離して下さらない・・・

『シレン殿、お久しぶりでございます。』と抱かれたまま挨拶をする。

『ご当主殿もお元気そうですね。変わらず凛々しい。』と微笑まれる。


アイリーン様が離して下される。

と、ワーレン殿が、アイリーン様とシレン殿に会釈をされ、オレに向き直り、話し始める。

『我々は引き上げます。後処理もごさいますれば、公にも報告をせねばなりませぬ。』

『この度は、ご協力頂き感謝に絶えませぬ。後日、改めて御礼に参ります。その時にお二方には何かお礼の品などお持ち致しましょう。何が宜しいかご連絡頂ければ手配致しておきます。』と。


『レイ様。何でも宜しいか?』と、シュバルツバルト殿が身を乗り出される。

・・・はて、シュバルツバルト殿とはこのような方であったか・・・

『勿論です。但し、私に出来る事であればですが。』と微笑む。

『では、来光をお願い出来ませぬか?』

『おお、来光をお気に入りですか。ではシュバルツバルト殿にはそれを用意致しましょう。しかし、ギル兄でも手配出来ると思いますが・・・』

『いえ、来光に限っては・・・おそらく、私の手元には来ません。ですから、内緒で頼みたいのです。』と、嬉しげに言われる。

『では私も同じで。』とワ―レン殿も言われる。

・・・なる程、酒飲みとは何処の御仁も酒に関しては同じ考え方のようだ・・・

二人はその後、嬉しそうに、テントが畳まれ、出発するばかりの陣に戻ると、兵を引き連れ戻っていかれた。


『兄者、俺も戻る。少年、打ち合いは今度にする。アイリーン様の前で、少年を打つのは気が引ける。』と言って弟殿も意気揚々と兵を返され、帰ってて行かれる。

『馬鹿者が・・・』とシレン殿が苦々しい。

『お二人はどうされます?』とオレ。

『坊、中々にこのような機会は無いから、是非ゴドロノフを拝見したいが。』とアイリーン様が言われる。

『では、ご一緒致しましょう。少々お時間を。』


草原を馬が三頭こちらに向かって駆けてくる。

あの方向には山が連なっている。夏家と我が領地が接している。シュニッツアー殿とユリア様に兵を指揮して頂いた。

姿から誰であるか分かる。相変わらず、真っ赤な髪だ。草原の緑の背景に白い兵装と赤い髪は映える。


『ユリア様、ご苦労さまでした。』と、私は声を掛ける。

『レイ様、ご無事に終了されたようで何よりです。』と言われ、抱いて下さる。

付き添いのメドラー殿、バビアナ殿も抱擁して下さる。

それを、アイリーン様とシレン殿が見られている。

シレン殿は何か有りそうだが・・・


『レイ様。大炎殿がお見えでございました。草原の民が戻られたのを期に、レイ様に宜しくと。流石にレイ殿に抜かりは無いようだと、笑われ、戻っていかれました。』とユリア様。

『大炎殿こそ、隅に置けません。』と笑う。

『ユリア様、ご紹介致しましょう。』とアイリーン様とシレン殿に向き直る。

『こちらは草原の民の指導者アイリーン様、その補佐役シレン殿でございます。』

ユリア様の眉が動くが・・・


『アイリーン様、シレン殿。こちらは我が支族長のユリア様で御座います。』

『これはこれは、強力なライバル殿がおられましたか。』と、アイリーン様が微笑まれる。

『いえ、私などより強力な方がおられますから。』と微笑まれる。

『ユリア様。失礼を。』と言ってシレン殿がユリア様に気を飛ばされる。

『何か?』と、ユリア様がシレン殿に何もかった様に答えられる。


と、不審そうなかおをされていたシレン殿が話を始められる。

『・・・私はシラン様という方に剣の基本教えて頂きました。ユリア様がシラン様にお顔が似ておられます故、ご血縁の方ではないかと考えたのです。しかし、気を拝見するに、あまりにシラン様の気とは掛け離れているご様子。それでつい試す様な事を致しました。申し訳ございません。』


『そうですか・・・で如何でございましたか?シランは祖母の名前ではありますが、私はその様な事を、祖母から聞いた記憶はありませんが。母なら聞いているかもしれません。』

『何と申しますか・・・あっさり通されるとは思いませんでした・・・それ故分かりかねます・・・』と。

『坊、シレンは何をしたのですか?無礼に成らなければ良いが。』と、アイリーン様。


『姉様、大丈夫で御座いますよ。』とオレが笑う。

『ユリア様の腕は私と変わりません。ですから、どの様な気を飛ばされても、受け流されます故、支障は無いと存じます。ご心配なさらずに。』と。

それを聞いて、シレン殿は納得いかれたようだ。更にユリア様に丁寧に謝られている。ユリア様もご機嫌を直され、シレン殿と話されている。

『なら、良いが。あれは少し気位が高い。坊の事でも何かあったようだが・・・』とアイリーン様。

『私も年相応にと気を付けてはいるのですが・・・当主となりますと、そう言う訳にもいかず、ついつい生意気になってしまうのです。恥ずかしい限りです。』

『いや、坊は、今のままで良い。しおらしくなどしてはならん。』と、シレン殿を見ておられるが・・・


事後処理で戦場を回っていた者達も戻りつつある。この世界にあっては勝者が戦場の始末をする習わしであり、助かる者は助け、助からぬ者は送ってやり、遺体はすべてその場に集め焼いて送る。死者の放置はゆるされない。疫病が蔓延せぬようにすべて焼かねばならない。


我らの兵達は四人一組で行動する。それを更に五組集めたものが小隊だ。戦の後には、小隊毎に生死、怪我の具合を確認している。それでも念を入れ、戦場の始末と共に確認する。今回も、我らに大きな被害はないが・・・それでも戦は、辛い・・・


人が死ぬのを諦観している世ではあるが、人の命は何よりも重いと言いながら、人を人と思わない、差別ある世よりましか。

・・・何処の事であろうか・・・


我等は草原のお二人とともに、兵を率い、ゴドロノフに向かう。

これでこちらの仕掛けは終わりだろう・・・しかしながら、まだ大人しくはならないだろう・・・

・・・あれ等は為す事が成功しようが失敗しようが構わないのだ。戦や争いによる混乱が大きければ大きい程良いのだ。だから、事を一つ、上手く収めても終わったと思うな、終焉が何処にあるか見定めねば、うまく収まらぬ・・・それでも・・

と一文が頭浮かぶ・・・面倒なことだ。

馬上で平原を進みながら、うつらうつらしつつ思う。


俺が知っている過去においても、戦は突如として起きる。まるでそれが夜のように繰り返し繰り返しやって来る様にだ。それが一部の人の性なのか・・・不可解なことだ・・・


ゴドロノフにいる。アイリーン殿は女性だ。色々小物が気になるようだ。メドラー殿を案内人に、街のあちらこちらを見て回っている。シレン殿は北の都から来られたシンシア様とユリア様と話をされ、シラン様を偲んでおられ、また、剣の教えを請うている。


シラン様は、若い頃にある方を追って、草原へ行かれていたが、お会いできず、その方が戻られるのを待って、草原に滞在しておられたようだ。その方が戻られるのを待つ間に、シレン殿ど合われたと。シレン殿は草原の剣が合わず上達が遅れていたが、それを、見ておられたシラン殿が手とり足取りコツを教えられた。それで、みるみる腕を上げられた。それを見届けると、その方にお会いするのを諦め、草原を去られた。と、シレン殿が言われたらしい。


オレはお二人に挨拶をして、シュバルツバルト殿、ワーレン殿との約束を果たすため、コンスタンチン家に向かう。アイリーン様とシレン殿お二人は、忙しい身だな、と呆れられ、また会おうと、仰ってくたさった。暫く、滞在するから、良しなにとも言われた。


来光はコンスタンチン家の秘蔵酒だ。ワーレン殿が継承式より持って帰られ、シュバルツバルト殿と飲まれたようだ。以来のお二人のお気に入りとの事。


コンスタンチンの屋敷に入る。案内の方が居られるが、私の顔をご存知なので、一人で通して頂く。アルギラ様は居間に居られるのを確認し声を掛ける。

『アルギラ様、ご無沙汰致しております。』

『レイ殿。レイ殿ではありませぬか・・・よう来られました。これは嬉しい。』と側に来られ抱いて下さる。

『そう言って頂けるとは私も嬉しいです。』


『今日は、如何なる御用でありましょうか?』とアルギラさまが尋ねられる。

『そうそう、先日、イサムとマジドがお世話になっていた傭兵団の隊長殿をお招きし、色々ご指導を頂いておりました。たしか、アラン殿と言われましたね。今では、レイ様の処の総督をなさっておられるとか。しかし、レイ様に拾って頂く時は、知らずに強盗に加担する羽目になり、レイ様に首を刎ねられる寸前だと、アラン様は笑っておられました。』と、コロコロ笑われる。

『あの頃のイサム殿とマジド殿のお顔も虚ろでありました。苦労されていたのでしょう。』と、オレは当時のお二方の顔を思い出す。

・・・オレに仕掛けて来られていたら、首を刎ねていただろうか・・・


アルギラ様に来光の譲渡をお願いすると、気持ちよく分けてくださった。来光は、美味しさが広く伝わるようになり、引き合いが増えたとの事。良い商売になると喜んでおられた。感謝と共に二日滞在し、イサム殿とマジド殿にも様子をお聞きする。

『隊長には、参りました。どこで聞いたのか来光を飲ませろと、押し掛けて来たんです。で、挙げ句の果てに内緒にしていた強盗の事まで話してしまうんです。隊長の所為で強盗に落魄れるところだったのに・・・』

と、嘆かれていた。

両隣の家の方々は静かで有るらしい。コンスタンチン回廊を失った為に両家の行き来も儘ならなくなったのであろう。


アルギラ様に過分な土産も譲って頂いた。ギル兄にも感謝を述べないと・・・



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ