告げられた真実と声にならない言葉
* * *
目を覚ますと、ここ数日いつも眠っていた私の部屋だった。
コバルトブルーのカーテン、目線を横に向けると、ベッドに上半身だけうつ伏せになって、私の手を握る銀色の髪をした人が目に入る。
「――――ディル様」
小さく声を掛けると、眠りは浅かったのかガバリとその人は顔を上げた。
ボロボロとコバルトブルーの瞳からこぼれ落ちる涙は、星屑みたいだ。
「ルシェ……」
そのまま、ベッドに膝を乗り上げてきたその人は、私のことを抱きしめた。
まだ泣いているのだろう、震える体にそっと腕を回す。
「ごめん、ルシェ……」
「無事でよかったです」
「どうして、あんな無茶をしたんだ」
ますます強い力で抱きしめてきたディル様を押しのけて少しだけ距離を取る。
「そ、それは、こちらの台詞ですよ!! どうして、あんな無茶なことしたんですか!? 魔力だって限度があるんです! 自分を守るために使ってくださいよ!!」
「……ルエダから報告を受けて、嫌な予感がして駆けつけたら、君は炎の中だ。そんな余裕ないに決まっている」
「それでも……。ちゃんと自分のお体を」
魔法と得意とするディル様は、あの場面で無傷で私を連れ出すことが出来たはずだ。
もしかしたら、私はやけどしたかもしれないけれど、包まれて抱き上げられていたのだ、炎の中走っていたディル様ほど傷つくことはなかっただろう。
「……それは、無理だ」
「え? なぜですか」
「ルシェが俺の前で傷つくなんて……。耐えられない」
その瞬間、私の両目からは大粒の涙がこぼれ落ちる。
もしかしたら、そうなのではないかと思い始めていたことが、事実としか思えなくなってくる。
「……ディル様は、私のこと、本当に好きなんですね」
「――ずっと、そう言っている」
あの時も、今回も、聞くことができなかった事を聞かなくてはならない。
そうでなければ、私はきっと前に進めない。
「では、どうして、結婚を断って欲しいなんて、言ったのですか?」
それは、怖くて聞けなかった質問だ。
卒業式直前、子どもみたいな軽いキスを交わした日。
卒業後に、私に「結婚して欲しい」と伝えてくれた言葉。
あんなに好きだと伝えてくれた態度と言葉が、否定されてしまうのが怖くて。
でもディル様は、間違いなく知っている。
そのことを知っていたからこそ……。
きっと、自分の命を後回しにして、私を助けようとしたのだ。
私のことをまっすぐに見つめたディル様の瞳が、なぜか結婚を申し込んでくれたあの日の瞳と重なる。
開き掛けた唇が、まもなく私が予想している言葉を紡ぐのだろう。
「俺の命は、あと半年、もたないだろう……」
今日もディル様の心臓にまとわりつくような黒い蔦が見える。
その事実をあの日知っていたなら、何か変わっただろうか。
そして、続く言葉が遠慮がちに告げられる。
「でも、そのことをルシェは、すでに知っているんだな……。それは、なぜ?」
人生をやり直しているんです。
唇だけがハクハクと動く。
伝えようとしたその言葉は、なにかの制約に阻まれてしまったかのように、口にすることが出来なかった。
「……言えない、のか」
「言えない……みたいです」
「そうか。……ある程度予想がついた」
これ以上話す必要はないとでも言うように、塞がれた口づけは、なぜかとても苦いように思えた。
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