不思議な帽子
「何だろう、この帽子?」
物置の床下にあった一つの箱。
その中に入っていた帽子を、私は手に持ってみた。
「物置にこんな隠し収納があるなんて聞いたこと無いから、随分長い間放置されてたと思うけど……それにしては埃一つ無い程綺麗ね」
「うん。あと、ここに付いてるのって、宝石かな?」
空良が帽子に付いている黒い石を指差す。
確かに宝石の様にも見えるけど、なんか黒ずんでると言うか……輝きが無いから正直この石は綺麗とは言えないね。
「でも何でこんな所にあったんだろう? この帽子」
「さぁ?」
「……」
こんな所に隠されてたのはすっごい気になるけど、それとは別に一つの好奇心が芽生えた。
「ちょっと被ってみようかな」
「え? 大丈夫?」
「大丈夫でしょ、被るだけなら」
多分、この宝石が付いてる方が前だよね。
宝石が付いてる方を前にして、帽子を被ってみた。
……。
「被り心地は悪くないね」
「隠されてるから……実は曰く付きだったりして」
「ちょっと! それ先に言ってくれない!?」
被る前に言うことじゃ無いそれ!?
もう、空良のせいで怖くなってきた。
外そうと帽子に手を掛けようとした時だった。
帽子に付いてる宝石が、急に光を放った。
「うわっ!?」
「何!? 眩しい!」
宝石から放たれた光に私達は目を手で覆い隠すと、次第に光が弱くなって消えた。
「ビックリした~!? 何、今の光?」
「ホントに曰く付きだったりして」
「え~!?」
なんか怖くなってきた。
気のせいか、何か体もムズムズしてきた気がする。
「あれ?」
「どうしたの?」
「宝石が、さっきまで黒かったのに、白く光ってる」
「え?」
帽子を取って宝石を見て見ると、空良の言う通り、黒かった宝石が白く光ってる。
……と思ったら、すぐに黒くなった。
「黒くなっちゃった」
「何だったんだろう?」
「どうしたの? 騒いでるみたいだけど」
「先生。実は……」
覗いてきた先生に、私達はこの帽子の事を話した。
「こんな隠し収納があるなんて聞いたこと無いわね。この建物、元々空き家だったから……多分、前の家主の物のじゃないかしら?」
「じゃあ、ここに入れておいたままの方が良いですね」
「そうね。さぁ、もう夕飯の時間よ」
「「はーい」」
帽子を箱に入れて隠し収納の中に入れたけど、このタイルはどうやって閉まるんだろう?
なんて考えてたら、タイルが勝手に閉まったから結果オーライ。
探してたフックを持って、私達は物置を後にした。
――――――――――――――――――――
「んん……」
スマホのアラームで目を覚ました私は、体を起こして腕を伸ばした。
昨日は入学式があったり、変な帽子を見つけたりで色々あったから、よく眠れた気がする。
アラームを止めようとスマホに手を伸ばすと、手が止まった。
「えっ!?」
私の目の前に信じられない事が起きた。
何故か昨日、隠し収納に仕舞ったはずのあの帽子が、今私の目の前にある。
「昨日ちゃんと仕舞ったはずなのに」
寝ぼけて持ち出したわけが無いし……。
とりあえず私は、さっきから鳴り続いてるアラームを止めて、物置の隠し収納を開けて箱の中を確認してみるけど、やっぱり帽子は入ってない。
もう一度帽子を入れて箱を閉じて、隠し収納に入れるとタイルが閉じた。
「うん。今度こそちゃんと仕舞った」
昨日空良が曰く付きなんて言うからちょっと怖かったけど、きっと気のせいだよ。
うん、気のせい。
その後朝食を食べて、学校へ行く支度をしたら、空良と一緒に登校した。流石に怖いから、今朝のアレは言わないでおこう。
学校に着いて教室に入ると、自分の席に座った。
「明里。今日の新入生歓迎会って何時からだっけ?」
「えっと~確か……」
昨日配られたプリントに書いてあったはず。
鞄に入ってるはずのプリント探そうと鞄を開けたら……。
「え?」
「どうしたの、明里?」
隣の席の空良が鞄の中を覗き込んできた。
鞄の中には、今朝ちゃんと仕舞ったはずの、あの帽子が入ってた。
「あれ? その帽子持ってきちゃったの?」
「違うよ!」
誤魔化すの難しいなぁと思った私は、昼休みに外のベンチで昼食を食べてる時に、今朝の事を空良に話した。
「本当にその帽子、曰く付きだったりして」
「う~ん。昨日は空良の冗談だと思って本気にしてなかったけど……何か本当にそう思えてきた」
今も一応あの帽子を持って来たけど、本当に何なんだろう?
「……帽子の宝石、昨日光ったのに、また黒くなってるね」
「あ~、うん」
昨日私が被った時に光った宝石は、外したら輝きが無くなって黒くなった。
あれから一度も光ってない。
「明里が被ったら光ったんだよね。ちょっともう一回被ってみてよ」
「え~」
正直今すっごい怖いけど……一回被ったから大丈夫かな?
周りに誰もいないことを確認して、ちょっと緊張しながら帽子を被ってみた。
……なんか昨日みたいな光が起きないんだけど。
「あ、宝石光った」
「え?」
帽子を外して宝石を見ると、確かに昨日の様な光は発さなかったけど、宝石は白く輝いてる。
……と思ったら、またすぐ黒くなった。
「もしかしてコレ、誰かが被ると光るんじゃない? ちょっと貸して」
帽子を手に持った空良は帽子を被る。
「どお?」
「……ううん。光らない」
帽子の宝石は一向に変わらず黒いまま。
「もしかしたら、明里が被らないと光らないのかも?」
「え? 何で?」
「とり憑かれたじゃない? ほら、昔の怪談であったじゃん。女の子の人形を捨てたら何処に行っても現れるってやつ」
「え!? そういうホラーの類なの、コレ!?」
なんか本気で怖くなってきた。
でも捨てるのも怖いし……どうしよう。




