クラスメイトと吉と凶の妖怪
昼休みになって、私と空良とラーニアは、購買に行って昼食を買った。
相変わらず人が多くて、買うのに一苦労する。
教室に戻ると、私達に気付いたクラスメイトの一人が手を振った。
「おーい。席くっ付けておいたよ」
「うん。ありがとう、星羅」
この子はクラスメイトの平星羅。
明るい金髪をしていて、性格も明るくてコミュ力も高い。言わば、クラスの中心的な存在。
最初、私と空良に話しかけて来た時、施設暮らしだからその物珍しさからかなぁって少し警戒してたけど、特にそんな素振りは無くて、普通に仲良くなった。
「今日も購買混んでた?」
「昼休みになると必ず混むからねぇ、あそこは」
席に座った私は、購買で買ったサンドイッチを口に入れた。
(あ、そうだ。帽子机の中に入れとこ)
スカートのポケットに、丸めて入れておいた賢者の帽子を取りだして、机の引き出しの中に入れた。
いつも傍に置いてないと何処にでも現れるから、本当に面倒な物を手に入れちゃったな。
「……あのさぁ。明里って、いつも変な帽子を肌身離さず持ってるよね?」
「んぐっ!」
星羅の言葉に驚いてサンドイッチ喉を詰まらせ、慌てて買ったお茶を飲んだ。
「はぁ~。えっとー、何の話だっけ?」
「だから、いつも明里って変な帽子を持ってるって話」
聞き間違いじゃない。やっぱ誰かには気付かれるか。
「今日の……じゃなくていつもだけど、体育の授業の時も体操服の中に入れてまで持っていってるし」
「やっぱり気付かれてた」
「そりゃあいつも持っていったら、流石に気付くよ」
「でも持ってないと駄目なの、空良も知ってるじゃん」
「まぁそうだけど」
小さな声で空良と話している私達を見て首を傾げる星羅は、隣に座っているラーニアに顔を向けた。
「ねぇラーニア。あの帽子が何なのか知ってる?」
「え!? えっとー……」
困り顔になったラーニアは、目で私に助けを求めるけど、逆に助けてほしいの私なんだけど。
一応その場は何とか誤魔化したけど、また聞かれそう。
正直に教えた方が良いんじゃないかって空良に言われたけど、変に目立つのが嫌だからなぁ。
もっといい誤魔化し方考えよ。
――――――――――――――――――――
数日経ったある日、施設長さんから飲み物の買い出しを頼まれた私と空良は外を歩いていた。
買うのは飲み物だけだから、スーパーとかじゃなくてコンビニで良いね。
けどこの辺りって、意外とコンビニ少ないんだよね。
コンビニに限った話じゃないけど、何故かこの辺りって閉店になった店が多いから、呪われてるなんて噂がある程だもんね。
「あれ? 明里と空良?」
後ろから声を掛けられて振り向いたら、エプロン姿の星羅がいた。
「星羅。何してるの? そんな格好で」
「家の手伝い。ほら」
星羅が横を指差して目で追ったら、日除けに『平商店』と書かれてる店があった。
「ここ私の家。パパが個人商店開いてるんだ」
「へぇー。じゃあ、いつも手伝ってるんだ」
「ううん。お小遣い目当てでたまに」
たまになんだ。しかもお小遣い目当て。
でも学生にとってはお金を得る手段があるのは有難いね。
「ねぇ。明里が被ってるその帽子って、いつも学校に持ってきてるのじゃない?」
「あ~。これについては、また今度で」
やっぱり気になるよね。
説明するのも大変だし。した後も大変そう。
「ふーん。ところで、二人は何してたの? 買い物?」
「うん。施設の買い出し」
「じゃあここで買っていけば? お客さんが出来て嬉しいし。お小遣いも上がるかも知れないし」
「今本音が聞こえた気がするけど」
星羅の本音は置いといて、確かに買うのは飲み物だけだから、別にここでも良いかも。
「じゃあ、ここで買おっか」
「そうだね」
空良とも話し合った結果、ここで買うことに決めて、星羅に案内されて中に入った。
「いらっしゃいませ」
「パパー、お客さん連れてきたよ。クラスメイト」
カウンターの向こう側にいる小太りの男の人が、星羅のお父さんみたいだね。
「星羅のクラスメイトですか。当店のご利用、ありがとうございます。これからも是非、ご利用下さい」
「はい。分かりました」
中は意外と広いから、品ぞろえが良さそう。
これならここを使っていっても良さそう。
店内を見渡していたら、従業員用の部屋に続く通路から、五歳ぐらいの女の子が顔を出してこっちをジーッと見ていた。
「あの子って星羅の妹さん?」
「え? 私一人っ子だけど……誰の事言ってるの?」
「ほら。そこでこっちを見てる子」
「……誰もいないけど?」
星羅だけじゃなくて、空良も星羅のお父さんも見えてなさそう。
何かデジャブを感じるけど……まさか、あの子。
「私が見えるの?」
その子は私を見ながらそう言うと、私は頷いた。
するとその子はこっちに歩いてくると、体が一瞬淡く光った。
「うわっ! 何この子!? いつの間に!?」
星羅が驚いたから、きっと見えるようにしたんだね。
空良と星羅のお父さんの見えるようになったのか、驚いてる。
「初めまして。私、座敷童子」
お河童頭に黄色い瞳。白い着物を着たその子、座敷童子は挨拶をした。
「座敷童子? 聞いたことあるけど……家に住む妖怪だっけ?」
「妖怪だけど、精霊とも言われてる。どちらでもいい」
やっぱりこの子、精霊や妖怪の類だったんだ。
今賢者の帽子被ってるから、私だけ見えてたんだね。
「じゃあ、今はここに住んでいるのかい?」
「うん。今はこの家の人達はしっかりしてるから」
「どういう事だい?」
「私達は住んでる家の人がしっかりしていると幸運をあげる。だけど駄目な人になっていくと、その家に不幸をもたらして出ていく」
「不幸……。もしかして、この辺りで閉店になった店が多いのって……」
「うん。その店の人達は努力を怠って駄目になっていったから出ていった。だから……」
座敷童子は目を瞑ると、髪が伸びて揺らめき、着物が段々と黒ずんでいって、開いた目は真っ黒になっていた。
「この店を潰されたくなければ……きちんと働こう」
「は、はい!」
星羅のお父さんはビビりながら返事をすると、座敷童子は元の姿に戻った。
一見可愛い見た目なのに、結構闇が深いんだね、座敷童子って。




