第8話『キングドロカラスを甘くみてました』
キングドロカラスの急降下からの一撃は、思った以上にダメージをもらった。
過去にフロアボスを倒したという「だから大丈夫」だろという慢心が招いた事だ。
避けられないほどではなかった。
今でもヘソら辺が、少しジンジンする。
「ったく。 いい歳してまだこんな初歩ミスするなんてな」
目の前の少女に良い所を見せたいという気持ちも・・・・・・なくはなかった。
借金を抱えている事を暴露して、しかも手伝ってもらっている今にして思えば、すでに黒歴史の1ページと言ってもいい。
それと、さっき彼女を敵の攻撃から逸らすための行動の中で、胸を触ってしまうという出来事があった。
その後、エルミアは何事もなかったかのように接してくれたので怒ってはいないのだろう。
ラッキーイベントだったと思ってしまおう。
「ライゼスさん、そっち行きました!」
エルミアが声をかける。
「お、おうよ!」
俺とエルミアは二手に分かれて、片方に攻撃が向いている隙にもう1人が攻撃をするという作戦。
エルミアは、モンクという職業で完全に近距離戦特化。
空中を飛ぶキングドロカラスとは相性が最悪と思われたが、「戦闘経験がある」というのは本当みたいだ。
急降下しておれに攻撃をしてきた時を狙って、一気に間合いを詰めて鋭い爪で引っ掻いている。
俺も剣士職なので、あまり空を飛んでいる敵は得意ではないが斬撃を一定の距離までなら飛ばせる技を持っている。
さっきから攻撃は当たっているのだが、なかなか相手もひるんでくれない。
「こりゃかなり体力あるな、こいつ。 エルミアちゃん、まだ大丈夫か? さっきから動きっぱなしだろ」
「大丈夫です。 こんなんじゃまだまだへこたれませんよ!」
若さって羨ましい。
俺、少しだけ息切れしちゃってるんですけどね。
「身体に泥を纏って、鎧の代わりにしてるみたいですね」
「あぁ、そのせいでなかなか思った以上のダメージが入らない。 持久戦になっちまってる」
羽の生え際から、定期的に泥が滲み出している。
「厄介だけど、とりあえずこのまま様子を見ながら攻撃していこう」
「はい!」
周りは、枯れ木がいくつも生えている。
地面は奴が飛び散らせる泥のおかげで、足場が泥でベトベト状態。
踏ん張るだけでも、体力を奪われる。
おじさんに体力勝負たぁ、なかなか面倒な相手じゃないか。
しばらくすると、相手の攻撃パターンが変わった。
距離を詰めると、自分がやられるのを学んだのか高い位置から降りてこなくなった。
大きな翼を勢いよく羽ばたかせて、強風を起こす。
「こりゃ、なかなか骨が折れるな。 風で前にも進めん」
俺はその場で踏ん張るが。
「ひゃああぁあ」
エルミアは耐えられなかった。
吹き飛ばされる彼女の先は、キングドロカラスが止まり木にしていた太い木の幹の壁。
あの勢いで激突したら、俺でもしばらく立ち上がれないかもしれない。
「ゴォォガガガガ」
上空からは、ムカつくような声で笑うように鳴く泥がしたたる大怪鳥。
「ちっ。 あいつ絶対焼き鳥にしてやるからな」
俺は踏ん張りに更に力を込めて、地面を蹴る。
ぶつかるギリギリのところで、エルミアの背後に移動する。
強風の勢いと女の子とはいえ、1人分の体重の衝撃が俺に響く。
「ぶへっ!」
「ラ、ライゼスさん!? 大丈夫ですか!? ・・・・・・ひゃ!?」
俺が木とエルミアの板挟みになった。
彼女をガキ抱えた格好になり、不本意・・・・・・本当にわざとではないぞ、再び大きな膨らみ2つをモギュッと鷲掴みしてしまった。
これは、もう言い逃れでできない。
「す、すすすまん! わざとじゃないんだ!」
すぐさま身体を引き剥がし、距離を取る。
しっかり手に感触は残っているが、余韻を楽しむ余裕はない。
「この短時間に2度目ですね」
「本当にごめんなさいぃぃ」
俺は確かに飲んだ暮れのどうしようもない男だが、10代の少女に手を出すほど変態ではない。
だが、これは完全に有罪案件だ。 しかも、1度目もやはり気にされていらっしゃった。
「・・・・・・いいですよ。 どっちも私を助けてくれての事ですし」
「女神ぃぃ――」
この子には永遠に頭が上がらないかもしれない。




