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死んで転生したら自作最強メイドNPC達と共に異世界攻略やろうとしたらゲームと全く違う世界線でした。  作者: 山田孝彦/ダーヤマ・タカヒコ
第二章 今のあなたに必要な事は仕事をする事でもショタの貞操を守る事でもありません。目の前の仲間を信じなさい。
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第三十六話 弱いと思ってる人ほど強かったりします……あなたの隣の方は特に……。

 ——数分前に遡る。

 地下ダンジョンにてノクターンズが先頭に立ちカリス・ピスティソスの面々を安全な部屋まで案内していたところだった。

「さぁ、そろそろ着くわよ。」

 フォスノーラが後ろを振り向き、先導する。

「うぅ……怖いよ……。」

「大丈夫です。ご主人ならこの状況を打開できます。」

「私たち助かるかな……。」

 天井が震えており地上で戦いが発生してる事が伺える、それに怯えるバイアトリットを見かねてかシーコが元気付けようとするのだが。

「……さっきは大きい攻撃魔法が降って来ましたからね……ミトラスは現在手は空いてないと見えます……次来たらお終いですね。」

 センシアが空気を読まず変な事を言う……。

「ダメですよ!!そんな事言っちゃあ!!」

 シーコが不安を煽るなと騒がしく話す、センシア本人からすればよく分かってないようだ。良く言えばリアリストだが、悪く言えば空気を読まない……そしてアホなので寮長であり統括なのが不思議だ。

 

「だからこそ、魔法障壁の部屋まで行こうって話なんですよ。」

 フォスノーラが再び振り向き話す。

 そもそも、なぜ部屋に閉じ籠る必要があるのかだが。屋敷の周りは攻撃により深い溝が出来ている、なので脱出が不可能であり出られたとしても大魔王エントロと対峙する可能性がある。そうであれば籠城した方が得策なのでは?という事……そして、魔法を通さない特殊な部屋が存在するので、それに入れば天空から降ってきた強力な魔法も貫通する事は無い。ただ、欠点を挙げるとするならばその部屋に入ってる間は敵味方問わず魔法が使えない事ぐらいだ。

「早いとこ終わってくれないと……戦いが長引けばあの部屋に入ったとで袋のネズミです……。」

 所詮は一つの部屋、出入り口も一つしかない。敵に入られれば危険だと言いたい。

「大丈夫よセンシア。私達は大人しく待ってましょう。敵が来れば私達が追い払うし、なんて言ったってセンシアとルトロスがいれば怖いものも無いでしょ。」

 フォスノーラが余裕な感じで話す。

「ですが、私達は表立って戦いませんよ。ここではノクターンズが頑張ってもらわないと、私達はあくまでも最後の砦、非戦闘員を守る者としての最終手段。」

「ええ……だからこそ戦力は温存するに限る。私達が亡くなろうとも……。」

 フォスノーラの覚悟は既に決まっているので悲しむ事はしない、それかただ単にNPCとしての素養が残っているのか……。

「その時は私達が守ります。安心して下さい。」

「それは、頼もしいわね。」

「ええ……私がいるじゃないですか……。」

 センシアは恐らくボケのつもりで言ったようで……ツッコミを待っていたようだ。ただ、カリス・ピスティソスから返事が無い。

「私がいるじゃないですか……。ん?」

 もう一回言って、振り向くと『シュン』と空を切る音を立てながら垂直に落ちるカリス・ピスティソスの非戦闘員達……それは本当にシュールであり理解が追いつかなかった。

「私がいるじゃ……」

「言ってる場合じゃねぇえええええええ!!」

 ルトロスが代わりにツッコミを入れた。確かに言ってる場合じゃない。

 非戦闘員達の下には謎の魔力を帯びた円が発生しておりその中に落ちて行った。そして、すぐに閉じる。

「消えたわ。」

 正気に戻ったセンシアはその一言を添える……確かに言ってる場合じゃない。


 急な非戦闘員達の消失……そもそもこのダンジョンにこのようなギミックは仕掛けてない。だからありえないと皆思っていた。

「もしかして……中途半端に作ったダンジョンでは?」

「なんだそれ?」

 センシアの不穏な言葉に反応するルトロス、何故自分に教えずコイツには教えるのかという感情が少し湧き出た事は皆に理解されない。

「ええっと……確か、ハル様がこのダンジョン作成中にもう一階層作ろうとしたらしいのですが……いかんせん飽きてそのままに……なので誰も出方が分からないのです。」

 センシアがそう話すと、ルトロスは眉を顰めるだけだった。

 

「貫通……出来なさそうですね。」

 センシアが床に拳を当てると深さが分かるようで、かなり深い。仮に貫いたとしてここは用水路、大量の水が下に落ちてここより狭いダンジョンだった場合、彼女達が溺れてしまう可能性がある。

「このままでは……。」

 センシアが顎に手を乗せ考える……結構深刻だ。

 同時にルトロスの顔が歪む……大事な仲間の危機に心配していた。同じ寮の仲間として見捨てる事は出来ないのだ。


 この空気の中センシアが口を開く。何か打開策が見つかったのだろうか?

「私がサボれなくなります。」

「あなたもなんだ……。」

 自分以外にも仲間がいた事に安堵するフォスノーラ……上の立場になるとやる事がないらしい。

「と、とにかく……出入り口を探すぞ……。」

 ルトロスが周りを見渡し始め、走り出した時だった……。

 再び下に例の円が出来る……それに反応しルトロスは素早く身を引くと落下しなかった。

「誰だ?!」

『良く躱わせたな?』

 天井に何かが張り付いている……声は女性で不気味な雰囲気を醸し出す。あきらかに人では無いと感じた。

 

『魔界7幹部が一人……『メイリーク』あなた達を排除します。』

 壁を這って降りてくると四肢がヤモリのようになっておりドラゴンのような尻尾がある。ツノはシンプルに悪魔っぽい。

「既に侵入されていたか……。」

 ルトロスが戦闘体制に入る。

『さぁ、始めましょう。』

 物陰から複数のリザードマン型の魔物が複数出現する。隠密に優れているようだ。

「ルトロス……共闘といきましょうか。」

 センシアが提案してくる……正直、ルトロスはセンシアの事はあまり好きではない。

「お前とか?」

「……1日だけ、私のポジションをお渡ししますが?」

「じゃあ、やる。」

「ノクターンズは取り巻きをお願いします。ボスは私とルトロスで倒しますので。」

 

 ——上では戦いが起きてる事も知らず、不思議なダンジョンに落とされた非戦闘員組だが……。

「ここどこ?」

 最初に口を開いたのはイナテールのアウストラであり職業である屋敷管理者として未知の領域に踏み入った事は困惑するだけだった。

「もうダメだ!!私達死ぬんだアアアアア!!」

 そしてパニクってるのがポコテールのバイアトリット。

「大丈夫です、助かりますよ。」

 根拠もなく励ましてるのがレッサリアンのパルマであり。

「みんな!!力を合わせれば怖い事は無いです!!さぁ立って!!」

 持ち前の元気で励まそうとしてるのがアクアリスのライア。彼女の性格は『楽観的』であり仲間思いのいい奴だ。

「ちょっと静かに、こういう時こそ一致団結しないとダメなの!」

 皆をまとめようとしてるのが、この中では作られた順が早いドワーフのシーコである。彼女はカリス・ピスティソスの中ではセンシアとルトロスの次に作られた事もあり、ポンテ・モーレとバーバリティと同期でもある。

「さすが、シーコさん。まとまりの無いカリス・ピスティソスをまとめるなんて……。」

「さすが……。」

 それを眺めるのは人間枠のマリーダと妖精のボイーチェだった。

 

 ここに7人の選ばれし者たちが……果たして脱出できるのだろうか。

「まず、アウストラ……あなたは屋敷管理者でしょ?出口は分からなくてもハルマ様のクセというか作りに特徴は無いの?」

 シーコが話を始める。

「ええっと……確かご主人はダンジョンにこだわり無く作るタイプですので……ただ、出入り口だけは凝ってるはず……何か隠し扉的な存在があると思います。」

「隠し扉……。」

 屋敷とダンジョンは巨大マンホールが出入り口である、そうであれば同様に変なギミックを設けているだろう。

「もし、ここが脱出も前提に作られているのであれば外へ繋がる道もあるでしょう……転移式なのか普通に出入りが出来る扉が存在するのか……前者である場合なら皆を危険から救い出せるかもしれません。」

 合流する事も大事だが、屋敷から出ない事には安全を確実に確保できない。もしついでに転移式の脱出部屋を見つける事が出来たなら合流後、一緒に脱出するのが最善という事だ。

「なら、手分けして探しましょう!」

 パルマが元気よく提案する……ただ。

「いい案だけど、私達は戦闘に特化してない……。固まって動いた方が良いでしょう。」

 たとえどれほど時間が掛かろうとも一人も欠けずここを脱出するのが最優先。脱出用の部屋を探すのは二の次だ。

「とにかく、行動開始!私についてきて!」

 こうしてダンジョン巡りが始まる。


 ——上の階では戦闘が既に開始されており、ノクターンズは雑魚を倒していくがセンシアとルトロスは……。

『どうなっている……。』

 メイリークは苦戦している……思ったよりも相手が強く傷一つと付けられない。

「思ったより粘りますね?」

 センシアが煽る、メイリークは防御に徹しており時間が過ぎていくばかりだった。

「次は確実に……。」

 ルトロスが素早く背後に回り込み包丁を腰に突き刺そうとする。

『速い……。』

 それを魔法陣を出して防御すれば刃は魔法陣で弾かれ体は守られたのだが。

「とー。」

 やる気のない感じでセンシアは素手で顔を殴ろうとする、それを手で受け止めようとするが……。

『……何?!』

 直ぐに手を引いて顔を逸らすと後ろの壁が粉々に吹き飛び頬に切り傷が出来る。

「おや?よくお分かりになりましたね?」

 センシアは戦闘時間経過毎に力が上がるスキルが存在する。つまりこれ以上戦闘が長引けばメイリークは確実に死ぬ。

「避けてんじゃねぇ!!」

 ルトロスが再び包丁を振り回すとメイリークは剣を抜き応戦する。包丁を剣で受け止めると少しずつ重く感じるのだ。

『何だこれは?!』

 ルトロスのスキルに『激オモ感情』がある。装備に接触すると相手の装備の重さが増える。

『ええい!!』

 メイリークは周りに爆発魔法を放つ……辺りが消し飛ぶがセンシアとルトロスは当然避けた。

「良いからよぉ……ムカつくんだよ……早く死ねよ……。」

「ダメですよ。ルトロス……せっかく可愛いお顔が歪んでしまう。」

 ルトロスの顔に血管が浮き出ており怒りが露わになる……早く片付けなければ下の階にいるメイド達がどうなるかと……焦っていた。

 その様子をメイリークは見逃さなかった。

『……いい事思いついた……。』

 不敵に笑う……まるで勝利を確信したかのように。

『そんなに下にいるお仲間が大事?』

「何をする気だ?」

『会わせてあげるわ。下のお仲間と……。』

 周りに大きなバリアを張り己を包み込む。そして例の魔力を帯びた円が再び発生し穴を作った。

『デモンズゲートオープン!!』

 魔力を帯びた石を取り出し砕くと召喚門が出現する。

「まさか……。」

『言ったはずよ……会わせてあげるって……ただ、どんな姿になるかしらねぇ?』

 召喚門から出てきた魔物は穴を通り下の階へ……。

「クッソ!!」

 バリアに包丁を何回か突きつけると攻撃が反射し自分に返ってくる、ルトロスの手は多くの切り傷を負い血だらけになる。

「ルトロス!やめなさい!!」

 センシアがルトロスの手を掴みやめさせる。

『私は防御魔法に特化している……限定的に一つしか出せないけど強力よ……。』

 その言葉から察するにどんな攻撃をも防げると言いたいらしい。

「ぶっ殺してやる!!センシア!!テメェも手を貸せ!!」

 センシアは羽交締めを結構し暴れるルトロスを抑える。

「良いですか?今、ここで何をしても攻撃は跳ね返ります……だからといって何もしない訳じゃありません。」

 さらに複数の召喚門がセンシアとルトロスの周りに出現する。

『これで……貴方達も身動きは取れないでしょう?この『魔界結晶石』は砕くと魔力が分散する……普通は巨大な扉しか出ないけど……こういう使い方もあるのよ……。』

 以前、王都アトロニクスにてエントロが使った魔界結晶石は砕かずに使った、魔力が一点に集中し巨大な召喚門を発生させる事ができたのだ。魔界結晶石は一度使えば使用不可になる消耗品である。

「こんな時に……。」

 センシアは少し後悔した……時間をかけ己の力を貯める戦いより、強力な一撃に掛けるべきだったと。


 ——再び下へ……。

「え?」

 上を見ると穴が……ついに脱出できると思ったのだが。

「みんな、離れて!!」

 シーコが周りに呼びかけると大量の魔物が出てくる。

『ぐへへ……どう痛ぶってやるか。』

 リザードマン的な魔物に囲まれ非戦闘員達は戦々恐々とするしかない。

「た、助けてぇえええええええ!!」

 取り乱すバイアトリット、死んだふりをかまそうと地面に仰向けで倒れ込む。

『えぇ……。』

 急な出来事に驚く魔物……死んだふりなんてバレバレであり何をどうしてこの手段を取ったのか理解できなかった。

「許さない……。」

 ブチギレるシーコ……両手にフライパンを持ち戦闘体制へ……。

『ちょっと待て……何を持ってキレている?』

 魔物の頭には常に『?』が出ている状態だ意味が分からない。

「イッターい!!か、顔がああああああ!!」

 バイアトリットのデコ部分が赤くなっている……急に倒れ込めば怪我するに決まっている。

「なんて酷い事を……仲間に怪我をさせるなんて……。」

 次にライアがバイアトリットを起こす……怖い顔をしていた。

『おかしな奴らだ……まず、このタヌキが自分から倒れ込んだのであって、俺達が攻撃した訳じゃ……』

「タヌキじゃねぇ!!バイアトリットって言ってんだろ?!」

『えぇ……。』

 ライアの気迫に押される魔物達……スキルもクソも関係なく何故か小さくなる。

「私達を怒らせた事を後悔させてやるわ。」

 シーコが襲いかかる……。

 

『と、とにかく!せ、戦闘開始!!』

 リーダ格の魔物の指示により大群が押し寄せる。

「うおおおおおお!!」

 シーコはフライパンをぶん回すと敵の剣を折る、隙だらけの所を反対の手に持ったフライパンで殴る。

『フンぎゃ!!』

 敵は一発でぶっ倒れた、尚クリティカルヒットであり大ダメージであった。

『どうなっている?!』

 説明するとシーコはずっと料理人という立ち位置でフライパンを使ってきた訳だ、そうなると武器レベルの欄に何故かフライパンが……いつ間にかカンストしており職業である鈍器使いと相まって最強のフライパン使いになったという……。

『やらせんわ!!』

 盾を持った魔物が近づく……かなり丈夫そうだ。

「そんなの!!」

 フライパンを思い切り投げると魔物の横を通過する。

『どこを狙って……ぎゃああああああ!!』

 そのフライパンはクルクルと手元に戻るように返ってきた……つまりブーメラン……もしかするとフライパンという武器は最強枠になる可能性が微レ存。

「まだ、行きますよ!!」

 シーコが突撃すると横切る敵が複数……。

「しまった!!」

 前に出過ぎたため後ろの仲間達が狙われている。

「ら、ライア……。」

 バイアトリットがライアの腕を強く掴んだ……。

「大丈夫……皆んな!!私が防衛魔法の歌を歌います!!」

「え?!」

 バイアトリットが青ざめ始める。

「だ、ダダダ……大丈夫ですよ……それに、今は魔封じの水晶玉を持ってますし……。」

 バイアトリットの腰にはマルクレイブ卿から奪い取った魔法を封じる水晶玉を吊るしていた……。

 その水晶玉は持ち主の強さによって範囲が変わる、そのため上の階にいるメイリークまで届かない……ただ単に多く荷物を持てるだけの戦闘に向かないバイアトリットには宝の持ち腐れである。以前のように剣を騙されて買ったりなど酷い目に遭ったのでハルマが何かあった時用にと思ったが……何も無かったので適当に渡したそうだ。

 

 そんな中で魔封じの水晶の話をしてもライアは聞く耳を持たない、己の魔法は特別だと信じているからだ。その為、魔封じなんてものは私には関係ないと言いたげな顔をしている。さすがに楽観的も良いとこ。

 ライアの職業は『シンガー』味方や相手にバフ、デバフの効果や呪文が扱えたりする職業なので魔封じがある以上効果は消されると思うのだが……。

「まずい……。マリーダ!!耳を塞いで!!」

「え?」

 それに気づいたボイーチェは何も知らないマリーダに耳を塞ぐよう指示する。説明してる暇はない、歌い出したら終わりだ。

 ライアが何か取り出し大きく息を吸い込む……。

 

 そして……。

「ボエェ〜。」

 と言った感じで歌い出す……。

『ぐわあああああああああああ!!』

『助けてくれええええええええ!!』

『耳がアアアアアアアア!!』

 辺りは振動し壁や床にヒビが入る……。

 魔物は苦しみだし倒れていく……謎のダメージが入る……シンガーはFOOでは戦闘に向いていない職業なのだが、ライアは一味違う。

 

 ——歌声は上にも影響している。

『がああああああああああ!!なんだこれはアアアアアアアア!!』

 メイリークにもダメージが……耳を塞ぐも周りに張ったバリアで攻撃が跳ね返る。そのせいでメイリークのみに集中して攻撃が入る。


「な、何が起きて?」

 それを見ていたセンシアは驚いた、バリアのおかげで外から漏れない、そのため彼女達からはライアの歌声は聞こえないのだ。


 ——そんな事は梅雨知らず、そしてライア自身も音痴だという事を知らない。

「やった!皆んな、これで大丈夫よ!」

 防御魔法を張った気でいるか、魔法の魔の字も出ていない。出たのはデスボイスであり聴く相手に死をもたらす危ない技だ……。

「ご主人からもらったこの『魔神のマイク』なら……皆んな、私に任せて!」

 彼女が装備している武器は魔神のマイク……それはもう『ナニゾンビの逆襲』を彷彿させるような……映画だと頼れる奴が使いそうな……とにかく、最強なのだ。

「いい!!歌わなくていい!!」

 バイアトリットが必死に訴える、ゲームのように敵だけにダメージが入るわけでは無い。

 そう……なので……。

「あ……。」

 バイアトリットが口を開ける……手元に持っていた水晶玉が音を立てて割れていく……。

「あああああああうぅ!!私の……ご主人からもらった……唯一のアイテムが……うう……。」

「あれ?」

 ライアは四つん這いになって泣いてるバイアトリットを見てもキョトンした顔をするだけだった。

 カリス・ピスティソスの中でも影の薄いバイアトリットはこの水晶玉をお守りのように大事にしていた……唯一主人がくれたアイテムなので思い入れが深かったらしい。

 因みにだが、バイアトリットはファミリア内で運の良さが一番低い。

 

『ふざけた技を……許せん……。お前ら、ドワーフに構うな!!奥の敵を倒せ!!』

 次々と敵が迫り来る……。

「わわ……。」

 次に狙われたのはアウストラ……彼女に戦闘能力はないはずだったのだが……。

『食らえ!!』

「いやあああああああ!!」

『ぎゃアアアアアアアアアああ!!』

 両手で突き飛ばすと信じられない程吹っ飛ぶ……奥の壁を貫通し姿が見えなくなる程……。

「「え?」」

 それを見た仲間達……目の前でありえない事が起きている……。アウストラはカリス・ピスティソスの中でも一番弱い……つまりはファミリアの中でも最弱を意味する。

「まさか……。」

 シーコが振り向きアウストラのレベルを確認する……。

「えぇ……一体何が?」

 オロオロしてるが、その挙動に相応しくない数字を発見する。

「れ、レベルが……134……?」

 シーコが驚く……その数字はもはや屋敷内のメイドであれば一番高い数値だからだ。

 何故こうなったか……以前の話にハルマはアウストラにスタミナが尽きない装備を渡した。指輪型のアイテムでアウストラは現在、左薬指にはめている……アウストラの性格は頑張り屋、つまり他よりレベルが上がりやすい。このスタミナの尽きない指輪を身につけたアウストラは以前まで、すぐスタミナが切れてダウンしていたがそんなトラブルは起きなくなった……そうなれば彼女の性分上屋敷でバリバリと休憩もせずに働くだろう。仕事するだけで経験値が貯まるのだ、それをコツコツと続けた結果が今である。

「アウストラ!皆んなを守って!!」

 シーコが指示を飛ばす……シーコを通り過ぎる敵はアウストラに任せるべきだと判断した。

「ええ!!そんな、急に言われても!!」

 敵が次々と襲いかかる……だが。

「わああああああ!!来ないで!!」

 落ちていた石……壁の破片を拾い投げつけると……。

『避けろオオオオオ!!』

 魔物が豪速球で飛んでくる球に反応するが体が動かない。

 顔が吹き飛び周りの魔物にも当たる……敵を簡単に一掃してしまう。

「これが……私……肩が強すぎる……。」

 こうして、己の肩の強さもとい本来持っている強さにビビるアウストラ無双が始まる。


『バカな……あり得ん……メイリーク様の下部である私たちが……。』

 圧倒的戦力にビビる魔物達……。


「もう少しの辛抱よ……バイアトリット……。」

「うん。」

「ん……?」

 ライアとバイアトリットの上に何かがボヤけて存在している……その天井に張り付いた存在をパルマは不思議そうに見ていた。

 正体はリザードマン型の魔物であり背景と鱗を同化し姿が見えなくなっている……槍を振り下ろそうとすると。

「危ない!!」

 パルマは二人を庇おうとするも前方にコケる。

「ぐえ。」

「あ、大丈夫?」

 バイアトリットとライアが駆け寄ると背後にカツンと何かが落ちる音がした。

「え?」

 振り返るバイアトリット。

『くそ……外したか。どうなってんだ?!』

 予想外の出来事だが、ここまで近づけば倒せると敵はまだ思っている。

『喰らうがいい!!』

 今度こそ槍をバイアトリットに突こうとすると。

「い、嫌だああああああ!!」

 避ける動作をしたつもりだろうが、パルマの方に倒れ込んだ。

「ぎゃあああああああ!!」

 下敷きになるパルマ、目の前に何か『カラン』という音を立ててバイアトリットの道具袋から何かがほろける。

「ご、ごめん!」

「大丈夫……。」

『へへ……ここまでだな?あばよ。』

 目の前には敵が……槍が振りおろされる瞬間、目の前に落ちた物を拾うパルマ……それはいつぞやの時にバイアトリットが悪魔から騙され買ったボロ剣。それで槍を防ごうとするが、この倒れた状態では防ぐ事は難しい。

「だめだ……。」

 パルマは死を悟る所だったのだが……。

 

『何の光!?』

 剣が神々しく光だす……ボロボロの剣からは一転して神聖な雰囲気が出ている、錆びていた部分は徐々に輝きを取り戻して行った。

『か、体が……ああああああああ!!』

 周りにいる敵の体が崩壊していくと灰になり消えていく……。

『メ、メイリーク様……。』

 辺り一帯が光に包まれるとその階層の敵は一掃された。

「これは一体?」

 パルマは立ち上がりその剣を掲げると……天井にまで光が飛び出していく。

 

 ——『うギャアアアアアアアアアアアアアアアアア!!』

「「えぇ……。」」

 メイリークの下から謎の光が飛び出す……当然、消えた。その様子を見てセンシアとルトロスは困惑したように声を出す。


 ——刺した光により天井に大きな穴が空いた。やっと皆と合流できる事に非戦闘員……もとい選ばれし者たちは安堵した。

「これが……カリス・ピスティソス……。」

「いや……違う。」

 マリーダが何か勘違いしてるようなので……違うとだけボイーチェは言う。


 パルマは目を丸くして掲げた剣をずっと見つめていた……それは白く神々しい……気品ある美しさだった。まるで生きてるかのように……。

『お聞きなさい……勇者の末裔よ……あなたは力を手にする権利があります……私と共に世界に平和を齎すのです。』

「あの……人違いです。」

 否定するパルマ……まず、剣が話しかけてくる事に驚きを隠せない。

『……お聞きなさい……勇者の末裔よ……あn……』

 剣はまた同じ事を言ってくる。

「バイアトリット……これ、売ったらいくら位になるでしょう?屋敷の修理費用に回せば……。」

「武器屋のおじさんに聞いてみます……前は銅貨一枚にもならないとか言ったのになー。」

『あ、あの……すいません……私は伝説の剣でして……多分売れないと思うんですよ……適当言ってとかじゃなくて……あの本当に私はあなたを勇者と認識して……』

「とにかく、査定だけしてみますね。」

「はい、お願いします。」

『話を聞け!!どうなってんだ!!おい?!聞いてますー?!』


 こうして、屋敷地下での脅威は去った……。


 ——ハルマは屋敷周りに出来た深い溝を走って回っていた。

「居た。」

 目の前にいるのは大魔王エントロ……悪魔の血を引いていると聞いたが、その血はもしかすれば……末裔的なアレか?とにかく、右手に捕まったニュネイを救い出す事だけしか今は頭にない。


「彼女は親離れを決心した……アンタは見守ってれば良い。」


 三十七話へ続く……。

 

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