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(3)

「っ……!? な、何をするんだ、この……!」

 顔が一瞬で熱くなった。頰が真っ赤に染まるのが自分でも分かる。

 慌てて左腕で胸を隠そうとしたが、完全に隠しきれず、むしろ柔肉が腕に押しつけられて強調されてしまう。

「ほ、本当にごめん! 狙ったわけじゃない!!」

 アッシュは慌てふためいていた。

「おぬしら、何をやっておるんだ……」

 上空ではリゼットが目を丸くしている。

「……しばらく後ろ向いてろ!!」

 自分でも驚くほど大きな声が出た。

 アッシュがびくっと肩を跳ねさせる。

「は、はい!!」

 勢いよく背を向けるその様子が妙に真面目で、逆に腹が立つ。

 私は急いで破れたキャミソールの布を両手で寄せ、端をきつく縛った。縦に裂かれた布が胸の谷間で結ばれ、なんとか乳房を隠す形になる。しかし、布が足りず、深い谷間はほとんど隠しきれず、むしろ強調されてしまっている。

(……恥ずかしい……悔しい……!)

 胸の奥が熱くなって、視界がじわりと滲んだ。涙が浮かぶ。男勝りで、誰にも弱みを見せたことのない私が、こんなところで……しかもこの男の前で、胸を丸出しにして可愛い悲鳴まで上げてしまったなんて。

「ぷっ……クスクス」

 頭上から、いかにも面白がる声。

 リゼットが宙に浮かびながら頬杖をついていた。

「意外だな。おぬし、案外うぶなのだな」

「……は?」

 私はぎろりと睨む。

 妖精は肩をすくめ、くすくす笑った。

「そんな格好しているのじゃ。もっと男慣れしておるものかと思っていた」

 ぴたり。

 私は数秒固まる。

 そして。

「ふざけるな!!」

 思わず叫んでいた。

 リゼットが目をぱちくりさせる。

「男にこんな近くで見られたの、初めてだ!!」

 後ろを向いていたアッシュが、ぴしっと固まった。

「えっ」

 耳まで赤くなっているのが、後ろ姿でもわかる。

「き、聞こえてますよ!? 俺、今の聞かなかったことに――」

「聞くな!!」

 反射で怒鳴る。

「はい!!」

 また背筋が伸びる。

 リゼットはとうとう吹き出した。

「くくっ……これは傑作だ」

「笑うな!」

 私は結び直した服をぐいっと引っ張り、深く息を吐いた。

(この男のせいで……!)

 悔しさと、わけのわからないもどかしさが胸の奥で渦巻いていた。初めて男に大事な部分を見られたのに、なぜかアッシュに対してだけは、ただの怒りだけではない感情が混じっている。

 リゼットはまだニヤニヤしながら、私の耳元で囁いた。

「ふふっ、次はもっと気をつけるのじゃぞ、ルシェリア」

 私は長棒を握りしめ、唇を噛んだ。

 この屈辱は、絶対に忘れない。


「……よし」

 私は長棒を握り直し、深く息を吸った。

 顔の熱はまだ引かない。

 恥ずかしさも、悔しさも残っている。

 だが――だからこそ。

「再開だ!!」

 石畳を踏み鳴らし、私は構えを取る。

 アッシュがぎょっとした顔になる。

「うわ、めちゃくちゃ怒ってますよ!? リゼット様、これ絶対通してくれない流れですよ!」

 宙に浮かぶリゼットが腕を組み、面白そうに目を細める。

「ふむ……ならば“アレ”だな」

 アッシュがぎくりと振り向く。

「アレですか!?」

「危害を加えたくないのじゃろ?」

「何をゴチャゴチャ言ってる!」

 冷静さを完全に欠いていた。羞恥と怒りが混じり合い、いつもより動きが粗くなっているのが自分でも分かった。

 私は地面を蹴り、挑みかかった。長棒を大きく振りかぶり、力任せの一撃を放つ。

 次の瞬間――アッシュの体が低く沈み、私の両足首をがっしりと掴み、引き寄せた。

 一瞬でバランスを崩され、仰向けに派手に倒れ込む。石畳の冷たさが背中に広がる間もなく、アッシュが素早くまたがり込んできた。馬乗りで私の腰を完全に封じ込める。

「離せ……っ!」

 腕を伸ばして押し除けようとする。

 両腋が完全に無防備になった。

 そこへアッシュの手が滑りこんでくる。

「ひゃあっ!? な、なにを……あははははっ!!」

 敏感な腋の下を容赦なくこちょこちょこちょとくすぐってきた。

「や、やめ……あはっ! くすぐったい……! あはははっ!!」

 私は全身を激しくのけぞらせ、甲高い笑い声を爆発させた。身体がびくんびくんと痙攣するように跳ね上がり、豊満な乳房が激しく上下に弾む。破れた布がほとんど意味をなさず、白く大きな胸が大きくはみ出し、戦いの汗でぬるぬると光りながら激しく揺れた。

「あはははっ! やめ……やめてぇっ! あっ、あははははは〜っ!! くすぐった……いぃっ!!」

 足をばたつかせ、腰をくねらせて必死に逃げようとするが、アッシュの体重が乗っているせいで身動きが取れない。短いスカートは完全に捲れ上がり、黒い布地の下の白い太ももと、薄い下着が露わになるほどに。

「ひゃうっ!? あははははっ! そこ……だめっ、弱い……あははははは〜っ!!」

 涙がぼろぼろと溢れ、頰を伝う。口元からは涎が少し垂れ、男勝りな私が完全に崩壊していた。身体中が熱く火照り、くすぐったさと一緒に、得体の知れない甘い痺れが下腹部にまで広がっていく。

「ふふっ! すごい反応! アッシュ、もっと奥まで攻めてやるのじゃ!」

 リゼットが楽しそうに笑いながら煽る。

「こ、この……卑怯者……! あはははっ! 戦士が……くすぐりなんかで……ひゃあんっ!! あははははは〜っ!!」

 声が完全に裏返り、甘い喘ぎのような悲鳴に変わっていく。

 アッシュは顔を真っ赤にしながらも、手を止めない。

「ごめんなさい……! でもこれしか……!」

(くっ……この男……! 私の身体を……こんなに……!)

 頭の中が真っ白になり、羞恥とくすぐったさと、初めて感じる甘い感覚で思考が溶けそうだった。


「ひゃあんっ! あははははは〜っ!!」

 私は必死に体をよじり、腰をくねらせてアッシュの体重を振りほどこうとあがいた。足をばたつかせ全身で抵抗する。しかし彼の膝は私の腰をがっちりと押さえつけ、逃げられない。

「やめ……離してっ! あはははっ!」

 なんとか手を引きはがそうとする。

 一瞬、彼の手が離れたかと思った。

 次の瞬間――今度は脇腹の柔らかい部分を、指先が素早く這い回った。

「ひゃううっ!? そこは……あははははははっ!! だめぇっ、あはははは〜っ!!」

 情けない笑い声が止まらない。体が弓なりに反り、豊満な乳房が激しく弾んで破れた布の間から完全にこぼれ落ちそうになる。

「くすぐった……いぃっ! あははははっ!」

 さらに彼の手が移動し、今度は首元と鎖骨のあたりを優しく、しかし容赦なくくすぐってきた。

「ひゃっ!? あははははは〜っ!! 首は……弱い……あははははっ! やめてぇええっ!!」

 全身がびくびくと痙攣する。涙が止まらず頰を伝い、口からは涎が零れ落ちる。短いスカートは完全に捲れ上がり、太ももを大きく広げた淫らな格好で石畳に横たわっている。

(くっ……男に……言いようにされてる……!)

 悔しい。こんなにも悔しいことはない。

 なのに……耐えられない。

 息ができないほど笑い続け、肺が痛い。腹筋が痙攣して力が入らず、ただ無様に身をよじるばかり。戦士としてのプライドが、粉々に砕けていく。

「ご、ごめんなさ……いぃっ! あははははは〜っ!!」

 限界だった。

 私は完全に崩れ落ち、情けない声で叫んだ。

「ごめんなさい〜っ!! 降参……します……! もう……許してぇ……あはは……っ!」

 声が甘く掠れ、涙でぐしゃぐしゃになった顔を背けながら、私はついに白旗を上げた。

 アッシュの手がようやく止まる。

 私は荒い息を繰り返し、仰向けのままぐったりと石畳に広がっていた。破れたキャミソールはほとんど役目を果たさず、汗にまみれた豊満な胸が大きく上下している。太ももを震わせ、情けなく降参した自分が、信じられなかった。

(……最悪……)

 リゼットは大笑いしていた。

「ふふふっ! ルシェリア、完敗じゃのう」


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