第九十四話
ヒルデは頷いてマイクをとり、説明をはじめた。
「ええと、事態をつかめてない生徒もいるでしょうから、説明させてもらうわね」
ハヤタを手招きしながら丁寧に説明する姿は、医者だからこそ手慣れていた。
「ええと、みんなは、ハヤタ君が滅亡した惑星からやって来たのは、知ってるわね?」
周囲を頷かせて、間をおく。
「まず、住んでる惑星をなくした人たちは、本来、私たち医療機関に集められ、ここでの生活を教育されるのは聞いたことがあるかしら?」
聞いてる生徒が何となくの知識だが、頷くのでヒルデは続けた。
「ハヤタ君は、その環境化で特殊な事例なのよ」
その瞬間、生徒たちがハヤタに注目が集まるので、リッカに、ハヤタは資料を持たせられたので『前に出ろ』ということなのだろう。
慌てているハヤタを尻目に、ヒルデは促すように話す。
「まず、医者としての特殊な例として、彼は数日の間に昏睡してて、他の人たちと一緒に教育される事はなかったの」
そこにハヤタは気付いたように聞いた。
「もしかして昏睡が続いてたら、処分されるってヤツは、特別な事例なのか?」
「しょ、処分って⁉」
「その言葉通りの意味だよ」
パンチも周囲も、ざわつくが、ハヤタは悪気なく答える。
「病院にしても、目も覚めない、身寄りもない人をいつまでも置いておくわけにはいかないだろ?
それは仕方ない処置だと思うぞ?」
「そういうのもあるけど、実際の問題は、これね。
一個人に対しての、この手の教育を施すのは特殊な事例でもあるの。
だから、今回のハヤタ君の自由研究に対して、私たちは医療関係者は集まらせてもらったのよ」
ヒルデは、医療関係者に一例を促し、クラスの一同を納得させているのはさすがだった。
「では、生徒のみんなにわかりやすいように、説明させてもらうわね。
まず、ハヤタ君が覚醒状態に入った時から、会議が始まったわね」
「覚醒状態って事は、どういう状態なんだ?」
「普通に寝ててる状態ね。
寝てても意識がなかったら、呼びかけても反応、出来ないでしょ?
でも、今回の場合、医療判断として眠らせておく処置を今回はとったのよ」
「どうして?」
「それは、あなたが今の状況を飲み込めるどうかなんて、わからないからよ。
つまり、私たち、医療スタッフは、理解できる説明が出来るようになる会議してたの。
そして、ハヤタ君が目覚める時が来たのよ」
ヒルデはハヤタに自身の資料の1ページ目を開かせて説明させた。
いつ彼女がハヤタの作った資料を読んだのかわからなかったが、ハヤタは示したページを読んだ。
「当時は俺が目覚めた時、随分と真っ暗な部屋だったな」
「うん、これは情報取得を制限させるためね」
「元々、あんな暗いトコロで起こされるモンだと思った」
「あのね、昏睡状態の入院患者に適切な処理をするために、どうして暗くする必要があるのよ?
目というのは色んな情報を取得する器官でもあるの。
あえて、そうしてたの。
そもそも、その資料にも乗ってたけど、私に声を掛けられた時の印象が物語ってるじゃない?」
リッカ達から資料を受け取り、一部分を指をさしていた。
「ハヤタ君、私に話しかけられた時、どんな印象をもったの?」
周囲が異星人を見た最初の印象はどんななのだろう?
周囲が緊張感を持って、聞き耳を立てる。
そんな緊張感の中、ハヤタは、
「えらく言葉の上手な医者が、俺に話しかけているって思った」
素直に答え、生徒たちを笑わせていた。
「言っとくぞ、俺の惑星の寸分も変わらない体格の人が目の前にいたら普通に、ヒルデも普通の医者だって思うからな」
「だから、私が選ばれたのよ。
負荷を抑えるために、容姿が変わらない人が、この患者の対応をするべきと判断されたのよ」
ヒルデは呆れながら、ハヤタに説明していると、生徒たちの笑顔になる。
それで、ようやくハヤタは緊張が解けていくが、
「……」
医療関係者側の席は、全然、笑ってなかったおかげでハヤタはそっちを向くことはできなかった。
そんな中、ヒルデが挙手をして聞いてきた。




