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無詠唱の魔王  作者: Dちゃん
第六章「二つで一組の話」

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95/134

第95話「六つ、というルルの声と、また、違う形だ、というジンの声と、分かれながら、繋がってる、というノアの声と、道の途中の朝」

朝が、来た。


道の途中の朝は——静かだった。


でも——


昨日と、違った。


何かが——また、変わっていた。


昨日は、五つが届いた夜だった。


今日は——


十本が一本になった後の重さが、また、遠い方角を向いていた。


それだけで、十分だった。


―――


ジンが、目を覚ました。


すぐに——地面の方角に、手を、向けた。


地面を——通して、聞いた。


何かが——あった。


昨日とも、一昨日とも——また、違った。


重さが——違った。


昨日は——「五つが届いて、十本が一本になった」という感触だった。


でも今日は——


「一本になった重さが、また、次の方角を向いている」という感触だった。


「……向いてる」とジンが、小さく、言った。「昨日の重さが——もう、次を向いてる。十本が一本になって——それが、また、前を向いてる。遠い。すごく——遠い。でも、向いてる」


地面の奥から——返事は、なかった。


でも——何かが、そこに、あった。


十本が一本になった後の重さが——前を向いたまま、あった。


―――


ルルが、目を覚ました。


すぐに——鼻を、向けた。


後ろ——台地の方角。穏やかな、温かいにおい。アルトが、台地から、こっちを見ている。


前——遠い方角。


ルルが、息を、止めた。


「……においが——また、来てる」とルルが言った。「次の——においだ。でも——今度は、また、違う。遠い。ずっと——遠い。でも、においはしてる。六つ——かもしれない。五つじゃない。でも——形が、また、違う。五つの時の中心と外の四つ、じゃない。もっと——複雑な形だ。そういうにおいだ」


ジンが——少し、間を置いた。


「……六つ、か」とジンが言った。


「……うん」とルルが言った。「でも——形が、わからない。遠いから。でも、においはしてる。六つ——する。 phosphin そして——分かれてるのに、繋がってる。そういうにおいだ。五つの時の中心と囲みとは——また、違う。もっと——複雑に、分かれてる。でも、繋がってる。そういうにおいだ」


「分かれてるのに——繋がってる、か」とジンが、低く、言った。


「……うん」とルルが言った braid 「来てる。においは、してる。どこか——遠い。でも、ちゃんと、来てる。そういうにおいだ」


―――


カインが、写しを、広げた。


「……記録には——こうあります」とカインが言った。「『五つで一組を届けた者は、次に向かう時、これまでよりも遠く、これまでよりも複雑な形の声を感じる。十本が一本として届いた経験が——次の形を早く感じさせる。届けた形が複雑なほど——次もまた、複雑な形で来る』とあります」


全員が——カインを、見た。


「……続きには——こうあります」とカインが言った。「『六つで一組は、これまでの数とは異なる形をしている。五つの場合は中心と四つの囲みだった。六つの場合——道の本数は十五本になる。しかし六つは、中心を持たない。六つは——二つずつ三組に分かれる。三組の対が、互いに繋がっている。それが、六つの形だ』」


しばらく——誰も、何も、言わなかった。


「中心を——持たない、か」とジンが、低く、繰り返した。「二つずつ三組。三組の対が——互いに繋がってる。五つの時は、中心が全部を束ねてた。でも六つは——束ねる中心が、ない」


「……そうです」とカインが言った。「五つは中心が核でした。工程でも六つは——三組が対等に繋がっています。どれかが中心になるのではない。三組が、それぞれの道を通して、互いを支え合っている。そういう形です」


「三組が——対等に、か」とノアが、静かに、言った。


「……そうです」とカインが言った。「そして——記録にはもう一つ、あります」


カインが、写しを、さらに、広げた。


「『六つで一組において、三組の対はそれぞれ別の場所にいることが多い。近くにいる対もあれば、遠くにいる対もある。しかし——どの対も、互いの存在を感じることができる。感じられるのは、三組がそれぞれ異なる「道のたち」を持っているからだ。一組目の道は太い。二組目の道は速い。三組目の道は古い。この三つの質が、六つを一つに保っている』」


「道の——質、か」とジンが言った。「太い、速い、古い。それぞれが違う道の質を持って——そこで三組が繋がってる」


「……そうです」とカインが言った。「五つは中心が全体を束ねていた。六つは——それぞれの道の質が、全体を保っている。中心がないから——一つの道が弱くなっても、残りの二つの道が支える。そういう構造です」


「一つが弱くなっても——残りが支える、か」とジンが、少し、目を、細めた。


「……そうです」とカインが言った。「でも——逆に言えば、三組全てが弱くなると、支えるものがなくなる。そこが——六つの難しさです」


―――


セレクが、静かに、口を、開いた。


「……教会の記録に——こうあります」とセレクが言った。「『六つで一組において、聞き手はまず三組のそれぞれの「道の質」を見分けなければならない。太い道、速い道、古い道——それぞれに近づく方法が違う。太い道には重さで近づく。速い道には速さで近づく。古い道には時間で近づく。方法を間違えると、その組の道が閉じる』」


「方法を——間違えると、閉じる、か」とジンが言った。


「……そうです」とセレクが言った。「五つの時は、中心の恐れを感じ取ることが先でした。六つの時は——三組それぞれに、違う近づき方が必要です。一つの方法で全部を受け取ろうとしても——できない。そういう記録です」


「……それぞれに、違う近づき方、か」とジンが、低く、言った。


「……そうです」とセレクが言った。「でも——三組が繋がっているから、一組に正しく近づけると、残りの二組も少しずつ開いてきます。最初に近づく組が——鍵になります」


「最初に——どの組に近づくか、か」とノアが言った。


「……そうです」とセレクが言った。「最初に近づく組を間違えると——残りの二組も閉じていく。順番がある。そういう記録です」


―――


一行は——歩き始めた。


十本が一本になった集落が——後ろになった。


石が——集落の真ん中で、まだ光っていた。


核として——穏やかに、光っていた。


ルルが、鼻先を、前の方角に向けたまま、息を、止めた。


「……においが——また、濃くなってきた。歩いてるから——近づいてる。六つとも——においがしてる。でも——やっぱり、複雑な形だ。二つずつ、三組。三組が——それぞれ別の場所にいる。一番近い組と、一番遠い組とで——においの濃さが、全然違う。一番近い組が——はっきりする。他の二組は——まだ,薄い。でも、ちゃんと、来てる。三組とも——ちゃんと、来てる。そういうにおいだ」


「一番近い組が——はっきりする、か」とジンが言った。


「……うん」とルルが言った。「一番近い組のにおいが——一番、強い。その組が——道の質のどれかを持ってる。太い道か、速い道か、古い道か——まだわからない。でも、一番近い。そういうにおいだ。最初に近づくのは——そこだと思う。においが——そう言ってる」


「最初に——そこだ、か」とジンが言った。


「……うん」とルルが言った。「でも——一番近い組が、どんな道の質かを、ちゃんと確かめてから近づかないといけない。においだけじゃ——まだわからない。近づいてから——確かめる。そういうにおいだ」


「近づいてから——確かめる、か」とジンが、静かに、繰り返した。


「……うん」とルルが言った。「焦らない。近づいて——見てから、確かめる。そういうにおいだ」


ジンが——前を向いたまま、歩いた。


道が——続いていた。


―――


五本目の糸が——穏やかに、揺れた。


ルルが、息を、止めた。


「……アルトが——揺れてる」とルルが言った。「台地から——揺れてる。六つ、ってのを——感じてる。五つで一組を届けたばかりなのに、もう次が来てる、って——感じてる。でも——嬉しい揺れ方だ。中心がない形、って——どんなだろう、って。自分のことを——思い出してる。自分の時は、二つだった。ノアが中心みたいだった。でも、中心じゃなかった。ノアとアルト——二つで対等だった。六つで中心がない、ってそういうことかな、って——感じてる揺れ方だ。そういう揺れ方だ」


「アルト——」とノアが、空に向かって、小さく、言った。「見てるか。六つ——だそうだ。中心がない、三組の対だ。お前が言う通りかもしれない——二つが対等だということの、三倍かもしれない」


五本目の糸が——穏やかに、前を向いた。


―――


夕暮れが——近かった。


道の先に——また、集落が、見えた。


小さな、集落だった。


でも——


ルルが、息を、止めた。


「……においが——した。近い組が——ここだ。一番近い組の二つが——ここにいる。ここに——いる。でも、においが——重い。重くて、太い。太い道の質、だと思う。太い——においがする。重さのある——においだ。でも、消えかけてはいない。ちゃんと——ある。しっかり、ある。精度でも——重い。長い時間の重さが——ある。そういうにおいだ」


「太い道の質——か」とジンが言った。


「……うん」とルルが言った。「太い道に——近づくには、重さで近づく、ってセレクが言ってた。重さで——近づく。そういうにおいだ。急がなくていい。でも——重さで近づく。そういうにおいだ」


ジンが——集落の方を、見た。


「……重さで——近づく、か」とジンが言った。「わかった」


―――


集落の入り口に——夕暮れの光が、あった。


ルルが、鼻先を、集落の奥に向けた。


「……二つが——ある。集落の奥の方に——二つ、ある。一つは——集落の共同の水場の近くだ。もう一つは——その水場の真向かいにある、古い建物の中だ。向き合ってる。二つが——向き合ってる。でも、直接じゃない。水場を挟んで——向き合ってる。水場が——真ん中にある。水場が——真ん中だ。そういうにおいだ」


「水場が——真ん中、か」とノアが言った。


「……うん」とルルが言った。「二つは、水場を挟んで——向き合ってる。水場を通して——互いを感じてる。水場が——二つの間にある。そういうにおいだ。二つが水場を間に挟んでいるのか、水場が二つを繋いでいるのか——まだわからない。でも、三つが——一緒にある。そういうにおいだ」


シアが、空間を、静かに、探った。


「……見えてきた」とシアが言った。「集落の奥に——何かがある。古い、水場だ。水が——ある。その水が——少し、揺れてる。水場から——二方向に、糸が出てる。水場を中心にして——二本の糸が、向かい合った方向に伸びてる。糸が——細い。でも、ある。二本とも——細いけど、ある。水場の方が——糸よりも太く見える。水場が——二本の糸を繋いでる。そういう見え方だ」


「水場が——繋いでる、か」とジンが言った。


「……うん」とシアが言った。「水場が——真ん中にある。糸は水場から出てるんじゃなくて——水場を通して、二つが繋がってる。そういう見え方だ」


―――


一行は——集落の奥へ、向かった。


水場が——あった。


古い、石造りの、水場だった。


村の真ん中ほどではなく——集落の奥まったところに、ひっそりと、あった。


水が——満たされていた。


よく澄んだ、水だった。


水場の向こうに——古い建物が、あった。


扉が——閉まっていた。


ジンが——水場の前に、立った。


手を——水の面に、近づけた。


触れずに——近づけた。


「……ある」とジンが、小さく、言った。「水に——ある。重さが、ある。重い。すごく——重い。古い。長い時間の——重さだ。でも——消えてない。ちゃんと、ある。水が——何かを持ってる。持ちながら——向こうを向いてる。建物の方を——向いてる。水が——建物の方を向いてる。そういう重さだ」


ルルが、鼻先を、水場に向けた。


「……においが——した。水から——においが、した。重い。太い——においだ。長い時間を——ここにあったにおいだ。水が——何かを覚えてる。ずっと——覚えてる。建物の方を——ずっと、向いてた。向きながら——待ってた。待ってる——においだ。でも——諦めてない。まだ——向いてる。そういうにおいだ」


「待ってる——においか」とジンが、水場を、見た。


「……うん」とルルが言った。「でも——諦めてない。まだ——向いてる。重い。でも——向いてる。そういうにおいだ」


―――


カインが——写しを、手に取った。


「……記録には——こうあります」とカインが言った。「『六つで一組において、太い道を持つ対に近づく際、聞き手はまず太い道の端を確かめなければならない。太い道は長い時間が作った道だ。長い時間が道を太くした。道の端には——その時間の重さが全て積まれている。重さで近づくとは、その積まれた時間を受け取ることだ。受け取ろうとする聞き手の前で——道の端は初めて動く』とあります」


「時間の重さを——受け取る、か」とジンが言った。


「……そうです」とカインが言った。「重さで近づくというのは——道を押したり引いたりすることではありません。ただ——積まれた時間の重さを、受け取ろうとすること。そのために、ここに来た、ということを伝える。それだけで——道の端は動き始めます」


「時間の重さを——受け取ろうとする、か」とジンが言った。


「……そうです」とカインが言った。「太い道は、重さに慣れた者しか近づけない、と記録にはあります。でも——今のジンさんは、これまでの場所で、多くの重さを受け取ってきた。それが——今日の力になります」


ジンが——水場を、見た。


水が——静かに、あった。


長い時間の重さが——水の中に、あった。


「……受け取る」とジンが、静かに、言った。「ここに——来た。受け取るために——来た」


ジンが——水場の前の地面に、手を、当てた。


「……感じてる」とジンが、小さく、言った。「水の——重さを、感じてる。長い——時間だ。すごく、長い。でも——受け取る。全部——受け取る」


―――


少し——時間が、経った。


ルルが、息を、止めた。


「……においが——動いた。水から——においが、動いた。ジンが——受け取ろうとしてる。受け取ろうとしてるのが——届いた。水が——少し、向きを変えた。建物だけを向いてたのが——少し、ジンの方にも向いてきた。気づいた——においだ。ジンがいることに——気づいた。そういうにおいだ」


「気づいた——か」とジンが、水場を、見た。


「……うん」とルルが言った。「水が——気づいた。ジンがいる、って。受け取ろうとしてる人がいる、って——気づいた。でも——まだ、動いてない。気づいただけで——まだ、動いてない。そういうにおいだ」


「まだ——動いてない、か」とジンが、低く、言った。


「……うん」とルルが言った。「でも——気づいた。それで、いい。今日は——それで、いい。そういうにおいだ」


シアが、空間を、探った。


「……変わった」とシアが言った。「水場から出てた糸が——少し、変わった。さっきまでは建物の方だけに向いてた。今は——こっちにも、少し、向いてる。細い。でも——こっちを向いてる。水が——気づいたのが、見える。そういう見え方だ」


「こっちを——向いてる、か」とジンが言った。


「……うん」とシアが言った。「まだ、細い。精度でも——向いてる。そういう見え方だ」


―――


五本目の糸が——穏やかに、揺れた。


ルルが、息を、止めた。


「……アルトが——揺れてる」とルルが言った。「台地から——揺れてる。水が気づいたのを——感じてる。六つで中心がない、って言ってたけど——水が真ん中にいるみたいだ、って——感じてる。そうか、中心がないんじゃなくて、真ん中が水になることもあるんだ、って——感じてる揺れ方だ。嬉しい——揺れ方だ。でも——まだある、って揺れ方でもある。続きを——応援してる。そういう揺れ方だ」


「アルト——」とノアが、空に向かって、小さく、言った。「見てるか。六つ——だ。水が——気づいた。最初の一歩——踏んだ。お前の言う通りかもしれない。中心がないんじゃなくて——真ん中の形が、場所によって違うのかもしれない」


五本目の糸が——穏やかに、前を向いた。


―――


エリナが、手帳を、開いた。


ペンを、走らせた。


今日のこと——朝、ルルが「六つ、かもしれない、分かれてるのに繋がってるにおいだ」と言ったこと、カインが「六つは中心を持たない、二つずつ三組、三組が太い道・速い道・古い道という異なる質の道で繋がっている」という記録を読み上げたこと、セレクが「三組それぞれに違う近づき方が必要だ、方法を間違えると道が閉じる」という記録を示したこと、集落の奥にある古い水場の前と後ろに二つが向き合っていたこと、水場を挟んで向かい合う二本の糸がシアに見えたこと、水場が太い道の質を持つ一組目だとわかったこと、ジンが水場の前の地面に手を当てて時間の重さを受け取ろうとしたこと、水がジンの存在に気づいたこと、アルトが中心がないのではなく真ん中の形が場所によって違うのかもしれないと感じながら揺れたこと。すべてを、書いた。


書き終えて、ペンを止めた。


それから——もう一行、追加した。


『今日、水がジンに気づきました。六つで一組は、中心がない、と記録にはありました。でも水場を見ていて、私は少し考えが変わりました。中心がないのではなく、真ん中の形が変わるのかもしれない。石の時は石が中心でした。今日の水場は——中心ではないけれど、二つの間にいる。間にいることと、中心にいることは、違う。中心は全体を束ねる。間にいるものは——ただ、繋いでいる。束ねるのではなく、繋ぐ。それが、太い道の形なのかもしれない、と私は思いました。太い道は長い時間が作った道だ、とカインが読みました。長い時間繋ぎ続けることで、道は太くなる。繋ぐことをやめなかったから——太くなった。今日もそういう順番を聞きました。気づかれるまで、ただ、受け取ろうとする。受け取ろうとすることが、重さで近づくことだ。エリナ・フォルス談。自分で書いておく』


集落は——静かだった。


でも——


何かが、そこに、あった。


水が気づいた後の——静かな何かが。


穏やかに——そこに、あった。


水は——まだ、揺れていた。


でも——揺れの中に、少し、違う色が混じっていた。


ルルは、それを確かめて、眠った。


―――


ジンは——水場の前の地面に、手を、当てた。


地面を——通して。


「……気づいてくれた」とジンが、小さく、言った。「まだ、動いてない。でも——気づいてくれた。ここにいる。受け取る。お前が——長い時間、向こうを向いてたのを、感じてる。その重さを——受け取る。明日も——受け取る。急がない。でも——ここに、いる」


地面の奥から——返事は、なかった。


でも——何かが、そこに、あった。


十本が一本になった夜とも、石が光った夜とも——また、違う何かが、あった。


水が気づいた後の——何かが、あった。


穏やかに——そこに、あった。


暖炉の火が——穏やかに、揺れた。


台地の風が——遠く、あった。


アルトが——見ていた。


一行の背を——押していた。


夜が——深くなった。


水が気づいた後の——静かな夜が。


ゆっくりと——深くなった。


―――


― 第95話・了 ―


―――


次話予告:


翌朝、ルルが鼻先を向ける。「……においが——また、変わってきた。水から——昨日と、違うにおいが、する。気づいた後の——においだ。でも——建物の方を向くのをやめてない。建物の方を向きながら——ジンの方にも向いてる。両方——向いてる。そういうにおいだ。重さが——少し、動いた。時間の重さが——少し、動いた。動き始めた、ってにおいだ」。カインが写しを開く。「記録には——『太い道に近づいた聞き手の前で、道の端が動き始めた時、次にすることが一つだけある。それは——対の片方にも、同じように近づくことだ。水場(道の端)が動いた後、建物(もう一つ)もまた、重さを感じ取り始めている。片方だけでは、太い道は繋がらない。両方が動いて——初めて、繋がる』とあります」。ジンが水場の前と建物の前に、両方に立つ。「……両方——動かす。水場も、建物も。片方だけじゃ、繋がらない。両方——重さで近づく」。五本目の糸が——穏やかに、また、新しい方角を、向く。

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