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神からの問い

死んだら、走馬灯が流れるというが、

どうやら……、

あの話はフィクションのようだ。


走馬灯が流れる代わりに、

真っ暗闇の中に、光だけがボンヤリ浮かんでいる。


あれ……、

俺は死んでいないのか。

意識ははっきりしている。

俺は周りを見わたす。

どこを見ても、

一面……闇だ。


ただ目の前にボンヤリと光が浮かんでいる。


まったく意味がわからない。

俺はとりあえず、

刺されたところを確認する。

おかしい。

痛みも感じないし、

それどころか、

体の感触すらない。

視覚は反応している。

聴覚は……、無音ではあるが、若干の耳鳴りがするので、おそらく反応している。

痛覚はない。

味覚は? 味というか、舌の感触がない。

おかしい。

手を動かしても、手が動いている感触がない。


これはただの闇ではない。

もしかしたら、

俺は存在していない。

なに?

意識はあるのに、

物理として、

存在していない?


じゃあなんだ?死なねぇってことか?スリルがねぇじゃないか。

そんな事ありえるのか。

不死身のヤクザも悪かねぇけど、

存在していないんなら、それはヤクザでもなんでもねぇよな。

ただの空気だ。

俺はただの空気に成り下がったのか。


「おい、聞こえるか。おい、君。おい、聞こえるか。おい」


光の方から、声が聞こえる。


「……あんたは」

俺は尋ねた。


「私かい? 私は神様だよ。うっかりとはいえ、ずいぶん不本意な死に方だったようだね」

と、自称神は言った。


「はぁ?なにがうっかりだ。あんなもんガチでやられただけだろうが」

俺はキレた。


「まぁ……、そうだよね。うっかりじゃないよね。私がうっかりだった」

自称神は言った。


「……で、なんだよ。なんか用でもあんのか?早く戻せよ」

俺は言った。


「いや……、それがですね。君は別の世界に転生することになったんだよ」

自称神は言った。


「はぁ?知るかそんなもん。早く戻せよ」

俺は吐き捨てるように言った。


「うーん。ちょっとムリかな。で……君、あの……うーん。私一応神なんだけど」

自称神は遠慮がちに言った。


「なに言ってやがる。俺みたいな極道が神に会うわけねぇだろう。どうせ幻覚作用のあるタチの悪い薬かなんか使ったんだろ。なにペーパーか何かか?」

俺は言った。


「いや。私は転生神という、転生のたびに出てくる。軽く知られているはずの神様なんだけど、君……ラノベとか見ない?」

自称神は言った。


「ラノベ?見るわけねぇだろ。異世界転生とか、チートとか、ハーレム系とか、そんなもん全然知らねぇわ」

俺は言った。


「割と知ってるほうな気もするけど……、

で……、

君これから転生します。

依り代は、

奴隷商人です……、

以上じゃあね」

自称神はそう言い光は消えた。


気が付くと、俺は知らないベッドに横たわっていた。

雰囲気からして、中世ヨーロッパっぽい。どうやら転生は本当にしたらしい。


ズキン……


頭が痛い。記憶が、流れ込んでくる。


これは依り代だったエドモントという人物の記憶だ。

あまりにも気持ち悪くて、何度も吐いた。

自分の中に他人の記憶が入ってくる――これは、二日酔いの5倍は不快だった。


どうやら俺の依り代エドモントは奴隷商人で、今までに893人の人々を商品として売りさばいていたようだ。

そして昨晩、強盗に襲われ、亡くなった。


俺は目を覚ます。

「エドモントの旦那」

と近くにいた男は言った。


こいつは……、

エドモントの記憶が流れ込んでくる。

ロックという名の使用人だ。


「ここは……、

何があった……。」

と俺は言った。


「ここは旦那の屋敷です。

昨晩旦那が外出中に強盗に襲われ、金目のものが奪われました」

とロックは言った。


「どれぐらい取られた」

と俺は言った。


「昨日旦那は落ち着いた服を着ておられたので、銀貨100枚ほどと、指輪を2つくらいではないでしょうか」

とロックは言った。


「あぁそうか。それは不幸中の幸いだったな。じゃあ仕事を始めないと」

と俺は言った。


「今日くらいは、休んでくだせぇ」

とロックは制止した。


「あぁそうか。そうだな。じゃあ、のんびりすることにする」

と俺は言った。


俺は考え始めた。


あの自称神が言っていた事は、本当だったみたいだ。

問題は、あいつを自称神の立場から、神として扱うかどうかだ。

まぁ、あんまり重要じゃないから、自称神で十分だろう。


俺は、今……、エドモントという奴隷商人らしい。

奴隷商人か……、

またヤクザな稼業に転生したもんだ。


俺は部屋を見渡す。


「派手だな」

と俺は呟いた。


「何言ってるんすか。旦那は派手好みじゃないですか」

とロックは言った。


「そうか……、ちょっと頭を打ってな。ちょっと記憶が曖昧なんだ。この置物とか、飾りは俺の好みなのか?」

と俺は尋ねる。


「そうですよ。奴隷商人は見た目の派手さで、相手を威嚇するんだって、それで俺もモヒカンにしてるんすから」

とロックは言った。


ロックの頭は、モヒカンだった。


俺はクローゼットに入る。

そこには、

赤や黄色、緑などの派手な色に、金色の刺繍やビーズをほどこした衣装でいっぱいだった。

ロックも鋲付きの革のジャケットを着ている。


「この服も俺の趣味なのか?」

と俺は尋ねる。


「もちろんです」

とロックは胸を張った。


「ちなみに、この衣装は、派手なほうか?」

と俺は首をかしげる。


「もちろんです。男性でこんな派手な服を着るのは旦那だけです」

とロックは言った。


「そっか……」

と俺は呟いた。


俺はこれから、この服を着ないといけないのか。

そう思うと、ぞっとした。

俺はクローゼットの鏡の前に立つ。

そこには、小太りの意地の悪そうな男がいた。


「ここにいるのは、俺なのか?」

と俺は尋ねる。


「もちろん。旦那ですぜ。本当大丈夫ですか?」

とロックは心配そうに言った。


「あぁ大丈夫だ」

と俺は言った。


しかし……、

それはウソだった。

この小太りの体型。

派手な服に装飾。

全てが俺の美学に反していた。


俺は心の中でつぶやく。

エドモント……、

悪いがお前の人生は、

そのままは、引き継がねぇ。

リニューアルエドモントで行くから、

まぁ楽しみにしとけや。


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