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SNSに思いをぶつけたら奇想天外な人生を歩むことになりました  作者:


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取引優先の大国 4

 通信安全局はあらゆる放送や通信に関しての許認可権を持つ国からは独立した第三者機関です。またアストルにとって有害だと判断すれば電波の停止のほか、場合によっては起訴を行う強力な権限を持つ部署です。国から独立しているのは国が放送に関与する隙を与えず、問題があれば国を相手に訴追する姿勢を崩さないためです。実際に国への勧告は数知れず、放送に関して介入しようとした政府高官を辞任に追い込んだこともあります。


 そんな部局の係員がすぐに駆け付け、


「オルダヤの通信制限は主にどの国から発信なのかといったもの、サイトのドメインによる制限、制限するワードの設定のほか、監視によって制限するサイトを見つけては遮断する方法です。すべてを遮断しているわけではなく、基本的には見つけ次第遮断している感じです」


 意外に地道に制限するべきサイトを見つけていることに驚いた三人ですが、現実には多くの海外発信の情報を見ることができません。


「これはオルダヤ内で使われているSNSです」


 通信安全局の係員がスマホに表示したオルダヤで広く使われているSNSを三人に見せた。三人は食い入るように画面を覗き込む。かつて三人も利用していたSNSだし、ハットとブルはここに書き込んだことで逮捕されて収監されたのですから。


 五分ほどするとタイムラインからいくつかの投稿が消えた。


「今消えたのは、洗浄党にとってまずい内容が書かれた投稿でした、わかりますか?」


 ――消えたことはわかったけど……。


「海外発信とは違って、国内のSNS投稿は制限ワードを設定していないのか自動排除されていないようです。投稿された内容のスクリーンショットを保存してから投稿を削除し、その後すぐに発信者を特定する作業に入り概ね二日もあれば逮捕に至るようです」


 ――そうだ、僕も書き込んで二日後に逮捕されたから間違いないな。


「言っていることがわかりますか?」


 通信安全局の係員はニヤッとして三人の顔を覗き込んだ。


「特定の国はダメ、それ以外の国は禁止ワードが含まれておればダメ、でも国内発信は五分くらいならば何を書き込んでも表示されるのです」


〝オルダヤに戻って発信すればいいだろう〟


 そんな風に言われていると思った三人は、三人ともに憮然とした表情を見せたのですが、


「オルダヤ内の発信に偽装すればよいのです」


 どうすれば良いのかなんてまったくわからない三人に対して、通信安全局の係員は丁寧に説明した。


「この方法ならばオルダヤへメッセージを届けることができます、ただし、五分くらいで消される可能性が高いです。あとは三人で考えて行動してくださいね」


 通信安全局の係員はそう言うと帰っていった。




「通信安全局の人、本当に来るのが早かったな。俺は早くても数時間後になると思っていたから驚いたよ」


 ブルが率直な感想を述べると、


「ブル、ハット、ひょっとすると私たちがしようとしていることに期待しているんじゃないかな?」


「ペト、それは大統領がということ? 希望的観測だろ?」


「ブルはそう思うかい? 私はわりと真剣にそう思ってるよ」


 アストル大統領ジョン・ジェンキンズは全てを損得勘定で考える人。もしもハットたちが少しでも成果を出し、アストルに少しでも利益をもたらせば絶対に喜ぶ人だ。ジェンキンズ大統領は根っからのビジネスマンで物事全てを取引として見ている。ハットたちが取引に成功すれば自国にとっても利益となり、自身の支持率も上がるはず。そう考えているのだ。


「そう言えばしきりに取引という言葉を使っていたよね、僕たちがこれから起こす行動も取引の一端なんだ」


「ハット、そういうことさ。大事なのはお金で大統領にとって全てが取引なんだよ、外交も含めてね」


「なるほどね、だから今は俺たちに加担して取引が成功するほうが良いということなんだ」




 ハットはいつものようにヒカルゴ内の支援者に向けてメッセージをSNSに投稿した。今回はアストルが洗浄党に対してどのような見方をしているのかに主題を置いた。もちろんオルダヤやチカリヤに対してアストルがどのような対応をしているのかも綴り、両国に対しては高関税を掛けて原則的に入国も認めていないことのほか、アストル内にある洗浄党、オルダヤ、チカリヤの資産をすべて凍結していることも解説した。


 諸外国からオルダヤやチカリヤは今現時点でどのように見られていて、今のまま洗浄党がヒカルゴの統治を行うと同じ道をたどることも警告した。これまで以上により具体的な事実を伝えていく方が良いと判断したからです。ヒカルゴ内で発信していた時以上に反応があり、特にずっと支援してくれている若者からはより強い反応が示されました。


「ハット、たくさんリプが返ってきているけど、この中に洗浄党支持者が混じっていることはないのかな?」


「ペト、ある程度の目星はついているよ。リプでは支持しているように装っていても、その人の他の投稿を見ると熱烈な洗浄党支持者だとわかることも多いから」


「きちんと選別はできているんだね。だったら、安心できる人にいろいろと手伝ってもらおうか」


「どういうこと?」


「例えば、オルダヤ内からの発信だと偽装してSNSに投稿するだろ。今はオルダヤで我々のアカウントをフォローしている人は一人もいない。つまり誰にも見られずに消される可能性があまりにも高い。そこで……」


 ペトは信頼できるヒカルゴ内の支持者にお願いして、オルダヤへ向けてこういう投稿があると広めてもらうことを提案してきた。もちろんペトたちもアカウントをたくさん作って、一人でもいいから目に留めてもらえるように宣伝していく。そうすることで一人でも二人でもいいからオルダヤ人に、洗浄党、オルダヤ、チカリヤのことを知ってもらい、アストルをはじめ諸外国からオルダヤはどう見られているのかを知ってもらえる、そう考えたのです。


「オルダヤへの直接の宣伝は僕たちでやろう、ヒカルゴ内の支持者は自国で広めてもらうことに徹してもらうほうが良いよ」


「ハット、それだとオルダヤ内での宣伝効果が弱すぎないか?」


「ブル、弱くはなるけど、ヒカルゴ内の支持者が被害を被らないようにすることも考えなきゃ。僕たちはアストルという安全な場所にいるけど、ヒカルゴは洗浄党が支配を始めたからこの先どうなるのかわからないから」


「ハット、たしかにヒカルゴ洗浄党による被害を被らなようにしなきゃいけないよね、つい自身が安全な場所にいることを忘れそうになる……。ハットの言うとおり、私たちだけでオルダヤへの宣伝強化に努めよう。大変かもしれないけど、ブル、頑張ろうよ」


 ハットたち三人は早速オルダヤ内のSNSに大量のアカウントを作り、宣伝工作の準備を始めた。

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