表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私の夫君~聖女のおまけと女性騎士様の、穏やかで賑やかな偽装結婚~  作者: 夢子


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

17/27

久し振りの王城

 クオンは久しぶりに王城へとやって来た。

 アリスに会えるので嬉しい気持ちはあるが、正直少しだけ怖さもある。


 もしまたなにかされたら……


 クレオがいてくれるから大丈夫だという安心感はあるが、毒を盛られたことは思った以上にトラウマになっているようだった。


「ん? クレオ? どした? 気分悪い?」


「いえ、何でもありませんよ、クオン。問題ありません」


「そう?」


 無意識にクオンの手を握り外を見つめるクレオはどこか不安げで、ぼんやりしているように見える。

 毒のことよりもクレオのことが心配で不安な気持ちは飛んで行った。


 キンリー家の家族が屋敷に遊びに来てからどことなくクレオの様子が可笑しい。

 何かあったのではないかと思っていたところでの王城へのお誘い。


 結婚してからの生活を聞きたいからというデーヴィッドの言葉も、呼び出す言い訳にしか聞こえなかった。


(もしかしてクレオ、俺との同居生活が嫌になったとか? いや、本気で好きな相手が出来たとか?)


 不自然なクレオの様子に、どうしても悪い方へと考えが行ってしまうクオン。

 毎日楽しくて穏やかで、クレオとはいい関係を作れているとそう思っていただけに、もしそうだったらと思うと悲しみしかない。


 クレオとはこのまま、白い結婚でもいいからずっと一緒にいたい。

 

 そんな気持ちを持ち始めていたクオンとしては、今日の王城呼び出しは別の意味でも怖いものでしかなかった。




「クーオン様、お呼び立てしてしまい申し訳ありません」


「ううん、デーヴィッド、忙しいのに、色々ありがと」


 デーヴィッドの他に部屋の中にはキンリー侯爵、そしてガルデン公爵家のキーランもいて、その上アリスがいないため、これはやっぱりと思うとクオンは笑顔が上手く作れない。


 クレオとの別れ。

 それが近づいている気がしたからだ。


「クーオン様、新居での生活はいかがですか?」


「……」


 先日、アリスと共に新居にやって来た時と同じような言葉をデーヴィッドに掛けられ怪しさが増す。

 まさかクオンの同意もなくクレオとの生活を解消させたりはしないよね? と、デーヴィッドを見る目が疑うものになってしまう。


「クーオン様?」


 クレオと別れたくないクオンとしてやることは一つ。


 妻であるクレオを褒めちぎる。

 そして少しでもいい男だと思ってもらう。


 それしかない気がした。


「うん、クレオとの生活楽しい、クレオはいつも僕に優しい、クレオは仕事行くときも僕心配してくれる、馬車乗る時も手握ってくれる、今日もずっと手握ってた。僕が寂しくない()()? エラ付けてくれた。クレオがいる、僕幸せ、クレオ良い子、美人、真面目、僕の傍で笑うとすごく可愛い」


「……そ、そうですか……」

「……クオン……何を言って……」


 知っている言葉を使いクレオを褒めちぎりドヤ顔でデーヴィッドを見れば、何故か目を逸らされてしまった。


 別にデーヴィッドを褒めたわけではないのに、何故デーヴィッドが顔を赤くしているんだ? と疑問が浮かび、今度はクレオに何でだろうと視線を向けると、クレオは真っ赤になっていて顔を覆っていた。


 もしかして間違えて酷い言葉を使っただろうか?

 褒めたつもりが貶していたとか?

 まさか赤ちゃん言葉に聞こえていたとかではないよね?


 部屋にいる皆の反応が微妙すぎて(やらかしたかも……)と違う意味で不安になっていると、クオンの家庭教師キーランが助け舟を出してくれた。


「クーオン様、では、誰とでも結婚できるとしたらどうですか?」


「えっ……?」


「貴方の能力は物凄いものだと分かった今、沢山の貴族家が貴方と繋がりたいと婚姻を申し込んでくるでしょう、それでも彼女を……いやこの騎士を、結婚相手として選びますか?」


「えっ……?」


 難しい言葉もあり少し意味が分からない部分もあったクオンに、キーランは詳しく説明してくれる。


 どうやらクオンが魔石の魔力をゼロにした力は想像以上に希少なものだったらしく、何でも癒す聖女と共に、もしかしたら魔法を全て弾いてしまうクオンは、この世界にたった一人の存在。

 つまり聖女と同じぐらい凄い存在、ということになるらしい。


 『おまけの男』から一気に『希少な男』に変わってしまったクオン。


 当然これから家庭教師であるキーランと実証、実験していかなければならないが、魔石の魔力を消すだけでも十分に凄いことで、それ以上のことが出来るようだったら世界中から狙われる可能性もあるのだと今初めて聞かされた。


(ああ、そうか……だからクレオはあんな顔をしてたのか……俺のことを心配してくれてたんだ……)


 クレオの優しさに心打たれ、クオンの中でクレオの株がもう一段上がる。


 こんな優しい彼女とは絶対に離れたくはないし、ずっと傍にいたい。

 でもそれがクレオを危険な目に合わせることになるのだったら?


 そう思うと正解が分からなくなってしまい、今度はクオンがクレオの手を無意識に握っていた。


「クオン、どうしましたか? 王城に戻りたくなりましたか?」


 自分よりも可愛い女の子(令嬢)が沢山いることを知るクレオは、キーランの言うことが分かる。


 今ならクオンが望めば他国の王女とだって結婚できるだろうし、その国で王位に就くことだってできるはずだ。


 そんな中、女性として出来損ないなクレオと結婚を続ける意味はない。

 それに今二人の結婚は白い結婚であり世間にも公表されていない状態。


 もしちゃんとした女性と結婚できるとしたら……

 白い結婚ではなく、本物の結婚をやり直せるとしたら……


 今ならクオンが望めば王城へ戻り違う女の子とのお見合いから始められる。


 クオンを安心させるためそんな気持ちを隠し笑顔を作ったクレオだったが、クオンの不安そうな瞳を見ると、もう笑うことは出来なかった。


「僕、傍いるとクレオ危ない? 狙われる?」


「クオン?」


「僕居る、クレオに迷惑かかる嫌だ。だったら城戻る、大人しくする、クレオに迷惑かけたくない」


「クオン」


  優しいクオンは自分にどんな得があるかではなく、クレオに迷惑を掛けないか、クレオが危険目に合わないか、それだけを心配してくれているようだ。


「クオン、私が貴方の傍にいることを嫌がる訳がありません。それに私は騎士です、貴方を守ることも使命と思っております。ですから危険な目にあうことも当然、大事な貴方を命がけで守れるのならば、騎士になった意味があるというものです」


「クレオ、本当? 嫌じゃない? 怖くない? 僕との生活、大丈夫?」


「ええ、勿論です。クオンとの生活はとても楽しくてもう手放せません。クオンさえよければずっとこのまま今の生活を続けたいと思っていますよ、これは本心からの言葉です」


「本当? 本当に? 良かったー、だったらクレオと一緒がいい、クレオの傍、とっても楽しい」


「クオン……」


 胸に手を当てホッとするクオンを見て、抱きしめたい衝動に駆られる。

 けれど父のわざとらしい咳が聞こえどうにかそんな欲望を抑えることが出来たが、この場に誰もいなければきっとクレオはクオンのことをきつく抱きしめていただろう。


(ああ、そうか……これは母性本能ではなく、恋愛感情なのだろうな……)


 鈍感なクレオだって流石に分かる。

 クオンが他の令嬢と結婚をする、そう考えただけで胸が苦しくなるし、クオンを連れてどこかへ逃げたいと思ってしまうほどだ。


 それにキーランがクオンに構う様子が嫌なのも自分の想いのせい。

 嫉妬という醜い感情が恋敵といえるキーランを前にすると溢れ出てしまうのだ。

 それにやっと気づいた。


「では、クーオン様はクレオと今の生活を続ける、それで宜しいのですね?」


 デーヴィッドがクオンの気持ちを知り、そう問いかける。

 それに対しクオンは一度クレオを見て安心したような笑顔を見せると、デーヴィッドへ向け頷いた。


「うん、僕、クレオと一緒にいたい、クレオより素敵な人いない、クレオがいればそれでいい、クレオの傍、心地いの」


「クオン……」


 ニコッと笑うクオンのいつもの笑顔にクレオもどうにか笑顔を返す。

 クオンの能力を知ってからずっと不安だった気持ちが今やっと消えた。

 クオンも自分を望んでくれる、それが嬉しくてたまらない。


「んんっ! コホンッ、では、聖女様とクーオン様のお披露目会で、クーオン様の紹介をし、そのパートナーはクレオ、ということで宜しいですね?」


 クレオの父アトラスの言葉にデーヴィッドとキーランが頷く。

 キーランは渋々といった様子だが、クオンの気持ちを聞いたため反論はないようだった。


 ただしクオンだけは「おひろめかい?って何?」 と首を傾げているが、話はどんどん進んでしまう。


「ダンスはどうしますか?」


「殿下と聖女様と同時にクーオン様も踊るべきでしょう」


「ならばダンスのレッスンも急ぎませんと、クーオン様は聖女様と違いダンスのレッスンは全く手に付けていません、今から間に合うかどうか、微妙なところでしょう」


 早い会話になりクオンはついていけないのか、うんうんと頷き一生懸命ヒヤリングをしている。

 そして聞き取れた言葉で「ダンス? 何?」と首を傾げているが、自分のことだとは気づいていないらしい。


 聖女様とアリスの名が出たのでそれも仕方がないかもしれない。

 アリスがダンスをする、そう思っているようだった。


「クオン、家に帰ったら詳しく説明しますね」


 そっと耳打ちすると、クオンはうんと笑顔で頷く。

 アリスのダンスを見れる、そう思う楽しみな様子が可愛らしい。


 でも説明を聞いた後、クオンがどんな顔をするか……


 ちょっと想像すると可笑しくて、クレオとダンスを踊ると知ったら喜んでくれるかどうか。


 クオンを見つめそんな想像をするクレオは、キーランの瞳に気付かない。


 キーランのクレオを見る瞳はどこまでも冷たく、邪魔者を見るかのような視線だった。

おはようございます、夢子です。

六月もどうぞよろしくお願い致します。

また、本日もお読みいただきありがとうございます。


今週は台風が来るようですね、皆さまどうぞお気を付けください。

もうそろそろ梅雨なのでしょうか、もう六月とは早いものです。


娘のイチャイチャをいつも目の前で見せられるキンリー侯爵に同情します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ