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同業者の圧

ある日、

街をロックと歩いていると、

男に声をかけられた。


「これはこれはエドモントさん。

ずいぶん地味におやつれになって」

と男はニタつく。


「誰だこいつ」

と俺はロックに耳打ちをする。


「奴隷商のアカンベですよ」

とロックは言った。


「あぁアカンベさん。

すみません。

あなたのような有名人を忘れるなんて、

どうも頭を強く打ち過ぎたみたいですね」

と俺は笑った。


「いえいえ。エドモントさん。

有名なのはあなたですよ。

頭を打たれて、

慈善事業を始められたとか。

よほど地獄が怖かったと見える」

とアカンベは顎を上げて言った。


「ははは。さすがアカンベさん。

すべてお見通しだ。

地獄の門番には、

賄賂は効きませんでしたよ」

と俺も笑った。


「賄賂の額が少なかったのでは?」

とアカンベは声のトーンを落とす。


「そうなんですかね?」

と俺も声のトーンを落とす。


「しかし、

地獄が怖いとはいえ、

世の中には節度というのが、

ありますからね。

ご注意ください。

また襲われるかもしれませんよ」

とアカンベはニヤニヤと笑った。


あぁ、来たな。

勧告だなぁ。

あぁぞくぞくする。


「まぁお互いに夜の道は、気をつけましょうね」

と俺も笑った。


アカンベは、目を見つめたまま、にやっと笑って去って行った。


「旦那……、大丈夫なんですか?」

ロックは少し緊張していた。


「何がだ」

と俺は言った。


「いや……、襲われたりとか」

とロックは言った。


「……えっお前守ってくれないの」

と俺は少し驚いたような表情を浮かべた。


「もちろん、守りますけど。

不安じゃないですか?

あんな事があった後だし」

とロックは尋ねる。


「命なんてものはな。

狙われてからが、勝負だよ」

と俺は笑った。


「なんか、すごいんか、どうかわかんないすね。

カッコよさげではあるけど」

とロックは言った。


「だろ。命狙われ自慢なんて、クソのやることだ」

と俺は笑った。


「返答に困るようなこと言わないでくださいよ」

とロックは言った。


……


とりあえず、

喧嘩が始まったと定義して、

相手の弱点を奪いに行く。

奴隷商人の弱点。

それは大口の取引先だ。


俺は使用人を使い、

アカンベが奴隷を販売している得意先を洗い出した。

そして、

その得意先を回る。


まずは、地主をやっている大規模なワイン農家のトマス家だ。


「はじめまして。奴隷商のエドモントです」

と俺は握手を求める。


「……うちは前からアカンベの所を使ってるんだ。

あんたの出る幕はないよ」

とトマスは言い、握手を拒否された。


「もちろん。アカンベさんは一流だ。

あそこと取引をするトマスさんも一流だ。

その選択は間違いないし、

そのままで良いと思います」

と俺は笑顔を見せる。


「……では何の要件だ?」

とトマスは眉をしかめる。


「……奴隷っていうのは、消耗品ですよね」

と俺は尋ねた。


「そうだな。消耗品だ」

とトマスはうなづいた。


「トマスさんところで5年くらいですか?」

と俺は言った。


「そうだな。3年から長くて5年だな」

とトマスは天井を見上げた。


「そうですか。じゃあ、もう買い替え時かなと思う奴隷もいるでしょう」

と俺は尋ねた。


「そうだな」

とトマスは言った。


「その奴隷はどうしてます?」

と俺は尋ねる。


「ギリギリまで働かせる」

とトマスは言った。


「正直、働きが悪いでしょ」

と俺は言った。


「まぁな」

とトマスは溜息をついた。


「飯食わせるのも、もったいないくらいでしょ」

と俺は笑った。


「あぁそうだよ。何が言いたい。ワシも忙しいんだ」

とトマスは怒り出した。


「その奴隷を買い取るって言ったらどうします?」

と俺はトマスの表情を確認する。


「あんな役に立たないものを?あんたが買い取る」

とトマスは首をかしげる。


「えぇ」

と俺は言った。


「悪くない値段なら売っても良い」

とトマスは言った。


「それは、ありがとうございます」

と俺は頭を下げる。


「しかしな。労働力が減るのも困る」

とトマスは言った。


「なるほど。たしかワイン農家っていうのは、忙しい時期が決まってたんじゃないですか」

と俺は尋ねた。


「そうだそうだ。その時期の労働力が減るのが困るんだ」

とトマスは言った。


「でしたら、その時期だけ、うちから奴隷を派遣しましょう。買取じゃなくって、貸すという方法で」

と俺は提案した。


「なるほどな。じゃあうちはその時期だけ飯を食わせて、おたくに金を払えばいいんだな」

とトマスは身を乗り出した。


「そうなりますが……、

こういうのは、トマスさんにとって、良い話ですか?」

と俺は尋ねた。


「もちろんだ。

じゃあ。

すぐにでも買い取ってくれ」

とトマスは言った。


「わかりました。

査定させていただきますんで」

と俺は言った。


そこから1時間ほど、

価格交渉をしたのち、

トマスのほうから握手を求めてきた。


「良い商談だった。これから頼むよ」

とトマスは笑った。


「こちらこそ」

と俺は言った。


……


こうやって、

俺は一軒一軒。

アカンベの顧客にアプローチをかけていった。

1回目のアプローチで買い取った奴隷の数は、

50人を超えた。


これから毎年買取する奴隷が増えていくだろう。


俺は特に、

アカンベには内緒にするようにとは、

言わなかった。

ただ以前に、

・強盗に襲われた事

・アカンベに強盗に気を付けるように注意勧告を受けた事

この2点だけを伝えた。


……


ただ買い取った奴隷は、

すぐに派遣に出せるような状態ではなかった。

まずは十分な食事をさせ、2週間ほど休ませ、

それから、

うちで行っている事業に従事させた。


始めは生産性が低かったが、徐々に高くなっていった。


来た当時とは打って変わって、皆元気になっていった。


俺は思った。

奴隷たちは消耗品扱いされていたが、

それは栄養状態や管理状態が悪いからであって、

生命力が弱いわけではない。


大切にしろとまでは言わないが、

ある程度のパフォーマンスを引き出せるように、

最低限のケアはしないといけない。

そう思った。


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