入所した竜少女
今日は午後から雨が降ると天気予報で言っていたので折り畳み傘を持って学校へ行った。
そして放課後。雨が降っている帰り道を、持って来た折り畳み傘をさしながら空良と一緒に帰っていた。
「いやぁ、これは便利だね」
「うーん。まぁこれぐらいなら良いか」
空良は上を見てさしている傘……じゃなくて、私が魔法で張った透明な壁を見る。
折り畳み傘だと小さくて濡れそうだから、傘のすぐ上に私が魔法で透明な壁を張って濡れないようにした。
別に傘をささなくて良いんだけど、雨降ってるのに傘をささないのは目立ちそうだから傘をさしてる。
「そう言えば、今日から新しくファミリアに入るって子。もういるのかな?」
「昼頃に来るって言ってたから、もう着いてるんじゃない?」
昨日の夕食前、施設長さんから新しい子が入ると聞いた。
亜人の子で、長命種だけど、学年は私と同じ見たい。
学校も私達と同じ所に通うらしいけど、明日からゴールデンウィークで連休に入るから、通うのは連休明けからになりそう。
でも亜人の子かー。
ファミリアには少ないからちょっと会うの楽しみ。
「ん?」
ファミリアのすぐ傍まで差し掛かった時、脇道に何か見えた様な気がして少し戻って目を向けて見た。
「えっ!?」
「どうしたの? ……うぁ!?」
私の後から続けて覗き込んだ空良も見て驚きを隠せない。
だって、雨に打たれたまま人が倒れてるんだもん。
「あの、だ、大丈夫ですか!?」
私達はその人の元に駆け寄って、これ以上濡れないように魔法の壁を張った。
その人は、頭に生えた二本の角に、肩まで伸びたボサボサのオレンジの髪をした女の人だった。
「人間……じゃないと思うけど……それより、大丈夫ですか!?」
体を揺さぶりながら声を掛けるけど返事がない。これ本当にヤバいんじゃない!?
スマホを取り出して救急車を呼ぼうとした。すると……。
『ぐぅぅぅぅぅぅぅ~……』
「「……」」
何ともだらしない音がお腹の方から聞こえた。
――――――――――――――――――――
放って置けなかった私と空良は、その人をファミリアに連れていくと、風邪をひかない様にシャワーを貸した後、ご飯も用意した。
「かたじけない! シャワーを貸してもらっただけでなく、食事まで!」
「いやぁ。あんな状態の人を流石に放って置けないので」
女の人はガツガツと食べ物を口に入れていく。相当お腹空いてたんだね。
そんな中、施設長さんが女の人の顔をジッと見つめてる。
「貴女……今日入所するはずだったラーニアさん?」
「ん? ああ、そうだ。今日からここでお世話になる、竜人族のラーニアだ」
え? この子が今日から新しく入る子!?
亜人って聞いてたけど、竜人族なんだ。ちょっとカッコイイ。
……あれ? 確か……。
「あのぉ施設長さん。今日新しく入る子、昼頃に来るって言ってませんでした? もう夕方ですけど」
「ええ、そうなのよ。全然来ないから心配してたのよ。何かあったの?」
「……実は」
ラーニアは食事の手を止めて箸を置くと、静かに口を開いた。
「うっかり一つ前の駅で降りてしまい、金も無いから歩いて向かおうとしたんだが、道に迷ってしまい。更に雨も降ってきて、傘を買う金も無いから、濡れながら歩き続けてようやく着いたものの、疲れと空腹で倒れてしまったんだ」
『……』
何て声かければ良いのか分からない。
不運が重なり過ぎな気がする。
「でも、よく着いたわね。ようこそラーニアさん。ファミリアへ」
「ああ。よろしく頼む!」
ラーニアは元気いっぱいに返事をして、再び食事を口にした。
よっぽどお腹空いてたのか、凄い勢いで食べていく中、私の方を見たラーニアが食べる手を止めた。
「その帽子……」
「え? これ?」
「それは、賢者の帽子か!?」
嘘!? この帽子の事知ってるの、この子!?
「ラーニアさん。賢者様の帽子を知ってるんですか?」
「勿論だ。なんせ私の先祖は、賢者と共に旅をした剣士だからな」
ラーニアの御先祖様は、賢者の仲間だったんだね。
そう言えば、前にルナが見せてくれた本の絵に、賢者とルナのお祖母さんの他に、剣を持った男の人が描かれてた気がする。
「やりましたね明里さん。これで賢者様のパーティーが揃いましたよ」
「いや。別に揃ったからって何もしないからね」
昔、賢者は世界中を回って沢山色んなことをやって来たみたいだけど、私はそんな大層な事はしないでのんびりと生きていきたいの。そういうのは偉い人がやれば良いの。
「ラーニアさん。食べ終わったら部屋に案内するわね」
「ああ。分かった!」
「皆ももうすぐ夕飯の時間よ」
『はーい』
ラーニアが食べ終えると、施設長さんが部屋に案内し、その間に私達は夕飯を済ませた。
とにかく、ファミリアにまた一人、新しい子が入った。




