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ついに故郷へ 13


 初日の会談を終えてホテルに戻り、早速今日の会談内容をメールでパガーノ大統領に送ったが、彼女もオウダの言動はまるで洗浄党と決別したがっているように感じると返信してきた。三人はアストルの特使も兼ねているのでリリック分析官にもメールを送った。


〝フッケ・オウダはこのところ積極的に動いているわよ。彼のSNSのURLを送ります。そのSNSを見るとわかるけど、どうも彼は洗浄党のトップを獲りに行っているような気がするの〟


 なるほど、洗浄党と決別するのではなくトップを獲りに行っているのか。現状の洗浄党は顧問や役員など上層部はほぼ固定されたメンバーのまま。つまり、国の首相(トップ)でもある洗浄党の党首(トップ)も固定されたままで、オウダはこのままではずっとヒラの役員に固定されたまま。だから三人が提案した様々な改革案を吞みつつ、洗浄党がこれからもオルダヤでの実権を握り続けるように、そしてそれを機にオウダ自身がトップに立てるように、そんな思惑があるようです。


 SNSにも今日の会談内容を発信し、リプライにもリプライを重ねつつ三人で話し合いも行います。


「洗浄党のトップを狙っているのか、そりゃあオウダにすればヨウラやバーブは目の上のたんこぶのように邪魔な存在。今の洗浄党側の考えをそのまま踏襲すれば自分は上には立てないもんな。一発逆転を狙っているわけか」


「ブルの今の言葉が正解ってことだね。オウダは首相や党首の座を奪うために私たちに迎合して都合よく使い、あとは処刑まではされないとは思うけど、国の隅っこに送られてひっそりと暮らしていくことになるだろうね」


「オウダ議員の考えはイグリーと同じなんだね。僕も確かにそう感じるけど、イグリーとは違いオウダ議員とは一時的に組むほうがいい気もするんだ」


「ハット、それはどういうこと?」


「あのね、ペト。イグリーはチカリヤという国の考えのもとに動いているでしょ。洗浄党を消滅させてチカリヤが自由にオルダヤをコントロールできるようにしたい、そんな野望だけだった。だから彼女と組めば僕たちは最終的には殺される。チカリヤにとって邪魔なだけだもん」


「ハット、オウダだって大差ないだろ? あいつだって最終的には俺たちが邪魔になるわけだしさ」


「確かにそうだよね、ブル。最終的には僕たちは邪魔になる。僕が一時的に組むと言ったのは、まさにそこなんだ。あくまで一時的であってずっと組む必要はない。取りあえずは現状の洗浄党を変えていくと同時に、選挙が公平公正に行われるように改革を求める。これにはオウダ議員は反対しないはずだから」


「なぜ?」


「今の選挙って公正に行われている? もしも公正だったら洗浄党の人たちが九割を超える得票率を得られるわけないもん」


「確かにな、これだけみんな不満を抱いていて、そんなにたくさん票が入るわけがない」


「オウダ議員が洗浄党のトップに立ち首相の座も射止めたいとすれば、選挙制度を変えるとか監視団を第三国から受け入れるとかしなきゃ無理だからね。今のままだと洗浄党の上層部に票が集中するから。だからここまでは僕たちが求めるオルダヤを本当に自由な国にするための行程と同じなんだよ」


「そっか、公平で公正な選挙が実施されなければ、今と同じ独裁になるもんなあ」


「僕はアストルやヒカルゴに選挙監視団を出してもらってクリアさせようと思うんだ。そしてここからだけど、僕たちが推す人たちに選挙で勝ってもらわなきゃいけないんだ。オウダ議員に負けたらオルダヤは今と同じ洗浄党による独裁政治が続くのだから」


「ハット、オウダ議員が多くの票を集め当選したら、今とあまり変わりはないと考えてるの?」


「ペト、だってオウダ議員は洗浄党や国のトップになりたいんだよね。それってヨウラとか顧問のカストやマカイ、タテハナのようになりたいってことだと思うんだ。彼たちのような独裁で好き勝手に国をコントロールできる権力が欲しいと思っているのかなって」


「なるほどね、今回ばかりは先々必ず袂(たもと)を分かちあうから、最初から手を結ばないという手法を取らないんだね」


「おい、ハット。そこまで考えられるのだったら、ハットが立候補して国のトップになればいいんだよ。ハットが立候補すればみんな票を入れてくれるから簡単にトップに立てるぞ」


「ブル、僕は政治になんて興味はないよ。それに他にやりたいことがあるからさ」


「ハット、オウダ議員へはこちらから近付くのかい?」


「ううん、ペト。向こうから近付いてくるのを待つよ。できるだけ粘って、こちらの条件を呑ませるようにしなきゃ」




 今日から五月だがさわやかな朝とはまったく思えない。また狭い官邸に閉じこもって洗浄党相手の会談が待っていますから。それに早朝に届いたあるレポートを読み、三人は洗浄党が起こそうとしている行動を止めなくちゃと、さらなる危機感も持ちました。


「チカリヤからの借款及び労働力の補充としてチカリヤ人民を受け入れる件だが、われわれは大筋で認めることにした。これはオルダヤ復興に際して避けては通れない道だからだ。君たちはアストルを推すだろうが、アストルだって同じような手法を提案すると考えている。ならば、これまでの実績や積極的に声を掛けてくれるチカリヤを選ぶのも当然であると考えている」


 最初からヨウラ党首がチカリヤの提案を受け入れると宣言した。


「首相はオルダヤをチカリヤへ売り渡す決意をしたのですね」


 ペトが短い言葉で反論した。


「アストルはオルダヤ国内へ国民を送り込むようなことはしないし、そもそもオルダヤ国内の労働力は余剰状態なのに、なぜ国民を活用しようという気持ちはないのですか?」


 ハットも反論した。


「オルダヤのどこに人が余っているんだ? 余っていたらわれわれも苦労せずに労働力が確保できるのだけどなあ」


 バーブが笑いながら三人に言い放った。


「副党首さんよ、あなたたちが国民に意味のないランク付けをしているから足りないように見えるだけでしょ。ランク付けして就ける仕事や住める場所に制限を掛けるから、働きたくても働けないだけだと俺は思うけどな」


 朝一〇時に始まった会談はお互いが一歩も引かず、ものの一五分ほどで激しい口論へと化していく。


「首相も副党首も落ち着きましょう」


「オウダ、昨日もそうだが、やたらとこいつらの肩を持つが、あれか、洗浄党を裏切る気か?」


「副党首、私は洗浄党を裏切る気なんてまったくありませんよ。ただ彼たちの言い分にも一定の理解を示す必要はあります。国民の多くが望んでいる内容そのものですし、無視し続けていたらいずれ痛い目に遭うような気がします」


「痛い目だと? 悪いが国や党の意向に反する動きをすれば取締りを行う、それだけだ」


 ヨウラがつい本音を口走った。オルダヤは実質的に洗浄党による独裁政治を行っており、意に反する言動を行えば「国民に対する影響を考えたうえで罪状と刑期を判断する法律」によって処罰すると明言した。


「首相、今のが本音ですね。首相自らがオルダヤは独裁国家だから、逆らえば処罰すると明言されました。おかしなことに対して国民が声を上げても処罰される、だから黙っておけとはっきりとおっしゃりました。悪いですがこれはSNSで世界中に報告します」


 ハットがSNSで世界中に拡散すると明言した。


「これはオルダヤのすべての国民に知らせる必要があります。これまでも何となくそういうことだと認識して生活しているわけですが、首相自らがはっきりと歯向かえば処罰すると言ったことはありませんでした。いま首相は明言しました、国や党の意向に反する動きは処罰すると。はっきりと民主主義ではないと国のトップが言い切りました。これ大変なことですよ」


 ペトもヨウラの発言に反応し、ブルも続いた。


「みんなわかっていることさ、洗浄党に都合が悪い言動をすれば捕まることはな。ただ国民の多くはもう少し下の洗浄党の人間や役人やら企業のトップたちの意向が働き、それに沿って警察とかが動いていると思っていたんだ。違ったんだ、国のトップの意思で捕まえていたんだな!」


「党首はちょっと興奮して口を滑らせ……、いやいや、間違ったことを口にしただけだ。これまでもこれからも、国や洗浄党が個人の言動を取り締まることなんてない。おそらく警察の署長クラスがわれわれに気を遣いすぎて、そういった間違いをだな……」


 バーブが慌てて取り繕おうとしたが、時すでに遅し。


「洗浄党の党首以下役員全員の即時辞任、および首相以下すべての閣僚の即時辞任を求めます!」


 待ってましたとばかりに、ヨウラ党首に対してオウダは役員の辞任願を叩きつけた。


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