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無詠唱の魔王  作者: Dちゃん
第四章「西へ続く道の話」

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第46話「誰か、という問いと、私たちのことと、答えの始まり」

翌朝、空は——変わらず、薄い雲に覆われていた。

 風は、止んでいた。境界の向こうは——今も、静かなままだった。

 炉の灰は、まだ、わずかに、白い熱を、持っていた。


 ジンが、最初に、目を覚ました。

 しばらく——自分の手のひらを、見ていた。

 「……『誰か』って、聞かれたら」とジンが、ぽつりと、言った。「俺たちは——なんて、答えるんだろうな」


―――


 エリナが、目を覚ました。ランプは、もう、消えていた。手帳が——膝の上に、開いたまま、あった。

 白紙のページを、見つめた。


 「……もし」とエリナが言った。「私たち一人一人の話を——下に、伝えることができたら」


 ジンが、少し、エリナを見た。


 「伝えるって——どうやって」とジンが聞いた。


 「わかりません」とエリナが言った。「でも——昨日、下から聞かれた時。ジンさんは——すぐに、答えましたよね。『仲間がここにいたから』って」


 「うん」とジンが言った。


 「それは——一言でした」とエリナが言った。「でも——たぶん、一言じゃ、足りないと思うんです。私たちが誰か、っていうのは——一言では、言えない」


―――


 カインが、地図を広げた。


 「……昨日、下から聞かれたことを——もう一度、整理しましょう」とカインが言った。「問いは——『お前たちは、どうして、ここに、来たのか』。これは——単なる目的や理由を問うものではなく——」

 「『お前たちは、何者か』という問い、でしょうか」とセレクが言った。


 「そう、思います」とカインが言った。「名を持たぬものたちは——名前を問い、存在を問い、今度は——素性を問うてきた。問いが——深くなっています」


 ノアが、少し、自分の膝を見た。


 「……俺も」とノアが言った。「聞かれた、気がした。昨日。俺——だけじゃなくて——みんな、だったけど。でも——俺には、ちゃんと、返せなかった」


 「答えを——持っていかなかった、ということですか」とエリナが聞いた。


 「うん」とノアが言った。「言葉に——ならなかった」


―――


 「……だとしたら」とエリナが言った。手帳の白紙のページを、まだ、見ていた。「今日——持っていく、ということが——できるかもしれません」


 「持っていく、っていうのは」とジンが聞いた。


 「私たちのことを——話す、ということです」とエリナが言った。「私は、こういう者です、って。一人ずつ」


 シアが、少し、腕を組んだ。


 「……自己紹介、ってこと?」とシアが言った。


 「似ているかもしれません」とエリナが言った。「ただ——下にいるものに向けた。声に出すかどうかは——わかりません。でも——何かを、伝えようとすること。それだけで——五本目の糸が——変わるかもしれない」


 ルルが、少し、地面に、手を当てた。


 「……うん」とルルが言った。「それ——いいと思う。五本目の糸——昨日から、ずっと、『待ってる』みたいな震えをしてる」


―――


 「……今日は、入りますか」とエリナが聞いた。「祠に」


 「入ります」とカインが言った。「ただ——今日は、一つだけ、持っていくものがあります。私たちが——何者か、ということです。それを——伝えられるかどうかは、わかりません。でも——伝えようとする。それだけが、今日の目的です」


 「無理は、しない」とジンが言った。


 「今日も——感じるだけだ」とジンが続けた。「ただ——今日は、少しだけ——話す」


 全員が、頷いた。


―――


 境界をまたいだ。


 音が、消えた。風が、消えた。


 奥へ進むと——光が、いつもと、少し、違う揺れ方をしていた。台座に座る人の姿——その目が、一行を見た。それから——ゆっくりと、ノアを見た。揺らぎが——柔らかかった。「また、来た」というよりも——「来てくれた」というような、揺れだった。


 ルルが、地面に、両手を当てた。


 「……五本目」とルルが、小さく言った。「震えてる。昨日より——少しだけ、強い。色は——まだ、『待ってる』。でも——その中に——『聞いてる』、みたいな色が、混じってる」


 「聞いてる」とジンが、繰り返した。


 「うん」とルルが言った。「下が——今、こっちを、聞こうとしてる」


―――


 ノアが、ゆっくりと、床に、両手を当てた。

 しばらく——目を閉じていた。

 「……俺から」とノアが言った。「先に——話す」

 全員が、少し、黙った。

 ノアが、もう一度、目を閉じた。それから——静かに、口を、開いた。


 「……俺は——ノアだ」とノアが言った。「名前は——自分でも、ずっと、わからなかった。でも——最近、思い出してきた。ノア、って——呼ばれてたと思う。四百年前に。ここへ来る前に」


 光が——少し、揺れた。

 「……俺は——お前に、名前をつけようとした」とノアが続けた。声が、少し、震えていた。「できなかった。ごめん。でも——今回は——ちゃんと、やり遂げる。約束する。だから——もう少し、待っててくれ」


 光が——大きく、揺れた。

 それは——「わかった」というような——揺れだった。それだけでなく——ずっと、待ち続けていた時間の重さが、少しだけ、和らいだような——揺れでもあった。


―――


 「……次は——俺が、いいか」とジンが言った。

 カインが、小さく、頷いた。


 ジンが、床に、片手を当てた。


 「……俺は——霧島ジン」とジンが言った。「別の世界から——ここに来た。なんで来たのかは——俺にも、よくわからない。でも——ここに来て——こいつらに出会った。それは——よかったと思ってる」


 短い、沈黙だった。


 「……重力魔法、っていうのが使える」とジンが続けた。「重さを、動かす力だ。お前の下に——すごく、重いものがある。それは——俺が、一番、よくわかる。だから——俺が、来た。それだけだ」


 ルルが、目を、見開いた。

 「……五本目」とルルが言った。声が、少し、震えていた。「色が——変わった。さっきより——ずっと、濃くなった。なんていうか——『受け取った』みたいな色」


―――


 「……私も」とエリナが言った。「話しても——いいですか」

 カインが、頷いた。


 エリナが、床に、そっと、片手を添えた。手帳を——もう片方の手に、持っていた。


 「……私は——エリナ・フォルスといいます」とエリナが言った。「元々は——ギルドの受付をしていました。ジンさんと出会うまでは——記録をとることが、仕事でした。でも、今は——記録だけじゃない、と思っています。記録することと、ここにいることは——同じことだと、思っています」


 エリナが、少し、手帳を、胸に当てた。


 「……あなたのことを——書き留めたいと、思っています」とエリナが言った。「名前が決まったら——最初に、書きます。約束します」


 光が——やわらかく、揺れた。

 「記録」というものを——初めて知ったような——揺れだった。


―――


 「……私も——話す」とルルが言った。


 ルルが、地面に、両手を、強く、押し当てた。


 「……ルル」とルルが言った。「それだけが——名前。においで、いろんなことが、わかる。あなたのにおいも——ずっと、感じてた。始まりがないにおい。でも——今は——少し、変わってきた」


 ルルが、少し、目を細めた。


 「……あったかいにおいが——増えてきてる。それ——私は、好きだよ」


 光が——揺れた。それは、これまでに——見たことのない、揺れだった。

 困惑と——喜びが——同時に、混じったような、揺れだった。「好き」という言葉を——初めて受け取ったような——揺れだった。


―――


 シアが、少し、咳払いをした。

 「……私は、シア・ルーナ」とシアが言った。「魔法使いだ。元々——勇者パーティにいた。今は——ここにいる。理由は——正直、最初は成り行きだった。でも——今は、違う。今は——ここにいたくて、いる」


 シアが、少し、ジンを見た。それから——光を、見た。


 「……ジンが——無茶をしそうなのを——止める役が、私にはある。それが——今の仕事だと思ってる」

 「無茶はしない」とジンが、すぐに言った。

 「毎回してる」とシアが、すぐに、言った。声には——少し、笑いが、混じっていた。


 光が——揺れた。それは——「笑い」のような——揺れだった。言葉の意味は、わからなくても——二人のやりとりの温度が——伝わったような、揺れだった。


―――


 「……私は」とセレクが、静かに言った。「セレク・ヴァイン——という名前でした。元々は——教会の特務官です。あなたを——知ることよりも、封じることを——仕事にしていた側の、人間です」


 セレクが、少し、床を見た。


 「……今は——ここにいます。それが——正しいと、思ったから。教会が、正しいと思っていた時代は、終わりました。私が、何者であるか——今は、まだ、はっきりとは、言えません。ただ——ここに、来た。それだけは、確かです」


 光が——少し、揺れた。それは——「知っている」というような——揺れだった。セレクのことを——以前から、見ていたような。それでも——今ここにいることを——受け入れるような、揺れだった。


―――


 「……最後に」とカインが言った。「私が、話します」


 カインが、地図を——一度、折り畳んだ。革の鞄に、しまった。

 それから——床に、片手を、当てた。


 「……カイン・セルフォードです」とカインが言った。「学者です。アル・ヴェリアという術師の——研究を、長く、続けてきました。彼が、何を——残したかったのか。それを——知りたかった」


 カインが、少し、息を吸った。


 「……あなたの存在を——知った時、私は——驚きませんでした。アル・ヴェリアが、ここで、何かを見つけた、とは——思っていました。ただ——それが——こういう形だとは、思いませんでした。名前を持たない——古い、孤独な——存在だとは」


 カインが、少し、目を細めた。


 「……私は——記録することが好きです。エリナ殿とは——少し、違う形で。私は——理解したくて、記録します。あなたのことを——理解したいと、思っています。急ぎません。でも——必ず」


 光が——長く、ゆっくりと、揺れた。

 それは——これまでで、一番——複雑な揺れだった。たくさんのものが、一度に、届いたような——揺れだった。


―――


 その時——


 ルルが、息を、止めた。


 「……五本目」とルルが言った。「糸の——真ん中の、結び目。さっきより——大きくなってる。昨日、小さく生まれたやつ。それが——今——二倍くらい、しっかりしてる」

 「二倍」とジンが言った。

 「うん」とルルが言った。「みんなが——話すたびに——少しずつ、強くなった。ジンさんの時、エリナさんの時、私の時——全部、少しずつ。今——ノアさんから、カインさんまで、全員終わって——」


 ルルが、少し、目を見開いた。


 「——色が、変わった。結び目の——色が」


―――


 「どんな色に?」とエリナが、急いで聞いた。


 ルルが、少し、考えた。


 「……『知った』みたいな色」とルルが言った。「今まで——五本目の糸は、ただ、繋がってるだけだった。でも——今は——その結び目の中に、色が入ってる。なんていうか——『あなたたちの話が、届いた』みたいな色」


 誰も、しばらく、何も、言わなかった。


 「……届いた」とノアが、小さく、言った。「俺たちの——話が、届いた」

 「断定はできません」とカインが言った。「ただ——可能性として、否定できません」


 その時——


 床の——奥の方で。


 何かが——動いた。


 昨日のような、柔らかい息を吐くような感覚とは——違った。それは——もっと、意図のある——動きだった。五本目の糸の——結び目の方に、向かって。まるで——「確かめに来た」ような——動きだった。


―――


 ルルが、両手を——強く、地面に押し当てた。目を、見開いていた。


 「……来た」とルルが言った。「昨日——触れてきた、あれ。また——来た。今度は——昨日より、ずっと——近い。結び目に——もう、ほとんど、触れてる」


 「昨日との違いは」とカインが、すぐに聞いた。


 ルルが、少し、息を整えた。


 「……昨日は——触れようとしてた。今日は——触れるために——来た。なんか——そういう感じ。昨日は——恐る恐る、だった。今日は——決めてきた、みたいな」


 ノアが、少し、床に、手を当てた。目を閉じた。


 「……俺も——感じる」とノアが言った。「今日は——すごく、近い。昨日と——同じ種類の気配だ。でも——今日は——もっと、ちゃんと——聞こうとしてる感じ」


―――


 その時——


 全員が——それを、感じた。


 音ではなかった。胸の奥で響いたのとも——少し、違った。


 それは——もっと、細かく。もっと——静かに。


 昨日の「遠くから手を伸ばしてきた」ような感覚とも——違った。


 それは——「触れた」感覚だった。


 五本目の糸の結び目に——確かに、下から、何かが——触れた。


 「……今」とジンが、低く、言った。「触れた」

 「うん」とルルが言った。目が——少し、潤んでいた。「触れた。ちゃんと——触れた。結び目が——答えた」


―――


 「答えた、っていうのは」とエリナが聞いた。


 ルルが、少し、考えた。


 「……結び目が——震えた」とルルが言った。「下から触れられた時。逃げなかった。ほどけなかった。そのまま——震えた。それって——たぶん——『受け取った』、ってことだと思う」


 「受け取った」とノアが、繰り返した。「俺たちの——話を」


 「断定は——」とカインが言いかけた。

 「できません」とセレクが、先に言った。

 「……そうです」とカインが言った。少し、口の端に——笑いが、混じっていた。


 ジンが、少し、笑った。


 光が——揺れた。「笑い」が——また、揺れの中に、あった。今度は——さっきより、少しだけ——長い揺れだった。


―――


 「……これ以上は、今日は、ここまでにしましょう」とカインが言った。「私たちの話が——五本目の糸を通じて、下に届き、下から、初めて、その糸の結び目に——応じるような接触がありました。これは——対話の、最初の入口です」


 全員が、頷いた。


 ノアが、光に向かって、少し、頭を下げた。

 「……今日も——来た」とノアが言った。「また、来る。名前——もう少し、待ってくれ。でも——お前のことを、もっと、知ろうとしてる。それは——約束する」


 光が——ゆっくりと、揺れた。今度の揺れは——穏やかで——どこか、満たされたような、揺れだった。


―――


 外に出ると——風が、戻ってきた。


 「……なんか——緊張した」とジンが言った。「自己紹介って——あんなに、むずかしいのか」

 「いつもはしないからでしょう」とエリナが言った。

 「俺、してるだろ」とジンが言った。「名前くらいは」

 「名前だけでしょう」とシアが言った。「重力魔法の説明も——ちゃんとしてたじゃないですか。あれ、自分から言うの——初めて見た」

 「……そうかもな」とジンが言った。


 ノアが、少し、空を見上げた。

 「……俺——言えてよかった」とノアが言った。「謝れて——よかった。ずっと、言いたかった気がする。言う相手がわからなかっただけで」

 「それで——十分だ」とジンが言った。「今日——わかったのは、『下も、俺たちのことを、受け取ろうとした』ってことだ」


―――


 夕方、境界の外で、野営の準備をした。

 炉に、火がついた。火が、揺れた。


 「……『誰か』って聞かれたら」とジンが、もう一度、言った。「今日——答えた気がする」

 「答えの——始まりを」とエリナが言った。「全部、は——まだ、これからです」

 「まだ、続きがあるのか」とジンが言った。

 「あると思います」とエリナが言った。「でも——今日、一歩、踏み出しました。それで——十分だと、思います」


 ルルが、少し、地面に、手を当てた。

 「……五本目の糸」とルルが言った。「今日——また、変わった。結び目の中に——色が、増えた。さっきの『知った』みたいな色の隣に——もう一つ、新しい色が、ある」

 「なんの色だ」とジンが聞いた。

 ルルが、少し、考えた。

 「……『また、来てほしい』みたいな——色」


 誰も、それに——すぐには、答えなかった。

 でも——全員が、少し、笑った。


―――


 エリナは、ランプの光で、手帳を書いた。


 今日のこと——エリナが思いついた「一人ずつ話す」という提案、ノアから始まり全員が自分のことを床越しに伝えたこと、五本目の糸の結び目に初めて下から「触れた」感触があったこと、そして結び目の中に「また来てほしい」という色が生まれたこと。すべてを、書いた。


 書き終えて、ペンを止めた。


 それから——もう一行、追加した。


 『今日、私たちは、初めて——自分たちのことを、下に伝えました。どこまで届いたのかは、わかりません。でも、五本目の糸の結び目が、答えてくれました。それで、十分だと思います。「誰か」という問いに、私たちは一人ずつ、自分の言葉で答えました。完璧ではなかったと思います。でも、正直でした。ジンさんは「こいつらに出会えてよかった」と言いました。ノアさんは「ごめん」と言いました。私は「書きたい」と言いました。ルルは「好き」と言いました。シアさんは笑いながら話しました。セレクさんは正直に、自分の過去を話しました。カインさんは「理解したい」と言いました。それぞれが、それぞれの言葉で話した。それが、一番、大事なことだったのかもしれません。エリナ・フォルス談。自分で書いておく』


 ランプの炎が、静かに揺れた。


―――


 ルルは、最後に——境界の方角を見た。


 風が、止んでいた。境界の向こうは——今も、静かなままだった。


 でも——においの中の、五本目の糸が——今日は、これまでと、全然、違っていた。


 昨日までは——細くて、震えているだけだった。今は——震えているけど、その震えが——揺れていた。呼吸するみたいに。


 そして——結び目の中に。


 七つの色が——今日、新しく、入っていた。


 一人一人の話が——届くたびに。一つずつ、増えた色。


 ルルは、少し、目を細めた。

 「……七つ」とルルが、小さく、呟いた。「全員分——ある。ノアさんのも——ある」


 地面の奥から——返事は、なかった。

 でも——五本目の糸が、ごく小さく——うん、と——震えた、ような気がした。


 ルルは、それを確かめて、眠った。


―――


 夜が、深くなった。


 炉の火が、揺れていた。


 境界の中では——光が、静かに、揺らいでいた。


 その揺らぎの中に——今日、新しく届いたものの温度が、まだ、残っていた。


 七つの声。七つの話。


 祠の主は——それを、一つずつ、確かめるように——揺らいでいた。


 「記録」という言葉の意味を、まだ、わからないまま。

 「好き」という言葉の重さを、まだ、知らないまま。


 でも——確かに、今日、自分に向けて語られた言葉を——全部、受け取ったことは——わかっていた。


 そして——地の底の、四本目の、すぐ隣で。


 五本目の糸の結び目に触れた何かが——初めて、七つの色を、一つずつ——なぞっていた。


 まだ、意味は——わからなかった。


 でも——それは——確かに、今日、「知りたい」と——思っていた。


―――


― 第46話・了 ―


―――


次話予告:翌朝、ノアが——自分の胸に手を当てて、言う。「……なんか——名前が、近い気がする。昨日より、ずっと——近い」。ジンが、床に手を当てた時——今までとは違う、返事のような重さが、返ってきた。「……これ——答えてる?」。カインが、静かに、地図を折り畳む。「次は——名前を、持っていく番です」。エリナが、手帳の新しいページを、開いた。まだ、白い。でも——今日だけは——何も書かずに、待っていようと思った。そして——地の底で。七つの色をなぞり終えた何かが——初めて、上に向かって——「もっと、聞かせてほしい」と、震えた。


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