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私の夫君~聖女のおまけと女性騎士様の、穏やかで賑やかな偽装結婚~  作者: 夢子


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お披露目会

 遂にお披露目会の日を迎えた。


 キンリー侯爵家から派遣された使用人がエラの指示に従い慌ただしく動いている。


 クレオもクオンも朝ごはんを食べてから部屋で全身を磨きあげられ、次に会えたのは軽い昼食を終えた、午後のおやつの時間。


 着飾ったクレオを見て、クオンの目は輝いた。


「クレオ、すっごく綺麗! とっても似合ってる!」


「クオン、有難うございます。ですがあまり褒めすぎないでください、少し恥ずかしいです……」


「褒めすぎ違う、クレオ綺麗本当のこと、女神かと思った! 僕カンドー」


「もう! この前も思いましたが、女神なんて言葉誰に習ったんですか? 可笑しな言葉を覚えないで下さい」


 頬を染めながら照れるクレオはとても可愛らしく、いつもよりも幼い少女のようだ。


 けれどその見た目は美女そのもので、髪を綺麗にアップしながらも、少しだけ後れ毛が首元に流れるさまは色っぽい。


 クオンの髪色に合わせ光沢のある黒のドレスも、赤茶色の髪を持つクレオには似合っていて、スタイルの良さが分かるマーメイドドレスは、クレオの美女度を引き上げている。


 ドレスを選んでくれたクレオの家族には感謝したいぐらいだった。


「僕、今日頑張る、夜会危険、クレオに悪い男近づけない!」


「……クオン……お気持ちは有難いですが、わざわざ私を選んで声を掛ける可笑しな男などいませんよ。それより一体誰に夜会のことを吹き込まれたんですか? キーラン様ですか?」


「う? 違うよ、ホセに夜会のエスコート聞いただけ、吹き込まれてないよ」


「ほう……ホセですか……なるほど……」


 クオンの後ろに控えるホセに、クレオの視線が飛んでいく。


 違います、誤解です、というようにホセは首を横に振っているがクレオの瞳はとても冷たい。

 その横ではジミーは呆れた顔をホセに向けているが助けることはしなかった。


 王城の夜会ということで、今日はホセとジミーもクオンの護衛役として王城へ向かう。


 なので二人もクオン同様に磨かれていて、その上普段の簡素な服とは違い、正装に着替えたホセとジミーは騎士らしくカッコいい。


 けれど初めて護衛役として夜会に出席するホセとジミーの顔色は悪い。


 平民出身の騎士として街を守ることが多い二人は、生まれて初めての夜会らしい。


 普段落ち着いているジミーでさえも落ち着きがないように見えるので、こればかりは仕方がないことなのだろう。


 そしてクレオの準備に時間がかかっている間、何かをしていなければ落ち着かないホセによって夜会について講習があったようだが、それも仕方がないのかもしれなかった。


「じゃあ、行こう、クレオ」


「はい、頑張りましょうね、クオン」


「うん」

 

 聖女のお披露目会。

 クオンもその叔父としてこの国の貴族たちに紹介される。


 クオンが持つ能力は一部のものにだけ話をされ、一般貴族には伝わることはない。


 けれど『おまけの男』と呼ばれることや、その他の悪口も今後は聞こえなくなると、デーヴィッドは約束してくれた。


 それは今夜の夜会に教会のトップ、リヌス教皇が出席し、クオンを認めるからだ。


「クーオン様に毒を盛った犯人はやはり教会の大司祭の一人、イリスだったそうだ」


 デーヴィッドからの報告を父から受け取ったクレオ。

 犯人の存在をクオンに伝えたところ、法に沿って裁いてくれればそれで良いと答えただけで、苦しい思いをしたはずなのに重刑を望むことは無かった。


 これにはリヌス教皇も感謝したことだろう。

 犯人は前教皇の娘だったのだから、公にせずひっそりと処分することは教会としては助かるはず。


 世間に真実が広がらなければ、教会の信用が失墜することはない。


 聖女の叔父を襲った大事件を秘密裏に処理できたことは、聖女を女神だと讃える教会からすれば、感謝以外にありえないことだった。




「くう兄、クレオ姉様」


 王城へ着き応接室にクオンとクレオが顔を出すと、可愛いドレスを着たアリスが手を振って出迎えてくれた。


 聖女様らしい白いドレスに、同じく白色のローブを纏っているアリス。


 可愛い姪っ子が少し遠い存在になったような気もするが、クオンは笑顔を返す。


「アリス、可愛い、あー、ちょっと【昭和のアイドル】っぽい気もする、けど、似合ってる」


「何それ、褒めてんの? あー、そうか、くう兄可愛い私の姿に照れちゃってるんだー、ふーん」


「はいはい、そーいうことにする、アリス、可愛いよ」


「もー! くう兄のバカ」


「あははは」


 会ってすぐ気軽な感じで会話を始めた二人。

 その仲の良さを知っているクレオは驚きはしないが、護衛として付いてきたホセとジミーは固まっている。


 アリスを見て固まっているのか、クオンとのやり取りを見て固まっているのかは分からないが、二人には早めに慣れてもらわなければならない。


 これから聖女の叔父として注目されるクオンには、こういった場所へ出なければならないことが増えるだろうし、違う意味で敵も増え危険なこともあるはずだからだ。


「クーオン様、クレオ、ようこそ」

「クーオン様、クレオ、お久し振りですわ」

「クーオン様、そういったお衣装もお似合いですよ、実に可愛らしい」


 デーヴィッド、アイラ、キーランが部屋にやって来た。

 もう間もなく王族の登場時間とあって、控室である応接室に来たようだ。


 次男のルージット王子は成人前なので仕方がないが、国王陛下と妃二人の様子は見えないことから、大事なお披露目会でも欠席なのだろう。

 

 陛下の体調が悪いことはクレオも知っているが、時折父から陛下との会話を聞くことがあったので、快方に向かっていると思っていた。


 それに聖女アリスが魔法を覚えたのだ、まず最初に陛下を癒すだろうとそう考えてもいた。


 けれどこの場にいないということは、病気では無い可能性も高い。


 聖女が癒せる呪いや病ではないとなると、一体何が原因なのか。クレオの顔に疑問が浮かぶ。


「クレオ? どうした?」


「えっ? いえ、何でもありません、アリス様とアイラ様のお衣装は色違いなのだなと、そう思っておりました」


「えっ? あ、本当だ、アイラは水色、おそろ可愛いねー」


 クオンにエスコートされ、クレオたちも王族に続き会場へ向かう。


 そして王族を守る第一騎士団長がクレオたちの後ろを歩く。

 騎士として歩きなれた廊下を、上司に護衛されながら通ると変な感じだ。


 まあ、第一騎士団の後ろについて歩くホセとジミーよりは楽な気分だけれど、それでも仕事ではなくドレスを着ている自分が不思議で仕方がなく、何だか可笑しく感じた。



「王太子殿下、並びに聖女様のご入場でございます」


 会場の扉が開くと大きな歓声が上がりクレオの耳にも聞こえてくる。


 何があっても動けるようにと、クオンのエスコートの手をしっかりと握り、クレオは辺りを警戒する。


 脳内ではシュミレーションも欠かさず、魔法攻撃でも物理攻撃でも何があってもクオンを守る、そう緊張感を持ったのだが、反発する貴族の姿は見え無く、皆頭を下げデーヴィッドとアリスの入場を受け入れている。


(ああ、そうか教皇がいるからか……)


 リヌス教皇の姿が会場にあり、教皇自身が頭を下げ聖女を迎え入れているから尚更なのだろう。

 騒ぐ者もおらず厳しい目を向ける者もいない。


 まあ第一騎士団長の屈強な姿を見れば、そんなことが出来る蛮勇はいるはずもなかった。


「我らが聖女召喚に応じて下さった聖女、アリス・イドウ様を紹介する」


「アリス・イドウです、皆さま、宜しくお願い致します」


 アリスは貴族へ向け挨拶をすると会場に向け光魔法を発動させる。

 自身が聖女であるという証明と共に味方を作る為なのだろう。


「おお!」という感嘆の声が会場中に響き、一瞬で人を惹きつけることに成功したようだ。


 それに視線も羨望のようなものに変わりアリスを見る皆の目には熱がこもっていた。


「そしてもう一人、聖女召喚に応じて下さった方がいる、その方は聖女アリス様のご家族であり、叔父上であるクーオン・オット様です」


「クオン・オオオトです、皆さま宜しくお願い致します」


 クオンがアリスと似た顔で微笑むと会場中がざわついた。


 『おまけの男』が聖女様の叔父? 


 青い顔になるものもいれば、信じられないと驚いた顔になるものもいる。


 噂を流した者噂を信じてしまった者、それぞれ態度は違うようだが、それでも本物のおまけの男を見たことで認識は確実に変わったようだった。


 おまけの男は聖女様と同じ存在なのではないか?


 クオンの少年のような姿を見てそう思うものも多かったようだ。


 何よりクオンの笑顔には傲慢だと噂される様子はまったく見えなかった。




「クレオ、僕、挨拶ちゃんとできた?」


 小声でクオンに話しかけられクレオはクスリと笑ってしまう。


 こんなにも大勢の貴族がいる場でもクオンに緊張はないようで、ちゃんとできたから褒めてと言っている子供の様で可愛らしく見えてしまう。


「フフフ、ええ、ちゃんと挨拶出来ていました、ご立派でしたよ」


「ありがと、後はダンス、クレオに恥かかせられない、僕、気合入れる」


「フフフ、有難うございます。でも間違えても構いませんよ、それよりクオンとは楽しく踊りたいです。今日は夫婦初めての夜会なのですから、楽しみましょう」


「うん、楽しも、クレオ、みんなにクレオの上手なダンス見せつける」


「フフ、ええ、そうですね、楽しみです」


 こんな場でもいつも通り握り拳を作るクオンに思わず声を出して笑いそうになってしまう。


 けれどそのお陰もあってかダンスは思った以上に上手に踊れ、楽しむことが出来た。


「クレオ、楽しいね」


「はい、クオン、そうですね、とても楽しいですね」


 デビュタントで無理矢理フリルの付いたドレスを着せられて以降、苦い記憶しかない夜会だったけれど、クレオは心からクオンとのダンスを楽しめた。


 もう自分はダメな令嬢ではない。


 クオンの妻であり、騎士だ。


 クオンの横では堂々と胸を張れる自分でいられる。


 クレオは自信を取り戻しつつあった。

皆さまおはようございます。夢子です。

本日もお読みいただき有難うございます。

またブクマ、良いね、評価など、応援もありがとうございます。


お披露目終わりました。

半分まで来た感じです。

後半戦も宜しくお願いします。


今日は仕事でーす。w

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