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SNSに思いをぶつけたら奇想天外な人生を歩むことになりました  作者:


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舞い戻って 12

「大統領、チカリヤはオルダヤに何らかの圧力を掛けているのでしょうか?」


「おそらく掛けているわよ、ペト。我が国と違って今のオルダヤには国民が信頼するリーダーが不在で、国民もいつ大きな爆発を起こすのかがわからない状態。チカリヤにすればオルダヤの洗浄党に加担して国を鎮静化させる代わりに、実質的な領土の割譲や経済面で有利に扱うような〝提案〟を受け入れるように迫っているんじゃないかな。今アストルが国を挙げて調査中だから、わかればまたリリックから報告が届くことになっているの」


「大統領、それって洗浄党にすればチカリヤという泥船だとわかっていても、藁にもすがる気持ちで飛び付く可能性が高いですよね」


「ブルの言うとおりで、今のオルダヤ国や洗浄党は世界のどの国からも助けてもらえない状態。そんな窮地の場面で手を伸ばすチカリヤの手を握ってしまう可能性は高いわよね」


「僕たちはSNSの発信だけしていれば良い、なんて事態ではないですよね……」


「ええ、ハット、そのとおりよ。だからあなたたち三人にオルダヤへ行ってもらいたいのよ」


「オルダヤですか?」


 ペトとブルは同時に同じ言葉を発した。今オルダヤへ戻れば〝脱獄し処刑された者の名を騙って、オルダヤや洗浄党の名誉を傷つけ地位を凋落させた者〟といった適当な罪状を付けられて処刑される危険性が高い。だから驚いたような声を発したのです。


 でもハットは、


「わかりました、僕一人でもオルダヤへ戻り、多くの国民の前で洗浄党やチカリヤの言い分に耳を傾けるなと叫んできます」


「ハット、要約すればそういうことを頼むわけだけど、あなたたちは我が国の情報調査室特別職でもあるの。つまりはヒカルゴを代表してオルダヤへ行くことになるのよ。そしてバックには我が国だけではなく、アストルなどチカリヤと対峙する大国が付いている。あなたたちのオルダヤ行きが決まればアストルをはじめ各国が声明を出すことになっているの」


「アストルがですか?」


「ええ、ペトそうよ、今回の件は実はアストルが主導しているの。それも大統領が直々に発案した作戦よ」


「ジョン・ジェンキンズ大統領が?」


「あなたたち、ジョン・ジェンキンズ大統領と何か約束したの? 彼たちは私と約束したのだから、その約束を実行してもらうためにオルダヤへ行ってもらいたいって、言ってきたのだけど」


「オルダヤを元通りの開かれた取引相手に戻し、昔のようなアストルとの同盟関係を築けとか、ヒカルゴをオルダヤみたいな酷い国にさせないように食い止めろ、あとは洗浄党を完全に解体しろとか……」


「ペトそれは本当のこと? あなたたちはそんなとんでもない約束をあの大統領としたというの?」


「約束と言うか、取引だと言われました。取引に成功すれば脱獄囚に関わらずアストルの永住権を与えるとか……」


「大統領、ジェンキンズ大統領はほかには何か言ってましたか?」


「ハット、あなたちがオルダヤへ行くことになれば、アストルからは防衛長官や貿易長官を同行させると言っているし、我が国にも閣僚級の同行を要請されているの。もっとも、私もいっしょに行くつもりだけどね」


「このことはSNSで発信しても大丈夫ですか?」


「まだ決定したわけじゃないから……、私がジョン・ジェンキンズ大統領に返答して、日時や派遣規模を決めてっていう段取りになるから、少し待って。あまりに早く発信してチカリヤがオルダヤに対してさらなる圧力を掛けても困るから……」


 パガーノが正式に大統領に就任してまだ二カ月ほどですが、想像をはるかに超えるスピードで世の中が動いていきます。パガーノはヒカルゴというこれまでは世界的に見て影響力の少ない小国の大統領に就いただけなのですが、アストルやチカリヤといった世界の大国から、オルダヤといった世界の中で見れば小さく異質な国に至るまで、世界中に様々な影響をもたらせています。


 自国の議員や大統領などの選挙において、民衆は何となくこの人が良いかもといった軽い気持ちで投票する人が多いと思います。しかしその一票によって選ばれた人が世界のさまざな国に影響を及ぼすこともあります。その影響は新しい人が加わわることで良い反応となることもあれば、思いもよらぬ融合によって悪影響を及ぼすこともあるでしょう。


 少なくともハットたちにとっては、オルダヤを洗浄党の支配から解放させて自由に生きられる国にしたいとの願いから、良い化学反応があちこちで発生していると捉えられます。チカリヤだったり洗浄党の上層部から見れば、パガーノという悪い物質が混入してアストルなどの陣営と融合したために、悪影響を及ぼしていると見ていることでしょう。




 ハットたちは直属のボスであるパガーノ大統領により、オルダヤ行きを要請され受託したことから、要請から正式な命令へと切り替えられた。そしてこのことはアストル側にも伝えられ、人数規模や日程の調整にすぐさま入った。ものすごい人数になるのかと思ったら、アストル側からは国家安全保障庁分析官のリリックを含めて一〇数人程度、ヒカルゴからはパガーノ大統領を含めて二〇人ほど、そこにハットたち三人が加わる程度です。


 当初オルダヤ側は処刑された人間を騙り、オルダヤ国及び洗浄党を貶める言動ばかりする人物は入国後即逮捕すると警告を出してきましたが、ヒカルゴとアストル両国からオルダヤに対して、ハットたちはヒカルゴの長官クラスに該当する上級公務員である。彼たちに対して逮捕など警察権を行使した場合には、オルダヤはヒカルゴとアストルに対して敵対行為を働いたとみなし開戦する準備があると警告した。


 この件でチカリヤは、国及び政党を証拠もなく面白半分とは言え貶める言動を繰り返す人を公職に据えることに反対し、さらにオルダヤを刺激するかのように入国を企てる行為は慎むべきであるとパガーノ大統領へ直接抗議した。


 パガーノ大統領は我が国に対する内政干渉に断固反対し、オルダヤ国や洗浄党に関することは様々な証拠が揃っており、それらの証拠に基づいてSNSなどで発信しているに過ぎない。事実を発信している人間を公職に就けることに何の問題もなく、事実を述べている人の入国がどのような刺激を与えているのかを逆に聞きたい。マズいことをしている自覚があるから〝刺激〟と捉えるだけなので、これまでの行いを反省し方針転換すれば済む話であると、一歩も引く姿勢を見せなかったようです。


「チカリヤがオルダヤを守るようなことを直接言ってきたということは、チカリヤはこの先オルダヤを食い物にすると断言しているようなものよ」


「大統領、私たちはオルダヤに入国しても大丈夫なのですか?」


 心配顔で大統領を見る三人ですが、


「もしも逮捕なんてすれば我が国もアストルも黙ってはいないわよ。その覚悟があれば逮捕するかもしれないけど、今の洗浄党にそんな肝が据わった人なんていないわよ。だから心配しないで!」


 一週間後、オルダヤへ旅立つことになりました。




 ヒカルゴの首都アレグム市からオルダヤの首都〇一、一(対外的な名称はマーシュ)までは二五〇キロほどの距離。アストルのオルダヤ訪問団は一度ヒカルゴへ立ち寄り、パガーノ大統領をはじめ政府高官との会談を二日ほどこなしてから、車でヒカルゴの訪問団とともに移動することになっています。


 アストルから来訪する代表を出迎えるために空港に来たパガーノ大統領や政府高官、そしてハットたち三人。ハットたちは出迎える予定ではなかったのですが、飛行機の到着予定の一時間前に急遽アストルの大使館から空港へ行くように依頼があったためです。ハットたちが聞いた範囲の話では、政府高官だけではなくアストルの要人も来られているからだと。


 空港に車で着くと、滑走路を滑るように進むアストル国旗が尾翼に描かれた機体が見えた。政府高官だけならば民間機で来るはずだが、政府専用機を使用していることからアストル国の要人が搭乗していることに間違いはなさそうだ。エプロンにはヒカルゴの上級公務員や空港関係者が待ち、タラップ車も少し離れた位置で待機しており、その辺りに政府専用機は止まるのだなとわかります。


 大統領はアストルの要人に最初に挨拶ができるように、タラップを降り切った場所に立つように案内されていました。その間に赤絨毯を丸められた状態でどこからか持ってきて、まるで国賓として招かれた方の出迎えのような様相に。ハットたちは大統領の右横に並ぶ高官の列の最後尾に立ちました。


「ペト、ハット、アストルからは大統領でも来るのか?」


「確かにそんな感じの出迎え方だよね」


「でもジョン・ジェンキンズ大統領が来るのならば、何日も前から綿密に出迎えから移動の手配まで予定していくはずだし」


「アストルの要人が来る情報なんて機密扱いだろうから、私たちみたいな人間には教えてくれないんじゃないかな」


「そりゃあそうだな、何せ俺たちは脱獄囚だからな。でもそうなるとやはり大統領がお出ましなのかな?」




 政府専用機は決められた場所に静かに止まり、タラップ車が移動してきて機体にタラップが取り付けられすぐに赤絨毯が敷かれます。飛行機の搭乗口が開き最初に姿を現した人物はジョン・ジェンキンズ大統領でした。

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