第三十五話 ASS部隊。
ルイールの脅威からニュネイを守り数時間の時が流れた……ただ一つ心残りがあるとするなら、あの薬……でも、解決したし別にいっか……。
何事もなければ、これからやってくる脅威はその秘密治安維持局とかいう奴らとの戦いになるが……国家を相手にするなんて……そもそも、僕はバトル系を意識して生活してないし……スローライフをしたかっただけなのに……多分なんだけど僕をいじめたい奴でもいるのか?
「はぁ……。」
一時の休息にも関わらずため息が出る……。
庭に出てベンチに腰を下ろし空を仰ぐ……日はまだ沈んでおらず真昼間だ。
「全く……ため息なんて……運気が逃げていきますよ?」
センシアが意味の分からない事を言ってくる。
「それさ、オカンも同じ事言ってるけど。信用してないんだよな。」
「いけませんよ、親孝行はするものです。」
「……迷惑しかかけてねぇな……今頃どうなってんだ……。」
前世と今の世界の時間軸はどうなってるのだろう……もし繋がっていれば今頃は遺影の前に線香でも立ててるだろうか……四十九日も過ぎて法事も済ませばいつもの生活に戻るけど……多分泣いてんじゃないかな?母も父も妹も……みんな家族を愛してるから。
「……。」
今更あっちの世界の事を思い出したって仕方がない……戻り方が分からない。それに、家族には悪いがここの居心地の方が良いとも感じる……ニュネイと同じとは言わないが僕はメイド達とこの世界に依存してる。前のようなただ働いてゲームする生活ではなく今のように『やりがい』のある生活……つまり自分の好きなゲームをする感覚に等しいようなそこにプラスされるのは現実というものであり感情……リアリティ……五感全てを刺激してくるような。
何が言いたいか……みんなが夢見たゲームの世界に入りチート能力で生活するみたいな、それが現実になったというだけ……当然、そんな世界は抜け出せるはずはない。夢だから……ただそれだけ。でも、反面に夢を見過ぎていたと思う……思い描いていた生活なんて手には入れられなかった……それは何か、ニュネイの件もそうだしメイドを扱う上で謎の責任感が訴えかけてくる……最終的に生き返らせれば良いとかそういう問題ではない、倫理が付きまとうという……それは彼女達に思い入れがあるから……僕は人間と変わらないしそういうスタンスを無意識に取っていた……彼女達はこの世界での家族か何かと勝手に見ている……ならば生活を共にする上でその主として彼女達を大切に扱う事が重要であるという事は前も今も変わらない。いつも言っている自分なりのポリシー……。
「ご主人は元の世界に帰りたいですか?」
センシアから唐突な質問を投げられた。
「……気になる。前まではどうでも良かった……でも今は……急な心変わりだけど、家族が心配なんだ……。」
「なら、一緒に帰りません?」
「え?」
彼女は顔を覗かせる……目で感情が伝わる……本気で何か望むような。
「もし、帰れる手段が見つかれば……その時は私と。なので、一緒に探しませんか?」
「良いのかい?」
「私達は貴方の所有物……同時に貴方は私達の主人なのです。」
「所有物って……その考えは好きじゃない……僕達は家族で良いんじゃない?まぁ……おっさんがこんな事言うのは気持ち悪いけど……まず、お前らが俺に対して雑な扱いしてる時点でメイドもへったくれもないだろ?」
「それもそうですね……私達はNPC……作られた存在である以上、倫理が備わってないのかも……。」
「それまだ引きずってんのか……あのなぁ……。」
そして、体にセンシアがのしかかってくる……え?どうゆうこと?腕を背中に回されれば密着する……童貞には刺激が強いだろう。
「私はNPCだから……貴方が何もしてこない限り私もアクションを起こせない……私はただ、貴方の後ろを見ている事しか出来ない。それがもどかしい……。」
「いや、お前ムッツリなだけだろ?」
そのツッコミにセンシアは反応しないけど……明らかにこの返しは求めていないと分かった……それは、何故なんだろう?
この複雑な余韻を感じとっていると空が暗く、禍々しく包み込まれる……。
「何だこれ!?」
急な出来事に驚くしかない……気象が変わるにしても何かおかしいとしか思えない。
その時、ミトラスがワープしてこちらに駆け寄る。
「まずいです!!敵が……来ます!!」
「え?」
地面が揺れ始めると地震を思い出す……そして上空に謎の赤い光が……。
「ミトラス!!防御魔法!!」
「防御魔法レベル5マジックシールド!!」
ミトラスが屋敷とその周りに大きなシールドを張ると光が屋敷を覆ってくる……。
大きな破壊音を聞くと地面がさらに揺れる……マジックシールドの外は岩片浮いており明らかな破壊魔法だというのか分かる……。
すぐに光が収まると屋敷の周りは円を描いた大きな溝が……強力すぎる……普通じゃない……。
「センシア……今すぐにカリス・ピスティソスを地下ダンジョンまで!……護衛はノクターンズにさせろ!ヴァリアンズとヘイムス・ヴィティズは迎撃準備だ!」
何が酷いってこの屋敷を囲った円形の溝……地下から外へ脱出できるのだが、その道が閉ざされている。俺たちは逃げ場を失った……。
「はい!今すぐに!!」
足早に屋敷へ戻るセンシア……。
「ご主人……私達は?」
ミトラスが指示を仰いでくる。
「お前の判断に任せる、審判者としての実力を見せヴェスターズの皆を導いて見せろ。」
「仰せのままに。」
「さて……どんな奴が来るか……。」
身構えていると空から本体が……落下と言うより舞い降りたと言った方が正しい……体はデカく大型モンスターと大差ない……明らかに大魔王というフォルムであり見た目と強さが比例してる。
警戒しながらステータスを開くと驚きの内容が出てくる……。
「何?!」
名前にはエントロ・マウ・ハウズ……間違いない、ニュネイ父親……今はアトロニクスの刑務所で収監されてたんじゃ……。
エントロもとい大魔王が拳を振り上げると狙いはこちらだったようで避ける……地面に大きな穴ができた。
「力も申し分ないか……。」
攻撃を避けながらステータスを確認するとレベルの表記が『???』になっている……つまり未知数という事……この世界に来て常識が通用しない相手といえるだろう。
「ハルマ様あれを!!」
ミトラスが指を刺す……間違いないあれは……。
出てきたのは召喚門……メルトケーレ近くで見た扉よりも遥かにでかい……そもそもここは発生源ではないはず……一体どうやって……。
エントロの方を見ると胸の間に石のような物が埋め込まれていた……そこが禍々しく光っている……。
「あれか?」
「私が先行します。」
ミトラスが前に突進する……直接破壊する気だ。
「待て!!」
エントロの殴る攻撃を華麗に回避すると胸まで物理的に攻撃できる位置に入り込む。
「食らえ……。」
杖を召喚し先の方で胸に埋め込まれた石を小突こうとすると魔法陣型のバリアーが出てくる……いや、あれは……。自然と足を走らせる。
「ミトラス!!避けろ!!」
急いで彼女を突き飛ばし前へ出れば大きなダメージが襲ってきた……。
——屋敷の中では外の大きな音ともに皆が警戒する。
私、ニュネイ・ブリジット・ハウズはノクターンズ寮で仮眠をとっていた……急な大きな音に目が覚める……。
「一体……。」
メイド服であるもののボサボサな髪に優れない顔色……目をゴシゴシ擦って体を起こそうとする。
部屋の外から声が……寮長であるフォスノーラさんが誰かと話している……。声を張っており緊急事態であると分かる。
『私達がカリス・ピスティソスを地下まで……。貴方達ASSは迎撃準備中のヴァリアンズとヘイムス・ヴィティズと合流後、共に協力し敵を倒しなさい。』
『は……了解しました。ASS隊長……SR2……皆の為にこの身を捧げましょう……。』
『頼んだわ……あの様子では……もしかしたら……。』
『覚悟の上です……我々はオブジェクト……そしてただのFOOガチャで出てきた存在に過ぎない……そんな中でハルマ様にボスから排出された武器を持たされ我々に存在価値を見出してくれた……この身砕けようとも……。』
『良いわね?絶対に戻りなさい……さもないと。』
『フォスノーラ様……』
『私達がサボれなくなる……。』
『……。』
『地下に総長がいたわね……彼も表に出しなさい。この屋敷の安寧のため忠誠心を見せるのです!』
『はっ!』
その会話を聞いてるとやっぱりフォスノーラさんってずっと暇してたんだ……。
扉が大きな音を立ててフォスノーラ本人が出てくる。
「ニュネイ!!緊急事態です!行くわよ!!」
「あ、はい!」
急いでベッドから出てフォスノーラの元へ……。
「外に巨大な魔物が……貴方はまだ戦えない……カリス・ピスティソスと共に避難行動をとりなさい。」
「分かりました!」
フォスノーラさんの後に着いていく……外では大きな音が連続しており危機を感じる……。
そして、少し建物が揺れると体勢が崩れる……。
「うわ……!」
膝をつき遅れをとってしまう……。
「大丈夫ですか?」
フォスノーラさんが手を差し伸べてくれる……その手を掴む瞬間だった。
壁が破壊され吹き飛ばされ倒れたハルマが……それより目にいったのは……外にいる魔物……いや。
「父さん……。」
ステータスを開かなくても一目で不思議と分かった……見た目が全然違うにも関わらず何故か分かる……それは私が悪魔の血を引いているからだろうか?
「ニュネイ……逃げろ……フォスノーラ……無理やりでも連れいて行け……。」
ハルマは倒れながらもフォスノーラさんに指示を出している……でも、私はここから一歩も動けなかった……父との再会……二度と会えないと思った……。今の私は落ち着いて状況を把握できるほどの理性はなかった。その全く違う姿のはずなのに面影がある……それがあるせいで足を引っ張ってくる。
「くっ……ニュネイ!!走るのよ!!」
フォスノーラさんが私を担ごうとしても……私はここから一歩も動けなかった……それが何故なのか説明できない。
「フォスノーラ!!ニュネイ!!避けろ!!」
ハルマが何か言っている……とうとう耳に入る雑音は消え失せた。
知らない間に私は何かに掴まれる感覚に陥る……それは暖かかさを感じたが……怒りも感じられる……この混ざった感情は恐ろしく引き込まれそうだった。
——「ニュネイ!!」
今、目の前にニュネイが……エントロが手で掴み身動きが取れないでいる……ミトラスを庇い反射魔法で吹き飛ばされ屋敷に穴を開けた……そこにたまたまニュネイが……エントロからはよく見える位置に居たのが……。
「ご主人様!!」
フォスノーラが叫ぶ……壊れた壁から多くの魔物が……。
「邪魔だ!!」
剣を取り出し周りに群がる魔物を斬っていく……ニュネイを助けようとしても行手を阻んでくる……。
「フォスノーラ!!お前は早くカリス・ピスティソスと共に行け!!時期に魔物に覆われる!!」
「ですが!!ご主人は?!」
「決まっている!俺が助け出す!!」
群がる魔物を吹っ飛ばし外へ……エントロと改めて対峙する……。
「返してもらう、ニュネイを……こっち側なのだから……。吹っ切れた以上……もう、後には進ませない。」
上空からまた、何か音がする……甲高い落ちる音……。
「何だ?」
空を見上げる……エントロも空を気にしていた……。
「まさか……。」
誰なのか僕は一瞬で分かった……間違いない……。
ピカっと光ると大きな恐竜が……エントロと同じ大きさだ……。
「ぎゃおーす!!」
大きな音を立てて地面に着地……地が揺れた。
「ナショルナか……落としたのはマオで間違いないな。」
二足歩行のゴジラみたいな見た目のナショルナと大魔王のエントロが戦えばそれはもう恐竜映画さながらだった……ただ……。
「まずい……。」
ニュネイが目を回しており見ていてヒヤヒヤする……事故りそうだ……。
「ご主人様ー!!」
続いて出てきたのはヴェスターズのミトラスとプリマ、アシスだった……。
「私達でマオとナショルナを使うと判断しました……。」
ミトラスが説明する……妥当な判断だが、今は……。
「因みになんて、命令した?」
「面白いおもちゃがあるから、遊んで良いよと……。」
「ああ……それは今まずいかも……。」
「え?」
お三方がエントロの手に持ってる人を確認する……。
「もう、遊び出したら止まりませんよ……。」
ミトラスが震えている……マオとナショルナの圧倒的力は恐らくエントロをも凌ぐ……そしてその巻き添えとして……。
「わーい!!」
ナショルナがエントロを思い切り殴るとぶっ飛んでいく……なんてパワーだ……。
エントロが対抗するため禍々しい炎を放出するもナショルナはノーダメージだった。
「ナショルナ……キャッチボールしよ。」
続いてマオが降り立ちエントロを掴む……そして上空へ……。
「それはキャッチボールとは言えないのでは?」
ミトラスが声を震わせながら話す……このまま落ちれば……大変だ……。
「言ってる場合じゃねぇええええええええええ!!」
現在、エントロを掴んだマオが上空にそして下にはナショルナが……ナショルナは飛べないのでそこの位置なのだろうが……多分ズレてる……その位置で受け取ることなど出来はしない!!
彼女に早く指示をするため近づき左へ……。
「ナショルナ!!龍神族を右に……。」
声を張ってナショルナへ指示……すると……。
「お兄ちゃん……どこ?右?」
右って言ってんのに……左に移動した……なので……。
「ぐわああああああああああ!!」
当然の如く踏まれる……だけど、以前の失敗を踏まえ体を硬化させミンチになるのは防いだ……ただ、地面に釘のように埋もれたが……。
「いっくよー。」
マオが投げ落とす……エントロがエグイスピードで落下する。エントロは翼を動かしても逆らう事が出来ないほど投げ落とした。
「よーし……。」
それを待ち受けるのはナショルナ……多分ずれるだろうと思ったがまさか……奇跡的に真上へ落下したのだ……それを受け止めると思ったのだが……。
「トース!!」
それをバレーのトスのように打ち上げるとスピードはさらに加速する……。
「あたく……。」
マオの視界に入ると尻尾を回し……屋敷の周りに出来た大きな溝の中へぶっ飛んで行った……。
「ステージ制限魔法!!エリアクロージャ!!』
ミトラスが円形の溝に蓋をするように結界魔法を張る……一応エントロを封じ込める事に成功した。奇跡だ……。
「お腹すいたねー……。」
「うん……。」
マオとナショルナはスタミナが限界値に達すると元の子供に戻る……ドラゴンの形態はスタミナ消費が酷いので基本的に長時間の稼働は不可能。再度ドラゴンへ変身するには長時間の睡眠が必要とされる……。
マオとナショルナの活躍が終わり、僕はというと……。
「もう少しで……。」
ミトラスの下の地面がもっこりする……誰かいるように……。当然その正体は僕でありナショルナの巨体を持ち上げる事など出来ないのでドンパチやってる間、気合いで穴を掘ってここまで来た。
地面から顔を出し開放される……。
「よくやったぞ……ミトラス……。」
「ですが……時間が限られてます……MPは無限じゃありません……。」
地面から完全に出て、首を鳴らす……寝違えたように痛い……。
「MPが尽きるまでに俺がニュネイを救い出す。マオとナショルナがチャンスをくれたからな。」
エントロの動きを見るにニュネイを傷をつけないよう立ち回っていた……恐らくニュネイにダメージはそこまで入ってないはずだ……いや、信じたいだけ。
「ここまで来れたのはお前らのお陰だ。感謝する……。」
「はい……ただ、気をつけて。私は手が塞がっています……セーブできても私がこれではロードはできませんよ?」
「セーブロード?」
プリマが首を傾げている……僕とミトラス、ボイーチェ以外はマルクレイブ戦のセーブとロードの出来事を覚えていない。
「失敗は出来ないか……。」
「とにかく、急いで下さい。こうしてる間にも召喚門から多くの敵が……。」
召喚門に目をやると絶え間なく様々な種類の魔物が溢れ出てきている……普通の扉より何十倍も大きい……破壊魔法で壊すには時間がかかるだろう……。
「ミトラス、お前は全員をワープできるだけのMPを残しとけ……俺が戻らなかったら……。」
「それは聞けない相談です。私は気分屋なので。」
「あのなぁ、逃げ場を失ったんだぞ?」
それでも、頑なに首を縦には振ろうとしない……。
「……分かった。とりあえず、これやっとくわ。」
MP回復のポーションをアシスとプリマに……あの結界の中に入ればエントロと僕自身の一対一の戦いが幕を開ける……未知数の敵、帰れない可能性が高すぎるのだ。彼女達だけでも助かるように渡したが……この様子ではワープは使わずミトラスにポーションを使い切るまで結界を張り続けそうだ……そうであれば期待に応えてみせるだけ。
「じゃあ、行ってくる。」
「無事帰ったら、デートぐらいしてあげます。」
「何だそれ……でも、楽しみにしてるわ。」
結界に近づくと人一人入れる穴が開く……中へ入ればボス戦の始まりだ。
——ハルマが結界の中へ入り、円形の深い溝へ落ちていく……それと同時に魔物は勢いを増して召喚門から出てくる。
その増えていく魔物を倒しまくるヴァリアンズとヘイムス・ヴィティズ……ただ、この数千規模の魔物の前では数十人の力などたかが知れていた。
「まずい……これじゃ数で圧倒される……。」
カストディーアが戦いながらも苦戦を強いられる……前に攻めれば背後を取られるし後退りをすれば攻められ前進ができなくなる。
「カストディーア!!」
シックス・アイズが敵を薙ぎ倒しながら近寄る……。
「私達ヘイムス・ヴィティズもいつまでMPとスタミナが持つか分からない……これでは……ご主人が戻ってくる事は愚か……ミトラスの結界魔法でMPが尽きる前に私達が先にダウンする。」
シックス・アイズはこう見えて賢さを備えてる……先を見通した結果がこれだと言いたいらしい。
「メラニアはどうなんだよ?!あいつの力で何とかなるだろ?」
「あいつは短期決戦しか向いてない……一撃の力と魔法が強力すぎて本調子で続けると動けなくなる……この桁違いの数の前では相性が悪すぎる……。」
カストディーアとシックス・アイズが後ろを預け合うと魔物が囲い始める……。
「どうすんだよ……これじゃ……。」
この危機感の中にサイレンが響き渡る……さらに緊張が走るのと同時に不思議と安心感もあった……。
『カタパルトデッキ射出します……デッキ付近に注意してください。』
電子音が忠告を流すが、どこがカタパルトデッキなのかさっぱりだった。至る所の地面が格納庫のように開くとその中から甲冑が垂直に飛び出す……。飛び出した複数の甲冑は付近にいた魔物を倒すと陣形を組み始める……。
最後にもう一体カタパルトから出てくると、それは甲冑というよりロボットのよような……『ギラーマシン』のような……四足の機械的な足に上部が甲冑になっている……ただ違う所をあげるとするなら、両肩に銃火器を装着できるマウント部分が存在する。
『貴様ら!!これより、防衛戦を開始する!!上の連中に俺たちがただのオブジェクトで無いところを見せてやれ!!』
それらを指揮してるのはずっと地下に格納されていたUR1という甲冑のオブジェクト、前述の通り二回行動しそうな風体だ……レベルはカンスト100とFOOの甲冑オブジェクトシリーズでは最高クラスのものだ。
『先陣に出たい奴は名乗り出ろ!!何分で鉄屑になるか数えてやる。』
『チッ……レアリティが高いだけでイキがりやがって……悪いが俺は後衛に回らせてもらうぜ。』
C5は小声で愚痴る……そして、後ろの方へ行こうとすると。
『早速鉄屑が決まったようだな!?C5、貴様が先陣をきれ!!C4もおまけでつけといてやる!!』
『あ?!俺もかよ?!』
『お前らがどれくらいで鉄屑になるのか楽しみで仕方がないな……安心しろ、すぐ再利用して見た目の悪い釘にしてやる……それが嫌なら目の前にいる魔物を血祭りに上げろ!!』
『冗談じゃねぇ!!敵の数が見えねぇのか?!』
『仕方がねぇさ……とっとと片付けるぞ。』
C5とC4は前に出て敵を片付ける……彼はらC……つまりコモンのレアリティでありレベルが20と低いが持ってる武器はストーリーモードのボスから排出されたものなのでそこそこ使える具合だ。
『どうした?C5……もっと敵の数を減らせ……私達がつっかえてんだ。それとも自分に自信がないのかい?』
続いて文句を言ってるのがN10という女性型の甲冑……レアリティはノーマルでありレベルは30だ。
『黙ってろクソアマぁ!!良いご身分で調子に乗るんじゃねぇ!!』
これは余談だが、ASS部隊の一部分はガラが悪い。その中でも数字が若い順にその傾向がある。数字が若いだけあって、排出された順にボスの武器をハルマは割り振っていた……。
『全く……騒がしいですな……。』
『私達も行きましょう。あの扉……絶え間なく魔物が出続けています……MPの概念のない私達が物量と平坦に持ち込めば上司は楽に戦えるでしょう。』
続いてN 11、C3が前へ出る……ASS部隊は数が多い……屋敷の中に佇んでいる奴以外にも地下の空室に大量にストックが存在する……ただ、排出されて新しいのが多いため、武器こそ普通だが、数ではいい勝負が出来る……このまま徐々に目の前の敵を減らし召喚門から屋敷まで甲冑を敷き詰める戦法のようだ、こうする事で絶え間なく出てくる魔物が足を踏み入れる度消えていく……いわゆる制圧戦に出た……。
『UR1……飛んでる奴はどうする?』
SR2が空を見る……そこにはガーゴイル型の魔物が飛んでいた。奴らも倒さなくては完全な制圧とは言えない……むしろ空に敵がいるという事はいつでも攻撃が飛んでくる事を意味する。
『任せろ……おい!C88!!まだ、装填できないのか?!』
『今!!終わりました!!』
『遅すぎる!!武器の装填はオムツを交換するより簡単だ!!それを肝に銘じておけ!!」
『は!!』
急いで装填された武器を両肩のマウント部分に装備する。
UR1の脚部パーツについてる推進器部分が噴射すると上昇し空を飛ぶ魔物と同じ高さまで持っていく……。
『貴様ら!!錆びたくないなら扉まで殺し進めろ!!』
UR1の右肩パーツにガトリング砲、左肩には計八発が積み込まれたミサイルボックスがある右手武器にアサルトライフルを持ち左手にショットガンを装備している……尚、地下の武器庫にはまだ多くの近代武器がある……ASS部隊やメイドも装備できる……。
右肩のガトリングをガラガラと回すと魔物の体が吹き飛ぶ、ガトリングの範囲内を避けようとするなら右手のアサルトライフルで追って撃てば取りこぼしは少ない……近くに来たやつは左手ショットガンで吹き飛ばすだけだった……。
上空で地獄が始まると下では赤い雨が降ってくる……時に魔物の肉片が甲冑の上に『ボト』っと音を立てて当たる。
『おい!!C5!!押し殺せ!!錆びるのは御免だ!!』
『だったらテメェも手を動かせ!!木偶の坊だから足がいう事聞かねぇってか?!ああ?!どうなんだ!?』
『この……噛ませが……終わったら焼きでも入れてやるか……。』
後続の連中に文句を言われるとイライラするようだ……実際に進みは悪くなっている、扉まで殺し進める程に敵が密集している為だが、その分数が減ってるのでメイド達が戦いやすくなっているのは事実。
敵を倒し続けて返り血を浴びて赤くなってる頃には敵の数は少なくなっており扉前までASS部隊が来ていた……あとは敷き詰めるだけだが……。
『全く……意外とあっさりだったな……。』
C5が召喚門を見上げ始める、その大きさに少し圧倒こそされるが敵が少ない以上緊張は解けていた。
『待て……様子がおかしい……。』
C4が不自然だと感じ始める……幾ら何でも静かすぎるのだ……今まで絶え間なく出てきた魔物が急にピタリと止まったからだ。
『お前達!!そこから離れろ!!』
UR1が危険を叫ぶと扉から甲冑達が離れていく……。
『なんだ……ありゃ……。』
甲冑は皆、召喚門に釘付けだった……巨大な召喚門とは裏腹にポツンと一体だけ禍々しいオーラを放っている品格のあるガーゴイル型の悪魔が出てきた……。
『後退しろ!!』
UR1の指示により扉手前まで来ていた甲冑達は少し後ずさる……。
「素晴らしい……素晴らしいですな……あなた達は他の誰よりも優れている……どうですか?私達に降りませんか?」
という、勧誘をされるが……。
『何言ってんだ?コイツ……。』
C5はポカンとするし……他の皆んなも同様だった……。
「はは……驚かせて申し訳ない……私の名は魔界7幹部の一人……『エバース・ググリントス』……どうぞお見知り置きを……。」
するとペコリと紳士に頭を下げてくる……。
『悪いが、俺たちの上司は席を外している……生憎決定権は持っていないのでな。』
UR1が話をする……そっちに着く意思はないと話す。
「良いのですか?あなた達を飼ってる主人は現在、新生された大魔王様と戦っておられる……勝ち目は万に一つと無いと言ってるのです……。」
エバースがそっと手を差し伸べる……握手を求めてるようだ……。
「あなた達はここに置いておくのは惜しい……。我々と手を組み大魔王様に世界を差し上げるのです!」
『胡散クセェ……。』
話が出来すぎてると各々が思い始めるのも無理はない。そんな手に乗るほど愚かではない。
『ほう……。』
武装を解除しゆっくりとエバースに近づくUR1……。
『総長……。』
それを心配する甲冑達……本当に裏切ってしまうのか……それだけが頭を過っていた……。その心配をするのは数字が若くない連中だけだった、つまり排出されて新しい甲冑。
「話が分かるようで大変助かります……我々も急な大魔王の復活で人が足りて無いのです……。」
『ああ……お互い、困った上司を持って大変だな……その気持ちわからなくないぞ。』
「その言葉……大変心に染み渡ります……。こんなに同志を共にしてくれるとは……涙が止まりません……。」
ゆっくりと手を握る。
『泣くことは無いだろう……。』
「感動です……。」
『そうか……泣きっ面に蜂って言葉を知ってるか?』
「それは一体……?」
エバースは不思議そうにUR1を見る。
『こういう事だ。』
その瞬間UR1の下半身が大爆発を起こすとUR1の上半身が吹き飛ぶが甲冑の形は保っていた。自爆という手段を取ったがHPだけは1を残す。
「ふざけてますね……こっちが下手に出ていれば……。」
爆煙から姿を現したエバースは余裕そうな表情こそしているが瀕死の状態だった……。
『お前達!!あの、薄汚いゴミの首を取ってこい!!持ってきた奴は十字勲章を授けてやる!!』
『おおおおおおおおおおおお!!』
UR1の言った十字勲章は甲冑のレアリティが上がる消費アイテムだ……つまり、使えば力を手に入れられるので、ASS部隊のコモンたちは血相を変えてエバースに襲いかかる。
「品のない連中だ……お前達、やってしまえ。」
部下に命令した後、飛び上がる。首を取る手段が無くなってしまう。
『逃げんじゃねぇ!!』
『チンタラ浮いてて恥ずかしくねぇのか!!』
『殺すぞオラアアアアアアア!!』
『羽虫が頭なんか使うな!!調子に乗りやがって!!』
などなど、暴言が押し寄せる……神経質であれば頭に血が上りそうだ。
「この……野蛮どもが……。」
ヤバい連中を見下し、そこに集中していると離れた場所が疎かになる。
『当たるかな?』
UR1が武装解除した武器の中に左肩のミサイルコンテナ、それを持ってエバースめがけて放つと大きな発射音が響く。
迫り来る計八発のミサイルが恐ろしく噴射口を光らせながらエバース目掛けて押し寄せてくる……。
「なんだ……あれは……。」
未知の物体に驚く……ミサイルは追尾式であり飛んで逃げようとしてもしつこく追ってくる……。
「何?!ふざけるな!!」
飛行中に振り向き魔法を放つと一発を破壊するが……分裂した。
「避けきれないだと?!」
ミサイルの正体は追尾型分裂式ミサイル……それが計八発……逃げられる訳がない。
「うわあああああああアアアアアアア!!」
防御魔法を発生するも強力な爆破によって破壊され、エバースは跡形もなく爆炎の中へ消えていった。
『くそ!!新米が先を越しやがったか!!』
『口を動かす前に、残った敵を狩り尽くせ!!』
召喚門から再び敵が出てくる……いつも通りと行きたいが、現在UR1が戦闘不能状態……こうなると飛んでる敵への対処が難しい……。
——屋敷地下用水路では大変まずい事が起きていた……。
「ここどこ?」
用水路のはずだったのだが……下に大きな穴が開くと一部のカリス・ピスティソスのメンバーが落ちてしまう。そのメンバーとは誰なのかだが、アウストラ、ライア、シーコ、パルマ、マリーダ、バイアトリット、ボイーチェの計7人だった……つまり非戦闘員というか普通に戦えないメンバーが未知の場所に迷い込んでしまった。
三十六話へ続く……。




