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ジオの夢 幕間二話

PCのデスクトップのフォルダに荒井AMCと書いてある。開いて見る。PDFの書類が並ぶ。税務書類も存在する。会社の書類のようだ。五年前からの書類だ。中を開いて見る。代表取締役は私だ。他に役員も社員も居ない。資産管理と投資が業務内容だ。このマンションも所有している。損益はとんとん・・・にしてあるようだ。税理士もいる。後ほど連絡を取って見よう。会計ソフトも有る。税理士事務所と連動しているようだ。暫く、伝票を眺めている。一月分の伝票はそれ程多くない。この部屋は賃貸か・・・私の給料と相殺されている。家賃は高いものだ。私ならもっと安い所に移るのに・・・。


やはり、何も思い出さない。しかしその割には困る事が無いのは不思議だ。自分の事のみが抜け落ちている。一体何があったのだろうか・・・

と、傍らの紙袋が目に入る。これは札束ではないかと思う程に重かった。中には、白い包装紙で四角く包まれている。

以前、どこかの知事が、献金疑惑の議会証言でバックに五千万の包が入らず、このバックではないはずだ、とか、なぜ入らないのですか、などと、可笑しな質問をされていたのを思い出す。


ゆっくりと、慎重に包を開けていく。白い包装紙の中身は帯封の札が五十。まさしく、五千万だ・・・

ゆっくりと、慎重に、丁寧にもとに戻す。取りあえず、棚にでも仕舞って置こう。


時間は十三時だ。飯でも食べに行こう・・・

と、インターホンが鳴る。誰だ・・・インターホンの画面を見る。若い女性だ・・・制服の類を着用しているようだが・・・一応話を聞くか・・・

『はい、どちら様?』と私。

『ホームクリーナーの者です。清掃に参りました。』と、ほっとした、明るい声がする。

ホームクリーナー・・・会社で支払いがあったな・・・

『今開けます。』


女性の清掃が終わった。その間、部屋を出ている訳にもいかず、応接セットに居たり、ダイニングに居たり、彼女の仕事の様子を眺めながら、うろうろしていた。

清掃にしては長い気がしたが・・・丁寧であり、入念な仕事振りだ。


女性が、許可をもとめ、ダイニングのテーブルに座る。書類を出して、私に確認を求める。四回はおられなかったので、と四回分の書類を出す。

まあ、いいか・・・

私はサインをしながら女性の顔を見る。やはり会ったことは無い・・・

『貴方は、私の顔をみたことがありますか?』と、書類を渡しながら聞く。

我ながら、可笑しな質問だ・・・聞きながら、笑ってしまった・・・


彼女も、私に釣られたのか、笑いながら、私の顔を見て答える。

『真正面から拝見するのは初めてです。何せ、いつも難しそうな顔でパソコンを睨んでおられましたから・・・それにまともに、言葉を交わすのも初めてですが。』と彼女が答える。

『それは大層失礼でしたね。謝ります。』と頭を下げる。

それを見て不思議な顔をされる。で、思い切ったのか目を伏せて話し出される。


『実は、今回連絡無しでのご不在が続いたものですから、会社から契約を切られることになりました。で、代わりと言っては何ですが、私と個人契約をお願いできませんか?』と下を向いたまま言われる。


・・・それは申し訳ない事をしたようだ・・・しかし、それで首とは・・・会社の経営は良く無いのだろうか・・・


『こちらが、ご迷惑をお掛けしたのですから、それは構いませんが、他に契約の方はおられるのですか?』

『・・・いえ、まだです・・・』

・・・私だけでは困るだろうに・・・


『・・・私の部屋の清掃だけでは食べて行けないでしょう・・・私の会社の社員になりませんか?今は誰もいませんが・・・社員であれば社会保険も入れますし、退職金もありますよ。年間報酬なので賞与はありませんが、その分高くしておきます。如何でしょうか?』と。

・・・つい、口に出てしまったが・・・自分一人では困ることもあるだろうから・・・


『あの、大した事は出来ないですが・・・それでも良ければお願いしたいです。』と、驚きながら、私を見て言われる。

『しかし、私は孤児で高卒なのですが・・・それでも社員にして下さるのですか?』

・・・成る程、それは生きて行くには嫌なことが多かろう・・・顔に険が見えるのはそれか・・・


『今まで私一人だったのですが、今回の件で、他の方々に色々ご迷惑をお掛けする事態が生じてしまい、やはり一人は不味かろうと、思いまして。で、貴方は、今までもお越し頂いていた訳ですから、これも縁ではないでしょうか・・・で、如何かなと思いまして。本来、仕事に、孤児とか学歴とかは関係無いと思います。熱意が有るか無いかの違いで、差が出来るのではないでしょうか。』 

『・・・では、宜しくお願い致します。』と言われる。


『良かった。私も助かります。今から税理士に連絡を入れるので、必要な事をお話し下さいね。』と。


税理士に電話する。特に変わった様子はない。連絡が付かなくて困っていたらしい。入院していた事を告げて詫びる。税理士は驚いていたが、人を雇うからと告げると、仕事の話に入る。年収は上級の課長クラスで計算して貰った。そして、彼女と替わる。


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