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SNSに思いをぶつけたら奇想天外な人生を歩むことになりました  作者:


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密入国者か正義のヒーローか 4

 国家安全情報部の調査によって最近わかってきたことがある。


 ヒカルゴの企業がチカリヤへ進出しているのは事実だが、チカリヤからの移民流入はそれほど多くはないことがわかった。統計上は激増してあちこちに〝リトルチカリヤ〟が誕生しているにも関わらずだ。これまでの移民に関する手続きを総点検したところ、その多くはオルダヤの洗浄党員がチカリヤ籍と偽って流入していることがわかってきた。


 現政権はオルダヤとは距離を置いているために、チカリヤが利用されている恰好になっている。自治体によっては洗浄党を支持する首長によって外国人を採用するケースが増えており、オルダヤ人がチカリヤ籍だと偽って流入しやすい状態になっているのが要因とみられる。


 これらの事象はオルダヤ国内の事情が大きく関わっていると見られ、洗浄党主導でオルダヤはチカリヤと緊密になって移民が数多く流入し、オルダヤの上位ランク者はチカリヤからの移民で占められ、経済面は洗浄党の手中からすでにこぼれ落ちている。オルダヤ国内の状況に危機感を持った洗浄党がヒカルゴへの定住を促進していると思われるが、テレビで見聞きする洗浄党の話題のほかはオルダヤの情報がほぼ入ってこないため、国家安全情報部では危機感を持って注視しているという。


「それは俺の国であるオルダヤを洗浄党が見捨てて、ヒカルゴへ逃げようとしているという感じですか?」


「現時点で詳しいことはわかりませんが、その可能性もあると思われます。ただ……」


 長官は一呼吸置いてから、


「我がヒカルゴへ逃げ込もうとしているというよりは、我が国を乗っ取ろうとしているのではないかと……」


 ブルの質問に長官が答えたのですが、


「そんな高度な政治戦略合戦を前にすると我々三人は何もできません。できたとしても傍観するか逃げるだけですよ。我々三人なんて知恵も無ければ知識もない、さすがにそんな難しい問題を背負い込むことはできません」


 ペトの言葉にハットとブルはうなずくだけだったが、


「そんなことはありません! あなたたちだからこそできることがあるんです!」


 大統領に強く言われ、その言葉に続き大統領の側近の大臣が、


「我々も様々な手段を使って洗浄党の本当の怖さを伝えようとはするのですが、なかなか伝わらないと言いますか、難しい面がありまして……」


 大統領の側近によると、国や自治体は広報紙やHPなどさまざまなチャンネルを使って洗浄党の怖さを伝えようとはするが、特定の政党を名指しで非難することはさすがに難しく、どうしたって奥歯に物が挟まったような表現しかできないため正確に伝えることができない。


 その間にも洗浄党は次々と庶民受けする新たな方針を打ち出し、さらに洗浄党に忖度するいくつかの民間放送局によってそれらの方針は瞬時に広まり、テレビのみを情報源とする一定の年齢層以上の方たちの洗浄党支持はより強固になっていくのです。

 

 以前は洗浄党顧問のトクル・カストやイムロ・マカイが、生放送のテレビ番組でお笑い芸人と戯れながら洗浄党の方針をヒカルゴ国民に洗脳していきましたが、今は党首のヒロム・ヨウラがオルダヤからのリモート出演で洗脳の任に当たっています。オルダヤの洗浄党がヒカルゴのテレビ局に入り込むように利用し、またテレビ局の一部は国に反発するかのように洗浄党の支持拡大に加担しているのです。


「テレビの影響力は凄まじくて、テレビが言っていることはすべて正しい、テレビが嘘を流すはずがないと受け取る人が多いですからね」


「ペトさん、そのとおりなのですよ。それだけに我々はどうしても後手になってしまい……」


 テレビや新聞が間違った事を言うはずがない、報道される内容はすべてが真実だから信用できる、そう思っている人が多いのは今も昔も同じ。特にある程度年齢が高い人にその傾向が顕著に見られます。


「でも……、僕もそうでしたが、学校でテレビの話なんてほぼ出なかったですし、見ている人もほとんどいませんでした。テレビなんて見るくらいならば、SNSで新しくて新鮮な情報を入手する方がマシかなと思って」


 ハットは大臣とペトの話を聞いて率直に思ったことを口にしたあと、大統領の求めに応じて詳しい説明をします。


 今の若い人の考えでは、テレビはどの局を見たって同じことを同じ角度でのみ報道するから同じ内容ばかりだし、中には意図的に放送しない大事なニュースもある。放送するとどこかから怒られたり睨まれたりするのか、またはテレビ局自身の政治的思考に合うように改変して放送しているのか、実態とはかけ離れた放送を垂れ流しているように思える。


 でもSNSは核心部分を突くような投稿もあってテレビより実態が掴みやすい面がある。もちろん投稿者の思想によって大きく捻じ曲げられていることもあるから、一つの投稿だけで判断することは危険。だから同じニュースであっても調査しないといけない。


 ただし重要な投稿は瞬時に消えてなくなることが多く、いかに大事な投稿を見つけてその投稿を保存するのかが大事だから、テレビという下らなくてつまらないものを見ている暇は今の若者には無い。


「ハットさん、ヒカルゴにおけるSNS戦略をお任せしてもいいですか?」


「SNS戦略を僕が?」


「ええ、ヒカルゴでも今は多くの方がSNSを重視していますし、この国の洗浄党も上手くSNSを活用して国民を誘導しているように感じます。ですから同じSNS目線で洗浄党から政府へ視線を変えてもらいたいのです」


 大統領にお願いされたハットは大臣にパソコンを借りて、ヒカルゴ洗浄党の公式アカウントをチェックしてフォロワー数やポスト数などを確認していった。すると洗浄党の公式アカウントは中央と地方を合わせて三〇以上も乱立しており、さらに洗浄党所属の議員や候補者などは全員が毎日何らかの発信を続けている。


 そして洗浄党を応援するアカウントも相当な数があり、今の洗浄党人気はSNSを上手く活用していることが見て取れる。


 それに対してヒカルゴの省庁の中にはSNSのアカウントを持っていなかったり、アカウントはあるけど一年以上発信しておらず休止状態のものも多かった。大統領は個人のアカウントを持っているがそれほど突っ込んだ内容は発信できないし、大臣やその他の議員も同様で選挙前にだけ発信頻度が増える状態だった。


「SNSのフォロワー数やポスト数を見ると洗浄党に圧倒的に負けています。洗浄党系のアカウントへの返信には反感の書き込みもありますが、その多くは圧倒的な支持の書き込み。まずはこれからヒカルゴを背負って立つ若い人の視線をもっと政府に向けさせる必要がありますね」


「できますか?」


「正直言ってわかりません。多くの人が洗浄党に傾倒していると考えると、反発されてよけいに洗浄党に傾いていく危険性もありますから」


「おい、ハット、何かいい手はあるのか? 俺にできることは?」


「まずは数で対抗することですね、たくさんアカウントを作って反洗浄党の書き込みを大量に流す。僕一人では絶対に無理だから、ブルとペトにも手伝ってもらわなきゃ……」


「ハット、何を発信していくの? 洗浄党の悪口かい?」


「悪口ではなく、事実を淡々と書いていく方が良いと思います。洗浄党が支配するオルダヤではどういうことをしたら捕まり、どのくらいの期間刑務所で過ごすことになるのかとか、完全な階級社会で住む所も結婚も仕事もすべてが制限されることとか」


「我が国民が知らないオルダヤでの事実。それを発信していくということですね。SNSの運用はあなたたちに任せます」


「しかし、オルダヤだって法律があり、SNSに少し都合が悪い事を書いただけで禁固四五年の判決が出るとは考えられないのだが……」


 ハットたち三人に対して懐疑的な見方をする大臣が呟くとペトが、


「オルダヤには〝国民に対する影響を考えたうえで罪状と刑期を判断する法律〟という法律があります。その存在を知ったのは逮捕された時ですが。罪名と刑罰を自由に作ることができ、洗浄党への不満をSNSに綴るだけで国家反逆罪が適用され、四〇年から五〇年の禁固刑が言い渡されるのです」


「オルダヤはそんなことになっているのか? まるっきり独裁国家じゃないか……」


 ペトの説明を聞いたその大臣は、驚くというよりは呆れた表情を見せていた。


 こうしてハットたち三人はヒカルゴのSNS戦略を担当することになり、国家安全情報部付けという役職も与えられた。脱獄囚からは真逆の国家の中枢部で働くことになったのです。ただしヒカルゴの大統領に懇願され、国家安全情報部内から発信していることは何があっても伏せなければいけない。


 国に雇われたやつが税金を使って洗浄党とその支持者を弾圧する目的で発信している、そんな噂が洗浄党やその支持者から出るとその時点でこの勝負は終わるのですから。

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