第九十五話
「でも、ハヤタ君、少しいいかしら?
『惑星が滅んだ』
なんて説明、普通は信じられない事でもあるのに、貴方は妙に受け入れてたわよね?
どうしてなの?」
ヒルデの質問にハヤタは頷いて答えた。
「それは正直『この人は何言ってるんだ?』とは思ってたよ。
世界各国の特徴的な建造物が壊れた映像みせられても、トリックの範疇だったんだけど…」
生徒の中には、ハヤタの軽い反応に軽い笑顔を見せるモノもいた。
「そういう歴史的建造物の近くで、俺の親戚がお土産屋をやっててさ。
その家が半壊してるの見たら、当然、俺は、親戚の安否を気にしただろ?
ヒルデ、その時の返答を覚えてるか?」
「残念だけど、貴方の肉親、貴方の知り合いが生きてること自体を考えないでほしいって、返答したわね」
「その言い方だ。
よほど言い慣れてるんだろうな。
この人たちは冗談で、こんなことを言ってるんじゃないんだなってわかった」
ハヤタはそう言うと、その映像を思い出してしまい、軽くめまいを起こす。
その様子に、笑ってた生徒も明らかに黙る。
「なるほど、身内の安否が理解を促したのね?」
「現実に、こんなの起きてみたら黙るんだなって、その時は思ったよ」
『ある意味、ヒルデ達の判断が正しかった』と付け加えもするが、ハヤタが続けるには少し時間がかかった。
前のヒルデの『嫌じゃないの?』という問いかけは、こういう意味でもあったのだろう。
そのため、ヒルデが進行した。
「まあ、こんな感じで、ハヤタ君がストレスを感じとれたから、その一日はお開きにしたわね」
「そういえばさ、ヒルデ、あの時、注射を打ったけど、もしかして眠る系の注射だったのか?」
「そりゃ、そうよ」
「即答かよ?」
「どんな病気やケガでも、眠るのが一番なのよ」
少し調子が戻ったハヤタは資料通りの進行をはじめた。
「さあ、次の日になるんだが、ヒルデは何をさせたかわかるか?」
ハヤタは、生徒たちに質問を促した。
「この惑星の説明をするとか?」
まずはパンチが答えたのを皮切りに、挙手が上がる。
「ええと、ハヤタの年齢が消失するとか、説明するとか?」
「え、何なのそれ?」
「いや、聞いた話だとさ。
惑星が滅んだ人って、生年月日を消失するんだ。
そこで年齢の判断は、体細胞の規格で判断されるらしいぞ?」
「じゃあ、もしかしてハヤタって…」
ハヤタに注目が集まるので、彼自身がおどけるに答えた。
「お前らの年上かも知れないぞ~」
ちなみにこれは、ハヤタの持ちネタみたいなモノである。
「あのな、一応、前の惑星でも、学生やってるからな」
おかげで少し明るくはなる。
が、
「……」
医療関係者は全然、笑ってくれない。
そんな空気を流すように、ヒルデは答えた。
「まず、ハヤタ君にさせたのは、自室から出て、廊下を歩く事ね」
それにはパンチが答える。
「え、それだけ?」
「それだけよ」
周囲が呆れもするのを察したハヤタは付け加える。
「言っとくぞ、この散歩が、数日間のルーティンになるからな?」
「そんなに弱ってたのか?」
「いや、リッカ、その時には、走れたりしてる。
重要なのは、視界で情報を受け入れる事でな。
確か…どこかに箇条書きしてたんだけど…」
「視界教育ね。
これがハヤタ君に課せた、最初の課題よ」
「そんなことして、何になるんだよ?」
するとヒルデは思い出したように答えた。
「あ、そうそう、当時の一日目の映像があるのよ。
これを見ながら、説明しましょうか?」
そう言って、ヒルデは機械を操作して、映像を見せた。
「これはハヤタ君の視界をナノマシンを通して、映像に映し出したモノよ」
「懐かしいな、確かこの二つの点が目なんだよな」
映像はとりあえず、ヒルデの会話をしているトコロを映し出していた。
「…これが心拍数と、脈拍だな。
これでさっきの視界教育が、何なのかというと…」
映像のハヤタが軽く身体の調子を確かめながら廊下に出て、天井を眺めてから窓の景色を見る。
「これは忘れられないな…」
すると見慣れない飛行物体が『ぶ~ん』と、横切っていく…。
「視界が狭まって、見てくれ?」
明らかに脈拍が高まり、画面が赤くなる。
「見たことがないから、緊張してるんだな。
こんな感じで、視界の映像を見て、ヒルデに解説と勉強するんだ」
生徒たちが『なるほど』と、頷くなか、
「私的な意見なんだけど、少しいいかしら?」
ヒルデが手をあげて、ハヤタに質問した。
「少し前に戻らせて…
はい、ここ。
ハヤタ君、部屋を出るとき、キョロキョロするのは理解できるのよ。
でも、どうして天井みてるの?
三日くらい、繰り返してるわよね?」
ハヤタは一瞬、何を聞いているのかわからなかったが、思い出したように答えた。
「ああ、あれか、そんなに気になる?」
「医者としての興味ね。
…これ、他の人の映像は、プライバシーの問題もあって見せれないんだけど。
この教育って、本来、何個かの斑に別れてするのよ。
面白い事にね、ここに運ばれる多くの人たちって、大体、天井みてから、廊下を歩き始めるの。
どうしてなの?」




