学生時代の二人 ~ディルside~
* * *
ルシェがAクラスに編入してから、クラスの雰囲気はすっかり華やかなものに変わってしまった。
いつでも人気者の彼女。
だが、二年生になって、彼女が無事にAクラスに残留した時、誰よりも一番安堵したのは、俺だったことは今になって思えば否めない。
あれは、桃色の花が全て散ってしまった暖かな日だった。
「おはようございます。ディル様! 好きです!」
いつもよりも、彼女が輝いて見えたのは、晩春の日差しのせいなのだろうか。
「…………好き」
「…………あのさ」
「は、はい! どんなことでも命じてください!!」
嬉しそうなその声に、クラスメートが全員こちらを振り返ったことなど、きっと彼女は気がついていない。
でも、彼女がそんなことを言うのは俺だけなのだと、密かに自慢したくもなる。
「……周囲に誤解されるからやめて」
彼女を前にすると、素直になれない。
それでいて、彼女に近づく人間を必死になって排除する。
相容れない感情に、いつも翻弄されていた。
卒業と同時に、侯爵家を正式に継ぐことが決まっている俺は、結婚相手も、政略的に選ぶ必要があるのに……。
……けれど、アインズ伯爵家は裕福で、しかもルシェは、希少な光属性の魔力を持っている。
侯爵家の人間と結婚することに、問題はない。
だから、どんな手を使っても……。
そんなことを考えた後、ふとルシェが黙り込んでいることに気がつく。
「どうしたの、ボーッとして」
「え? もちろん、ディル様のことを考えていました」
これは、恥ずかしい。顔が赤くなるのを隠したくて、ふいっと顔を背けた。
「……君さ、恥ずかしくないの?」
「……そうですね。恥ずかしいかもしれません。でも、ずっと一緒にいられるかなんて、誰にも分からないじゃないですか」
そんな何気ない言葉に、ひどくいらつく。
そうか、ずっと一緒にいられると無意識に思っていたらしい。
「好きです……。伝えられなくなるまでは、伝えたいです」
そして、そう思っていたのは俺だけらしい……。
「あ、迷惑だったら言ってください。遠くから眺め続ける方針に変えますので」
「…………断っても、見るんだ」
「それくらいは、許していただければと……。え? それすら嫌ですか?」
意地悪して泣かせてみたい気持ちと、ずっと大事に全てから守りたい気持ちがごっちゃになる。
ああ、認めなくてはいけないらしい。
「あ……」
自分が微笑んでいることに気がつくには、ほんの少し時間が必要だった。
「ルシェ」
「は……。はい!!」
「いいよ。付き合おうか」
ようやく自覚した、遅い初恋。
誰にも奪われたくないという自分の気持ちをようやく認め、ほんの少し緊張しながら、誰にも聞こえないように俺はルシェにささやいたのだった。
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