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SNSに思いをぶつけたら奇想天外な人生を歩むことになりました  作者:


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密入国者か正義のヒーローか 6

 現政権と洗浄党の支持率が拮抗した状態が続き、ハットたちもSNSを使って政権側の支持率が少しでも上がるように腐心していた七月上旬、大統領公邸にヒカルゴ洗浄党の党首ヒメキ・ヨークたちがやってきた。しかも約束を取り付けるわけでもなく、いきなり公邸に現れたという。


「ヒカルゴ洗浄党の党首が連絡もなしに急に現れるとは、何か急用ですかな?」


「今日は大統領にお願いがあり参りました。我が国では現政権と洗浄党への国民の支持率は拮抗していますが、経済界においては洗浄党がほぼ制圧しています。ここはぜひ大統領の座を洗浄党へお譲りください」


「誰が大統領の座に就くのかは国民が決めることです。密室の話し合いで大統領を決めることではありません」


 至極当たり前なことを口にした大統領ですが、党首はまったく引き下がる気はありません。


「今日ここに来たのは経済界が推す人物に大統領の座を譲ってほしい、そのお願いで来たのです」


「私はヒカルゴ洗浄党で職員をしているモドル・タイダと申します。私は常に市民目線で仕事をしていますので、今の国民の要望を完全に把握しています。私が大統領に就けばヒカルゴは劇的に生まれ変わります!」


 ただの党職員をいきなり大統領の座に就かせるのはかなり奇異に映った現大統領。国や自治体での勤務経験もなく政治経験もない党職員を大統領に抜擢しようとしている。どう考えても傀儡(かいらい)政治のはずだ。それもオルダヤの洗浄党幹部たちの思惑だろう。


「ヨーク党首、政治経験ゼロの人をいきなり大統領に据えるお考えですか? 無謀過ぎませんか?」


「もちろんタイダ君一人に押し付けるなんてことはしません、党を挙げてバックアップしていきます」


「それはオルダヤの党首脳たちによって操っていく、そう捉えて差し支えありませんね?」


「大統領、オルダヤではなくヒカルゴを治める大統領をバックアップするのですよ、我々ヒカルゴ洗浄党が支えます」


「あなた方ヒカルゴ洗浄党を操っているのがオルダヤの洗浄党ですよね。だから新しく大統領になったとすれば、間接的ではあるがオルダヤの洗浄党が我が国を操ることに繋がりますよね」


「我々ヒカルゴ洗浄党がいつ、洗浄党の本部に操られたとおっしゃるのですか!」


「我が国の諜報機関の調べで様々な事実が浮かび上がっていますよ」


「失礼な! 大統領は我々に政権を譲る意思はないということでよろしいですね!」


「ええ、国民の意思による選挙結果ならば受け入れますが、それ以外は断固拒否します」


「わかりました、では実力行使で大統領の座を奪ってみせます!」


「国民の意思による選挙によって、正々堂々と奪ってください」


「大統領は何もわかっていませんね、この国の経済はすでに洗浄党の手中にあるのですよ。では、失礼します」


 ヒカルゴ洗浄党党首は怒りを隠せず、大統領候補らしい男は事の重大さを認識できていないのか、それともサイコパスなのかはわからないが顔色一つ変えずに大統領公邸を後にした。




 ハットたち三人は国家安全情報部内の部屋で〝任務〟に当たっています。ヒカルゴ洗浄党の動きを共有し、それを生かしてSNSなどで発信するためです。当然ですが、大統領公邸にヒカルゴ洗浄党党首や経済界が大統領に就かせたいとする人物がやってきたことも共有しています。


「いよいよ洗浄党はクーデターに踏み切るかもしれないわね」


 パガーノ長官がボソッと口にした。


 クーデターと言っても洗浄党が軍部を掌握しているとは考えにくく、〝力〟による現状変更に打って出ることは現状では不可能なはずだし、今後も〝力ずく〟での現状変更に打って出ることは難しいと考える。


 そうなると洗浄党が取る手段としては、他党や無所属の中央議員や地方議員のほか官僚たちを、お金や地位と言う餌をチラつかせて一本釣りするか、またはハニートラップを仕掛けて骨抜きにして洗浄党入りを促し、さらにその人たちの後援会や支援者にも洗浄党の支援に回ってもらうというのが現実的だろう。


 それまでとは一八〇度主張が変わったりまったく異なる政党に移ったとしても、盲目的な〝信者〟は支援対象者の言動が変わってもすべて信じるだろうし、他党や無所属から洗浄党に入っても付いて行くだろう。もちろん極端に主張が変わったことに嫌気を差し離れる人もいるだろうが、新たに支援する人も出てくるので議員本人の大勢には影響しないのかもしれない。


 ハットたちはすぐにヒカルゴの中央・地方議員たちにメールなどで、これからも変わらずに大統領を支持するように訴えていったのですが、洗浄党は先に手を回していました。無所属議員の大半は洗浄党入りを表明し、洗浄党には入らないが支援すると明言する議員もいました。


 ヒカルゴ洗浄党党首がアポなしで大統領公邸に訪れ政権を譲るように働き掛けた時点で、洗浄党による議員の取り込みは完了してすでに完敗の状態だったのです。武力は用いないがあらゆる手段を講じて内部の支援層を崩していき、気が付いた時には周りに支援する議員たちは一人もおらず孤立無援の状態に押しやっていく。これこそ洗浄党が考えた今の時代のクーデター。


 秋には臨時の中央議会が開かれて洗浄党主導で次々に法案を採択し、中には移民に対して居住六カ月で選挙権を与える法案といった、来る大統領選挙の外堀を着実に埋めていきました。ただ単に大統領選挙に勝つだけではなく、圧倒的な支持を得て大統領を交代させたと国の内外に見せつけようとしたわけです。もう手の施しようがないほど壊滅状態になったヒカルゴとアリス・ホフマン政権。


 臨時中央議会で大統領選挙の一年前倒し実施も可決され、あと一カ月で大統領選に突入することが決まりました。洗浄党の一職員のモドル・タイダが大統領の地位に就く日はもう目の前です。

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