表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
無詠唱の魔王  作者: Dちゃん
第二章「王都に響く歯車の話」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
22/50

第22話「結論文書と、マルスが加えた一文と、次が始まる朝」

三日後の朝、結論文書が届いた。


宿の受付が「ギルドからの書状です」と言って、茶色の封筒を差し出した。封蝋はギルドの紋章——交差した剣と羽根ペン。赤い蝋が、朝の光の中でくすんだ色をしていた。


エリナが、受け取った。


封を開いた。紙を広げた。


一行、二行、三行——エリナの視線が、紙の上を走った。途中で、止まった。


一秒。二秒。


「……エリナ?」とジンが言った。


エリナが顔を上げた。


「読んでください」と言った。声が、落ち着いていた。落ち着いていたが——その目に、何かが入っていた。怖いのとも、嬉しいのとも、少し違う何かが。


ジンが紙を受け取った。


―――


結論文書は、三ページあった。


一ページ目——封印の安全性について。ジンたちの証言と、カインの資料と、セレクの証言が整合するとして、「外部への危険な力の放出は確認されなかった」という結論が、正式に記録された。


二ページ目——ジンの権利について。ギルドの登録者としての権利は、出自によって否定されない。異議申し立てに対しては、規則の解釈の問題として、「ギルドの枠組みの中での実績を優先する」という判断が示された。


三ページ目——教会の介入について。


特別教令部によるラングレイ支部への一連の要求は「ギルドの規則の外での行動であり、越権行為に該当する」と、明確な言葉で記された。


「可能性、ではなくなった」とエリナが言った。「審問の場で言っていた『可能性が高い』が——正式文書では、断定になっています」


「それは、強い?」とジンが聞いた。


「強いです。ギルドの正式文書に越権行為と書かれた場合、教会が同じ手を使うことは——少なくともギルドに対しては、今後ずっと難しくなります」


シアが「それが、マルスの狙いだった」と言った。「審問で勝つのではなく——記録を作ることが、目的だった」


「記録の方が、判決より長持ちする」とカインが言った。「判決は覆ることがある。でも——正式な記録に残った事実は、消えない」


「マルスって、頭いいな」とジンが言った。


「頭が良い人です」とエリナが言った。「そして——もう一つ、あります」


エリナが、紙の末尾を指さした。


―――


文書の末尾。通常の審問結論が終わった後に、一行だけ、付け加えられていた。


公式の書面でありながら、そこには最高責任者であるマルス本人のものと分かる、力強い署名と直筆の筆跡が残されていた。


「本審問において確認された事案は、ギルドの範疇を超える可能性があります。王室との正式な協議を推奨します」


エリナの指先が、じわりと熱を帯びるように震えた。


かつてラングレイの冷たい事務室で、教会の影に怯えながら書類をめくっていた、あの指だ。届かないかもしれないと思いながら書いた相談状が、中央の、それも法務担当の最高峰の手によって——こういう形で応えられた。


胸の底から突き上げてくるものを、エリナはプロとして、静かに、深く噛み締めた。


「……やられた」


ぽつりと零れた声は、どこまでも誇らしかった。


「どういう意味?」とジンが言った。


エリナが少し間を置いた。眼鏡の奥の瞳が、かつてないほど生き生きと光っていた。「次が、始まる、ということだと思います」


「次というのは」とカインが言った。


「今回の審問は、ギルドと教会の問題として処理されました。でも——マルスはここに、王室との協議を加えた。これは……ギルドが一人で抱えられる話ではないと、マルスが判断したということです」


「アル・ヴェリアの封印が守っていたものが、何なのか、という話を」とカインが続けた。「正式な場で、問う必要が出てきた」


「王室も含めて、という意味ですか」とエリナが言った。


「おそらく」


テーブルに沈黙が落ちた。重い沈黙ではなかった。でも——何かが動き出した感じがする、静かな沈黙だった。


ルルが「においが変わった」と言った。


「どう変わった?」


「前まで——重くて、ざわざわしてたにおい。それが、少し——整理された感じのにおいになった。決まったことが、ちゃんと決まった感じ」


「それは、良いことだ」とシアが言った。


「でも——次のにおいも、もうしてる」ルルが言った。「昨日よりはっきり。何かが動き始める前の、新しいにおい」


―――


昼過ぎに、ライエルが来た。


今日も白い外套ではなく、灰色の上着。でも——昨日より少し、背筋が真っ直ぐな気がした。


「読みましたか」とライエルが言った。


「読みました」とエリナが言った。「末尾の一文も」


「あれは——マルスが、独断で加えた文です」ライエルが言った。「私との事前の調整はなかった」


「驚きましたか」とカインが聞いた。


ライエルが少し間を置いた。「……驚きませんでした。マルスがそう判断すると——思っていた」


「なぜ想定していたのに、事前に調整しなかったのですか」とエリナが言った。声が、静かだが、真っ直ぐだった。


ライエルが少し、エリナを見た。


「……マルスが独断で動いた方が、重みが違うからです。王室が誘導したのではなく、ギルドが自らの判断で王室との協議を求めた——その形が、必要でした」


「つまり——ライエルさんは、マルスが動くことを知っていて、あえて何も言わなかった」


「そうです」


エリナが少し、息を吐いた。怒っているのか、感心しているのか——両方かもしれなかった。


「……ライエルさんは、いつもそういうやり方をするのですか」


「王室の仕事は——最小の手で、最大の効果を出すことです。私が動いた痕跡が残らない形で物事が進む時が、一番うまくいく」


「それは——孤独なやり方だと思います」とエリナが言った。


ライエルが少し、止まった。


「……指摘されたことがない言い方をしますね」


「受付嬢は、人の言葉を聞く仕事ですから」


短い沈黙があった。


「王室との正式な協議については」ライエルが、続けた。声が、元に戻った。「アルド殿下が動かれます。今夜——改めて時間を取りたいと言っています」


「また来るんですか」とジンが言った。


「アルドらしい」とカインが言った。「間を置かない」


「よっぽど、話したいことがあるんだろうな」とジンが言った。


ライエルが「そうです」と言った。「今夜は——次の話です。審問の結論を足場にして、どこへ向かうか」


―――


夕方前に、エリナはギルド中央本部に一人で赴いた。


マルスへの挨拶を、したかった。それだけのつもりだった。


マルスは、小会議室にいた。書類の山の中に座って、眼鏡の奥の目が、静かにエリナを見た。


「来ると思っていました」とマルスが言った。


「礼を言いに来ました」とエリナが言った。「末尾の一文——ありがとうございました」


「礼は要りません。あれは——私の判断です。ギルドとして、必要な一文でした」


「ギルドとして、ですか」


「ギルドは、規律の中で動く。でも——規律は、世界が動くためにあります。世界が動かなくなりそうな時に、規律を守るだけでは、規律の意味がなくなる」


エリナが少し、マルスを見た。


「……マルスさんは、最初からそこまで見えていたのですか」


「最初からではない。あなたの相談状を読んだ時に——見えてきた」マルスが少し、口元を動かした。「辺境の受付嬢が、キャリアを捨てる覚悟で書いた文章です。それが問うていた問いを、正確に読めば——答えは、ここしかなかった」


「問い?」


「規律が、現実に追いついているか。それが、あなたの問いでした。気づいていましたか?」


エリナが少し間を置いた。「……気づいていなかったかもしれません。でも——そういう問いを立てていたと言われると、腑に落ちます」


「良い受付嬢は——問いを立てる」マルスが静かに言った。「答えを出すだけが仕事ではない。正しい問いを、正しい場所に届ける。あなたはそれをした」


「……はい」


「これからも、続けてください」


エリナが一度、深く頷いた。


部屋の外に出た。廊下の灯りが、静かにエリナの足元を照らしていた。


手帳を、鞄の中で確かめた。今日は、書ける。書きたいことが、ある。


―――


夜。


宿の小さな談話室に、六人とアルドが集まった。


アルドは今夜も護衛なしに、灰色の外套で来た。でも——前回より、顔が違う。前回は、探るような顔だった。今夜は——決めてきた顔だ。


「結論文書、読みました」とアルドが言った。「マルスがよくやってくれた。あの一文は——私が頼んでいたわけではありません」


「知っています」とライエルが言った。


「ライエルも、知っていた?」


「想定の範囲でした」


アルドが少し笑った。「さすがです。私は——少しだけ驚いた。マルスが動くのは早いと思っていたが、ここまでとは」


「マルスさんて、どういう人なんですか」とジンが聞いた。「アルドから見ると」


アルドが少し考えた。「……信頼できる人間です。規律を守るためなら、自分の立場を危険に晒せる。それは——珍しい」


「今回の一文も、危険なんですか」


「ギルドが王室に対して協議を求める形を作った。これは——ギルドが単独の組織であることを、ある意味で手放した行為です。マルスにとっては、ギルドの独立性の一部を犠牲にしたとも言える」


「それでも、書いたんですね」とエリナが言った。


「そうです。それが——マルス・ヴェインという人間です」


短い沈黙があった。その沈黙に、マルスへの敬意が、静かに満ちた。


―――


「本題に入りましょう」とアルドが言った。「王室との協議について——私が動きます。ただし、正式な協議の前に、一つだけ、皆さんに確認したいことがあります」


「何ですか」とエリナが聞いた。手帳を持っている。開いていい、とライエルが頷いた。


「アル・ヴェリアが守っていたもの——封印の先に何があるのか。それについて、カイン殿はどこまで見えていますか」


カインが少し、書冊を開いた。


「……現時点での見立てを、お伝えします」カインが言った。「アル・ヴェリアの術式には、『水と火の間』というキーワードが残っています。これは——封印の場所を示す言葉ではなく、おそらく、封印が守ってきたものの在り処を示す言葉だと思っています」


「水と火の間」アルドが繰り返した。「それが、どこにあるか、わかりますか」


「まだわかりません」カインが言った。「ただ——封印が完成したことで、何かが動いた可能性があります。アル・ヴェリアが守っていたものが、引き継がれた者——ジン殿に——何らかの形で次の手がかりを渡そうとしているとすれば」


全員がジンを見た。


ジンが少し困った顔をした。「俺に聞かれても」


「封印が完成した時——何か、残像のようなものを見ませんでしたか。あるいは——言葉、声、場所のイメージ」


「暖かかった」とジンが言った。「ありがとうって言われた気がした。あとは——そうだな」


ジンが少し、遠くを見る顔をした。


「……光、みたいなものが見えた気がする。一瞬だけ。水の中を光が通るみたいな感じの」


カインが「水の中の光」と繰り返した。眼鏡の奥で、目が少し動いた。


「それを、今まで言わなかった理由は?」とシアが聞いた。


「忘れてた」


シアが額に手を当てた。


「忘れてたじゃないか」


「ごめん。でも——今言えた」


アルドが少し笑った。今度は、軽い笑い方ではなかった。「水の中の光——それは、王都の北にある『王立水鏡の間』を連想させます」


「王立水鏡の間?」とエリナが顔を上げた。


「王宮の中の、古い場所です。今は儀礼用に使っていますが——もとは、何かの観測施設だったという記録がある。水と鏡と光が交差する場所として、建物の図面には記されています」


「水と火の間の——水、ということですか」とカインが言った。声が、少し上がった。


「断言はできません。ただ——調べる価値はある」


「入れますか。王宮に」とエリナが聞いた。


「王太子が案内すれば、入れます」アルドが言った。軽く言ったが——その目は、真剣だった。「ただし——正式な王室との協議の後、ということにしたい。順番は守る」


「なぜ、順番にこだわるんですか」とジンが聞いた。


アルドが少し、ジンを見た。


「急いで動いて、後から修正することが——王室では多い。私は——それを変えたい。先に土台を作って、その上に次を積む。そういう動き方を、したいんです」


「それは……ライエルと同じ考え方ですか?」


アルドが、ライエルを見た。ライエルが、少し、視線を外した。


「……そうかもしれません」アルドが言った。「私は、ライエルの仕事の仕方を、学んでいる部分があります」


ライエルが「……それは、買いかぶりです」と言った。珍しく、少し小さな声で。


「買いかぶりじゃない」


短い沈黙があった。二人の間に、何か——長い時間の蓄積のようなものが、ある感じがした。ジンにはその内容まではわからなかったが、悪いものではないことは、確かにわかった。


―――


「王室との協議は——三日後を予定します」とアルドが言った。「正式な場を用意します。ギルドからはマルスが同席。教会には——通知します。来るかどうかは、向こうの判断ですが」


「教会は来ますか?」とエリナが聞いた。


「わかりません」とライエルが答えた。「ただ——来ない選択は、教会にとって不利です。来なければ、議論の場から外れることになる」


「セレクは来ると思う?」とジンが聞いた。


ルルが「においが——来る感じ」と言った。「さっきまで遠かったのが、また近づいてきてる」


「今夜, 近くにいるんですか」とライエルが言った。


「たぶん。でも——近くにいるのに、前みたいな圧迫感がない。昨日の審問のあとと同じ感じ。近いけど、落ち着いてるにおい」


「……変わりつつある、か」とカインが言った。


「それは——読めない変数です」とライエルが言った。「ただし、今のところは敵対的な動きはない」


「それで十分だと思う」とジンが言った。


ライエルが少し、ジンを見た。「あなたは、いつも、それで十分と言いますね」


「十分じゃないことを考えても、変わらないし。今わかってることで、動けばいいじゃないですか」


「……そうかもしれません」


―――


会合が終わったのは、夜の深い時間だった。


アルドが先に帰った。廊下で一度振り返って「三日後——よろしくお願いします」と言った。今夜は、審問の前夜のようなどこか切迫した感じではなく——次を楽しみにしているような顔だった。


ライエルが片付けをしながら「今夜は——話が多かった」と言った。


「良い話でしたけど」とジンが言った。


「そうですね」ライエルが少し間を置いた。「……良い話でした」


声が、少しだけ——柔らかかった。


シアが「帰ろう」と言った。


五人が廊下を歩いた。


―――


部屋に戻って、エリナは手帳を開いた。


今夜は——ためらいなく、開けた。


審問の前夜に仕舞った手帳は、引き出しの中にある。今日のための新しい手帳を、朝から使っていた。そのページに、今夜起きたことを書く。


マルスが加えた一文。アルドが話した王立水鏡の間。ジンが今まで言っていなかった、水の中の光のイメージ。ライエルとアルドの間にある、長い時間の蓄積の感じ。


書きたいことが、たくさんある。


ペンが、白いページの上を走った。迷いなく。


かつて怖くて震えていた手ではなかった。ここに来て、この人たちと動いて——今の自分の手は、記録したいから動いている。


(次が、始まる)


エリナはランプの明かりの下で、静かに、しっかりと、今夜の出来事を全部書いた。


―――


シアは、窓を少し開けていた。


王都の夜の空気が入ってくる。冷たい。でも——気持ちが良い。


机の上に、紙がある。ペンがある。


今夜は——書く気がした。昨夜も書こうとして、でも宛先がわからなくて、ただ持っているだけだった。今夜は違う。宛先が、ある。


カインへの手紙だ。


すぐ近くの部屋にいるのだから、明日、直接話せばいい。口下手な自分が、あえてこんな回りくどいことをするのは——可笑しいと、自分でも思う。


底も——書きたかった。


声にすれば消えてしまうものを、形にして、今の自分の中に留めておきたかった。


かつて勇者パーティーにいた頃の癖で、一人称が少しだけ「俺」になる。それでいい、と思った。長い釈明も、大仰な感謝もいらない。


ただ——十年という時間を飛び越えて、声ではなく文字で、あいつに伝えたかった。


「ラングレイでジンに出会って、みんなと旅をして、ここに来て——良かったと思っている」


不器用な天才魔法使いが夜の静寂に刻んだ言葉は、短く、けれど確かに温かかった。


―――


ルルはジンの部屋の扉をノックした。


「どうした?」とジンが扉を開けて言った。


「眠れない」


「怖い感じ?」


「違う。ざわざわしてる感じ。良いざわざわ」


ジンが廊下に出た。二人で、窓のそばに並んで座った。


「においは?」


「さっきより、また変わった」ルルが言った。「王都全体のにおいが——落ち着いてきた。審問の前は、みんながいろんな方向を向いてたにおいだった。でも今は——少し、同じ方向を向き始めてる感じ」


「同じ方向って、どっち?」


ルルが少し、考えた。「……前、かな。みんなが、前を向いてる感じ」


「それは、良い変化だね」


「うん」ルルが言った。「怖いのは——まだ、少しある。でも、良いにおいの方が強い」


「俺も少し怖いよ、次のこと」とジンが言った。「でも——続けられる感じはある」


「うん」ルルが頷いた。「あたしも」


しばらく、二人は窓から王都の夜を見た。灯りが多い。星は少ない。でも——遠くに、いくつか、光が見えた。


「ジン」


「何?」


「次も——一緒に行く?」


「当然じゃん」


ルルが少し笑った。「……うん。そうだよね」


「王立水鏡の間、楽しそうだと思わない?」


「思う。においが、きれいそう」


「水と光って、良い組み合わせだよ」


「うん」


―――


ルルが部屋に戻ってから、ジンは一人、廊下の窓のそばに座っていた。


(水の中の光)


断絶の崖で見た、あの感覚を——今夜初めて、声に出して言った。カインの目が動いた。アルドが「王立水鏡の間」と言った。何かに繋がった感じがした。


忘れていた、というよりは——言葉にする前のところに、ずっとあった、という感じだった。石板に触れた時の感覚は、体の奥にまだある。暖かい感触として。ありがとう、という声として。そして——あの光の感じとして。


(アル・ヴェリアが、残してくれたものかな)


頭の中で、静かに思った。400年前に、誰かが来ることを信じて残した。それがジンに届いた。カインが言っていた通りだと、今夜また思った。


でも——それだけじゃない、とも思う。カインがいなければ、崖まで行く理由もなかった。シアがいなければ、石板に触れる前に何かに邪魔されていたかもしれない。エリナが書かなければ、ここまで来られなかった。ルルがにおいで感じ取ってくれなければ、分からなかったことが、いくつもある。


俺たちの全部が、あそこにいた。


それが——次も続く。


(続けられる)


ジンは立ち上がった。窓から離れて、自分の部屋へ歩いた。


三日後。


王室との協議。王立水鏡の間。「水と火の間」の先。


怖いか、と自分に聞いた。怖い、と思った。でも——続けられる。それで十分だと、ジンにはわかっていた。


ベッドに横になった。


王都の鐘が、遠くで鳴った。低い音。夜の、どこかの時刻を告げる音。


音が消えた後、部屋が静かになった。


窓から、王都の夜が見えた。灯りが多い。星は少ない。でも——今夜は、昨夜より少し、星が見えた。


―――


― 第22話・了 ―


―――


次話予告:三日後の朝。王宮の謁見室に、ジンたちとマルス、そしてアルドが揃った。ギルドと王室の正式な協議——その席に、白い法衣ではなく、灰色の外套を着たセレクが現れた。「個人の立場で、発言することは許されますか」——セレクが言った。アルドが少し、笑った。「どうぞ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ