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死んで転生したら自作最強メイドNPC達と共に異世界攻略やろうとしたらゲームと全く違う世界線でした。  作者: 山田孝彦/ダーヤマ・タカヒコ
第二章 今のあなたに必要な事は仕事をする事でもショタの貞操を守る事でもありません。目の前の仲間を信じなさい。
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第二十四話 ショタがいないとモチベーションが上がらないのは万国共通の認識でしょう。

 次の日となり王都アトロニクスまで、ダン伯爵が手配してくれた馬車に乗り移動している。夕暮れ時でもあり到着してる頃には夜だ。

「てか、お付きってお前らかよ。」

「何か問題でしょうか?」

 向かい合って居たのはセンシアであり、隣にはマリーダが居た。

「いや、不安要素が……。」

「全く失敬ですね……そもそも聖王国ですよ?私達人間以外の異種族がいればどうなるか……分かっているでしょう?」

「そうですね……。」

 昨日の事もある、マリーダはともかく、センシアの空気の読まなさを考えれば問題の一つや二つ起きるに決まっている……全く昨日は良い雰囲気だったのに……。


「そういえば、アリス様の許嫁はメルリダーナ姫の従兄弟であるエルリード様とか……宰相も付いてるそうですし、真相を暴くチャンスですよ?」

「ん……ああ。」

 屋敷を発つ前にダン伯爵と少し話をした。


 ——遡ること数時間前。

 屋敷にダン伯爵が訪問した時だった。

「これは、ハルマ殿。お久しゅうございます。」

「え、ああ……どうも。」

「我が娘アリスの婿役として、どうかよろしくお願いしますぞ。」

「……今更ですけど、僕で大丈夫なんですか?」

 そういう宴会の場で貴族然とか、それなりの振る舞いなんてよく分からない。

「何、大丈夫ですよ。ハルマ殿がアリスの婿である……という事をただ認知して貰えば良いのですから。」

「そ、そうですか……。」

「手紙にも記しましたが、聞き分けの良い相手だ。エントロ殿がエルリード様の教育係になってから、既に許嫁がいる女性は跳ねるようになりました。これを利用しない手はありません。」

「エントロ……え?」

 ここで初めてアリスの婚約相手がエルリードだと知った。

「どうかしましたか?」

「いや……。」

 全く怖いな……世間は狭いってやつか?

「では、改めてよろしくお願いしますぞ。現在アリスは我が家にて準備をしております。後々追いつきますので、手配した馬車まで。」

「はい……。」

 ダン伯爵はゆっくり近づき懐から袋を取り出す。

「こちら、前金です……金貨20枚程で……。」

「に……20枚?」

 袋を持つとずっしりと重みが伝わる。最近の屋敷の金銭事情は温まるばかりだ……こんなに嬉しい事はない。お金ってこえー。


 まさかとは思ったがアリスの婚約相手がまさかのエルリード本人だったとは……最初に貰った手紙でも王家と血統のある貴族の子としか書いてなかった。メルリダの話も聞いてなんとなく予想も出来たが……なんだろう、コレって僕がメルリダに依頼を受けなくても脅威に巻き込まれていた可能性があるのでは?


 ——そんな感じでその血の定めと言いますかなんと言いますか……この地に転生した以上逃れられない試練がやってきたという事です。

「はぁ……。」

 思わずため息が出る、前世で社畜という人生を送ってここでもそれに匹敵する人生を歩むのか……まぁ、彼女達がいるだけで幸せ者だが……さて、あっちに着いたらどう動くか。思わず不安な顔が出てしまう。

「……大丈夫ですよ。」

 ん?センシアめ……何だ急に。

「私がいるじゃないですか。」

「なんやねん。」

 お前が不安要素だからな?それと持ちネタなのか……それは?

「す、素晴らしいです。私も負けないように精進します。」

 マリーダも変なやつだよな……。

「マリーダは何に対して精進するつもりなんだよ?」

 普通に意味を知りたいのだが。

「まぁまぁ、それに気づかないとは……ご主人もまだ坊やですね。」

「ん……何だろう……殴ろうかな?」

 センシアは煽ってるのかな?ちょっとムカついてきたな。


 ——怒りの拳を抑えながら目的地である王都アトロニクスへ……場所は『レイガン家』の屋敷、エルリードの名前は『エルリード・エイダ・レイガン』であり、叔父に当たる聖王は『アルガニーテ・バルト・レイガン』となる、その娘であるメルリダーナは『メルリダーナ・エイトハル・レイガン』妹は『モニカレーデ・スベン・レイガン』だ。このように聖王は『レイガン』という家系である。


「で、でっけー。」

 素朴な感想だが、やはり王族の分家とだけあって屋敷の規模は大きい。

「良いのでしょうか……私みたいな平民がこんな……。」

 マリーダが心配する、急に大都会の大きな建物にぶち込まれそうになったら心配もするよな。

「大丈夫ですよ、マリーダ。きっと美味しいご飯が沢山あるに違いありません。」

「いや、ちげーだろ。お前はどういう感性で言ってんだ?」

 センシアの奴は全くブレない……先が思いやられる。


 大きな建物に目をやっていると背後から一台の馬車がやってくる。

 降りてきたのは、アリスとダン伯爵だ。

「ん……マリーダ、何故ここに?」

 すると、アリスが先に降りてくる。以前見た時は鎧姿だったが今回はドレス姿になっている。

 早速アリスとマリーダが女子トークを開始する、あの中に混ざる事は陰キャ男子である僕には無理だな。

 マリーダがメイドになった事はアリスは知らない、なので積もる話が多いだろう。ここ最近で色々とイベントが進行しすぎてるからな。

 マリーダはこっちで預かってる身……自分からも追々事情を説明してあげるのが筋ってもんだろう。

 そんな事を考えてるとダン伯爵が馬車から降りてくる。

「では、ハルマ殿。本日は娘をよろしくお願いしますぞ。」

「ええ、お任せください。」

「では、私は王宮まで行きます。聖王様に謁見を迫られておりますからな。」

 公務ってやつか……大変だな。

 ダン伯爵はまた馬車に戻りここからでも見える程大きい王宮まで馬車を走らせた。


 早速、中へ入る。奥には大きな両扉、それを目指し豪勢な廊下を歩く……それに見合う魅力の値が高い服を選んできたのだが……。

「まぁ……平凡がいるザマス。」

「うわ、誰だ?マネット家っていうのは平凡を横につけるのか?」

「聖女の血を引くアリス様が可哀想だ。」

「童貞が歩いている……童貞菌が……嫌だわ。」

 などなど、服は良いはずなのに……顔で損してるのかな?てか、童貞関係ないだろ、童貞の方が性病の感染リスク低いからね?童貞舐めんなよ。魔法使いにだってなれるんだからな?既に魔法使い(定期)。


「……気にするなハルマ。私はお前が助けてくれた事を忘れちゃいない、お前が平凡の童貞でも軽蔑したりしないさ。」

「一つ聞きたいんだけど?童貞ってステータスに入りますか?」

 前々から思ったがアリスは結構ストレートな物言いだ、悪気はないのは承知だが……引っかかりを覚える。


 大きな両扉を前に従者らしき人が開けると、中は純白と金の装飾が施されたホールであり沢山のテーブルに食べ物が乗っていた、様々な貴族が談笑しウェイトレスの方が手の上に飲み物を持っており配給している、まさに想像したような中世貴族の宴会って感じだ。

「ヴォーすげー。」

 ただ圧巻した、こんな経験前世なら絶対に出来ないだろう。

「さて、最初に挨拶回りだ。他貴族に私達の関係を知ってもらうぞ。」

「あ、はい。」

 とりあえず、ダン伯爵に言われた通り婿役として振る舞おう。宰相エントロはその後だ……てか、婿役って何すれば良いんだ?


 アリスに手を引っ張られ先導される、まぁ……こういうのはアリスの方が詳しいか。

「ご機嫌よう。」

 アリスは早速近くに居た男の貴族に話かける。

「ああ、これはアリス殿。なんでも婿が居たとは初耳でしたぞ。」

「ええ、ここ最近仲良くなりまして……。」

「ほう……。」

 すると、貴族が僕をまじまじと観察する。え……なんですか?

「この男がアリス殿の……ふむ。この顔からして平凡な生まれですな……しかも異国人ときた。不釣り合いでは?」

 やはり、異人種以外にも異国人には厳しいようだ。

「しかし、彼は大魔道を使える人間。侮ってはなりません。」

「ほう?まぁ……いいでしょう。いずれ空いた穴が出てきます。」

 すると、その男がその場から離れる……離れた瞬間に何か話している。

 ここでスキルである『地獄耳』を使う。このスキルはFOO内でも物議をかもしたスキルだ。敵プレイヤーのボイスチャットを聞くことが出来るというもので。流石にプライバシーの事もあるので、相手側がそれを許可しないとダメという制約が出た。この制約があるせいで皆んな相手にチャットを聞かれないようにするのが通例、しまいには配信者のネタとして爆音でAV流し地獄耳を持つプレイヤーを苦しめるなど……運営はそのスキルを廃止したが……なんでも項目だけ残って使えないって具合だ。なので、意味の無いスキルだったが、ここでは……ちゃんと使える。

『チッ……これでは、聖王の血が薄くなる……。唯一聖女の血を引いてるのがマネット家なのだぞ?』

『そう焦るな……エルリード様はまだ7歳……マネット家の分家を探すぞ、聖女以外にも大魔道家系、有力な貴族と候補はいくらでもいるしな。』

 というのを小声で話している、土着的な政策か……この聖者という血を濃くするために聖女サリア夫人を母に持つアリスが抜擢されたという考えで良いだろう。全く……どいつもこいつも血を求めるとか……まぁ、ファンタジーじゃありがちか。

「さぁ、次に行くぞ。」

「ああ。」

 この調子が続くのか……ちょっと嫌かも。

 

 ——貴族に挨拶して回っていると、見知った女性を発見する。

「なな……な、何でアンタらが居んのよ!」

 何を隠そうエナ本人である。宴会であるため当然ドレス姿だ。

「久しぶりだな、エナ。」

 元気に挨拶するアリス、まず状況説明した方がいいのでは?

「いや、久しぶりとかじゃないわよ、何で二人が?!」

 そういえば、マリーダもいる事だし3人揃ったな……ここは3人で談笑させてあげるべきだろう……僕も疲れたし休憩したいからな。

 

「そうだ、マリー……」

 振り返る……あれ?居ない?

「ん?マリーダ達ならこのホールへ入った時には、お前を置いて行ったぞ。」

 アリスから衝撃的な言葉が……。

「何やってんだああああああああああ!!」

 デパートに居る迷子のクソガキじゃねぇんだぞ!!そういえば、さっきから居ないと思ってたわ!!お前らは俺のメイドじゃねぇのかあああああああ!!

「ど、どこにいやがる!!」

 周りを見渡す……。周りは貴族だ……メイドであれば姿がわかりやすいはずだ。

「ん……あれじゃない?」

 エナが指を指す……。


「いいですか?マリーダ。メイドとして重要なのは奉仕の心です。なので、ご主人に喜んで貰えるように自分で考え動く事にあります。」

「な、なるほど。」

 マリーダは手にメモ帳を持って勤勉な姿勢を見せる。

「私の四次元ポケットから『タツゥパァ…とハシィ…(ダミ声)』を出しました。さぁ、ここからどうするか分かりますか?」

「な、何をするんですか?」

「この、テーブルの上にある豪華な食事を箸で回収するんです。これがあればシーコの料理の研究になりレベルが上がる事でしょう。そして今後出される食事は……」

 センシアがテーブルの上にある料理を箸で回収しタッパーに詰める……。

「スタァアアアアアアアアアップ!!」

 何があっても国家権力の犬並みに目の前の犯罪を止めなければああああああ!!

 

 直ぐに彼女の後ろ襟を掴みバルコニーまで避難する。冗談じゃない……テーブルマナーぐらい覚えとけ!!俺も分かんねぇけどな!!

「私の食べ物が……あれらを制覇する為に離れたんですよ?」

「くだらねぇことで離れんじゃねぇええええええええ!!」

「ですが、これだけの食べ物を詰めて持ち帰れば食卓は明るくなりますよ?」

「……良くやったぞ。」

「エヘ(///へエへ///)。」

「アンタらも変わらないわね……。」

 エナがその様子を見て軽蔑こそしないが、不思議な感情になっている……俺達を舐めるなよ?


 そして、エナにあらかた事情を説明する。その後はマリーダとアリスとエナで談笑していた。

「……。」

 その様子を遠くから眺める……。

「如何なさいましたか?」

 センシアが心配する。

「いや、なんでも無い。」

 彼女達を見ていると、前世の友人を思い出す。この友人という枠は何にも変え難い……小学校から社会人になるまで一緒の友人が居た、会社では席が隣でいつも僕が残業すると何かと気を掛けてくれた。彼は今どうしてるか。

 

 すると、グラスを二回叩く音が響き渡る。

「はいはい!皆さん、次期聖王であられますエルリード様より祝辞であります!お集まりを!」

 その声に惹かれ、登壇している子供に注目する。

「えっと……この度はご足労頂き感謝する……えっと、父と母は早くに逝きこのレイガン家の真の跡取りとしてここにいるエントロに支えられ……」

 隣には人が立っている、恐らくあれが宰相エントロだろう。見た目はただのおじさんだ。

「エントロのおかげで日に日に王としての教養を身につけ……えっと……なんて読むんだ?」

 すると、エントロはエルリードの顔を近づけ何か話す。

「あ!……才幹欠如に至るため、足りない所もあり今後とも教養に励まなくてはならない。聖王国の上に立つ身として皆に頑張りを見てもらう所存であり。今後とも我が屋敷で我が成長を見届ける場として皆と交流を深めて行こうではないか。」

 その言葉を後に壮大な拍手が響く。

 なんか、その年で重荷を背負わさられるってどんな気持ちなんだろう……なんか大変そう。

 祝辞を終えると壇上を降りてエルリードとエントロがこちらに近づいてくる。

「エルリード様。大変素晴らしい祝辞であります。時期聖王としての威厳を感じました。」

 アリスが深々と頭を下げるとエナも同時に下げる、流れに引っ張られて僕達も頭を下げた。

「良い。頭を上げよ。」

 エルリードから許しが出た。顔を上げて見てみるとマジで子供だな。

「ほう……この方がアリスの婿旦那で?」

 エントロが目を細めてこちらを見る……どうせ、平凡とか言うんだろ?

「いい男だな、アリス殿をよろしく頼むぞ。」

「え?はい。」

 あっれー?思ってたのと違うぞ。なんか酷い事を言われるんじゃ無いかと身構えたが……拍子抜けだ。

「さて、エルリード様。他貴族に挨拶しますぞ。」

「ああ、分かった。」

 するとエントロはエルリードの手を握り他貴族へ挨拶しに行った。

「……あれ、意外とあっさり。」

「これで、エルリード様との婚約は破棄された。ハルマ、お前のお陰だ。」

「えぇ……。」

 何これ?結構あっさりだったぞ。

「はは、意外と呆気なくて驚いただろ?」

 アリスが笑いながら話す。

「そりゃねぇ……」

「何でもエルリード様お結婚相手は100人以上居るからな。」

「ひ、ひゃく?!」

 どこのラブコメだよ!何コレ……ショタラブコメですか?!

「何でも、アルガニーテ陛下は子作りで失敗してるからな……意中の女性を選んだ為に……なので、その失敗をしないよう予め候補を作りバンバン子供を産ませるつもりらしい。その目標数はなんと千人以上……」

「そんなん、チンコすり減るだろおおおおおおおおおおおおお!!」

 居た堪れねぇよエルリードが!!キンタマカラカラになるだろ?!

「おい……そんな大声で話すな。皆が見ている……。」

「すまん。」

 だって、びっくりしちゃったもん。キンタマカラカラだもん。

「とはいえ……これはエルリード様の両親がご存命だった時だ。宰相がエルリード様の教育係に任命されてからは、婚約相手が既に決まっていたり婿候補がいればそれらは破棄されるようになった。」

 遠くにるエルリード達に耳を傾ける……。

『すいません……私たち結婚する事になって……。エルリード様の相手は……』

『おお良い良い……それはめでたいな。これからの幸せを願っているぞ。』

 という感じで宰相が応答している、さっきのようにあっさりと承認しているようだ。

「なーんか、裏があるのでは?」

 思わず疑問の声が……だって、怪しいでしょ?

「父上が言うには娘が行方不明になった為と聞いている。その事から情が爆破し未来ある若者に対して自由を尊重するようになったとか……実際どうか分からん……その娘はどうやら私の配下にいたようだ。私は洗脳されていたからな……とはいえ、責任を感じるさ。」

「……まぁ、そうだよな。」

 これに関しては何も言いはしない。

 

「そうだ……アリス。」

 唐突だが思い出した事が……。

「どうした?」

「宰相は悪魔界と繋がってるらしいけど……何か知らないか?」

「ほう?悪いが何も知らない。何かあったのか?」

「いや。」

 んー困ったな。白か黒かハッキリしたい。どうにも僕の身勝手な都合で白であって欲しいと願ってるようだ。

 

 その時、ウェイターの獣人……子供だろうか?顔が獣そのもののタイプ……この国おいて嫌う対象であるに違いない。

「うわ!」

 エントロにぶつかりお酒を服に掛けてしまった……僕は助ける準備だけする。

『おいおい、なんだこいつ?獣人か?』

『マジでキモいな『フルビースト』か?二足歩行できる人間に化けた劣等種が……』

『取り返しがつかない事を……死刑しか認めんさ、この国は。』

 まずいな……皆、この子を軽蔑して見ている。さすがのエントロも獣人相手には……。

「大丈夫か?怪我はしとらんか?」

「え?」

 どうやら、心配は要らなかったか。安心した。

 エントロが頭を優しく撫でた後そっと抱き上げる。

「さぁ、控え室へ連れて行くよ。」

 まさか、エルリードを置いてウェイターの獣人を優先するとは……この国で類を見ない人格者なのでは?

『流石エントロ様だ……人格者そのものだな。』

『ああ、私達も見習わなくては。』

『やはり多様性に富むべきですな。』

 全く、どいつもこいつも手のひらを返しやがって……だが、控え室か。後を付けてみるか。

「アリス、俺は少し席を外す。」

「ん?ああ、分かった。」

「私達もお供しましょうか?」

 センシアが付いてこようとする。

「いや、お前らはメシをタッパーに詰めとけ。頼んだぞ。」

「あ、はい。」


 ポケットからネズミのペンダントを取り出す。マルクレイブの私兵が使っていた物だ。それを首に掛けると透明化する。ただ、相手に存在を勘付かれた場合その効果は消えるという代物だ。

「さて……。」

 ホールには幾つか扉がある、エントロはその中でも人の出入りが少ない扉を選んだ……こっそり後を付け、入って行った扉の中に入る。

 中は薄暗い廊下……人もいない。

 廊下の奥に質素な扉がある、そこに向かっているようでスタッフルームだろうか?

 慎重に足音を立てず背後へ続く……その質素な扉にエントロの手が掛かる。

 扉を開き中へ入って行くと簡易ベッドがあり、壁にはウェイターとウェイトレスの服が複数と掛けられていた。

「さぁ、ベッドに腰を掛けなさい。」

「はい……でも良いのでしょうか?僕みたいな出稼ぎで来た獣人を……エントロ様の評価が下がってしまいます。」

「良いのだ……私がそうしたいと決めた。」

 すると、エントロが獣人の服を脱がせる。

「な、何を?!」

「お前さんの服が汚れておる。お前さんの体を拭いたら、ワシのも頼めるか?」

「はい!もちろんです!」

「そうだ……お主喉は乾いておらぬか?」

「ええ……まぁ、少し。」

 すると懐から何かを取り出す。

「コレを飲め……気が楽になるぞ?」

「い、頂きます。」

 それを飲み喉を潤わす獣人、うまそうに飲んでいた。

「あれ……なんだか、気が……。」

 すると獣人に変化が現れた。眠そうな目になっていき頭がコクンと何度も落ちそうになっていた。

「良いのだ、ゆっくりお休み。」

「ふぁい……」

 大きなあくびをして横に倒れてしまった。

「さてと……ワシも着替えるかな。」

 そしてエントロは自分の服に手を掛け上半身を曝け出す。

「ふむ……下もシミになっとるな……コレは不可抗力……。」

 シミになってるとか言ってるけど、そんな事はない、ズボンを下ろすとパンツ一丁になる。

「ぐへへへへへ……可愛いのぉ……やはり少年の未熟な体は股間に響くワイ……あー堪らん……ズゴゴゴ午後っ午後ごおご……」

 獣人の少年に魔の手が……やばい……ここは大人として……。

「はぁ……はぁ……キンタマカラカラになりそうだよ……もうそこまで……く……あああ……。響きすぎる……奏でているのが……伝わるよ……。」

『うわ……キモすぎる……』

 てか、やべー!!ドン引きしてる場合か!!性犯罪なんか見逃せん!!

 止めに行こうとした瞬間、扉が勢いよく開く。

『イテ!』

 開いたドアに頭を打ちつける……思わず声が……。

「ん?ああ……エルリード様どうしましたか?」

 幸い、勘付かれなかった。てか、どういう構図だよ……。

「エントロ……もう疲れたよぉ……もう、大人の相手したくない。」

「全く……仕方のないお方だ……。今日は早めに切り上げますか。」

「やったー。」

「着替えますので、お待ちを。」

 エントロはせっせと服を着用しこの部屋から出て行った……。


 やつを追う前に言っておくッ!

 おれは今やつの性格をほんのちょっぴりだが見た。

 い…いや…見たというよりはまったく理解を超えていたのだが……。

 あ…ありのまま 今、起こった事を話すぜ!

 おれは奴の前で観察してたと思ったら、宰相はいつのまにか裸になっていた…。

 な…何を言ってるのか、わからねーと思うがおれも何が起こったのかわからなかった…頭がどうにかなりそうだった…。

 BLだとか超スピードだとかそんなチャチなもんじゃあ断じてねえ…。

 もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ…。


 という前置きはさておき、その恐ろしいものの片鱗とは……。

 奴の性格は『ショタコン』……そしてスキルに『王族殺し』があった……内容こそ分からないが……間違いなく宰相は倒すべき相手だろう……。

 このままではショタの貞操が危ない……モブおじにショタの……いや、これ以上は言うまい……悪魔界の繋がりとか娘とかどうでも良い……目の前で起こった完全犯罪を見て見ぬふりは出来ない……。


 ショタがモブおじにモブおじされる事を許す訳にはいかない、ただそれだけなんだ。一人の大人として正しい変態という名の紳士として間違った変態を正すのが正しい変態なのだ……俺は俺のすべき事をするまでだああああああああああ!!

 

 二十五話へ続く……。

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