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【完結】私の夫君~聖女のおまけと女性騎士様の、穏やかで賑やかな偽装結婚~  作者: 夢子


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オット伯爵夫妻

 聖女アリスが帰還して半年後。

 クオンとクレオの盛大な結婚式が執り行われることとなった。


 これはクオンが浄化の旅へ出る前の国家支援の行事。


 国内中の小さな瘴気は、クオンが魔力を抜き、アリスが魔力を注いだ魔石で消滅させることができたのだが、大きな瘴気の集まる場所へは、クオン自ら足を運ぶ必要があったため、貴族平民問わず、クオンを認知させるためには、結婚式でお披露目することが一番手っ取り早かった。


 大きな瘴気の集まる場所は王都を中心に見て、西の端にある領地の森と、東の端にある領地の森の二つだけ。


 馬車で向かえば一月はかかる場所だが、クオンとクレオにとっては、新婚旅行の代わりにもなる楽しい旅になることだろう。二人に気負った様子がないことから、近しい人たちにはそう判断されていた。


 大きな瘴気がここまで少ない原因は、実は教会の研究にあった。


 瘴気魔獣を作る為、人命を使い瘴気研究をしてきた教会は、身勝手な行動ではあったが、瘴気を減らす役には立っていたのである。


 その教会だが、現教皇リヌスが力を振るっていた王都の教会内は、リヌス教皇の独裁のせいで腐っていたが、他領の教会には信徒想いの司祭が多くいた。


 勿論、リヌス教皇の意向に従い理不尽な力を振るうものもいたが、今回の事件を受け、その者たちは皆、()()()()()()()()()()()に一生を捧げる機会を王家から頂けた。


 今後教会は王家と対等の立場ではなく、協力者として一から立て直すことになる。

 新教皇はガルデン公爵家の血縁者の中で、キーランの次に聖神力の強いものが選ばれることになるそうだ。


 これにより、国内で教会が王家の許可もなく自由勝手にふるまうことは無くなるだろう。


 孤児院も当然、教会と王家が運営するものに差異が無くなり、売られるように教会運営の孤児院へ預けられる子もいなくなる。


 レオのような辛い思いをする子供が減り、幸せな生活を送れる子供が増えることを願うばかりだった。




「わぁ~! クレオ、綺麗~!」


 新たな教皇を迎えた教会内、クレオのいる控室にクオンが顔を出す。

 結婚式用のドレスを着るクレオは文句なしに美しく、女神そのもので、クオンからは本音の言葉が漏れてしまう。


「……有難うございます。クオンも素敵です。それに今日はなんだか……」


「なんだか?」


「……えっと、男らしくも見えますね……フフフ」


 いつもならば可愛いと思ってしまうクオンの姿も、結婚式用のタキシード姿となるとちょっと違う。

 可愛さよりも品位を感じさせ、クレオよりもよっぽど美しいとクレオには思えた。


 勿論そんな恥ずかしいことは()()()()は本人には言わないが、皆が納得の感想だろうなとクレオは思っていた。


「僕、こんなに綺麗な人と結婚出来て幸せ、えっと、かほーもの? 合ってる?」


「フフ、それは果報者でしょうか? それとも家宝もの? フフフ」


「そう、それ! どっちも正しい! クレオ僕の宝! 僕果報者! 幸せ!」


「クオン、有難うございます。でもそれは私のセリフですよ」


 クレオの控室に集まる家族皆が、相変わらず仲の良い二人に諦めの笑顔を向ける。


 この二人はきっといくつになってもこうやってイチャつきを見せつけるのだろう。


 それに今日は結婚式、無粋なことは出来ない。

 ならばもう放っておくしかないだろう。

 そんな諦めの境地に到着していたと言える。


「お父さん、お母さん、クレオを産んでくれて、育ててくれて、有難うございます。これからは僕がクレオを大事にする。それで世界一の幸せ者に()()なる」


「フフ、クレオがクーオン様を世界一の幸せ者にするのですか……クレオの力は思った以上に凄いもののようですね」


「うん、クレオ凄い」


「そうですか……有難うございます、クーオン様。どうかクレオのことを、これからも宜しくお願い致しますね」


「はい!」


 クレオの両親であるアトラスとグレースに挨拶を終えたクオンは、今度は数か月前に結婚したばかりの姉夫婦へと顔を向けた。


「グレースさん、アドルフさん、今日は有難う。僕、クレオ大事にする。それに二人のことも大事にする。宜しくね」


「ええ、勿論ですわ、クーオン様。お二人の姉としてキーラン侯爵家を継ぐ者として、私も精一杯のことをさせていただきます、よろしくお願い致しますわね」


「クーオン様、私もです。私はまだ婿入りして間もないですが、クーオン様のお力になれるよう尽力させていただきます」


「うん、有難う」


 クレオの手を取りながら家族に挨拶を済ませていると、慌てた様子のジミーとホセがクレオの控室へと駆け込んで来た。


 エラに見つかったら怒られる行為だが、エラは既に会場内にいる為命拾いしたともいえる。


「クーオン様! いた! もう、勝手に控室を抜け出してはダメじゃないですか! 陛下がお越しですよ!」


「そうですよ、クーオン様! トイレに行くって! クレオ様の控室、トイレと反対方向じゃないですか! 探したんですよ~!」


「えへへ、だってクレオ早く見たかったんだもん、ちょっとぐらい良いでしょう?」


「だもんじゃありません! ちょっともダメです!」


「可愛い顔したって駄目ですからね! あとで()()()()お説教してもらいますから!」


「わ~、二人怖~い」


 伯爵となったクオンの専属騎士として改めて雇い直され、正装に身を包んだホセとジミーがクオンを引っ張っていく。


 新郎であるクオンは、本来クレオのドレス姿は結婚式で初めてお目にかかれるのだが、それでは勿体ないとクオンは二人を上手く撒き、控室へやって来たのだ。二人が慌てるのも当然。クオンはいたずらっ子な顔をした確信犯だった。


「はぁ~、クレオ、綺麗だったね~」


「「……」」


 ウットリとした様子でそんな率直な言葉を吐くクオン。

 この国の男性は遠回しな告白しかしないため、いつでもどこでもクレオを褒めるクオンは、二人には勇者のように映っている。


「くそっ、これがモテる秘訣か……俺には無理だ……」


「リア充爆ぜろでしたっけ? 俺、その言葉の意味が良~く分かった気がします……」


 クオンと出会ってから丸一年。

 未だに恋人も婚約者もいない二人は、クレオと仲が良すぎるクオンが羨ましすぎて仕方がない。


「もう、二人も、ちゃんと気持ち伝えないと」


「「えっ?」」


「好きな子いるでしょ? 僕気づかない思った? ちゃんと言わないと誰かに取られちゃうよー、僕知らないからねー」


「「……」」


 ニタニタ笑うクオンは小憎らしいが、言いたいことは分かる。


 確かにホセとジミーが恋する相手は高嶺の花。


 騎士として高位の立場になったとはいえ二人は元平民だ。

 元から貴族令嬢であり、高位の騎士である女性には相手にされない可能性が高い。

 成就するには背水の陣で挑まなければ、叶うことなど難しいだろう。


 クオンのように心の想いをそのままぶつけて……

 は当然無理なので、まずは一歩前進できるようデートの誘いを行ってみようと、そう決めた。


「命短し恋せよ乙女(騎士様)だね」


 クスクス楽し気に笑うクオンの言葉に、ホセとジミーの顔色が悪くなる。


「クーオン様、それシャレになりませんから」


「俺たちへの死刑宣告ですか? それともフラれるの前提ってことですかー?」


 仲の良さを表すように、楽しい掛け合いをしながらクオンの控室へ戻ると、王家の皆が待っていた。


「陛下、すみません、お待たせしました」


「いいえ、クーオン様、先ほど来たばかりですよ。気になさらないで下さい」


 クオンには親がいないため、王家が親代わりとして今日の結婚式に出席している。

 ヒューイットと王妃がクオンの親代わりになる以上、クオンは勿論王族扱い。

 今はまだ伯爵位だが、いずれ公爵位に就くための伏線であるが、そこはクオンには秘密だった。


「陛下、良いお屋敷をありがとうございました。僕、立派で驚きました」


「クーオン様の魔石への貢献や浄化の旅へ出ていただけることを考えれば、まだまだ足りないぐらいですが、気に入っていただけて良かったです。丁度いい屋敷が空きましたからね」


 クオン達の新居は犯罪者となったアダム伯爵の元屋敷。

 伯爵位に就く者にしては分不相応な屋敷で、本来ならば侯爵位辺りが持つべき大きさの屋敷であった。


 クオンの為に良い屋敷がないかと、王都内で建物や土地を探していた王家だったが、幸運なことに丁度良く彼らの()()()()が決まった。


 アダム伯爵の屋敷は王城にも近く、キンリー侯爵家の屋敷にも遠くなく、キーランの実家ガルデン公爵家とも程よい距離にあった。


 その為、趣味の悪い調度品は売り払い、派手な壁紙は張り替えをし、クオンやクレオが落ち着いて過ごせる屋敷に模様替えを行ったのだが、どうやら見学に行ったクオンに気に入って貰えたらしい。


 これにはヒューイットもデーヴィッドも胸をなでおろした。

 趣味の悪い内装を急いで変えただけのことはあった。

 クオンの一言で報われたし、自分たちの仕事ぶりを褒めてあげたい気持ちになれた。



「皆さま、そろそろお時間です」


 教会の新しい司祭がクオンに声を掛ける。

 クオンは先に教会内の礼拝堂に行き、クレオの登場を待つ予定だ。


 会場内にはクオンの家族(使用人)、エラやアルマンも席に着いていて、エラに至ってはもうすでに涙目だ。幼いころからクレオを知っているだけに、今日の祝いの日は感慨ひとしおなのだろう。


「新婦入場です」


 白いベールをかぶり、深紅のカーペットをアトラス(父親)にエスコートされながら歩くクレオはとても美しく、まさに戦いの女神の登場と言える。


 ただ歩くだけなのだが、騎士として体幹が鍛えられていることが分かる身のこなしが、武の女神を彷彿させていた。


(クレオはこんな時もカッコいいな……)


 自分の妻に惚れ直すクオンの横、ベールをかぶったクレオが止まる。

 そしてクレオの手を取り、二人そろって新教皇の前に立つと、誓いの言葉が語られた。


「汝、クオン・オットは、この女性クレオ・キンリーを妻とし、良き時も悪き時も、富める時も貧しき時も、病める時も、瘴気が溢れるときも、健やかなる時も、共に歩み、他の者に依らず、死が二人を分かつまで愛を誓い、妻を想い、妻のみに添うことを、神聖なる婚姻の契約のもとに誓いますか?」


「はい、誓います、僕の妻はクレオだけです」


 クオンは新教皇の前、正々堂々とクレオへの愛を誓う。


「汝、クレオ・キンリーは、この男性クオン・オットを夫とし、良き時も悪き時も、富める時も貧しき時も、病める時も、瘴気が溢れるときも、健やかなる時も、共に歩み、他の者に依らず、死が二人を分かつまで愛を誓い、夫を想い、夫のみに添うことを、神聖なる婚姻の契約のもとに誓いますか?」


「はい、騎士としてクオンを守り、クオンのみを愛することを、ここに誓います」


 クレオもまた騎士として、クオンへの愛を謹厳実直な様子で誓う。


「では皆さん、お二人の上に神の祝福を願い、結婚の絆によって結ばれたこのお二人を、神が慈しみ深く守り、助けてくださるよう共に祈りましょう」





 こうしてオット夫妻は、世間に大々的にお披露目された。

 貴族の間だけではなく、平民の間でも二人の名は広がり、その仲の良さも知れ渡っていった。


 異世界から来たクオンは、妖精王子のような可憐な見た目と、誰にでも変わらず接する愛嬌の良さから、一般市民にも愛され、瘴気から街を救ってくれた恩人だと、尊ばれ慕われていくようになっていく。


 そしてそんなクオンに寄り添うクレオは、女性騎士のパイオニアのような存在となり、凛々しい立ち姿や、品のある微笑みが多くの者を魅了し、憧れの存在となっていった。


「クーオン様のような心優しい領主様って素敵」


「クレオ様のような女性騎士が私の憧れよ」


 と、貴族平民問わず多くの人々から慕われる夫婦となっていくのだが、それはまだ少し先の話。


 偽装結婚ではなく、二人の本当の結婚生活はこれから始まるのだから、その楽しみは語らないでおこう。


 そんな二人は、当然いくつになっても仲が良く。

 子供が出来た後でも新婚のようだとそう言われ、羨ましがられた。


 結婚したらオット夫妻のようになりたい。


 政略結婚当然の貴族間だけでなく、恋愛結婚が多い平民の間でも、仲睦まじい二人は憧れの象徴となっていった。


「クレオ、今日もカッコいい、僕の妻、自慢の奥さん」


「フフフ、クオンも今日もかわ……カッコいいですよ、私の自慢の夫殿」


 今日も今日とて、二人はこんなやり取りを行っている。


 聖女のおまけと、男女(おとこおんな)とそう呼ばれていた二人は、偽装結婚を経て、誰よりも幸せな結婚を手に入れたのだった。


 ~おわり~

おはようございます、夢子です。

遂に最終話を迎えましたーーー!


ここまでクオンとクレオの物語を読み続けて下さった皆様、本当にありがとうございました。

皆様の応援があったからこそ、途中であきらめず最後まで進めたと思っております。


実は最初、クオンはオーロラと偽装結婚させようかなぁと思っておりました。

でも騎士のクレオが姉の結婚相手に横恋慕する様子など全く想像できず、最初から二人を結婚させようと切り替えました。


二人の名前は似た感じでいきたいとそう考えて選んだのですが、実はキーランとキンリー家の名が似ていたことは後になって気づきました。w

まあいっかとそのまま進めた私です。

性格が分かるというものです…


それと少年レオですが、実はクレオから名前を取りました。

クオンが気に入る子供=クレオに似ている。という単純な考えですが、騎士クレオに似ている一般市民などいるわけがなく、名前だけを似せたのですが、いかがだったでしょうか?


そしてキーランですが、実はリヌス教皇と悪役の座を私の頭の中で争っていました。

最終的にリヌスが勝ったわけですが、そのお陰でキーランはクレオの恋敵として役に立ってくれたと思っています。掛け合いを書くのが楽しかったので、まあいい方へ進んでくれたかなとキーランには感謝ですね。


この先クオンが他国に興味を持たれる話や、二人の子供が生まれる話など、私の中では沢山の妄想があったりもしますが、いったんここで二人の物語は終了とさせていただきます。


この後の予定としては、今夜人物紹介を投稿し、その後三話ほど閑話を投稿してからこの小説を完結させたいと思っております。


五十話を目標にこの物語を書いて参りましたが、五十一話で完結になるところはお許しください。

人物紹介を数に入れなかったら、ということでまとめましょう。w


長くなりましたがここまでお読みいただき、ブクマ、評価、いいね、誤字脱字、メッセージなど、沢山の応援を下さった皆様、本当にありがとうございました。


これは口先だけの言葉ではなく、本心からの感謝の気持ちです。

皆様が読んでくださるからこそ、書ける。

頑張ることが出来る。

それは本当のことですし、2024年からなろう 様で投稿を始めましたが、その気持ちは変わらないものでもあります。


この後は新規として短編を投稿したいなと思っております。

それと短めの小説も投稿したいですし、魔法塔も続きを進めたいですね。


あと前から言っていますが、レイののんびり異世界生活の続きも書きたいです。

基本恋愛の話よりもコメディの話が好きな私です。


ですが、現実問題どこまで先に進めるか……自分でも分かりません。

ゆっくり進むかもしれませんが気長に待っていただけたら有難いです。


それでは皆様、是非新作でもお会いしましょう。w

そしてこの作品や夢子に少しでも興味を持っていただけたら★などを押していただけると有難いです。


では、ここまで読んで頂きありがとうございました!


2026/8/22 夢子

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