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本当に?

うん、次で終わるよね?終わる……筈。

「……葛木、茂さん?」


そして、それから2日、6月30日、放課後。 


ついに()()()が来ます。


それは、私がコンビニに寄ろうとしている途中でした。


まず、何か行動を起こすためにも父様を問い詰める必要があります。

そう考えた私は、様々な手段を使って情報を集めて、計画を練ろうとしていました。


そこに立ちふさがったのが、葛木茂。彼です。


まだ準備ができていないので、接触は避けたかったのですが……


「……そこの、お前。」


「……なんでしょうか。私に用事でも?」


あなた、今とても怖い顔をしていますよ。

普段みたいに、猫を被らなくてもいいのですか?


「グランツ家の令嬢。……九条・芹奈・ティウス・グランツ。」


「……あら、覚えていていたのですね。それで、私に何か用事が?」


やはり、というべきか、様子がおかしいです。


一見すると平静を保だているように見えます。

しかし、今の彼からは、魂——覇気を、一切感じません。


「……芹奈・ティウス。グランツ家の令嬢。」


激しい怒りを感じます。でも、母様ほどでもありません。

だって、彼の怒りは———自分のためではない。

母様の、八つ当たりに近い、あの怒りとは全く違う。


何かを失った悲しみを、埋めるための怒り。


実際に、その考えは間違っていませんでした。

この時、依存していた、拠り所である母親を失った葛木茂さんは、怒りが、復讐が生きる意味となっていたのです。


恐らく、もしこの気持ちが無かったら。

…彼は母親が死んだ時に、自ら命を絶っていたのかもしれません。


「……貴様達さえ、グランツ家さえ、いなければ。母さんは、今も生きていた。……そうだろ?」


「……そのことを、知っていましたか。」


……しかし、まだ。今は詳細を話すことはできません。

この段階では、嘘をつくことも、本当のことを伝えることも、できないのです。


本当だったら、ここで彼に誠心誠意謝り、許しを請うのが、人間として正しいのでしょう。


しかし、龍司様なら、この絶好の好機を逃したりしません。

今ここで話せば全てが泡沫(ほうまつ)になる。

(龍司様)は、私の拠り所(恒星)であると同時に、引力(桎梏)とも成りうるのです。


彼の怒りは尤も。

でも、こちらも簡単に諦めるわけにはいきません。


「……母さんの、仇ッッ!」


……受けて立ちます!!


————————————


——と、いうことがあったのです。


「っ!はぁ、はぁ、はぁ」


……本当に、しつこいですね。

何処まで追いかけてくるつもりでしょうか。


……しかし、残念。


私はトレーニングを欠かしたことは一度もありません。


そこらのチンピラ程度では、100メートル11秒台の私に追いつくことは不可能です。


……その、筈なのですが。


今回ばかりは、相手が悪い。


葛木茂。怪我をしているとはいえ、高校サッカーでもトップクラスの選手。


その抜群な運動神経が可能にする速度。


それは、驚異の———



———100м9.87秒


…Under18、世界記録の保持者。


『スピードスター』にして、『カリスマスター』。


それが、葛木茂という男です。


……速い。

整った、その、スラリとした体形からは想像もできない脚力です。


そして、ふと周りを見渡す。そして気づきます。


「……おかしい、ですね。」


人が、少なすぎます。


平日とはいえ、帰宅ラッシュに近い時間帯です。

普段だったら多くの人がいるはず。


「……誘導されています。」 


「——気づいたか。」


突然、背後から聞こえたその声。

そらは、想像していたよりもすぐ後ろから聞こえました。 


「……なっ!?」


ありえない。


そんな考えがよぎります。

数分前は、かなりの距離が開いていたはずです。


振り向く余裕こそありませんでしたが、足音は、ずっと聞こえていました。


———足音……?


「……音が、違う?」


そうです。途中聞こえた足音と、今聞こえている足音が、違う。


「……貴方、さすがに『()()()』は、卑怯じゃないですか?」


「……ふん、今更卑怯もないだろう。それに、今気づいて、何が変わる?

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()——。」


つまりそういうことです。


彼は、途中で離脱していたのです。

そして、先程まで私を追いかけていたのは、彼が用意した偽物。


その間に近道か何かで回り込んできた。


「……なら、何故。どうして、大人数で私を囲わないんです?そうすれば一瞬でしょう。」


「……それも、できない理由があるから。それだけだ。それに、本当は、お前の正面に回り込む予定だった。」


「……。」


「が、それができなかった。それは、お前が想像以上に早かったから、だ。

……誰も箱入り娘の令嬢が、100мを11秒台で走るとは思わないだろう。誇っていいぞ。」


しかも、もうすでにスピードがある程度把握されているようですね。

……やはり油断できない相手です。

チンピラなら、何人いても同じなのですが。


「あと、お前。学校の体力測定。本気を出していなかったな?」


「……バレました?」


だって、弱そうなキャラが実は強かった。って、展開、憧れるじゃないですか。

……実際、今それに近い展開になったんですし。


「ははッ。当たり前だ。この俺を誰だと思っている?」


「ストーカーでしょう?……いくら私が綺麗だからってお触りはNGですよ。でも、そんなに喋っている余裕があるんですか?逃走手段なんていくらでも……」  


「お前こそ大丈夫か? オレが、何も用意していないはずもないだろう。」


「……。」


正面には、ブロック塀。行き止まり。

左右は住宅。

そして後ろには、葛木茂さん。


「……こういうことだ。残念だが今のお前は、……袋のネズミだな。」


万事休す、ですか。


注意 ※2人は走りながら話す訓練を受けています。

ということで、はい。

想像の倍長くなったので、間章「芹奈編」⇨第二章「それが、九条芹奈という女」に変更しました。 

(ついでに第一章も変わった。確認してね!!)

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