表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
死んで転生したら自作最強メイドNPC達と共に異世界攻略やろうとしたらゲームと全く違う世界線でした。  作者: 山田孝彦/ダーヤマ・タカヒコ
第二章 今のあなたに必要な事は仕事をする事でもショタの貞操を守る事でもありません。目の前の仲間を信じなさい。
31/35

第二十八話 対面。

 柔らかいベッドの上で眼が覚める、そこは自室であり不思議と落ち着いた感覚だったが。蘇生させられたという証拠が脳裏に過ぎると冷静さと虚無感に襲われた。

 隣にはシックス・アイズがおりずっと顔を覗かせていた。

「ご主人様……。」

 彼女は泣いていた……何に対してかは分からないが何故泣くのかという感情は分かる。

「別に泣かなくて良いだろ。」

 今回ばかりの自分に起きた死は次元が違う。マオやナショルナのような無邪気な事故で起きた死やカストディーアがくれた死とは全く違う。人の言葉で表せないような恐ろしい感情の上で起きた死だからだ。そして僕はそれを受け入れ贖罪とまで言わないがニュネイの人生と尊厳を踏み躙った事に罪悪感を払拭するため逃げたに過ぎない。

「ごめんなさい……ご主人が何であんな事をしたか分からない……。」

「俺も分からん。」

 あの時は頭が真っ白だった、何をどうすればヘイムス・ヴィティズの倫理観が変わるのか、そしてニュネイ本人に何を返せば良いのか、とにかく冷静ではいられなかったし動揺していた。

「良いか?お前らは悪くない、悪いのは俺だ。お前らをよく見られなかった俺の責任以外何がある?」

「いえ、そんな……ご主人が悪いのではなく、私達です!!どうか……私に罰を……何でも受け入れますから……。」

 彼女は少し怯えていた、重力魔法でダメージを与えおまけに恐怖のオーラで精神攻撃をしてしまったからだ、これは体罰であり制御できなかった僕が悪い。メイドに傷をつけたくないと言っていたが……それを破った事に間違いはない……罰を受けるのは俺の方だ。

「シックス・アイズ……俺はお前に怪我をさせた……だから、お前は俺を裁く権利がある。俺をどうしたい?お前が罰を受けるのではなく……俺が罰を受けなければダメだ。」

「い、嫌です!!そんな事を言わないで下さい!!どうもしたく無いです!!」

 彼女は必死で拒否反応を見せる、首を激しく横に振り見てられない悲しい女性の表情だった。落ち着かせようと手を握るぐらいしか思いつかない……僕は愚かにも彼女達のアフターケアさえも出来ないのだ。この時点で主人としての資格も無く責任も鼻から無い。なので、愚かという言葉以外に相応しいものが見つからない。女性経験の無い人間であれば当てずっぽうにそれっぽい事を頑張って言うか……あるいは何もしないか……僕は優しく手を握って怒ってない事を主張するしか出来なかった……。

 

 僕のあの行動は果たして彼女達の倫理を変えられたのだろうか……誰かの死に対して『思うところがある』という感情になれただろうか……分からない……そもそも、彼女達本来の倫理観を曲げる事は邪悪なのでは?アイデンティティを否定してるのではないか?その個性を尊重しながら上手く扱って行くのが正解なのでは無いだろうか?

 このような思考がずっと巡ってくる、頭がおかしくなりそうだがそんな暇は無い。


 ——シックス・アイズを落ち着かせて早速ニュネイが眠っている客室まで足を進める、一緒にセンシアも付いてきた。ニュネイには改めて顔を合わせて話をする必要がある、謝罪と今後の彼女の人生の話をしなければ。


「とりあえず、今は彼女をここに留まらせる。メルリダには一応報告しとく、口が硬そうだからな。」

「かしこまりました。」

 話しながら廊下を歩いていると、客室まで到着する。

「僕だけ中に入る。部屋の外で待ってろ。」

「はい……。」

 

 部屋の中へ入るとベッドから状態を起こしたニュネイがいた。目が死んでるというべきか、生気が全くなかった。

「お、おはよう……。」

「……。」

 こっちを見るだけで何も話さない、何を考えているのかすら分からない顔だ。

「本当に申し訳なかった。今日は謝罪をしに来た……あと今後君をどうするか……。」

「殺せば良いじゃん。」

「え?」

 最初に口から出た言葉は正直聞きたくない内容だった、僕の求めてるものじゃない。だけど、彼女がそうしたいならそうするべきなのか……だけど、ここで分かりましたと折れるのは違うと感じる。

「私はもう何も無い。あなたのメイドさんから色々聞いた。私の父の事。」

 唇を噛み締めながら彼女の話を聞く……。

「私の父は悪魔と人間のハーフ、そして私はそのクォーター……。父は私が悪魔の血を引いてるって気づかせないようにしてたけど、無理よ。そして何よりこの国を恨んでいたから……野心だって気づいてた、それを忘れさせる為に騎士になって私だけを見てくれるように努力した……だけど最終的には……。」

「お母さんは?他の家族は?」

「母は私が悪魔の血を引いてると知っている。そうであれば、価値がない限り近付いてこない……あんたは私をどうにかしたいって口だろうけど、今の私に身寄りが無い事ぐらい分かるでしょ。」

 迂闊な質問だったか……何やってんだ俺は……。

「世は何が言いたいか……私には生きる価値なんて無い、さっさと死んで父さんより先に待つだけ。あんたらみたいな化け物に利用されるぐらいならこっちを選びたい。」

 そんな事を言われてもな……僕には殺せないよ……ましてや女性だし、可愛い女の子という印象がある。地下で監禁されていた時とは全く違う容姿をしているので男の僕からすれば、当然殺せないしその気持ちも持てなければ考える事も出来ない。この手で殺せば一生分の罪悪感を背負う事になる……それだけは嫌だ。相手の気持ちよりも自分の気持ちを優先させて欲しくなる。つまり逃げたい。

「……悪いけど、しばらく生き地獄でいてくれないか?痛い事もしないし何不自由ない生活をさせる、時が来るまでね。」

「どういう訳?」

「君には幸せになってもらう。」

 それだけ言って部屋を出る、責任が取れない言葉だった。殺すという選択を自分は取れなかったが、これは甘い事なのだろうか?


「良いのですか?できない約束では?」

 部屋の外で待ってたセンシアが口を開く、どうやら聞き耳を立ててたみたいだ。

「とりあえず、メルトケーレへ向かう、出来るか出来ねぇのかはそれからだ。」


 ——東棟教会へ赴きミトラスにワープを頼む。

 そのワープゲートに体を入れようとした時だった。

「良いですか?くれぐれも脅威は作らないように。」

「それは約束出来ない。」

 ミトラスには悪いが、そう伝えた。勝手に作った責任は次第にエゴになる……そうなる事すら僕は忘れていた。周りへの迷惑をも考えず、主人である事すら忘れて……周りが何も言わなかったからこそ突飛な行動をしたと思う……現に今はニュネイ本人を生かして、とりあえずの生活を提供させる事しか考えていなかった。


 ——城郭都市メルトケーレにあるメルリダが住まう半壊した城……そこへ一人で乗り込み依頼達成報告ともう一つ話をする。

「えぇ、ご苦労様。エントロの事は早馬で伝わっています。これは報酬金です。」

「ありがとうございます。それともう一ついいですか?」

「ええ、もちろん。何なりと聞くわ。従兄弟の命を救ってくれたもの、なんでも言って。」

「エントロの面会させて欲しい、そして死刑執行も止めて欲しい。」

「は?!」

 メルリダが驚いた顔をする、まぁ……そうだよな……。自分でも前置きもせず単刀直入に言った上に挙動がおかしい事ぐらい自覚してる……何に焦っているんだろう……僕は……。

 すると、横からイレヌスが顔を出してくる。

「良いですかハルマ様。エントロの死刑は確実なのです。仮に釈放され地位を剥奪されたとしましょう。相手は悪魔でありこの国を恨んでいるそうではありませんか。ならばどうなるか……お分かりでしょう。」

「ああ、そうだな。ただ、抑止力が存在する。」

「「抑止力?」」

 二人は口を揃えて首を傾げた。

「エントロの娘ニュネイ・ブリジット・ハウズが生きていた。」

「「え?」」

「良いか?娘が生きていた。詳しい事は言えないが、彼女は現在こっちで保護している。彼女がいればエントロの野心も落ち着くだろ?そもそもエントロは娘が全てだと言っていた、ならば……」

「待って、待って!とにかく、娘が生きているのね?だけど、時期が悪すぎる。大罪人の娘で尚且つ悪魔の血を引いているとなるとこの国じゃ生きづらいわよ。」

「んなもん知ってる!」

 メルリダが正論をかましてくるので、強く言い返してしまった。何をムキに……もっと落ち着いて話さなくては……。

「……ならば、帝国か選民国にエントロとその娘を脱国させてはどうでしょう?エントロを懲役刑に処すれば……時間はかかりますが二人を確実に他国へ……。」

 イレヌスが話をする、その線が有効になればニュネイも殺してくれなんて言わないだろう、おまけにエントロも生きて二人仲良く暮らせる……まぁ、貧しそうな生活になりそうだが……とにかく目の前の問題である殺してくれどうこうはクリアになる。

「……ただ、それはお父様が許してくれるかしら……。」

 メルリダが深く考え込む。

「ダメそうなのか?」

「ええ、だってお父様はエルリードを溺愛してるもの、いくら世話になった宰相エントロでも手にかけようとしたのなら、懲役刑なんていう甘い事はしない。何よりお父様は異種族、異文化を嫌う人ですもの。そんなにすんなりいかない。」

 そりゃそうか……僕を見るなりゴミを押し付けてくる奴だからな。

「だけど、信頼していた人物が裏切った……それが一番デカいと思うわよ。」

 

「なら、どうすれば良い?どうやったらあの二人を救える?」

「やけにご執心ね?娘を保護したとはいえ、あなたに何かあるの?」

 鋭いな……ここで、屋敷の事を全て話すのは危険かも知れない。どう嘘をつくべきか。

「良い?私は聖王国の姫です。何より、王国を第一に考えています。なので、エントロは私達にとって脅威なの。悪魔界と繋がりがあるなら尚更です。いつ何時と襲われるか分からないなら死刑にして確実な抑止力を私は取るべきだと思う。」

 ここまで言われてしまえばぐうの音も出ない。ギルド試験の時とは全くイメージが変わる、所詮は国を担う王族の一人だ。それっぽい言葉で話を片付けようとしてくる。彼女のやってる事は正しいはずだが、それが今は気に入らなく感じる……愚かだ……実に愚かだ……僕は……。

「そうか、分かった……ニュネイはお前らで保護も出来ないよな?」

「……申し訳ないけど、快く思わない方が多い。私が良くても周りの多数決を私はとる。」

「だよな……娘も親父も居場所はねぇってか……。」

「第一にエントロは罪を犯そうとした、聖者に手を掛ける以前に少年に手を……ならば、簡単に居場所がどうとか無理でしょ。どんな事情であれ、その事実があるなら……大人のあなたならお分かりでしょ?」

「ああ……それはそうだ。」

 

 それを聞いて少し目が覚めた……ただ、ニュネイに大口叩いてこのザマとは……自分の暴走に気づかなかったのと、ニュネイが実際に何を求めているか最初から分かっている訳がないにも関わらず勝手に彼女が元の生活を求めていると勘違いし突飛な行動をするという……ガキみたいな事をしただけだった。

 結果として、年下のお姫様に世間を説かれ目が覚めるという……アホな話だ。


 ——そんな出来事の中、屋敷の客室では……。

 コンコンと客室の扉を叩く音が聞こえるがもちろんニュネイは返事などするはずは無かった。

「失礼しまーす。」

 出てきたのはソワレであり、多少なりとも立ち直ったようだった。それでも元気はあまり無い。

「あの……ご飯ここに置いときますね。」

 ベッドの横のテーブルに配膳するとソワレ少しニュネイの顔を覗き込んだ。

「あの……なんか、可愛いですね。」

「は?」

 その唐突な言葉にニュネイは驚く。

「あ、いえ……私の好きな漫画に出てくるような金髪碧眼少女と言いますか……なんと言いますかねぇ……。」

「マンガ?何それ?金髪の子なんてこの屋敷にもいるでしょ?」

「違いますよー、まぁ居ますけど……それとは違うんです。」

「……?」

 ただ困惑していた。

「ほら、あれです。野生の金髪碧眼少女と言いますか……オリジナルである事に意味があるというか……ここのメイドは私を含めて作られた存在ですが……それでも可愛いんですよ?!まさか本当に存在するとは思わなくって……これ、ツインテールにしたら絵に描いたツンデレが完成しますよ。それで……」

 オタク特有の長話が続く、ニュネイはソワレの話を退屈する事はなく聞いていた。この屋敷に来て虚無以外の感情が湧き出てきた。


 二十九話へ続く……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ