初恋
私の母様は——
なんと、『彼』。葛木茂さんに、恋に落ちてしまったのです。
……しかも、母様は、
「これは私の初恋なの——」
という話や、
「彼と結婚したら———」
などといった話を、
嬉々として娘の私に語ってきたのです。
正気だとは思えません。
……それから、母様は父様に隠れて、葛木茂さんのことを調べ始めました。
彼の経歴、家柄、通っている高校、趣味、周囲の人間。
はてには、好みのタイプや電話番号まで。
恋は盲目とは言いますが、母様のそれは執着、信仰に近い何かに感じました。
それから少し。彼が風田市立高校に通っていることを突き止めます。
そのことを知った母様は、当時隣町の、いわゆる「お嬢様学校」と呼ばれるような場所に通っていた私を、無理やり転校させました。
そして、私にとある使命を下します。
「私の娘、芹奈、芹奈・グランツ。どうにかして彼、葛木茂くんのことを、私の元へ連れていきなさい。……そうよ、貴方は彼に告白をしなさい。そうすれば、私と茂くんに接点ができるわ。」
正直ドン引きでした。
母様の容姿は、はっきり言って美形というわけではありません。
美容には気を使っていて、不細工というわけではありませんが、
四十代後半の女性といった印象です。要するに、お金持ちのおばさんです。
しかし、
「……はい、わかりました。母様。」
この時の私は、母様に逆らうことはできませんでした———
そしてしばらく経ちました。
具体的には、私が母様に逆らった日から数日後、
「6月30日」ですね。
私はその時、彼とお話していました。
目の前に立ち塞がった彼は、口を開きます。
「………貴様ァ゙!!! コロしてやるっ!! よぐモ、……よくも! 」
そして突然叫び、こちらに掴みかかってきました。
私は咄嗟に身をかわし、逃げだします。
もしかしたら、こうなる可能性も予想していたからです。
彼は走って追いかけてきますが、それでも距離は、ほとんど縮まりません。
でも、もし私が鍛えていなかったら一瞬で追いつかれていたでしょう。
私は穏便にお話をしたいのですが、彼はどうやら拳で語り合いをしたいようです。
何とも熱烈なアプローチですね。
……冗談はよしましょう。
追いつかれたら、本当に殺されてしまいそうです。
一体、どうしてこうなったのか。
……少し説明が必要ですね。
ということで、回想です。
年の差(16歳×48歳)
勉強しなきゃいけないので、しばらくは5の倍数の日の更新だけになります。
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