第九十七話
「視覚教育だけじゃないわよ、気性診断もしてたのよ」
「気性?
性格診断とか、そんなのは聞いた事があるけどな?」
「他の惑星で生活するには、性格より気性の方が大事なのよ。
ハヤタ君、初めての食事はゼリーだったのを覚えてない?」
「病院食の影響とかで、ゼリーだと思ってたんだけど、あれがその診断の一環だったのか?」
ヒルデは、その言葉に頷いた。
「まず、そこで何かを言ってくるのか、相手の気性を見てるのよ。
貴方の場合…。
『他の惑星だから、もう少し、マシな食事がでると思ったんだが…』
とか、
『病院の食事だから仕方ないな』
一定の不満はあげてるけど、まあ、適正なラインよね。
『ステータス、オープン』とか『異世界…』って、変な動揺が見られるわね、何なの?」
「俺らの惑星の突然の出来事におきた、人間の動揺だと思ってくれ」
「変わった動揺ね」
「てか、こんな事まで資料として残ってんだな。
ところで、どんなのが不適正な意見なんだ?」
「そのゼリーには、どんな成分が入っているのか?
とかよ」
「ダイエットでもしてると、不適切な意見になるのか?」
パンチが素直に感じた疑問を話すと、ハヤタは感づいた。
「ああ、いや、この場合、ちょっと違うと思うぞ?」
「お前、何なのかわかんのかよ?」
「だんだん、普通の食事に戻ってきてさ。
数日すぎて、ブタ肉を食べちゃいけない人はどうするんだって、考えた事があったんだ」
「お前の惑星には、そんなヤツがいるのか?」
驚くパンチにハヤタは惑星の違いを感じ取る。
「掟やら決まり事で、そうやって生活してる人がいるんだよ」
「まあ、資料を明かすわけにはいかないけど、確かにそういう人もいるのも事実ね。
そういう人たちは大体、状況が読み切れてないのよ。
そんな人たちに対して、あえて食事を提供することで、こう言わせるの。
『これにはどのような動物の肉が使われているのか?』
『このゼリーの養分は、どんな肉やら添加物を使っているのか?』
そこで私たちは説得を試みるのよ」
「どんな感じに、説得するんだ?」
「貴方の惑星では、その動物、貴方の場合、ブタ肉とかね。
その動物は存在しないとか、ある程度の食生活は少し諦めてもらうのよ」
「諦めてもらう…、やめてもらうとかじゃないのか?」
ハヤタの質問の意味が少し、パンチはわからなかったらしいが、医師であるヒルデは頷く。
「生活の一部となっている考えというのは、住んでた惑星が存在してこそよ。
いきなり『それをやめろ』なんて、まず不可能。
その考えを和らげるようにするのも、私たち医者の役目でもあるのよ」
『ブタ』という言葉が、ナノマシンでどう変換されているかハヤタには分らなかったが、素直に感想をもらす。
「そういう考えや生き方がなくなるというのも、少し寂しいと感じる事があるよ」
「貴方は、そんな手間がなかったのは幸いね」
医者らしい意見で、ヒルデは答えた。
「住む惑星が違えば、お日様だって、南から登る星系だってあるのよ。
『せめて、私たちが住んでいた惑星の方向を教えてくれないか?』
なんていう人もいたけど、
『三級、二級劣等種の制限でそれは教える事は出来ないわ』
なんて答えたりするも、私たちの決まり文句ね」
ヒルデは少し疲れも見せるが、それも医師という役目なのだろう。
「その次にどうすれば格上げ…。
一級になれるにはどうすれば聞いてくる時の、切実さが伝わってくるのは切ないものがあるけど、
それで惑星を滅ぼそうとするテロが起きかけた事があったから、今回、この件を参加させてもらったのよ」
「思ったより、切実な理由で参加したんだな?」
「実際、そんな事をしても、記録は残るから、そんな事をしても三級から、二級になれるワケもないから…」
何故かハヤタに向かって、ヒルデは言う。
「滅ぼそうと考えないでね?」
「やらねえよ!!」
そんな発表会が終わり、
「そんな事があったのでございますか?」
生徒会室にてナタルが用意した飲料水をぐいっとひと呑みしてヒルデが一息ついた。
「ナタルちゃんは、授業の内容が違うから知らなかったのね?
いや~、私も学生に戻った気分で楽しかったわ」
教室移動もあり、ハヤタの発表は最後だったらしく、後は採点待ちだったので、ヒルデはこの発表会にはかなりの自信があるらしい。
「あんなに人を呼び込むような事なのか?」
「何、言ってんのよ。
発表会って言うのはね、どれだけ注目を集めるかたいうのも、必要あるのよ?
むしろ私に感謝してほしいわね」
ナタルはハヤタたちの資料を眺めながら、一つ聞いてきた。
「ハヤタ様は私がやってくる前に、このような経験をされてたのですね?」
「恥ずかしいから見ないでくれよ」
ハヤタは、クスクスとナタルに笑われると、さすがに照れていると、結果が発表された。
そして、その結果は…。
「ふっ、ふ~ん♪」
ヒルデが予感した通り。
「ぶー!!」
…にはならず、結果は中の下だったで、ヒルデはハヤタの顔面に飲料水による毒霧殺法をお見舞いした。
「汚ねえ!!」
「なんでよ!?」
「知らねえよ、てか、謝れ!!」
爆笑するリッカとヒルデとハヤタが言い合いになる中、
「あの、他の生徒たちの感想もみたいですので、報告してもよろしいでしょうか?」
ナタルはVRを動かして、報告を始めた…。
「普段、学校では学ぶことが出来ない事を知れてよかったと思うが…」
「『が』?」
ヒルデが少し睨むように報告を聞くが、これが全てだったようだ。
「『ハヤタとナタルのやり取りが見たかった』との事です」
学生身分というのは、このやりとりが大好きである。
ちなみにこの発表会…。
医療従事者には、貴重な資料になったので、心配なく…。
「納得できないわ…」




