第9話『迷演技ですね』
「ガッガッガッガァ」
エルミアに謝罪する俺の姿がおかしかったのか、下卑た笑い声をあげる。
「お前! 今、絶対笑ったよな!?」
「ガァァァ」
所詮モンスターなので、なにを言っているのか分からないが、今のは完全に俺を笑ったと見なす。
上空から降りてこようとしないキングドロカラス。
これ以上様子を見ても、奴は最初のように隙は見せてはくれなさそうだ。
「エルミアちゃん、俺はもう頭がきた。 様子見はやめだ」
「なにか方法があるんですか? 私、魔法は使えないですよ?」
「うん、俺も魔法は使えない。 奴も下に降りてこない。 このままじゃどうにもならん」
こうゆう時に魔法使いがいればと思うが、いないものはいない。
今の俺達にできる事は、とにかく奴を俺達の攻撃範囲まで近づかせる事だ。
そして、その方法を俺はさっき思いついた。
「エルミアちゃん。 ここ見てみな」
俺は、今しがたぶつかった場所を指さす。
「あ。 扉ですか? これ」
俺達が風で飛ばされ、ぶつかった枯れ木は最初にキングドロカラスが留まっていた木。
遠くからは気づきにくいが、側でよく見ると扉があった。 木目で扉の縁が分かりにくくなっている。
「そう扉。 なんでこんな所にあるか。 しかも、すごく分かりにくく、更に最初にここは奴がなかなか離れようとしなかった場所だ」
エルミアや俺に大群の雑魚のドロカラスを襲いかからせて、自分は攻撃してこなかった。
あいつは、ここに近づかせたくなかった。
だけど、雑魚は倒され自分が戦闘しなくてはいけなくなった。
クチバシでの直接攻撃も、隙はできてしまうが奴なりの考えだったのだろう。
早く敵を片付けて、この扉の存在に気づかせないために。
「この扉の中は、あのキングドロカラスが守っている何かが隠されているって事だ。 多分、あいつを倒さないと開けられない仕組みになっているだろうけどな」
「それじゃあ、これが分かっても意味がないんじゃ・・・・・・」
「確かにな。 だが、あいつは馬鹿そうだ。 なのに俺達の動きや表情の変化は分かっているみたいだ。 馬鹿なりに知識があるのかもな」
だが、所詮はモンスター。 こっちのフェイクなんて気づかないだろ。
「俺は、今からここがもう少しで開きそうなフリをする。 大袈裟なフェイクな行動をする。
そうすれば、あいつは焦ってここまで降りてくるだろ。 その時にまた攻撃ができる」
「でも、そんなの一回か良くても2回くらいしか騙されないんじゃ・・・・・・」
「いや、次の機会で片付ける。 剣の刃がイカレちまうからあんまり使いたくなかったけど、俺の渾身の技なら、多分・・・・・・いける」
「わかりました。 じゃあ、私はそのフェイクに一緒になって反応していればいいんですね」
「そういう事。 頼むぜ名演技を!」
♦♦♦♦♦
案の定、俺達のフェイクの演技に翻弄された様子を見せたキングドロカラス。
驚いたのは、あまりにも下手くそな演技をするエルミアだったが。
これはまさに迷演技ですね。
「焦ってる焦ってる――良い感じだぞ、エルミアちゃん・・・・・・と言いたいとこだが、下手すぎか!?」
「!? そ、そんな全力で演技してるつもりですよ!?」
「まぁ、相手が馬鹿なモンスターで良かったよ」
でも、やっぱり扉は開かなかった。
鍵穴1つないとすると、条件付きの魔法で守られているのだろう。
「くるぞ!」
「!?」
ガチャガチャと扉の取っ手を回す俺に、真っ先に突っ込んできた。
エルミアと俺は演技を辞め、すぐに戦闘態勢に切り替える。
「エルミアちゃん! 少し距離を取っておいてくれ。 万が一、巻き込まれでもしたら困る」
「わかりましたっ」
獣人の身のこなしは、人より遙かに卓越していて身軽に動く。
地面を蹴って木に飛び移る時も、まるで忍者みたいに音もなくサッと飛び乗った。
俺はバスターソードの柄を握り、上部に持ち上げる。
低位置まで降りてきたキングドロカラスの右辺を狙う。
俺だって、必殺技の1つや2つ持ってるっつーの。
バスターソードの幅広い刀身に埋め込まれた赤く光る石が、キラリと光を放つ。
「いくぞ、くそカラス! 焼き鳥にしてやるぁぁぁぁああ」
刃は炎に包まれて、その熱は技を繰り出している俺も暑さを感じさせる。
限界まで炎の力を溜め込んだバスターソードを、思い切り振り下ろす。




