日記・7月23日(日)
「愛未ちゃんっ、ランドだよっ!」
いつもよりテンションの高いゆーちゃん。ランドはゆーちゃんが大好きな場所。
更に今日は、ゆーちゃんの誕生日。私だって、ランドに誕生日だったら
こんなテンションになるかもしれない。
「ランドだね。最初、何から乗ろうか?」
「えっとねー、……」
子供みたいに目をキラキラさせてランドのマップを見るゆーちゃん。
ゆーちゃんの右隣には、一輝。左隣は私。私の隣に武林。と横に並んでいる。
ランドは広いので横に広がっていても大して、邪魔にはならないのだ。
ゆーちゃんお目当ての絶叫系マシンの前まで来たところで優しいゆーちゃんは、
男子二人を気遣う。
「一輝君、絶叫系行ける?」
「あぁ、うん」
「えっとー、武林……君?だっけ?絶叫系大丈夫?」
「え、あ、えっと……ごめん。無理だと思う」
「じゃあ、一輝とゆーちゃんで行ってきなよ。私も絶叫系得意な方ではないしね」
「う、うんっ。じゃあ、一輝君と乗ってくるね!」
そう言って、少し嬉しそうに一輝と恋人つなぎをして絶叫系マシンに行った。
残された私と武林は近くのベンチで休むことにした。
ベンチからは絶叫系マシン全体が見えた。人々の楽しそうな叫び声が聞こえる。
……とりあえず、ベンチに腰を掛けたものの何を話せばいいかわからない。
周りを見ると、ソフトクリームやポップコーンを売っているワゴン型のお店があった。
「私、ポップコーン買ってくるけど。なにかいる?」
「いいよ。俺が買ってくる」
「え、でも、いいよ」
「いいから。ポップコーンは何味がいいんだ?」
「じゃ、じゃあ、ありがと。キャラメルローズ味っていうのがあるから、それを2つ」
「……随分、食べるんだな」
「ち、違うよっ。ゆーちゃんの分だよ」
「そうか。わかった」
……あ、お金。あとで渡せばいいよね。
しばらくして、武林が帰ってきた。片手にはポップコーンの容器が2つ、
反対の片手には、ソフトクリームが2つあった。
「ありがと。お金。3000円」
そう言って、千円札を3枚渡した。しかし、武林はポップコーンを渡すだけで
3000円は受け取りはしなかった。
「お金かかったでしょ?」
そう言った時、武林じゃない声で返答が来た。
「武林は愛未のことが好きだからこんぐらいかっこつけさせてあげろよ」
「そうなの??一輝君?愛未ちゃん可愛いから当たり前だけど~。ふふっ」
私と武林の前には絶叫系マシンから帰ってきたゆーちゃんと一輝がいた。
いや、あり得ないだろ。まじかよ。
「え、えーっと、とりあえず、お金。こういうのは、ちゃんとしなきゃね!」
この場をしのぐため、明るく振舞ってみる。
そして、話を逸らすためにポップコーンをゆーちゃんに渡す。
「はいっ。ゆーちゃんの好きなポップコーンだよ」
ポップコーンを渡されたゆーちゃんはキラキラとした顔をした。
ランドのポップコーンはかなり美味しいと有名で、ランドの敷地内の中に
いくつかワゴンがあって、それぞれ売っているポップコーンの味が違って、
それを食べ比べするのも面白いらしく、小学生の頃、ゆーちゃんはそれにハマっていた。
いまでは、そこまででもないが、キャラメルローズ味のポップコーンは好きで
ランドに行くたび、食べている。
しかも、ポップコーンの容器もランドの人気キャラクターの形をして、
運よく武林がゆーちゃんの好きなキャラクターの容器を持ってきてくれた。
「愛未ちゃん、ありがと!!」
武林が買ってきたポップコーンは女子が。ソフトクリームは男子が食べながら歩いた。
あんまり動いていないので、今日のお昼はこれでもいいかもしれない。
男子はこれじゃあ足りないかもしれないけど。
絶叫系マシンのあと、イタリアの有名なゴンドラを模したアトラクションや
ロープウェーに乗ったりと、色々なことをして遊んだ。
ゆーちゃんはその間とても幸せそうで、一輝と恋人つなぎをしたままだった。
夕方になり、夜が近づいてきた。
今が夏ということで、夜からは夏限定の夜イベントもあるらしく、
その時間まで夕食にしようと話し合い、近くの飲食店に入った。
ランドのイメージを崩さない店内は、カントリー調で店員の制服も
可愛らしいロングエプロンスカートだった。
席は、4人席に案内され、私とゆーちゃんは向かい合うように座り、
ゆーちゃんの隣に一輝。私の隣に武林となった。
夕飯も食べ終わり、それでも時間はもう少しあるので
お手洗いを済ませてから、ゆっくり歩いてイベント会場に向かうことになった。
お手洗いを済ませて、外に出ようとすると、外から一輝と武林の声が聞こえた。
「順調か?」
「あぁ。あれは、がっつり落ちてるな」
「それなら、振り甲斐があるな」
「学年一の美少女はどうなるのでしょーかっ。なーんってっ、はははははっ」
「楽しいゲームになりそうだな」
え。私は頭の中が真っ白になった。
今喋っていたのは、一輝と武林。だけど、いつもと違う。
学年一の美少女?ゆーちゃんのことでしょ?
落ちてる?振る?言ってることがわからない。
ゆーちゃんを振るの?なんで??
楽しいゲーム?ゆーちゃんを振るゲームだったの??
その時、ゆーちゃんが後ろから声をかけてきた。
「愛未ちゃん?どうしたの??」
どうしよう。ここで言おうか。いや、知らない方が……でも。振られるんだよね?
……私がゆーちゃんを守る。
「ううん。なんでもないっ。早く行こ?」
私がゆーちゃんを守んなきゃ。そう思った。
ランドからの帰り、電車を待つ間にゆーちゃんに誕生日プレゼントを渡した。
「マカロン。カランコエっていうピンクの可愛い花をモチーフにして、
作ってみたんだ。気に入ってくれたら嬉しいな。誕生日おめでとうっ」
「わー、マカロン!可愛い花の形だぁ!!ありがと!愛未ちゃん好きっ」
私に続いて一輝がプレゼントを渡した。
「夕里子。俺からも、愛未に聞いてお前の好きなお店で買ったんだけど……
よくわかんなくってさ。気に入ってくれたらいい」
「一輝君が選んでくれたの!?ありがと!可愛いネックレスだ!
え、と。その……つけて?」
一連の流れを見て私は、心が痛んだ。
「愛未ちゃんっ、見てみてっ!可愛い?」
この一言でもっと、傷んだ。
「うん。かわいいよ」
この一言は本当だ。




