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急所

基本的に喧嘩では、急所を狙ってはいけない。

急所を攻撃すると、一発で仕留められるが、

傷害罪から殺人罪に変わる可能性があるからだ。


ただ今回のような喧嘩では、相手の急所を狙うのが得策だ。


一発で仕留め、二度と復活できないように始末しなければならない。


俺の調査では、

首謀者は奴隷商アカンベ。

そして背後に貴族アホンダラ。

あとは奴隷商アカンベの取り巻きの奴隷商2人という構造だ。


つまり、

この喧嘩に勝って、

上手くいけば、アカンベとその取り巻きの奴隷商2人が持つ市場を取れるかもしれない。

競争があるから、そう単純でもないが、喧嘩をするメリットはあるだろう。


アカンベとその取り巻きの奴隷商2人が持つ市場

を奪うという戦略はどうか?

これはできなくもないが、

あんまりスマートなやり方ではない。

価格競争に陥り、

他の奴隷商からも恨まれるリスクがある。


やはり、アホンダラを潰す戦略がもっとも効率がいいだろう。

後ろ盾を失ったアカンベは、ほっておけば自滅する可能性が高くなる。

いや……。

ちょっと待てよ。

アカンベとアホンダラが、喧嘩してくれたら、一番楽かもな。


俺はあらゆる人脈を使い、アホンダラについて調べ出した。

すると、アホンダラの闇の部分について、見えだした。

俺は更に金を使い、アホンダラの闇の証拠をいくつか入手した。


俺はモエとセバスを執務室に呼び出し、

相談を始めた。


「こんな資料が手に入った。どう使うと良い?」

と俺は言った。


「これは後ろ盾のアホンダラへ流れる賄賂の金額と相手ですね。

これは致命的……」

とセバスは言った。


「すごいわね。想像以上の悪徳領主ね」

とモエは呆れたような顔をしている。


「……だろ。で、どう使う?」

と俺は言った。


「まずは王宮に、流すのが妥当かと……」

とセバスは資料を眺めながら言った。


「そうね。しかし王宮だけだと、もみ消されるわよ」

とモエは髪の乱れを直しながら言った。


「やはり、そうか……」

と俺はうなづく。


「では、同時に騎士団にも流すのはどうでしょうか?」

とセバスは目を細める。


「それは賢いアイデアね。

これだと、王宮で止まっても、騎士団で拾われる可能性が高くなる」

とモエはうなづいた。


「じゃあ、王宮と騎士団に同時だな」

と俺は言った。


「……そうですね。ですが、念には念を入れておきたいですね。

ほかに送るところはないでしょうか」

とセバスはモエを見る。


「だったら、民衆の見るところに回せばいいんじゃない?」

とモエは答えた。


「それはいいな。それもやろう」

と俺は言った。


「あと一つ。なにかあれば完璧なような気がしますが……」

とセバスは鼻をかく。


「じゃあ、アホンダラと対立している貴族連中ならどう? あいつらなら、これを好機とばかりに、民衆も騎士団も煽るわよ」

とモエは腕を組んだ。


「それなら、王宮のほうも、アホンダラを粛清しなければいけなくなるな」

と俺は言った。


「それは間違いないかと」

とセバスはうなづく。


「でも……、これで後ろ盾のアホンダラはお取り潰しになると思うけど、奴隷商のアカンベは無傷よ」

とモエは肩をすくめる。


「そうなんだよな。それが厄介なんだ」

と俺は少し肩を落とす。


「アカンベとアホンダラを、仲たがいさせると良いのでは」

とセバスは言った。


「問題は、どうやってよね」

とモエは天井を見上げる。


「そもそもあいつらは仲がいいのか?」

と俺は尋ねる。


「それはないでしょうな。お互いに利用価値があるから利用しているだけ」

とセバスは言った。


「いざとなったら、平気で裏切る連中よ」

とモエは笑みを浮かべる。


「だったら、後ろ盾のアホンダラにアカンベ達が、裏切ったように感じさせればいいんじゃないか」

と俺は言った。


「御名案にございます」

とセバスは目を見開く。


「性格悪いけど、賢いんじゃない」

とモエは苦笑いをした。


「……で、どうする?」

と俺は身を乗り出した。


「それなら、アホンダラに、『奴隷商に裏切り者がいる』みたいな手紙を送ればいいんじゃないですか?」

とセバスは言った。


「そうね。シンプルだけど、弱り目のアホンダラには効くと思うわ」

とモエはうなづいた。


「つまりあれか……、リークしたのが裏切り者の仕業に見えるってことか」

と俺は言った。


「左様にございます」

とセバスは言った。


「名案だと思うわ」

とモエはうなづいた。


……


善は急げと、

俺たちは、資料をまとめ、

王宮と騎士団、対立する貴族に配布し、

各街の広場の掲示板に、アホンダラの賄賂の証拠を張り出す。


王国の名家であるアホンダラの不正の証拠という事で、

王国内に緊張が走った。


アホンダラ家には、

多数の関係者が訪れていた。


俺はその様子を見て、

アホンダラへ『裏切り者がいる』と書かれた手紙を送った。


あとは、勝手に事が進むのを見守るだけだ。


俺はアホンダラとアカンベの偵察を行わせていた。

初日こそ、アホンダラの屋敷にアカンベが訪れていたが、

2日目は、アホンダラの屋敷の前で途方にくれるアカンベが確認されている。


ライバルであるし、アホンダラは、悪徳貴族なのは間違いないが、

見ていて気持ちが良いものではなかった。

アホンダラの悪銭に群がっていた貴族連中は、

まるで素知らぬ顔で、アホンダラを糾弾する。

どこにもある風景ではあるが、

慣れないし、

慣れたくもない風景だった。


沢山いたアホンダラの私兵たちは、

少しずつ姿を消した。

中には屋敷から略奪まがいの行動をして、去った者もいるという。

そしてアホンダラの使用人50名は、職を失った。


この件で職を失ったものは、

私兵38名、使用人50名。

彼らは、別の貴族の元で働くこととなった。

そして奴隷40人が、売りに出された。


俺がやったことは、

ただの事実の暴露だ。

正義と言えば、正義なのだろう。

ただ……、

実際やってみると、

ざまぁとはならない。

俺は本当にヤクザなのだろうか?

俺は自分の存在に疑問を感じた。


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