第二十九話 気分屋だって恋はします……それは神も例外ではありません。
城郭都市メルトケーレ……とある酒場でカウンター席に座り佇む男が一人。飲めないはずの酒を無理に流し込み、受け入れられない結果を誤魔化していた。
「あ〜飲んじゃったよ〜飲めないのにさ〜どうしよう〜どうせ覚めたら後悔するのにさ〜おかしいよ〜人間ってよ〜なんかもうお酒って完成されてるよな?次元が。」
「何言ってんだオメェ。」
店主が冷ややかな目で応じてくる、もう少し温かみのある言葉を返してくれてもいいだろ?俺は負け犬なんだ……年下に説教されたらおしまいなんだよ。
何を隠そう僕、山崎春馬は不貞腐れて酒を飲んでいたのだ。かれこれ長時間、トイレとカウンター席を行き来していた。吐いて飲んでの繰り返し……もう、何も覚えてない……それが目的だから。
「聞いてくれよ〜もう……勝手に責任感じて全部背負い込んじゃったよ〜もう分からないよ〜お家帰りたくないよ〜逃げ出したいよ〜。」
忘れるつもりで来たが、結局メイド達が頭によぎる……前世だったら簡単に忘れる事ができたのかな?
「あのなぁ……どういう都合か知らんが。一度背負うと決めたもんは最後までやりきるのが男だ。てか、普通はそういうもんなの。」
「お前は男かよ。」
「当たり前だろ。」
「とにかくだ……僕は死ぬまで飲むって決めたんだ……死場所を探して逃げないと……。」
「死んで逃げるとはな……こっちは死にたくとも死ねれねぇってのに。」
「え?」
「この建物を見ればわかると思うが、以前の戦いでボロボロだ。スケルトンやら屍人が彷徨いておまけに肉片のデケー塊が壊して行きやがった。こっちは家族もいるからな……あいつらを不自由な思いのまま死ねれないのよ。」
「ああ……それは、すまなかったな。」
「なんでお前が謝んだ?」
「特に理由はないよ。」
少しずつだが酔いが覚めてきた。だけど、帰りたくなかった……あれだけ大口叩いて『君には幸せになってもらう。』と言ったくせに帰ってくれば無理でした……そんなの無責任にも程がある。正直合わせる顔が無い。てか、よく考えたら恥ずかしいわ……カッコつけるとか……アホも良い加減にしろ。
店主が時計を気にし始める、視線が時計と僕を行き来した。
「悪いがもう、店仕舞いだ。早く帰れ。」
「はい……。」
これ以上迷惑をかける訳にはいかない。お代を多めに払い大人しく席を立つ。
「おい……ちょっと多いぞ?」
「愚痴聞いてくれたお礼だ……気にせず受け……ウプ……オロロロロロロロロロ……」
「うわ……。」
あーカッコつけようと思ったのに……ちくしょう……。
さらに多めに払い出て行く……外は暗く千鳥足でボロボロな道を歩いていく、周りの建物は少しだが崩壊しておりガラの悪い連中がそこかしこに居る。察するに深夜帯だ。
「マジでどんだけ飲んでたんだ……。」
驚いていると急に吐き気が襲ってきた。
「やべ……。」
急いで路地に入り込むとゴロツキの溜まり場だった。
「おい!何、俺達の縄張りに入ってきてんだ!?殺すぞ?!」
「あ、すいません。吐かせて下さい。」
「は?!」
「あ……そろそろ逆走してきます。」
「うるせーよ!実況しなくて良い!あと、逆流な?!」
「あ……治まっ……おろrrrrrrrrrrr……」
「うわあああああああ!!逃げろ!!」
ゲロでゴロツキを倒した、よく分からないが経験値が貯まった。
疲れてきたので近くの壁に背中を預け徐々に腰を下ろしていった。側から見れば何かの中毒者に見えなくない、顔を俯かせしんどそうにする。
「はぁ……帰りたくねぇ……帰ったところでどうすんのさー。いっそエントロみたいに王国崩壊させるか……それも悪くねぇや。」
正直心身ともに疲れた、何も考えたくないし自分で作った責任を放棄したい……責任って何だろう……あれって意味あるのか?勝手に作ったものなら尚更……僕には関係のない物として今から扱っても誰も文句を言わないだろう。
「随分と呑んだくれてたようですね?」
「え?」
顔を上げるとミトラスが居た、何しに来たか分かる。
「さぁ、帰りますよ。全く……お酒なんか飲めないクセして……。」
「なんで知ってんだ?」
少し疑問に思った、こいつの前で酒なんて飲んだ事は無いし本来飲めない事を話した覚えは無い。それともゲームをしていた時に俺の独り言を聞いていたのか……どうにも思考がはっきりしない。考えるだけ無駄な気がする。
「その様子だとエントロの件は失敗に終わったと見えます。てか、普通に考えて無理でしょ。」
「はいはい、どーぞ勝手に言って下さい。」
するとペチンと優しく頬を打ってきた。えぇ……?
「不貞腐れるのも良い加減になさい。いつもの貴方だったら直ぐに行動を起こすバカなのに、今回ときたら……自信がないのにも程があります。」
「いやいや、俺はそもそも自己肯定感低いし自信もクソもねぇよ。」
僕は普通の人間と大差ない。ゲーム上での資産こそ引き継いだが実際は人間……感情には逆らえないのだ。それに、こうやって一人になりたい時だってあるのがいい証拠だ。
「とにかく、帰ると言ったら帰りますよ。みんな心配してますから。」
「お前はカーチャンか?」
うなだれた状態のまま背後襟を捕まれワープホールへ飲み込まれていく……強制帰還だ。
——飛ばされたのは東棟教会、中は暗く皆が寝静まっている時間だ。
「……。」
ただ無言になる、気まずい空気が流れる。
「どうか……一人で抱え込まないで。あなたはいつも自分一人で何とかしようとしている。ニュネイの事は私達に任せてみては?」
こいつが心配する事もあるんだな……。
「それは責任逃れって奴だ。俺の問題をお前らに押し付けてるのと変わりない。お前らが肩代わりする必要は……」
「おバカ。」
今度は頬をつねってくる、結構強く痛い……。
「痛ってー!!お前……あと、何回バカって言う気だ?!」
「やはり、バカですね。だからアホ童貞なんですよ。」
「関係ねーだろ!!」
「あなた……口で責任がどうこう言ってますけど……本当はもう限界でしょう?放棄したくて堪らない……違いますか?」
「……。」
「良いですか?私達は傷ついている貴方を見たくない。それだったら、どんな手を使ってでも協力するという話です。貴方だってそうでしょう?」
今までの事を振り返ってみるとメイドを第一に全力投球だった、彼女達の幸せと暮らしを考えれば身を削る事を厭わなかったと思う。いや、そう信じたい。
「ミトラス……。」
改めて彼女の顔を見る、その目は今までの気分屋からは想像出来ない迫力のある目であり、不思議と身を預けたい気持ちになった。
「貴方は少し休みなさい、頭を空っぽにして自分の思う責任を一時的に放棄するのも必要なんです。私達に甘えなさい。」
マジで神っていたんだな……今日からミトラスの見る目が変わったかもしれない。
すると、UIが出現する。不可抗力……最悪なタイミングだ。彼女の熱意を受け取ろうって時に……。
「は?」
すると、あるものに目が行きバカっぽい声が出る。
「どうしましたか?」
ハートの器は300%でパンパンに膨れおり今にもはち切れそうだった。そして俺をどう思っているのかというと……。
「っ……!!」
ミトラスがそのUIに気づく。
「お前……ずがああああああああああああ!!」
表記を口にしようとした瞬間強い蹴りが顔面に入る、衝撃でなんて書いていたか忘れてしまった。
「目がああああああ!!」
顔面を両手で押さえ転げ回る……ただでさえ強いのに……危うく死にかけた。
「……全く、その機能は危ないですね。一度殺せば忘れてくれるでしょうか?」
「ま、待て!!忘れた!!だからやめろ!!」
ミトラスが杖を召喚しそれを振りかぶってくる……マジで殺す気じゃねーか!!
「早く、とっとと寝て下さい。そして、二度と私の前に現れないで。バカ。」
「早速心身に傷付けてんじゃねーかよ!!ふざけんな!!」
不思議とこのやり取りで元気が戻った気がする。言葉にはしなかったがミトラスには感謝した。危うく自分が見失うとこだった所に手を差し伸べてくれた事を忘れはしないだろう。
——一方で王都アトロニクス……王宮から離れた場所に収監棟がある。棟の周りは湖になっており真ん中に建てられている。罪人は棟から脱出を試みようとするが堅牢を破る所から至難の業だった。番人に賄賂は通用せず、盗賊のピッキングも敵わない。運よく抜けられたとして番人に斬り殺されるか、湖に投げ出し水性モンスターに殺されるかの二択になる。唯一の救いは懲役生活の満喫か死刑のみと噂される。
「おい、起きろ。」
檻に収監されたエントロは床で寝ていた所を番人に起こされる。
「何だ?」
「面会だ、移動するぞ。」
「面会だと?」
エントロは不思議に思った、本来であれば面会できる人間は限られるはず。身内でない限りはだ。弁護士なんて役には立たない、罪をもう認めてしまったからだ。では誰が面会を求めてきたのか……王か、それとも従えていた部下だろうか?どちらにせよ密接な関わりがなければ面会は出来ない、一体誰がくるのか予想が出来なかった。
通された場所は地下であり個室で閉鎖的な空間に嫌悪する。全体的な石造りに天井からは湖の水が滴る、椅子に座らせれると正面には壁と人の顔程の小さい檻が目の前にある、そこから面会の相手を覗けるようだ。
「良いか?変な真似したら刺すぞ?」
番人は後ろから槍を差し向ける、一人ではない何人も警戒して向けてくる。
そして、ついに面会の相手がやってきたようだ。『こちらです。』という番人の声に導かれ壁を跨いだ向かいに座る。
「お前は……。」
そこで目にしたのは二度と会うはずの無い人物だった。
「久しぶりです。いつぶりでしょうか?」
その人物とはエントロの元妻でありニュネイの母親である。
「なんの用だ?金だろう、私の溜め込んだ遺産を持っていくつもりか?」
「ええ、もちろん。それだけの為に来ました。」
「ふざけおって……。」
「あら、そんな口聞いて良いの?あなたはもう、この国の宰相じゃない。挙句、悪魔のハーフよ?人権なんて無いのだから元嫁である私に資産が流れるのは当然よ、今日はその手続きに来たの。扱いが分からない品だってあるから使い方を聞きに行こうと思いまして……手紙じゃ答えてくれないでしょ?ましてや私じゃ。」
「貴様にやる金など無い。とっとと消えろ。」
「はぁ……困りますわね……せっかくいい情報があるのに。」
「何だと?」
「速報よ……貴方の娘ニュネイが保護されてるらしいわ。メルトケーレの崩壊した城でアルガニーテ陛下の秘密監視兵が客人と姫の会話を聞いたらしい。まぁ、アルガニーテ陛下はニュネイなんてこれっぽっちも思わないだろうけど……貴方は違うわよね?」
アルガニーテはメルリダが心配なので逐一報告をくれる秘密監視兵を忍ばせておいた、エントロの資産を根こそぎ貰うためには有利になる情報が必要。そのため、あらゆる手段を用いてたどり着いたのがこの情報だった。
「保護……そんな訳ない……私が捕まった以上悪魔の血を引いてると知っている……何か利用するつもりか……」
エントロは心配する、彼は娘の心配しかしていない。
「だ・か・ら……私がニュネイを救ってあげるわ。全財産を私に譲りなさい。」
「くそ……ただし、絶対に救い出すんだ!!何があってもな!!」
「ええ、任せなさい。」
「良いか?前のようには扱うな……決して……俺はそれを未だに許さん。」
「まさか……私からみればニュネイは貴方の資産を交換できる品のようなもの……荷物が壊れた状態で届くのは誰もが嫌う事ですわ。」
「貴様は……。」
当時、エントロに悪魔の血が引いていると分かっており。娘に嫌悪のあまり暴力を振るった。エントロはそれが未だに許せない、血にこだわるという王国の風土がエントロの野心を促進させたきっかけにもなった。
「全く怖いですわ〜。でも、安心なさい。相手はどうやら銅ランクに昇進したばかりの新米冒険者のようね。ニュネイをメルリダーナ姫にでも売りつけるつもりでしょう……全く下手な闇商売ですこと。少し痛い目に遭わせてあげましょう。」
席から離れると番人の後ろに着き帰ろうとする。
「ああ……それから……。」
振り返る……何かを思い出したように。
「ニュネイはこちらで保護した後にハイアット選民国へ送って差し上げます。あの国なら差別がないでしょう。私からの計らいです。」
今度こそ行ってしまった。エントロは信じることしか出来なかった。
——不穏な動きがある中でニュネイのいる客室では……。
「くっ……。」
ニュネイは配膳された食事に付いてきたフォークを自分の喉元へ向けていた……食事には一歳手に付けず、唯一手に付けたのは刺すことをデザインされた食事道具だけなのは頭の中に生きるという気力が無いからだ。
「ダメだ……。」
ただ、いざという時に限って実行できる事は難しい。
フォークを手放し床にフォークを落とす……カーペットの上であるため音はしない……その何もない音が自分の心を表しているようで気持ち悪かった。
扉の奥から誰かが走って来る音が聞こえる。
「ドカーン!!」
扉が音を立てて開くとソワレが出てきた、メイドの服は着ておらず、コスプレというか、人気ソーシャルゲームに出てきそうなキャラの格好をしていた。露出は多いしアホの童貞がそこに居れば目のやり場に困るだろう。
「……何それ?」
ニュネイが疲れた顔をしながらも不思議そうに見ている……虚無の目はしておらず、新しいものに触れたような僅かな好奇心のある目をしていた。
「コスプレ換装システム。」
実際にそんな機能は無い、彼女なりの冗談だった。
「……そう。」
ニュネイからして見ても露出の多い服を着た特殊なゾンビというイメージしかない。
「ゴホン……『ニュネたそ』も着れば分かる。」
「『ニュネたそ』?」
「まぁまぁ、私に任せといて……。」
急に背後に回られて髪の毛を結んでくる……。抵抗などしない、虚無の感性はまだ残ってはいたが……今から何が起きるのかという楽しみは感じる。
「できたぜよ。」
鏡を前に持ってこられると髪がツインテールになっており、印象が少し変わった自分という認識をした。
「これは……デュフ……。」
「……?」
「ちょっと、待ってて!」
部屋を出て行き数分で戻ってきた……。
「何それ?」
「これは、黒のラバードレスでしょ……ゴスロリ……制服……スクール水着もあるでよ〜。」
床に様々な服が並べられておりコスプレ趣味のソワレは他のメイドよりも所持している服が多い。ソワレとニュネイは体格が似ているので服が共有できそうだ。
「はぁ……FOOってさコラボが無いんだよなー。」
何故ソワレがため息をついてるか分からない、そもそもFOOとは何なのか……その説明もなければニュネイはずっと何を言ってるのか分からないままだろう。
「ニュネたそ。これ着てよ。」
ソワレが差し出したのは黒いラバードレスであり結構洒落ていた。
「そんなの着てなんの意味があるの?」
とにかく疑問を口にする、あまり体を動かしたくない意思を感じる。
「えぇ……。可愛いと思うのにな……。」
「可愛い?」
「そーだよ!!」
その言葉は父親以外に言われた事が無かった、それが新鮮に感じる。家を出て一生言われる事の無い言葉だと思っていたからだ。
「ニュネたそはワイルドパツキンツインテガールなんだよ……そんなの、可愛い意外無いでしょ。」
「ワイルド……ん?」
呪文のような言葉に口が詰まるニュネイ……オタク特有の早口についていけなかったようだ。
「とにかくこれ着てよー。一生のお願い!!この目で拝みたいんだ……。」
「……そこまで言われたら……。」
ソワレが両手を合わせて膝を付き頼み込む、そんな事をされては渋々着る他ない。
彼女は服に着替え始める、黒のラバードレスは当然初めて着た。今まで家に住んでいた時は貴族の家でもあるに関わらず理由があって貴族然とした服は着られなかった、家を出て騎士団に入っても質素な服に甲冑だ。なので、ニュネイからすれば少し変わったような体験である。
「うおおおおおおおおおおお!!」
テンションが上がるソワレ……手にはスクリーンショット、もといカメラでニュネイを色々な角度から撮っていた。
「どうですか?」
打って変わってニュネイは着てくれと頼まれたので着ましたという顔をしていた。
「す、素晴らしい!!大人の魅力に子供の要素を入れる事で……えっちな感じが……ませてる要素が逆にギャップになって……何より金髪碧眼である汎用性の高さが……」
「何言ってんだろう……。」
「ニュネたそ!!これも着よう!!」
次々と服を出してくるソワレに困惑するニュネイ。
「えぇ……これの何が?」
「私の趣味はオタ活!私は着るのも好きだし可愛い女の子が服を着ていたら楽しくてテンションぶち上がりだ!!」
「楽しいか……。」
ニュネイはボソっとした感じで話す。
「あ……ごめん、調子に乗りすぎた……嫌だった?」
ソワレは落ち着き目を丸くした……。
「いや……。」
ニュネイはゆっくりと姿鏡に目をやる、着てみたものの自分の姿を確認してなかった。
目をやると、鏡の向こうに映る自分は新しい存在として認識する……それは自分でも可愛いという存在が理解できたからだ。元の自分を否定する訳ではないが、可愛いという言葉のおかげで自信も持てただろうし、もっとも可能性という視野を広げたくなった。
「……嫌いでは無いと思う、なんか新しくなった感じ。」
「おお……じゃあ、もっと着てみる?」
「うん……。」
「やったー!!」
「本当に私は可愛いのかな?」
「もちろん!!」
「……はは……なんか、馬鹿馬鹿しくなっちゃうな……。」
「えぇ?」
唐突な言葉に声が出るソワレ、ニュネイの言葉もそうだが、初めて笑うというアクションを起こした。乾いた笑いだが、ソワレからすれば予想外だった。
「本当は……ソワレさんに殺してもらおうと考えたんだけど……」
「で、できるかアアアアアアアアア!!」
急な言葉に声を荒げるソワレ、そもそも殺す理由もないし、急にそんな事を言われても恐怖しか感じない。
「も、もちつけ!!色々と話は聞いたけど、そんな簡単に相手に頼んで良い事じゃない!!」
「そうだよね……良くないよね……。」
「私はもっとニュネイと一緒に居たいんだ!!」
ソワレはニュネイの両肩に手を置いて、話を始める。唾が顔にかかるぐらいの勢いで口を動かす。
「確かにニュネイと会ったばかりだけど、可愛いから仲良くしたいって思えたんだ!!この感情がある限り、今からどうこう出来ないよ!!そんな理由で仲良くなりたいのはダメか?!」
ソワレは言いたい事を全て言って唇を噛み締め、涙目になる。
「ダメじゃないと思う……。」
「だったらさ……もっと仲良くなろう。二度とそんな言葉言わせないぐらい……楽しい事いっぱい教えてあげる。」
「私は……忘れる事ができるかな?」
「分からないけど……楽しい時間の時の流れはびっくりすると思う……知らない間に時計が何周もしてるんだ。」
ニュネイは当時を思い出す、いつも自分の部屋に閉じこもり時計ばかり見ていた時の事だ。あんなつまらない時間が嘘のようになるなら、その知らない間に時計が何周している感覚を味わいたいと思った。
「だからさ……信じてよ。今は難しいだろうけど、少しずつ身を私達に預けてよ、毎日が騒がし……いや、楽しいから。」
「うん……。」
その時ドアをノックする音が聞こえる。
「失礼しまーす……おや。」
入ってきたのはセンシアと後ろにはミトラスが居た。
「これは……萌えですね。」
センシアがニュネイを見て話す。ラバードレスを見て萌えと判断したみたいだ……。
「てか、どうしたんです?」
ソワレがセンシアに質問を投げる。
「ミトラスによれば、なんの戦果もあげず飲んで潰れたそうです……ですよね?」
「ええ……全く……。ただ、彼も限界がきています……休ませてあげないと壊れてしまう。」
「大丈夫かな……。」
ソワレは心配する。
「さて……ニュネイさん。今後あなたをどうするかですが……」
センシアが話を始める、内容はシンプルだ。ニュネイの処遇……ただそれだけ。それは家主であるハルマが決めた事では無くメイド達によって決めた事だった。彼女はどう受け取るのか……。
三十話へ続く……。




