第71話『金魚の糞』
エルミアちゃん以外の全員は、お酒を飲んでいる。
斧使いリーエンは、俺に負けず劣らずの豪快っぷりで、今日の報酬を使い切る勢いだ。
俺が、酒場に顔を出した時には、彼の机の周りは飲み干したジョッキで溢れかえっていた。
新人の冒険者を捕まえて、自分の武勇伝をひたすらに喋り散らかし、すでに餌食になった新人はヘトヘトの状態だった。
人の自慢話ほど、つまらないものはない。 リーエンは俺を発見するなり、手招きをしてきた。 それが今の席なわけだ。
俺が座ると、新人の冒険者は、カノンに「今のうちに帰りなさいな」と促され、そんな彼女にお礼を言って、立ち去っていった。
カノンが頼んだのは、エルミアちゃんと同じフルーツカクテル。 ただし、アルコール入り。
調理場には、複数のコックがいて、それとはまた別でお酒を作ってくれるバーテンダーも常駐している。
「せっかく作ってくれるのに、目の前で見れないのが残念だわ・・・・・・」
シェイカーで、リズミカルな音を奏でるのを見て聞いてをするのが、カノンは好きらしい。
今は、カウンターではないので、音だけを楽しむ、 それすらも、隣に座る男2人に妨げられて、少し不機嫌になった。
どれくらいの時間飲んだか分からなくなり、酔いも良い感じに回ってきて楽しい頃合いに、カノンが1番聞いて欲しくない事を聞いてくる。
「それで、あんたどうやって借金返すのよ」
地道に返していく他ない。 とは言いたいのだが、そんな事をしていたら、俺の日々の生活が危ぶまれる。
尽きては、依頼へ出動するための資金すら、手に入れる事は敵わなくなるわけだ。
最終的に行き着くところは、文無しアイテムなしでモンスターに挑み、本調子も出せず、どこかで野垂れ死ぬか、モンスターの餌になって生涯を終えるだろう。
そんなのは、俺の生涯のビジョンではない! いやだ!
「わっかりましぇ~ん・・・・・・。 おれはぁいまは、現実逃避ちゅ~なのでぇす」
「分かったわ、その辺で餓死するつもりなのね。 その覚悟が聞けただけでも奢った甲斐があったわ。 エルミアこいつとは今日限りで、縁を切りなさい」
「やめてやめて! 俺を見捨てないで、天使を取り上げないでぇ!」
ぶっちゃけ、カノンのツテでなんとかならないかなぁ、と考えていたのだ。
というか、それしか俺には思い当たるものがない。 セラさんに、一括もしくは2~3回くらいで返済できる依頼があるか聞いてみたが、どれもとても1人じゃ無理なものばかりだった。
これは、金魚の糞と蔑まれようとも、この富と名声はある魔法使いにすがっていこうと思っている。
それに、エルミアちゃんは俺を唯一、人として扱ってくれる天使なんだ。 そんな方を俺から奪うなんて、人間のやる事じゃねぇ。
少し前に膝枕をしてくれていた事など、今のライゼスの頭の中にはすっかり抜け落ちていた。




