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無詠唱の魔王  作者: Dちゃん
第四章「西へ続く道の話」

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第30話「王都への帰還と、研究院の地図室と、『静止の祠』という名前」

四日目の朝は、雨だった。


 強い雨ではなかった。霧のような、細かい雨。岩屋を出る頃には、もう止んでいた。でも——山の空気は、湿って重かった。


 「今日中に、麓まで」とトーアが言った。荷物を背負い直した。「天気が崩れる前に、下りておきたい」


 「崩れますか」とエリナが聞いた。


 「わからない。でも——念のため」


 一行は、最後の下山を始めた。


 来た時よりも、足取りは軽かった。岩を越え、低い木の間を抜け、沢に出た。沢の音が、三日前よりも近く感じた。


 昼前には、麓に着いた。


 「ここまでです」とトーアが言った。


 街道の終わりに、馬車が一台、止まっていた。御者が、トーアを見て頭を下げた。「王室からの手配です」と御者が言った。「王都まで、お送りします」


 ライエルが、手を回していた。


―――


 トーアが、荷台に荷物を積むのを手伝った。それから——少し、立ち止まった。


 「ジン殿」


 「はい」


 トーアが少し間を置いた。「……あの場所のことは、誰にも言いません。父にも」


 「言わなくていいんですか」


 「父は——もう、知っているはずです。あの場所が、起きたことを」トーアが、山の方を見た。「私が言わなくても、伝わるものがある気がします」


 「それは——においみたいなものですか」とジンが聞いた。


 トーアが、少し驚いた顔をした。それから——わずかに、笑った。「……そうかもしれません」


 「ありがとうございました」とエリナが言った。深く、頭を下げた。


 全員が、頭を下げた。


 トーアが、また頷いた。それだけだった。でも——三日前の頷きとは、違う頷きだった。


 馬車に乗った。トーアが、見送った。山の入り口に立つ、大きな人影が、少しずつ遠くなった。


 「ルル」とジンが言った。「トーアさんの——においは?」


 ルルが、少し目を閉じた。


 「……寂しいにおいじゃなかった」とルルが言った。「ちゃんと——見送るにおい。次も、ここにいるにおい」


 「それは——良いにおい?」


 「良いにおい」


 馬車が、街道を進み始めた。


―――


 王都までは、二日かかった。


 一日目の宿場は、行きと同じ場所だった。防音の魔術が完備された、大きな宿。エリナが「行きと同じ部屋です」と言った。「でも——荷物の重さが違う気がします」


 「重さ?」とジンが聞いた。


 「物理的にはほとんど変わっていません。でも——持っているものが、増えた気がします」


 「写しとか、配置図とか」


 「それだけじゃない気もしますけど」とエリナが言った。


 カインが、写しを広げて、配置図を見ていた。ランプの光の下で、何度も見ていた。


 「気になりますか」とセレクが聞いた。


 「気になります」とカインが言った。「七つの方角は読めました。でも——距離は、まだわからない。象徴的な配置図だけでは、現実の地図に重ねられない」


 「王都に戻れば」


 「王都に戻れば——研究院の地図室に、古い地名と地形の資料があります。そこで照合します」


 「研究院に——戻るんですね」とセレクが言った。少し、間があった。


 カインが、写しを畳んだ。「資料を使うためだけです。それ以上のことは——まだ、決めていません」


 「決めなくていいと思います」とセレクが言った。「私も——そうでした。決める前に、動く必要がある時があります」


 カインが、少し、セレクを見た。「……教会の方は」


 「私は——『個人』のままです。今のところ」セレクが、静かに言った。「それで、十分だと思っています」


―――


 二日目の夕方、王都が見えた。


 灰色の城壁。深い赤と金の紋章旗。前に来た時と、見た目は変わらなかった。でも——ルルが、馬車の窓から外を見て、少し、目を細めた。


 「においが——変わってる」


 「どう変わった?」とジンが聞いた。


 「前は——いろんな方向を向いてるにおいだった。みんなが、別々の方を見てる感じ。今は——少し、同じ方向を向いてる」


 「同じ方向?」


 「前を向いてる感じ。全部じゃないけど——前よりは、ずっと」


 シアが、窓の外を見た。「審問会の結果が——もう、広まってる頃だろう」


 「広まると——においが変わるんですか」とジンが聞いた。


 「人が安心すると——においが変わる」とルルが言った。「街全体が、少し息をしてる感じ」


 「それは——良いことだ」とシアが言った。


 馬車が、城門を抜けた。


―――


 ギルド中央本部に着くと、見覚えのある濃紺の制服の職員が、すぐに動いた。


 「お部屋の準備はできています」と職員が言った。「マルス様から——『戻られたら、すぐに知らせるように』と」


 「マルス殿が?」とカインが言った。


 「お疲れのところ恐縮ですが——お時間があれば、少しだけ」


 「今日中に?」とエリナが聞いた。


 「お急ぎではないとのことです。明日でも」


 「では——明日」とエリナが言った。「今日は、休ませてください」


 職員が頷いた。


 部屋に荷物を置いた。前に泊まった部屋と、同じ部屋だった。防音の魔術が、静かに空間を満たしていた。


 「静かだ」とジンが言った。


 「行きの時も——そう思いました」とエリナが言った。「でも——今日の静かさは、少し違う気がします」


 「どう違う?」


 「緊張するための静かさじゃなくて——休むための静かさ、という感じです」


 「それは——いい静かさだ」


 エリナが、少し笑った。「はい」


―――


 翌日、マルスとの面会は、短いものだった。


 「無事に戻られて、何よりです」とマルスが言った。背筋が、いつものように、まっすぐだった。「審問会以降——ギルド内部での、皇族・教会双方からの追加の干渉はありません。引き続き——皆様の旅は、ギルドが正式に支援します」


 「ありがとうございます」とエリナが言った。


 「研究院への立ち入りについては——カイン殿の名前で、便宜が図られるよう、こちらから一筆、入れておきました」とマルスが言った。「研究院との関係について——カイン殿が、どう判断されるかは、カイン殿の自由です。ですが——資料の利用に関しては、障害がないようにします」


 カインが、少し、頭を下げた。「……感謝します」


 「次の目的地が——決まりましたら、お知らせください。アルド殿下も——気にかけておられます」


 「決まりましたら」とエリナが言った。


 それで、面会は終わった。


―――


 その日の午後、カインは研究院の地図室に入った。


 エリナが、同行した。記録のためだった。


 地図室は、高い天井に、棚が何段も並んでいる部屋だった。古い地図が、巻かれて、棚に収まっていた。羊皮紙の匂いがした。


 カインの姿を見て、何人かの研究員が、視線を上げた。それから——下げた。何も、言わなかった。


 「……様子が、変わりましたか」とエリナが小声で聞いた。


 「変わりました」とカインが言った。「以前は——もっと、話しかけられました。今は——距離を、置かれている気がします」


 「それは——良いことですか、悪いことですか」


 「わかりません」とカインが言った。「でも——必要な資料は、借りられます。それで、十分です」


 カインが、古い地形図を、何枚も取り出した。テーブルに広げた。配置図の写しを、その上に重ねた。


 「……北東。断絶の崖。これは——確定しています」カインが、写しの上に、指を置いた。触れていない。空中で、形をなぞった。「これを基準に——北西、北、東、南東、南、西の方角を、地形図の上に伸ばします」


 エリナが、手帳を開いた。ペンを構えた。


―――


 その日から、数日間が、地図と向き合う時間になった。


 カインは、毎日、地図室に通った。エリナが、何日かは同行した。何日かは、別の用事——ギルド中央本部との連絡や、旅の手配——のために、別行動を取った。


 シアは、宿の中庭で、魔法の鍛錬をしていた。誰に見せるためでもなかった。「体を、戻しておく」とだけ言った。


 ルルは、街を歩いた。一人で歩くこともあったし、ジンと一緒のこともあった。


 「何してるの?」とジンが聞いた、ある日。


 「においを、覚えてる」とルルが言った。「王都のにおい。前と——どう違うか」


 「どう違う?」


 「前は——全部、新しいにおいだった。今は——少し、覚えてるにおいがある。覚えてるにおいがあると——歩きやすい」


 「覚えてるにおいが増えると——どうなるの?」


 ルルが少し考えた。「……ここも、ちょっとだけ、帰る場所になる」


 ジンが、少し、ルルを見た。「それは——いいことだね」


 「うん」


 セレクは、最初の数日、姿を見せなかった。


 「セレクは?」とジンが、シアに聞いた。


 「教会の資料を——見に行っていると、ライエル殿から聞いた」とシアが言った。「『個人』として——閲覧の許可を取ったらしい」


 「教会に——戻ったんですか」


 「資料室だけだ、と聞いている」シアが、少し、間を置いた。「……戻りたくて戻ったわけじゃないだろう」


 「わかってます」とジンが言った。


―――


 五日目の夜、全員が、宿の一室に集まった。


 カインが、地形図を広げた。配置図の写しを、その上に重ねた。前よりも——多くの線が、地形図の上に引かれていた。


 「七つの方角の——おおよその伸ばし方が、固まりました」とカインが言った。「北東——断絶の崖。これは確定地点です。これを基準にすると——北西は、王都から見て、山岳地帯の方向。北は——大陸中央部の、未踏査領域に近い。東は——海岸線。南東は——大きな湖の方向。南は——古い国境地帯」


 「西は?」とジンが聞いた。


 カインが、少し、間を置いた。「……西が——一番、絞り込めています」


 全員が、カインを見た。


 「配置図の象徴的な距離感では——西の点が、七つの中で最も中心に近い位置にありました。地形図に重ねても——同じ傾向が見えます。王都から見て、西。それほど遠くない範囲に、収まる可能性が高い」


 「どのくらい?」


 「馬車で——三日程度。それより遠くはない、と思います」


―――


 「西の方角と言えば」とエリナが、少し、言いかけた。


 全員が、エリナを見た。


 エリナが、手帳を開いた。ページを、めくった。「今日——カイン殿と地図室に行く前に、別件で、ギルド中央本部の地誌資料を見ていました。古い記録の整理を、頼まれていたので」


 「地誌資料、というのは」とカインが聞いた。


 「各地の——廃墟や、旧街道、放棄された施設の記録です。冒険者向けの——危険区域マップの、基礎資料になっています」


 エリナが、ページを指した。


 「……カルネア平原の先に、古い街道が一本あります。王都から馬車で三日。その終点に——廃墟になった古い遺跡があると、中央本部の地誌資料に記録があります」


 誰も、すぐには話さなかった。


 「カルネア平原は——西、ですか」とジンが聞いた。


 「西です」とエリナが言った。「王都から見て——真っすぐ西。距離も——三日。カイン殿の読みと、一致します」


 カインが、地形図の上に、指を置いた。触れていない。空中で、位置を確かめた。


 「……一致します」とカインが言った。声が、少し、低くなっていた。「配置図の西の点と——地誌資料の遺跡の位置が、ほぼ重なります」


 「遺跡について——他に、何か書いてありますか」とジンが聞いた。


 エリナが、ページを読んだ。「……記録は、少ないです。『古い構造物。用途不明。立ち入り調査は、行われていない』。それだけです」


 「用途不明」とカインが言った。眼鏡をかけ直した。「断絶の崖は——『重さを知る者』。観測地は——『水と火の境界』。それぞれの場所に、性質がある。西の場所は——」


 カインが、少し、間を置いた。


 「水でも火でもない性質」


―――


 「セレク殿」とカインが言った。


 セレクが、顔を上げた。


 「教会の資料室で——何か、見つかりましたか」


 セレクが、少し、間を置いた。手元に持っていた、自分の手帳のようなものを、開いた。古い紙の束だった。


 「……何か、見つけたなら——今、聞きたいです」とジンが言った。


 セレクが、紙を一枚、取り出した。


 「教会の——古い地誌記録の中に、一つの名前があります」とセレクが言った。声が、静かだった。「カルネア平原の西の終点。記録上は、長く——名前のない遺跡として扱われています。ですが——もっと古い、別の文書の中に——一度だけ、名前が出てきます」


 「……私が読んだ教会の文書に、その遺跡の名前がありました」


 全員が、セレクを見た。


 「なんという名前ですか」とジンが聞いた。


 セレクが、少し間を置いた。


 「——『静止の祠』です」


―――


 静かだった。


 ランプの火が、小さく揺れた。


 「静止の——祠」とジンが、繰り返した。


 「『静止』という言葉が——気になります」とカインが言った。「水は流れる。火は熱を持つ。これまでの二つの場所は——どちらも、『動き』に関わる性質でした。『静止』は——その逆です」


 「動かないもの」とエリナが言った。


 「あるいは——動きを、止めるもの」とセレクが言った。


 ルルが、少し、目を閉じた。それから、開けた。


 「……西から、においが来てる」とルルが言った。「前から、少しだけ感じてた。でも——今、名前を聞いたら——においが、はっきりした気がする」


 「どんなにおい?」とジンが聞いた。


 ルルが、少し考えた。


 「……静かなにおい。怖いにおいじゃない。でも——観測地のにおいとも、違う。観測地は——温かくて、動いてた。これは——動いてない。じっと、している感じ」


 「じっと、している」


 「うん。何か——ずっと、同じ場所で、同じ形で、止まってる感じ。長い時間、止まってる」


 「止まっているのは——良いこと?悪いこと?」


 ルルが少し、考えた。「……わからない。でも——悪いにおいじゃない。ただ——他の場所とは、違う種類のにおい」


―――


 「整理しましょう」とエリナが言った。


 手帳を開いた。


 「一。残る六つの封印のうち、西の地点が、王都から最も近い可能性が高い。二。西の地点は——カルネア平原の先、古い街道の終点にある、用途不明の遺跡である可能性が高い。三。教会の古い文書に、その遺跡の名前が——『静止の祠』として記されている。四。ルルの感覚によれば——その場所のにおいは、『静止している』もので、これまでの場所とは性質が異なる」


 「次は——『静止の祠』に行く、ということですか」とジンが聞いた。


 カインが、少し、間を置いた。


 「……その前に、一つ」


 全員が、カインを見た。


 「断絶の崖です」とカインが言った。「石板の全文は——まだ、読めていません。『重さを知る者が来るまで、眠れ』。その先に——何が刻まれているか。観測地の壁の文字には——『各地の封印には、次の場所への手がかりが残されている』という構造の話がありました。道標もそうでした。もし——崖の石板にも、同じような手がかりがあるなら」


 「先に、崖に戻った方がいい」とジンが言った。


 「そう思います」とカインが言った。「『静止の祠』は——逃げません。場所も、ある程度わかっています。でも——崖の石板を読んでから行く方が、確実です」


 「順番が大事——前にも、言ってましたね」とエリナが言った。


 「言いました」とカインが言った。「焦らない方が——結局、早い気がします」


―――


 「断絶の崖、か」とジンが言った。


 少し、口の中で、繰り返した。


 最初に、封印を完成させた場所。セレクと初めて、本当の意味で向き合った場所。あの石板に触れた時の——暖かさ。


 「ルル」とジンが言った。「崖の——におい、覚えてる?」


 「覚えてる」とルルが言った。「前にも言った」


 「もう一回、聞いた」


 「いいよ」ルルが、少し、笑った。「あそこのにおいは——一度感じたら、忘れない。今でも——少し、感じる」


 「今でも?」


 「うん。ずっと、遠くで——あそこにあるにおいが、感じられる。観測地に行く前から——感じてた。今も——感じてる」


 「変わった?」


 ルルが、少し、目を閉じた。それから、開けた。


 「……前より、静かになってる気がする」とルルが言った。「ちゃんと——眠ってる感じ。でも——眠ってるだけじゃなくて、待ってる感じも、まだある」


 「待ってる」


 「うん。今度は——何を待ってるのか、わからない。でも——前と同じ、待ってるにおいがする」


―――


 その夜、宿の窓から、王都の夜景が見えた。


 灯りが、たくさんあった。三日前——ヴェルダ温泉郷の岩屋から見た星空とは、違う光だった。でも——どちらも、悪い光ではなかった、とジンは思った。


 「明後日には——出発できる」とエリナが言った。「馬車の手配と——資料の準備で、丸一日。明日は、その準備に使います」


 「断絶の崖まで——どのくらいですか」とジンが聞いた。


 「王都から——馬車と、徒歩で、合わせて二日程度です」とカインが言った。「行きの旅よりは——短い」


 「短いんですね」


 「断絶の崖は——ラングレイから見て北東でしたが、王都からは——もっと近い位置にあります。地図の上では」


 「ラングレイには——寄りますか」


 カインが、少し考えた。「……寄り道はできます。でも——今回は、寄らない方がいいかもしれません」


 「なぜですか」とエリナが聞いた。


 「ラングレイに寄ると——必ず、長居したくなります」カインが、少し、眼鏡の奥で、目を細めた。「今は——それでいい時ではない、という気がします」


 「帰る時に——ゆっくり寄りましょう」とジンが言った。


 「そうしましょう」とカインが言った。


―――


 夜が、深くなった。


 ジンは、ベッドに座って、今日のことを整理した。


 『静止の祠』。動かないもの、あるいは——動きを止めるもの。ルルが感じた、静かなにおい。怖くはないが、観測地とは違う種類のにおい。


 そして——その前に、断絶の崖。


 最初に触れた場所。最初に——「重さを知る者」という言葉を見た場所。


 (また、あそこに行く)


 不思議な感覚だった。怖さではなかった。懐かしさでもなかった。——確認、という言葉が、一番近い気がした。あの時、わからなかったことを、今ならわかるかもしれない。そういう確認。


 問いは、まだ育っている途中だった。「世界が流れ続けることを——俺が望むかどうか」。観測地で、初めて見えた問い。


 その答えに——もう一歩近づくために、最初の場所に戻る。


 ジンは、少し笑った。


 (順番が大事、か)


 カインらしい言葉だった。でも——その通りだと思った。


 窓の外で、王都の灯りが、静かに揺れていた。


 七人は、それぞれの部屋で、それぞれの夜を過ごした。


 明日は——準備の日。


 明後日——崖へ。


 王都は、静かだった。


―――


― 第30話・了 ―


―――


次話予告:翌々日の朝、一行は王都を出発した。馬車に乗り、北東へ。二日目の午後、見覚えのある岩盤地帯が見えてきた。「ここから——徒歩です」とカインが言った。崖に近づくにつれ、ルルの表情が変わった。「……においが、強くなってる」「前と同じにおい?」「同じ。でも——少し違う。前は——『待ってる』だけだった。今は——『応えようとしてる』感じがする」。一行は、隠し空間の入り口に立った。石板が、そこにあった。ジンが、石板に手を伸ばした。「触れますか」とカインが聞いた。ジンが少し、間を置いた。「……はい」。


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