第九十六話
「シンプルな話だよ、天井が高いからだ」
ハヤタの答えが、あまりにも単純すぎて、全然、意味のわからないモノだったらしいのが、彼にもわかったので、
「もう少し進めた先にわかる、映像を進めた方がいいな」
そう言って、廊下を歩く昔のハヤタの映像は、あまりにもキョロキョロしすぎて…
「落着きないな、コイツ…」
自分でも呆れてしまう。
「わからんでもないけど…」
そして、ハヤタは映像にある、心拍数や脈拍を指さし、ハヤタは答えた。
「コレが答えだよ」
映像のハヤタが『ある人物』を見た途端、その数値が爆発的に跳ね上がると、ヒルデはまだわからないようだった。
「ていうか、これ、貴方の持病じゃない?」
「持病って、そんな大げさな」
「ベア恐怖症じゃない、あなた、この持病だけは克服出来なかったわよね?」
「あんた等には、わかってほしいけど…。
わからんか…」
ハヤタは医療関係者の席をながめ、『ベア』を発見した。
「あ、いた。
ベアさんだ」
ハヤタは『ちょっと、立って』と、その医師に起立を促す。
すると、そのベアという医師の、
大柄な体格が起き上がる。
「ええと、さっきの疑問の回答に戻るけどさ。
この人くらいの体格が廊下を歩くんだから、その廊下って、天井が高いわけだ。
その高さに慣れなくてな、天井を見たりするんだよ」
ハヤタは悪気はないと、ベアに謝るのをみて答えた。
「そして、見慣れない異星人をみると、まあ、映像のハヤタくんは、当然、脈拍は上がるわけだな。
レッドコードですよ」
「レッドコードだすと何がダメなんだよ?」
「このヒルデって医師から、我慢してねって、注意される」
「あのベア医師を見るたびに、レッドだすのは貴方が説明からわかるけど、前から思ってたんだけど、貴方、時折、失礼なトコロがあるわよね。
アンタの近所にも、クオウってオオカミ男がいるじゃない?
何を緊張する事があるのよ?」
ヒルデは肩をすくめるが、ハヤタは一生慣れない緊張感が身体を強ばらせる。
このベアという人物、白衣を着てる分、医療関係者であるのは間違いないのだが…。
先ほど、大柄な体格というのは、身長はおそらく、リッカよりでかいので、体重300を軽く超すであろう。
クマ男。
文字通り『クマ』なのだ。
緊張しない訳がない。
「いいか、オオカミ男は現実味がない分、まだ着ぐるみ感覚で見れる。
『おっ』ってな。
でもな、ベアさんはな。
クマなんだよ、クマ、そのものなんだよ。
俺らの住む惑星で、クマはダメなんだ…
『うわっ』ってなる」
「そういえば、アンタの惑星の人たち全員、ベアさん見るたびにレッドコードだしてたわね」
異星人相手に、失礼なのは承知なのだが、ハヤタは謝るしかない。
そして、このベアという医師もノリが良いのか、両手を広げて、威嚇のポーズを見せる。
「惑星が違っても、威嚇のポーズは変わらないんだな?」
「ちなみにほぼ毎日、ベアさんと、あえて鉢合わせるように仕向けてたけど、毎日、レッドコードだしてるわね」
「やっぱり、仕向けてたんだ…」
「それはそうよ、この視界教育の意味は、これから始まる、生活環境の慣れてもらう事でもあるのよ。
見てる分、面白かったけど…」
映像ではハヤタがベアに対して、平常心を保とうとしていたのだが…。
日付が変わるたびに、
鉢合わせて『ピー』
挨拶してても『ピー』
黄昏てても『ピー』
『ピー』というレッドコードの音の度に、ベアは格好を変える芸達者ぶりを見せる。
「せめて、会話くらい出来るようになった、俺の努力は認めてほしい」
「私たちが、ここでわかったのは、被害を及ぼす動物は、一生、慣れないのだけね」
『きゅるーん』と可愛くベアは鼻を鳴らしハヤタを見つめるが、おそらく何度やっても、突然、現れたら、レッドコードが高鳴ってる事だろう。
「ベアさん、ごめんなさい。
ホント、ごめんなさい」
生徒一同にハヤタは、盛大にブーイングを浴びせられるので、ハヤタは反論する。
「この惑星は害獣対策が充実してるから、お前らにはわからんだろうがな。
クマはあかんのよ」
ハヤタはベアを見て答えるが、ベアがからかうように変顔をしてみせるが、
クマなのである。
「害獣だからな」
「もう少し言い方をオブラートにつつみなさい。
でも、次の教育はクリアしてるはよね」
「え、そんなのあったのか?」




