訪問エルフ
午後の新入生歓迎会が終わった後、特に部活に入る気は無いから、空良と一緒に真っ直ぐファミリアへ帰帰った。
「はぁ~。なんかこの帽子のせいで、今日一日疲れた」
「でも本当に何だろうね? この帽子。明里が被ってる時だけ反応してるみたい」
「そう言われても。あ~、あの時軽い気持ちで被るんじゃなかった」
やっぱ勢いって駄目だね。
慎重にならないと、こんな大変な目に遭うんだね。
また物置に仕舞っても出てくるような気がしてきたし……。
本当にどうしよう?
悩んでいる内にいつの間にかファミリアに着いていて、門を開けようとしたら、バイクに乗ってる男の人が話しかけてきた。
「君達、ちょっといい?」
「はい?」
鉄の胸当てに腰には警棒。警備隊の人かな?
その男の人はバイクから降りると私達に近づいた。
「君達、この施設の子?」
「はい、そうですけど?」
「実は今、町の近くで一角熊って言う魔物の目撃情報があったから、住民に注意のビラを配ってるんだ」
警備隊の人が渡した一枚の紙には、額に一本の角が生えた熊の写真があった。
別の世界と融合してから、この世界には動物の他に、『魔物』と呼ばれる生き物も現れるようになった。
魔物は基本的に人を襲うのが多いから、優先的に駆除対象になってる。
「外出は気を付けてね。それじゃあ」
「「はーい」」
警備隊の人はバイクに乗って走り去った。
もう一度ビラに目を向けると、覗き込んだ空良が口を開いた。
「道理で今日、冒険者の人をよく見かける気がした」
「そう言えばそうかも」
冒険者は、世界が融合した時に誕生した職業だ。融合した世界には元々あったからちょっと違うかな?
ギルドって言う施設で仕事を紹介してもらって、それをこなしていく人達。
その中には魔物退治もあるから、危険な仕事も多い。
私はなる気は無いから、きっとそういうのとは縁は無いね。
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入学してから初めての週末。
私と空良、施設長のおばあさんの三人で食材の買い出しに行っていたその帰り道。
「買うものはこれで全部ですか?」
「ええ。ありがとね、一人じゃ運べなかったわ」
「食べ盛りが多いですかね」
ファミリアにいる子供は四十人ぐらいいて、その内半分以上が小学生以下だから元気な子が多い。
対して職員は施設長を含めても五人だけだから、私達はよく手伝いをする。
「そう言えば明里ちゃん。そんな帽子持ってたかしら? 最近よく見かける気がするけど」
「え!? あ~……持って、ましたよ」
そりゃあ気付くよね、毎日の様に被ってたら。
でも本当にこの帽子、私が何処に行っても現れるんだもん。
もうずっと手元に置いておくしかないもん。
「こっちだ!」
「急げ!」
なんか冒険者らしい人達が後方へ向かって走ってる。何か遭ったのかな?
そう思ってその人達を目で追ってたら、後方で冒険者の人達が大きな黒い生き物を囲ってるのが見えた。
「あれって……この間、警備隊の人が言ってた、一角熊じゃない?」
「ホントだ。こんな街中に出るなんて」
冒険者の人達が囲って対処してくれてるし、大丈夫だよね。
そう思って安心していた時だった。
魔法使いが放った火の魔法をジャンプして躱した一角熊が、冒険者の頭上を跳び越えて、あろうことか、私達の方へ走って来た。
「嘘!? こっち来た!?」
「明里ちゃん、空良ちゃん。逃げるわよ!」
「「はい!」」
一角熊から逃げようと走りだしたら、足を引っかけて私はその場で転んでしまった。
「痛っ!」
「明里!?」
「明里ちゃん!?」
後ろを振り向いたら、もう一角熊がほぼ目の前まで迫っていた。
「わ、ちょっ……タンマタンマ!!」
当然私の制止を聞くはずもなく、一角熊は私に跳びかかってきた。
もう駄目だ……。
せめてもの抵抗に身を守ろうと、両腕で顔の前に出した。
すると、私の周りを光の壁が覆い、一角熊はその壁に弾き飛ばされた。
「……え?」
何今の? 突然の事過ぎて、頭が追い付かない。
すると一角熊が起き上がって、また私に襲い掛かってきた。
色々起こり過ぎて訳分かんないだから、整理する時間頂戴よ!
(そうだ! 火の魔法を当てて怯んだ隙に逃げよう。冒険者の人達もすぐに来るはずだし)
手を一角熊に向けて火の魔法を放つ準備をした。
そしたら、いつもの様な小さな火の玉じゃなくて、私の背丈ぐらいありそうな大きな火の玉が出来た。
「え!? うわぁ!?」
大きな火の玉を飛ばすと、勢いに負けて後ろに倒れ、火の魔法は一角熊に命中した。
黒焦げになった一角熊は倒れて、ピクリとも動かなくなった。
「な、何……今の?」
「明里、大丈夫!?」
空良と施設長さんが駆けつけてきて、私は顔を向ける。
「う、うん。大丈夫……」
「って言うか何さっきの? いつの間にあんな事出来るようになったの?」
「知らないよ!? あんな壁みたいなの張った事無いし、火だってあんなに強く出たこと無いもん!」
何なの本当に!?
最近、訳分かんない事起き過ぎじゃない!?
――――――――――――――――――――
次の日、私はリビングのテーブルの上に顔を乗せて平伏せていた。
「大丈夫? 明里」
「全然。昨日まで色々あり過ぎて、なんか疲れた」
何処にでも現れる変な帽子を見つけては、魔物に襲われるは、いきなり使った事の無い魔法が出来るようになったり……。
しかも昨日のあの後、冒険者の人達から冒険者にならないかって言われたけど、私は学生だし、それ以前に危なっかしい事はしたくない! のんびり楽しく生きたい!
「そう言えば昨日、魔法使いの女の人が、明里の魔力量が凄く多くて濃いって言ってたけど」
「確かにそんな事言われた気がする。でも魔法とか魔力とかよく分かんないし……」
ピンポ~ン。
インターフォンが鳴って、先生が対応に行くと、少しして先生が戻って来た。
「明里さん。貴女にお客さんよ」
「え?」
私にお客さん? 誰だろう?
先生の後から出てきたのは、腰まで伸びた金髪に碧色の瞳、尖った耳が特徴のエルフの女の子だった。
エルフの知り合いなんていないんだけど……何だろう?
「えっとー、私に何か用ですか?」
椅子から立ち上がった私はその女の子の元に行くと、その子は私に顔をグッと近づけた。
ちょっとビックリしたけど、よく見たらこの子、私の顔とというより、私が被ってるこの帽子を見てる気がする。
すると突然、眼差しを輝かせて口を開いた。
「やっぱり! それは賢者様の帽子!!」
「え? け、賢者?」




