氷のように
父様、お前がそんな悪いやつだとは思わなかったよ!
信じていたのに!
『奴を、私の妻の視界から、永遠に消してくれ。』
そういった父様の声は、聞いたこともない程低く、凍てつくほど冷たいものでした。
———私は生まれてから、様々な感情を向けられてきました。
嫉妬、畏怖、欲情、期待、羨望。
そして、殺意。
私は、周りに対して非常に敏感でした。
すぐれた観察力で周りの感情を読み取り、できるだけ相手の望む言動してきました。
しかし、一度だけ。
母様を、怒らせてしまったことがありました。
その時母様に向けられた感情が、燃え盛るような殺意。
人生で一番激しく叩きつけられる、感情。
——まさに、真っ赤に燃え盛り、燃料を与えるほど激しく燃え上がる火山。
それは、恐ろしい程に人間らしい、原初の『破壊』の意思。
しかし、父様の怒りは違いました。
何処までも冷たく、底冷えするような殺意。
人生で一番重くのしかかる、感情。
——例えるなら、真っ青な氷に閉ざされた氷山。
動き続けなければ凍えてしまうほど冷たく、 ただ静かに、全てを押し潰していく。
それは、恐ろしい程に人間味のない、純粋な『排除』の意思。
——初めて感じる感情に、私は恐ろしくて動くことができませんでした。
画面越しだというのに、『凍りついた』ように、固まってしまったのです。
もちろん比喩表現です。
ですが、身体はおろか。心も動かず、呼吸さえも忘れてしまった様でした。
———。
『——ゲホッ! はぁ…はぁ………。……失礼しました。依頼、確かに承ります。』
情報屋——いえ、殺し屋の男の声に、私はやっとのことで呼吸を取り戻します。
そして弾かれたように立ち上がり、リモコンを手に取りました。
何故かはわかりませんが、そうしなければいけないと思ったからです。
『———。以上、「今年のにゃんこ」でした。』
TVで流れていたのは、野ざらしTVの人気コーナー、「今年のにゃんこ」でした。
良かった。
何故かわかりませんが、そんな感情が湧き上がってき———
『———速報です。ホライゾン航空の旅客機が、西太平洋沖に墜落しました。
……この航空機には、葛木ホールディングスの葛木 誠治 代表取締役と、妻の葛木 美冴さんが搭乗していましたが、乗客172名、全員の死亡が確認されました。』
「———えっ?」
………いったい、どういうこと?
…死んだ?ほんとうに?
とうさまが命令したから、
172人も、
それとも———
———私のせい?
気づけば吐く息は荒くなっていました。
急に立ち上がったせいか、目眩もしてきます。
ニュースはすぐに切り替わり、風田市で起きた強盗殺人事件について専門家が話をしていましたが、全く頭に入ってきません。
体温は興奮で上がっているはずなのに、自分の体は氷のように冷たく感じていました。
……自分のせいで、何人もの人が死んだ。
その事実は、鋭いナイフのように尖り、私の心臓に突き刺さりました。
………これは後から知った話ですが、私の送った情報は迷惑メールとしてカットされていたそうです。
父様は私のメールを知らず、事件とは関係は、ありませんでした。
……しかし、そんなことは知っているはずもありません。
私は動揺していました。
激しい感情の上下に、過呼吸、立ちくらみ。
様々な要因を受けて限界を迎えた精神が、強制的にシャットアウトされていきます。
だんだんと遠のいていく意識の中。
私が最後に考えたことは——
(……こんなとき、龍司様ならどうするでしょうか。)
評価お願いします!
それとIF、設定置き場を作りました!
……まだ何もないけど。
ぐだぐだ更新していく予定なのでブックマークをつけたほうがいいカモ?!
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